2019年1月16日 (水)

記事リバイバル⑪(ロ-レンツ変換の導出)

※かつて何日も根をつめて計算し,出来たときは早朝で達成感

を感じた記憶のある課題

「線形を仮定することなく特殊相対論のLorentz変換を求める」

ことを意図した2007年10月の過去記事の再掲です。

もちろん参照した書物はありますが具体的導出の詳細は書かれて

いなかったのでやや苦労しました。※

 有名なEMANの物理学の「掲示板(談話室)」において,最近,あまり注目されていませんでしたが,相対論における慣性座標系間の変換について言及する投稿をされておられる方がいました。

 

これは,電磁気学の方程式の共変性によるのではなく,光速度不変の原理,および最低限の運動学的な条件だけから,慣性座標系間の変換を空間座標や時間の線形変換(1次変換)に限定することなく,一般的に考えてもローレンツ変換に一致するようになるのかどうか?を問題にしておられた投稿です。

これは,かつてのパソコン通信時代のニフティのフォーラムでも,たびたび出ていた話題です。

 

これが可能なことは,既にいろいろな方により何度も示されていたので,私もよく知ってはいましたが,試しに私的に具体的に示してみよう,という気になりました。

 

一応,必ずしも光速度が不変である必要はないけれど,有限な限界速度が存在してそれが不変であり,それが今のところは,たまたま光速と一致している,ということを想定した形にしました。

元々,歴史的には時空間の一様性などから,"特殊相対性原理を満たす座標変換は線形変換(1次変換)である"と直感的に設定され,最初からそれを仮定すれば,簡単にローレンツ変換(Lorents transformation)を導くことができます。

 

そして,実際にそうして得られるローレンツ変換が現実の物理現象と合致することもわかっているので,いまさらという感もありますが,そうした物理的な発想を意識することなく,数学であると考え,変換の不変式などの条件から数式的な考察で導出してみます。

まず,ある慣性座標系S:O-xyz-t系と,これに対してS系から見て相対的に等速度で運動している別の慣性座標系S':O'-x'y'z'-t'系を考えます。

 

そして,(x,y,z,t)を(,t),(x',y',z',t')を(',t')と書くことにします。

これらの座標系で,全く同一の"事象(event)=時空点"がS系では座標(,t)で,S'系では座標(',t')で与えられるとき,両者の関係式を一般的に導出することが本記事の目的です。

用いるべき条件は,まず第1には,"S系での時刻t=0 の瞬間にはS系から見てS'系の空間部分は完全にS系のそれと重なっている。

 

特にt=0 の瞬間での原点'=0 では,S'系での時刻もt'=0 でS系での時刻t=0 と一致している"という条件です。

 

そして第2には,"物理的な速度の大きさには有限な限界が存在して,それは光速,あるいは限界速度cで与えられ,この値は如何なる慣性座標系でも同じ値をとる"という,いわゆる"光速度不変の原理,あるいは限界速度不変の原理,が成立する"ことを仮定します。

さらに,第3の条件は,

 

"S'系で常に空間座標系に張り付いて共に運動している,S'系に静止して固定されている全ての点:('(t'),t')=(',t')は,

'/dt'0,あるいはd'=0 を満たしていますが,

 

これに対応する点のS系での時系列としての軌跡:((t),t)は,

/dt=v,あるいはdx=vdtで与えられる",

 

というものです。

 

ここで,後の便宜上,v≡||,β≡v/cと置きます。

そして,簡単のために,T≡ct;'≡',T'≡ct'と表記します。

 

また,未知の座標変換の変換式を'=(,T),T'=g(,T)という関数形で書いておきます。

 

光速(限界速)をcとすると,時刻T=T0X=X0を通る光の軌跡は|X―X0|=T-T0を満たしますが,限界速度cが不変である,という条件から,S'系でも|'―X0'|=T'-T0',または|(,T)-(0,T0)|=g(,T)-g(0,T0)が成立します。

さらに単純化して,S系のx軸をS'系のS系に対する相対速度の向きに選び,t=0 のときにS系とS'系の空間直交座標の軸は全て一致しているとします。

 

そして,d'=0 を満たす運動をする点はdx=vdtを満たすという条件から,S'系で座標系に張り付いて固定されたあらゆる点はdy'0 を満たしますから,これはdy0 に対応します。

 

そこで,t=0 でx=x'=0 のyz面=y'z'面上に固定された点に対して常にy'y,z'zとなりますから,この座標系のx軸に沿う相対運動では運動方向に垂直な向きには影響しないと考えます。

そこで座標の変換性としてはx座標と時間の2つのパラメータだけを考えれば十分ですから,改めて2次元の座標(x,t)と(x',t')の関係,すなわち(X,T)と(X',T')の関係だけを考察することに集中します。

 

そして,(X',T')を一般的に(X,T)と速度βの関数として,座標変換の変換性を,改めてX'=f(X,T;β),T'=g(X,T;β)なる関数で表現します。

限界速度(光速)が不変であるという条件は,|X'0'|=T'-T0',または|f(X,T;β)-f(X0,0;β)|=g(X,T;β)-g(X0,0;β)と書けます。

 

これは,f(X,T;β)±g(X,T;β)=f(X0,0;β)±g(X0,0;β)を意味します。

 

つまり,|X0|=T-T0,またはX2-T2=X02-T02を満たす光の軌跡:(X,T)=(X(T),T)に対しては,f2(X(T),T;β)-g2(X(T),T;β)=f2(X0,0;β)-g2(X0,0;β)が成立します。

2(X0,0;β)≡f2(X0,0;β)-g2(X0,0;β)と置くと,2(X0,0;β)は,定数0,0;βだけの関数ですから,,Tにはよらない単なる任意定数です。

 

そこで,これを単にC2と書けば,光の軌跡群はX'2-T'2=f2(X(T),T;β)-g2(X(T),T;β)=C2なる双曲線族で与えられることがわかります。

,F(X,T;β)≡f2(X,T;β)-g2(X,T;β) によって新しくXとTの関数:Fを定義します。

 

このとき,dF=(∂F/∂X)dX+(∂F/∂T)dTですが,上に示したように,光の軌跡上ではF(X,T)=C2ですからdF=0 です,

 

そこで,X=X0±(T-T0):dX=±dTに対しては常に±(∂F/∂X)+(∂F/∂T)=0 が成立します。このことから,F(X,T;β)はdX=dTに対しては(X-T)だけの関数,dX=-dTに対しては(X+T)だけの関数となることがわかります。

すなわち,ある1変数関数φ±が存在して,光線の上ではF(X0(T-T0),T;β)=φ(X-T;β)=φ(X0-T0;β)=C2(X0,0;β),かつF(X0(T-T0),T;β)=φ(X+T;β)=φ(X0+T0;β)=C2(X0,0;β)と表現することが可能です。

ところが,(X,T)を任意の時空点とすると,その点を通過する光線は必ず存在します。つまりX±T=X0±T0となるように(X0,T0)を選べば,いいわけです。このときには(X,T)と(X0,T0)を結ぶ光線が存在可能なのは明らかですね。

したがって,任意の時空点(X,T)に対し,X±T=X0±T0なる(X0,T0)を取れば,これに関してF(X,T;β)=φ±(X±T;β)=C2(X0,0;β)が成立します。

 

X±T=(一定),またはX2-T2(一定)の(X,T)に対しては共通の(X0,0)を与えることができますから,それらの点に共通な値C2(X0,0;β)はX2-T2のみの関数になります。

 

結局,ある1変数関数Φによって,F(X,T;β)=C2(X0,0;β)=Φ(X2-T2;β)と書くことができるわけです。

言い換えると,X'2-T'2=f2(X,T;β)-g2(X,T;β)=Φ(X2-T2;β) と書けることになります。

 

X=T=0 のときにはX'=T'=0 ですから,特にΦ(0;β)=0 です。また,恒等変換β=0 の場合には,もちろんX2-T2=f2(X,T;0)-g2(X,T;0)=Φ(X2-T2;0)です。または,簡単にいうと,Φ(X2-T2;0)=X2-T2です。 

一方,dX'/dT'0:dX'0 に対応する点の軌跡:(X(T),T)はdX/dTβ:dXβdTを満たすという条件により,X'=X1'=(一定)の軌跡はS系ではX(T)=X1+βTと書けます。

 

そこで,この軌跡:X'=f(X,T,β)=(一定)の上では,f2(X1+βT,;β)=f2(X1,0;β)です。そして,任意の(X,T)に対しても,X1≡X-βTと置けば,X'2=f2(X,T;β)=f2(X-βT,0;β)が得られます。

この等式は,任意の(X,T)に対して成立しますから,結局,X'2=f2(X,T;β)はX-βTだけの関数で表現できることがわかりました。

 

そして,X'2-T'2=f2(X,T;β)-g2(X,T;β)=Φ(X2-T2;β)から, 0=f2(X,T;β)-f2(X-βT,0;β)=Φ(X2-T2;β)-Φ((X-βT)2;β)+g2(X,T;β)-g2(X-βT,0;β) です。

 

そこで,T'2=g2(X,T;β)=g2(X-βT,0;β)+Φ((X-βT)2;β)-Φ(X2-T2;β)も成立します。

ところで,X'2-T'2=Φ(X2-T2;β)でしたから,X2-T2=Φ-1(X'2-T'2;β)ですが,変換の対称性を考慮すると,明らかにΦ-1(ξ;β)=Φ(ξ;-β)なので,X2-T2=Φ(X'2-T'2;-β)=Φ(Φ(X2-T2;β);-β)となるはずです。

 

ところが,S'系の運動の向きが正反対:β→-β(v→-v)の場合でも,S系の同一の点(X,T)に対応する点(X',T')についてX'2-T'2の値は同一であろう,という物理的な考察によれば,Φ(ξ;-β)=Φ(ξ;β)であると考えられます。

 

この考察から,Φ(Φ(ξ;β);-β)=Φ(Φ(ξ;β);β)=Φ(ξ;η(β)),つまり,X2-T2=Φ(X2-T2;η(β))が得られます。

 

ここでη(β)は速度合成に関わるあるβの関数ですが,とにかく一般にゼロではないので,Φ(X2-T2;β)はβには無関係ですから,Φ(X2-T2;β)=X2-T2と結論されます。

 

これで,やっと重要な関係式:X'2-T'2=f2(X,T;β)-g2(X,T;β)=X2-T2を得ることができました。最初から座標や時間の1次式を仮定していれば,これは苦も無く得られる関係なのですが。。。

これを用いると,T'2=g2(X,T;β)=g2(X-βT,0;β)+Φ((X-βT)2;β)-Φ(X2-T2;β)なる関係式は,g2(X,T;β)-g2(X-βT,0;β)=(X-βT)2-X2+T2に帰着します。

 

この式に,X=βTを代入するとg2(βT,T;β)=(1-β2)T2が得られます 

ところで,X'=X1'=(一定)のTに沿っての軌跡は,X(T)=X1+βTでしたが,T'=T1'=(一定)のXに沿っての軌跡T=T(X)はどのように表現されるのでしょうか? 

X'2-T'22-T2において,T'=T1'=(一定)の軌跡を仮定すると,この上ではT'2=g2(X,T;β)=T1'2(一定)ですから,f2(X,T;β)=X'2=X2-T2+T1'2,またはf2(X-βT,0;β)=X2-T2+T1'2です。

 

βを固定すると,左辺はX-βTだけに依存する関数ですが,一見したところ,右辺はX-βTだけの関数には見えません。 

そこで,Y≡X-βTとして,これをYで表わすとf2(Y,0;β)=(Y+βT)2-T2+T12となります。βを固定した今の場合,左辺はYだけの関数です。

 

Yを固定して,Tで偏微分すると∂f2(Y,0;β)/∂T=2β(Y+βT)-2T+dT1'2/dT=0 となります。つまり,dT12/dT=2T-2β(Y+βT)=2T-2βX=2(T-βX)です。これをTで積分するとT1'2(T-βX)2const.が得られます。

 

以上から,T'=T1'=(一定)のXに沿っての軌跡は,T1を定数としてT=βX+T1なる表式で与えられることがわかりました。

 

よって,2(X,βX+T1;β)=T1'2=g2(0,1;β)により,任意の点(X,T)に対してg2(X,T;β)=g2(0,T-βX;β)が成立します。すなわち,T'2=g2(X,T;β)はT-βXだけの関数になります。

 

したがって,f2(X,T;β)-g2(X,T;β)=X2-T2なる関係は2(X-βT,0;β)-g2(0,T-βX;β)=X2-T2と書き直されます。

 

これにT=βXを代入すれば,2((1-β2)X,0;β)=(1-β2)X2です。また,X=βTを代入すれば,2(0,(1-β2)T;β)=(1-β2)T2を得ます。 

それ故,(X,0;β)=X/(1-β2)1/2,g(0,T;β)=T/(1-β2)1/2,すなわち,(X-βT,0;β)=(X-βT)/(1-β2)1/2,g(0,T-βX;β)=(T-βX)/(1-β2)1/2です。

 

結局,最終的には,X'=(X,T,0;β)=(X-βT)/(1-β2)1/2,'=(X,T;β)=(T-βX)/(1-β2)1/2となります。

 

すなわち,x'=(x-vt)/(1-v2/c2)1/2,'=(t-vt/c2)/(1-v2/c2)1/2なる最終的な変換式を得ることができました。

 

これは確かに通常のローレンツ変換です。

 

こんなのは,すぐできるだろうと簡単に考えていたら,ほぼ1日かかりました。恐らくはもっと簡単にできるトリックなどがあるのでしょうが,関数方程式を立てて地道に解くと大変なことがわかりました。

 

最近は計算などはほとんどパクリなので,自力で計算する力は歳のせいもあるのか,かなり落ちているようです。

 

もっとも,物理学とか数学とか,理論が主体の学問は,自分で発見しない限りは所詮,全てパクリの連続で単に誰かが考えて述べたことを追体験するだけですが。。。

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記事リバイバル⑩(リーマン予想と素数定理)

※前記事に続く同じテーマの2007年8/11の過去記事

「リーマン予想と素数定理」を再掲載します。 ※

素数定理:π(x) ~ x/logx は,現在も未解決のリーマン予想

=R.H(Riemann hypothesis)の解決を待つまでもなく,既に証明

されていますが,Riemann予想が元々は精密な素数定理を導くこと

を,その目的としていたことはよく知られています。

 

しかし,ゼータ関数(Zeta)の零点が素数の個数分布π(x)と

具体的に,どのように結びつくのか?の詳細については私は

知らなかったので,ちょっと調べてみました。

 

本ブログでは,2006年10/30に「ベルヌーイ数とゼータ関数」,

10/31には,その続編「ベルヌーイ数とゼータ関数(その2)

という記事を書きました。

 

そこでは,整数のべき乗数列の有限和のBernoulli(ベルヌーイ)数

による表現として,Euler-Maclaulinの和公式を与えました。

 

すなわち,s≠1なら,

n=1N(1/ns)=(1-1/Ns-1)/(s-1)+(1/2)(1+1/Ns)

+∑k=1M-1[Bk+1/(k+1)!](s)k(1-1/Ns+k)

-{(s)M/M!}1NM(x-[x])x-s-Mdx

なる公式です。

 

ただし,Mは任意の自然数,BrはBernoulli数,であり,記号:

(s)kは,(s)k≡s(s+1)...(s+k-1)で定義されます。

 

そして,Riemannのゼータ関数:ζ(s)は,Re(s)>1の複素数s

対して,ζ(s)≡∑n=1(1/ns)で定義されるのですが,上の

Euler-Maclaulinの和公式の右辺は,この範囲では絶対収束します。

 

そこで,両辺のN→ ∞ の極限を取ると,

ζ(s)=∑n=1(1/ns)

=1/(s-1)+1/2+∑1M-1[Bk+1/(k+1)!](s)k

-{(s)M/M!}1M(x-[x])x-s-Mdx;(Re(s)>1)

という表現式が得られます。

 

ところが,右辺の積分式の方は,

Re(s)>(1-M)の範囲で絶対収束するので,この式の右辺に

よって,ゼータ関数ζ(s)は,Re(s)>(1-M)の範囲のsに

自然に解析接続されます。

 

Mは任意の自然数ですから,ζ(s)はs=1に"特異点=1位の極"

を持つだけで,この点を除く全複素s平面に解析接続されます。

 

そこで,今日はまずRiemannの原論文に従ってsと1-sの交換

対して不変な関数:π-s/2Γ(s/2)ζ(s)を考察することから

始めます。

 

まず,EulerのΓ関数の定義Γ(s)≡∫0s-1exp(-x)dxに

部分積分を繰り返すことによって,等式:

Γ(s)/ns=∫0s-1exp(-nx)dx

が得られます。

 

これから,Γ(s)ζ(s)=∫0[xs-1/{exp(x)-1}]dx

が成立することがわかります。

 

故に,積分:∫0[(-x)s-1/{exp(x)-1}]dxの積分路が囲む

1位の極;x=±2πniの留数の寄与を考えると,

 

2sin(πs)Γ(s)ζ(s)=(2π)sΣ1s-1[is-1+(-i)s-1]

=(2π)sζ(1-s)2sin(πs/2) を得ます。

 

公式:Γ(s)Γ(1-s)=π/sin(πs)より,

sin(πs)=π/[Γ(s)Γ(1-s)],

sin(πs/2)=π/[Γ(s/2)Γ(1-s/2)]ですから,

 

ζ(s)/Γ(1-s)=(2π)sζ(1-s)/[Γ(s/2)Γ(1-s/2)]

となります。

 

一方,Legendreの関係式:Γ(s)=2s-1π-1/2Γ(s/2)Γ((s+1)/2)

より,Γ(1-s)=2-sπ-1/2Γ((1-s)/2)Γ(1-s/2) です。

 

結局,関数等式:π-s/2Γ(s/2)ζ(s)

=π-(1-s)/2Γ((1-s)/2)ζ(1-s) が得られます。

 

よって,確かにπ-s/2Γ(s/2)ζ(s)は,sと(1-s)の交換に

ついて対称であることがわかりました。

 

 さて,Γ(s)/ns=∫0s-1 exp(-nx)dxと同様に,

 部分積分により,

 π-s/2Γ(s/2)/ns=∫0s/2-1exp(-n2πx)dx

 が得られます。

 

 そこで,関数ψを関数:ψ(x)≡Σn=1exp(-n2πx)

 (↑ 今日では,Jacobiのテータ関数と呼ばれている)

 によって定義すれば,

 

 π-s/2Γ(s/2)ζ(s)=∫0s/2-1ψ(x)dx

 となります。

 

 ここでψ(x)の既知の性質:2ψ(x)+1=x-1/2{2ψ(1/x)+1}

 を用いると,

 

 π-s/2Γ(s/2)ζ(s)

 =1s/2-1ψ(x)dx+∫01(s-3)/2ψ(1/x)dx

 +(1/2)∫01(x(s-3)/2-xs/2-1)dx

 =1/{s(s-1)}+∫1(xs/2-1+x-(1+s)/2)ψ(x)dx

 となります。

 

そして,これの右辺第2項の積分は全てのsについて正則なので

結局,π-s/2Γ(s/2)ζ(s)は,s=0,1の1位の極を除いて全s

平面で正則であることがわかります。

 

一方,ガンマ関数の性質から,Γ(s/2)はs=-2,-4,..に1位の極

を持つことが知られていますが,

 

π-s/2Γ(s/2)ζ(s)は,それらのsでは正則で,しかもゼロでは

ないので,ζ(s)がs=-2,-4,..に重複度1の零点を持つこと

がわかります。

 

これをζ(s)の自明な零点といいます。

 

先に述べたEuler-Maclaullinの和公式でも,mを自然数とするとき,

ζ(1-m)

=-1/m+1/2+∑1m-1[Bk+1/(k+1)!](1-m)(2-m)..(k-m)

と書けることから,

 

m=3,5,..ではζ(1-m)=-Bm/m=0

となることがわかります。

 

しかも,ζ(1-m)/(1-m)≠0 ですから,これら自明な零点は

重複度が1であることがわかります。

 

いずれにしても,ζ(s)の自明な零点はΓ(s/2)の極によって

相殺されます。

 

そして,Γ(s/2)は零点を持ちませんから,π-s/2Γ(s/2)ζ(s)

の全ての零点は,ζ(s)の自明でない全ての零点と完全に一致

します。

 

2006年10/24の記事:「素数を分母とする循環小数とその周辺」,

および,10/25の記事;「素数定理への入り口」において,

 

Eulerによるゼータ関数:ζ(s)の素数pによる無限積表示

(=Euler積):ζ(s)=Πp=素数(1-p-s)-1を紹介して,

これによってlog{ζ(s)}=-Σlog(1-p-s)が成立すること

を既に記述しています。

 

そして,s=σ+iτ(σ,τ:実数)とおけば,|p-s|=pであり,

σ>1 のときは,

-Σlog(1-|p-s|)=-Σlog(1-p)≦Σp<∞

です。

 

つまり,

σ=Res>1なら,log{ζ(s)}=-Σlog(1-p-s)は有限なので,

Res>1 には,"ζ(s)の零点=π-s/2Γ(s/2)ζ(s)の零点"は

存在しないことがわかります。

 

また,関数等式:π-s/2Γ(s/2)ζ(s)

=π-(1-s)/2Γ((1-s)/2)ζ(1-s)

による,sと(1-s)の交換対称性から,Re(1-s)>1,

はRes<0 と同値ですから,

 

結局,Res<0 にもRes>1にも,π-s/2Γ(s/2)ζ(s)の零点

は存在しないことがわかります。

 

つまり,"π-s/2Γ(s/2)ζ(s)の零点=ζ(s)の自明でない零点"

は,存在すれば,0≦Res≦1の領域にしかないことになります。

 

ここで唐突ですが,複素関数論で現われる正則関数の零点に関する

Weierstrassの標準形を考えます。

 

これは,正則関数f(z)が重複度も含めてn個の零点:

1,a2,..,anを持てば,

f(z)の一般形は,g(z)を整関数として,

f(z)=exp{g(z)}(z-a1)(z-a2)...(z-an)

なる形に書けること,を意味します。

 

しかし,このままではn→ ∞ に移行するときに不便なので,

これをak≠0 なる全ての零点について,(-ak)で割ります。

 

mをak=0 なる零点の重複度とすると,Σn|1/an|<∞ ならば,

n→ ∞ では,f(z)=zmexp{g(z)}Πan≠0(1-z/an)という

形に書けるという定理が成立します。

 

しかし,一般にはΣn|1/an|<∞ が成立するとは限りません。

そこで,より一般的な展開式は,mn∀t>0 に対して,

Σn{2/(mn+1)}|t/an|mn+1<∞ なる最小の正の整数とすると、

 

f(z)=zmexp{g(z)}Πan≠0[(1-z/an)

exp{(z/an)+(z/an)2/2+...+(z/an)mn/mn}]

と書けるという式になります。

 

これが"Weierstrassの標準形"です。

  

特に,z= 0 がf(z)の零点ではなく,

Σn|1/an|=∞,Σn|1/an|2<∞ の場合には,

f(z)=Cexp(Bz)Πan≠0[(1-z/an)exp(z/an)]

と表わすことができます。

 

ここでは「Weierstrassの因数分解定理と有理型関数」という

murakさんのホームページのpdf情報を参照しました。

 

これによると,s(1-s)π-s/2Γ(s/2)ζ(s)は,s平面で正則

で,その零点=ζ(s)の自明でない零点ρ,は全て単根でρ≠0

であり,Σρ|1/ρ|=∞,Σn|1/ρ|2<∞なので,

 

s(1-s)π-s/2Γ(s/2)ζ(s)

=Cexp(Bs)Πρ[(1-s/ρ)exp(s/ρ)]

と表現できます。

 

この両辺でs→ 0 とすると,sΓ(s/2)ζ(s)→ 2ζ(0)=-1

なのでC=-1 です。

 

また,s→ 1 とすると,(1-s)π-s/2Γ(s/2)ζ(s)→ -1

なので,1=exp(B)(1-1/ρ)exp(1/ρ) です。

 

さらに,exp(Bs)Πρ[(1-s/ρ)exp(s/ρ)]の,s→ (1-s)

に対する不変性により,

exp(B)=Πρ[{(1-ρ)/(-ρ)]exp{-1/(1-ρ)}]

と書けます。

 

結局,s(1-s)π-s/2Γ(s/2)ζ(s)=-Πρ(1-s/ρ)

が得られました。

 

右辺最後の式:Πρ:零点(1-s/ρ)は,Hadamad(アダマール)積

といいます。

 

したがって,ζ(s)=Πp.素数(1-p-s)-1

=[-π-s/2Γ(s/2)/{s(1-s)}]Πρ:零点(1-s/ρ)

という関係式が得られます。

 

Euler積とHadamad積の間には,こうした美しい関係があることが

わかりました。

 

これは素数とゼータの零点の間に成り立つ1つの双対性(Duality)

であると考えられます。

 

Euler積表現:ζ(s)=Πp.素数(1-p-s)-1の両辺をsで対数微分

すると,log(ζ(s))/ds=Σp.素数(1-p-s)-1logp

=Σn=1Λ(n)n-sと表わすことができます。

 

ここで,Λ(n)はvon Mangoldtの関数と呼ばれるnの関数で,

Λ(n)≡logp(n=pm:m≧1のとき),Λ(n)≡0 (それ以外)

です。

Hadamad積表現:ζ(s)

=[-π-s/2Γ(s/2)/{s(1-s)}]Πρ:零点(1-s/ρ)も,

sで対数微分して,Euler積表現の式に等置すれば,

dlog(ζ(s))/ds=Σn=1Λ(n)n-s

=1/s+1/(s-1)-1/2logπ+Γ'(s/2)/{2Γ(s/2)}

-Σρ:零点{1/(s-ρ)}

なる式を得ます。

 

ここで,前に戻り,ζ(s)においてs=1/2+it,または,

t=i(1/2-s)(tは複素数)とおいて,

ξ(t)≡π-s/2Γ(s/2+1)(s-1)ζ(s)

={s(s-1)/2}π-s/2Γ(s/2)ζ(s)と書けば,

 

ξ(t)=1/2-(t2+1/4)∫1dx[x-3/4cos{(tlogx)/2}ψ(x)],

または,

ξ(t)=4∫1dx[x-1/4cos{(tlogx)/2}d{x3/2ψ(x)}/dx]

と書けます。

 

これから,ξ(t)はtの偶関数であり,しかもtが実数ならξ(t)

も実数であることがわかります。

 

このとき,ξ(t)=0 となる根tで 0≦Ret≦Tなるものの個数:

すなわち 0≦Res≦1(-1/2≦Imt≦1/2),かつ,

0≦Ims≦T(0≦Ret≦T)を満たすζ(s)の自明でない零点;

ρ=sの個数をN(T)と書けば,

"N(T)={T/(2π)}log{T/(2π)}-{T/(2π)}+o(logT)

である。"という命題が成立することに関する,Riemannの幾分

不十分な説明が与えられていますが,

これは1905年に von Mangoldt によって,厳密な証明が与えら

れています。

 

そしてξ(α)=0 を満たす任意の根をαとします。

 

ρ=1/2+iαですからα=i(1/2-ρ)ですが.このときRiemann

によれば,上に求めた,

N(T)={T/(2π)}log{T/(2π)}-{T/(2π)}+o(logT)

という表式を考慮することで,

積公式:ξ(t)=ξ(0)ΠReα>0(1-t22):つまり,

logξ(t)=ΣReα>0log(1-t22)+logξ(0)が得られるという

ことです。

 

これも,Riemannの説明は私にははっきり言ってよく理解できません。

 

実際これも不十分な説明で,厳密な証明はHadamardによって,1896年

に与えられたらしいです。

 

しかし,むしろ先に求めた等式;

log(ζ(s))/ds=Σn=1Λ(n)n-s

=1/s+1/(s-1)-1/2logπ+Γ'(s/2)/{2Γ(s/2)}

-Σρ:零点{1/(s-ρ)}と,

 

ξ(t)={s(s-1)/2}π-s/2Γ(s/2)ζ(s)という表式,

および,ξ(t)の偶関数性から,

dlog(ξ(t))/dt=iΣρ{1/(s-ρ)}

=ΣReα>0{1/(t-α)+1/1/(t+α)} を得ます。

 

この両辺を,0からtまで定積分すると,

log(ξ(t))-log(ξ(0))=ΣReα>0[log(t±α)-log(±α)]

=ΣReα>0log(1-t22) が,直接得られるので,

先のRiemannの説明は不要ですね。

 

そして,このξ(t)の表式をζ(s)の表式に翻訳すると,

log(ζ(s))=(s/2)logπ-log(s-1)-log{Γ(s/2+1)}

+ΣReα>0log{1+(s-1/2)22}+log(ξ(0))

なる式が得られます。

 

次に任意の正の実数xより小さい素数の個数を,慣例によって,

π(x)で表わし,xの関数F(x)を,

xが素数でないならF(x)≡π(x),

xが素数ならF(x)≡limε→0[π(x+ε)+π(x-ε)]/2

=π(x-0)+1/2

によって定義します。

 

さらに,関数f(x)を

f(x)≡F(x)+F(x1/2)/2+F(x1/3)/3+...

=Σm=1[F(x1/m)/m]

で定義します。

 

log(ζ(s))=-Σplog(1-p-s)

=Σp-s+Σp-2s/2+Σp-3s/3+...

=Σm=1p-ms/m]であり,-ms=s∫pm-s-1dxなので

log(ζ(s))/s=∫1-s-1f(x)dx

が得られます。

 

そして,Fourierの反転公式によれば,

f(x)={1/(2πi)}∫a-i∞a+i∞ds[xslog(ζ(s))/s]

です。

 

ただし,右辺が収束しない場合を考慮して,1回引き算した形

にすると,f(x)=[{1/(2πi)}/logx]∫a-i∞a+i∞ds

[xsd{log(ζ(s))/s]/ds] となります。

 

これに,log(ζ(s))

=(s/2)logπ-log(s-1)-log{Γ(s/2+1)}

+ΣReα>0log{1+(s-1/2)22}+log(ξ(0))

を代入します。

 

例えば,

-log{Γ(s/2+1)}

=limm→∞Σn=1n-mlog{1+s/(2n)}-(s/2)logm}ですから,

d[log{Γ(s/2+1)}/s]/ds

=Σn=1(d[log{1+s/(2n)}/s]/ds)

です。

 

よって,log(ξ(0))を別にすれば,f(x)を示す右辺の積分の全て

の項が,

[{±1/(2πi)}/logx]

a-i∞a+i∞ds[xsd{log(1-s/β)/s}/ds]

という形をしています。

 

{log(1-s/β)/s]/dβ=1/{β(β-s)}ですから,

{1/(2πi)}∫a-i∞a+i∞ds[xsd{log(1-s/β)/s]/dβ]

なる積分を計算すると,

 

{1/(2πi)}∫a-i∞a+i∞ds[xs/{β(β-s)}]=xβ

です。

 

そして,これはResが Reβより大きいとき,Reβが負であるか?

正であるか?によって,

 

β/β=∫xβ-1dx=(d/dβ)∫x[xβ-1/logx]β-1dx,

または,

β/β=∫0xβ-1dx=(d/dβ)∫0x[xβ-1/logx]β-1dx

となります。

 

それ故,

[{1/(2πi)}/logx]∫a-i∞a+i∞ds[xsd{log(1-s/β)/s}/ds]

=∫x[xβ-1/logx]dx+(定数),または,

0x[xβ-1/logx]dx+(定数)です。

 

具体的には,

[{1/(2πi)}/logx]∫a-i∞a+i∞ds

(xsd[log{Γ(s/2+1)}/s]/ds)

=∫x[1/{x(x2-1)logx}]dx,

 

[{1/(2πi)}/logx]∫a-i∞a+i∞ds

[xsd{log(s-1)/s}/ds]=Li(x)

を得ます。

 

ただし,Li(x)は対数積分と呼ばれる関数で,

Li(x)≡∫0x(du/logu)

=limε→0[∫01-ε(du/logu)+∫1+εx(du/logu)]

で定義されます。

 

そして,f(x)

=[{1/(2πi)}/logx]∫a-i∞a+i∞ds[xsd{log(ζ(s))/s]/ds]

=Li(x)―Σα[Li(x1/2+αi)+Li(x1/2-αi)]

+∫x[1/{x(x2-1)logx}]dx-log2

となることがわかります。

 

これは,「Riemannの素数式」と呼ばれます。

 

一方,f(x)=Σm=1[F(x1/m)/m]の反転公式は,

F(x)=π(x)=Σm=1[μ(m)f(x1/m)/m]

で与えられます。

 

ここで,μ(m)は,数論でよく知られたMobius関数で,

μ(m)≡(-1)(mの素因数分解:m=p12...pk;k個の

素数p1,p2,...,pkが全て相異なる素数のとき),

μ(m)≡1(m=1のとき),μ(m)≡0 (それ以外のとき)で

定義されるものです。

 

結局,F(x)=π(x)=Σm=1[μ(m)f(x1/m)/m],

f(x)=Li(x)―Σα[Li(x1/2+αi)+Li(x1/2-αi)]

+∫x[1/{x(x2-1)logx}]dx-log2 なる式が,

素数定理の表現を与えることがわかりました。

 

素数定理:π(x)~ Li(x)はRiemann予想とは別に,

1896年にHadamardや,de la Vallee-Poussinによって

証明されましたが,

 

π(x)~ Σm=1[μ(m)Li(x1/m)/m]という近似式の方が

より優れていることが,かなり大きいxまで検証されています。

 

ここまでは,ζ(s)の自明でない零点が全て 0≦Res≦1 の領域

にあれば成立することであり,特にRiemann予想が成立することを

必要としません。

 

しかし,特に,

"ζ(s)の自明でない零点が全てRes=1/2の上にある。"

というRiemann予想が成立するなら,

 

素数定理"π(x) ~ Li(x)"はより精密に,Riemann予想と同値な

命題であることが,1901年にvon Kochによって証明されている定理

として,

 

"F(x)=π(x)=Li(x)+o(x1/2+ε) (εは任意の正の数)"

に置き換わることになります。

 

最後に挙げた命題が,Riemasnn予想と同値な命題であることの

理由については,まだ把握していませんが,もしも詳細が理解

できたなら,そのときにはまた紹介したいと思います。

 

参考文献:鹿野 腱 編著「リーマン予想」(日本評論社);

梅田 亨,黒川信重,若山正人,中島さち子 著

「ゼータの世界」(日本評論社),

 

荒川恒男,伊吹山知義,金子昌信 著

「ベルヌーイ数とゼータ関数」(牧野書店) ;

E.Artin著(上野建爾 訳・解説)

「ガンマ関数入門」(日本評論社)


 

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2019年1月15日 (火)

記事リバイバル⑨(素数定理とその周辺)

※リバイバル記事の第九弾は数論の素数定理関連からです。

まず,,2006年10/24の「素数を分母とする循環小数とその周辺」を再掲載※

 今日は素数を分母とする循環小数の周辺の話題について書いてみます。 

 10と互いに素な素数,2と5を除く素数pを分母とする分数 1/pを, 

 1/p = 0.1..am1..am12..am..なる循環小数で表わすと,

 

 (10m/p)-1/p=(1/p)(10m-1)=(10m-1)/p

 =10m-1110m-22+..m=(自然数) なる式が成立します。

 

 そこで,1/pの循環節の長さは(10m-1)をpで割ったときに割り切れるような自然数mの最小値であるということができます。

 例えば,分数1/7(素数pが7の1/p)を考えたときには,106-1

=999999を7で割ると割り切れて商は142857です。

 

 一方,1/7を小数で表現すると,1/7=0.142857142857142857.

となりますから,循環節の長さは確かに6=p-1です。
 

 「フェルマーの小定理」から,素数pに対しては10p-1≡1(mod p) 

が成立するので,(10m-1)をpで割ったときに割り切れる 

最小の自然数mは必ず(p-1)の約数です。
 

 というわけで循環節の長さが最大となるのはm=p-1のときです。

 

※ 2006年9/12の記事

オイラーの定理とフェルマーの小定理(合同式)」,

続く9/13の記事「フェルマーの小定理の別証明

も参照してください。 ※

 では,mが丁度,最大値(p-1)になるのはどういう場合でしょうか?

 

 それは,k=1,2,..,(p-2)に対しては決して10k≡1(mod p)

とならないときですから,pが10を原始根とする場合です。

 

 体:(Z/pZ)からゼロと合同な元を除いた既約剰余類のつくる

巡回群=(Z/pZ)×を剰余類rの巡回群として

<r>={1,r,r2,r3,..,rp-2}={1,2,..,p-1}と書くことが

できるとき,rとして取り得る値。。というのがpの原始根の定義

です。 

 そして,pが10を原始根とする場合に限って,1/pの循環節

の長さが最大の(p-1)になります。

 例えば,p=7のとき10,102,103,104,105,106は7を法として,

それぞれ3,2,6,4,5,1となりますから,この場合は10は原始根で

あり確かにp-1=6が循環節の長さです。

 Gauss(ガウス)によれば,10を原始根とする100までの素数は.7,17,19,23,29,47,59,61,97の9個だそうですから,例えば

1/47は循環小数で小数点以下46桁までを繰り返すということ

になりますね。

 実数x以下の自然数で10を原始根とする素数pの個数を

π10(x)とし,x以下の素数全体の個数をπ(x)とします。

 

 それらのx→ ∞での比をCとすると,

10(x)/π(x)] → Cですが,E.Artin(アルチン)によると,

C=Π[1-1/p(p-1)]~ 0.37395 だそうです。

 Artinのこの予想が正しいとすると,素数定理;

 π(x)~ (x/logx)(x→ ∞)を用いることで,

 π10(x)~ C(x/logx) と書けることになります。

 ところで,Eulerによるゼータ関数:ζ(s)の素数pによる

 無限積表示:ζ(s)=Π(1-1/ps)-1で,s=1とおけば,

 Π(1-1/p)-1=∑(1/n) です。

 

 そして,∑1n[1/(k+1)]<∫1n(1/x)dx<∑1n(1/k)より,

 0<[∑1n(1/k)-logn]<1 です。

 

 これから,n→∞に対して1n(1/k)-logn→γ (0<γ<1)です。

 

 そこで,x→∞に対して∑1x(1/n)~ logx が成立します。

 ただし,γはオイラー数(Euler number)です。

 

 したがって,Eulerの無限積表示:Π(1-1/p)-1=∑(1/n)は,

 [-∑log(1-1/p)]~ log(logx) なることを意味します。

 

 ところが,log(1-x)~ -xですから,これは

 ∑(1/p)~ log(logx)であることを示唆していて,素数定理

 への入り口を与えるものでしょう。

 素数定理π(x)~ (x/logx)の証明には,実は,

 

"ζ(s) の自明でない零点は全てRe(s)=1/2 の上にある。"

というリーマン予想(Riemann's hypothesis)までは必要なく,

 

 "ζ(s)が Re(s)≧1では零にならない。"という性質だけで

十分です。

 

 これを用いてHadamard(アダマール)らによって,素数定理は既に

証明されています。

 しかし,リ-マンはリーマン予想を解決することで,もっと

 複雑な素数公式を得ることを目指していたらしいですね。

 

 参考文献;黒川信重 他 著「ゼータの世界」(日本評論社)

※この続きで2006年10/25の「素数定理への入り口」も再掲します。※

"実数x以下の素数全体の個数をπ(x)とすると,x→ ∞では

π(x)~(x/logx)となる。"という素数定理に関する部分は

時間がなくて尻切れトンボになってしまいました。

Eulerによるゼータ関数ζ(s)の素数pによる無限積表示:

ζ(s)=Π(1-1/ps)-1でs=1とおけば,Π(1-1/p)-1=∑(1/n)

と書けます。 

 

[∑1n(1/n)-logn]→γ (n→ ∞)

(ただしγはEuler数で 0<γ<1)ですから,

1x(1/n)~logx (x→ ∞)です。 

 

したがって,[-∑log(1-1/p)]~ log(logx)です。 

 

ところが,log(1-x)~ -xですから,上式は

(1/p)~log(logx)なることを示唆しており,これは

素数定理への入り口を与えるものでしょう。 

 

ここでの∑はp≦xのあらゆる素数にわたる総和です。

と書きましたが,どうしてこれが素数定理への入り口に

なるのか?

 

の明確な意味を述べていませんでした。

※昨晩から今朝までの夜勤の合間の休憩時間にちょっと計算し,

これは次のような意味であろうと自ら推測しました。※

 p~x付近でのπ(x)の変化をΔπとすると,その付近での

∑(1/p)の変化はΔ[∑(1/p)]~(1/x)Δπと近似できるため,

 ∑(1/p)~log(logx)から,(1/x)Δπ~Δlog(logx)

 =[Δlogx]/logx=Δx/(xlogx)です。

 

 すなわちΔπ~Δx/logxと考えられます。
 したがってπ(x)~∫dx(1/logx)であると予想されるわけです。

 素数定理としては,このままの式でもいいのでしょうが,xが

大きいときは分母のlogxは大体xの桁数を表わすだけなので,

これはxに対してほとんど変動がないのと同じです。 

 

 結局,π(x)~(x/logx)であるとしても,同じ意味

 と思われます。

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2019年1月14日 (月)

記事リバイバル⑧-2(原子核のα崩壊の理論[Ⅱ])

※続きの再掲載リバイバル記事です。やはり,HTMLではなくテキストを編集し直すと文字サイズなどが化けてしまいがちです。。

以前,ときどき,「お前の記事は参考文献と書いてるけど実は,その参考書の丸写しに過ぎないじゃないか。。」との批判めいたコメントがありましたが,その本を読み丸写しだとわかる程度の方であれば別に私の記事を読む必要はないでしょう。

私の勉強法は坊主の写経のごとくノートに書き写しながら(外国語なら翻訳して),躓いて理解できないときは自分なりに行間を埋めてゆくというモノで,その履歴ノートを「自己満足的に」ブログ=日記としてまとめたツモリの備忘録であり。。。他者を啓蒙してあげようとかの教師的な意図は無いですから。。

元本を自力でスラスラ読める方なら私の拙い記事を参照して頂く必要は無いでしょうね。

自然科学の解説文というのは,オリジナルな発明や発見で無い限り,所詮はパクリにすぎないですから。。。※

さて前記事の続きです。 

 動径波動関数:u(r)(特にuf(r))を具体的に求めるために1次元のSchroedinger方程式に対してWKB近似(準古典近似)を行ないます。

 まず,波動方程式:[-c2/(2m)](d2u/dr2)+[V(r)-E]= 0 において,V(r)=Eを満たすrをrと名付けます。

 

 こうすれば,V(r)は減少関数ですから,r<rではV(r)>E,r>rではV(r)<Eです。

 そこで,r<rの部分を領域Ⅰとして,

 κ(r)≡(1/c)[2m{V(r)-E}]1/2と定義すると,

 

 これはこの領域Ⅰでは常に正の実数で,

 波動方程式は,d2/dr2-κ(r)2=0 です。

 

 同様にr>rの部分を領域Ⅱとして,

 k(r)=(1/c)[2m{E-V(r)}]1/2と定義すると,

 

 これはこの領域Ⅱでは常に正の実数で,

 波動方程式は,d2u/dr2+k(r)2=0 です。

 

 さて,まず領域Ⅱ:謂ゆる振動的領域においてWKB近似を実行します。

 

 平面波の拡張として,u(r)≡eiS(r)とおくことでS(r)を定義すると

 波動方程式d2/dr2-κ(r)2=0 は,

 (dS/dr)2+id2S/dr2=-k(r)2となります。

 

 これを積分すると,形式的に

 S(r)=±∫[k(r')2+id2S/dr'2]1/2dr'を得ます。

 

 ここで,第1近似としてこの式の右辺の被積分関数で項d2S/dr2を無視すると,S(r)~S1(r)=±∫k(r')dr'となります。

 

 さらに,d21/dr2=±dk/drですから,第2近似として

 S(r)~S2(r)=±∫[k(r')2±idk(r')/dr']1/2dr'

 (複号同順)を得ます。

 

 この第2近似のS2(r)をS(r)と同一視する近似を採用します。

 これをWKB近似といいます。

 この近似が正当化されるためには,S2(r)~S1(r)が成立することが必要かつ十分な条件です。

 

 そのためには,|dk/dr|<<k(r)2であることが必要です。

 

 u(r)≡eiS(r)を1次元の波と考えると,λ(r)=2π/k(r)は局所的な波長を意味しますから,この条件は|dλ/dr|<<1です。

 

 あるいは,V(r)が有意な変化をする距離をdとすると,λ(x)<<dという条件に相当します。

 

 いずれにしろ,|dk/dr|<<k(r)2が散乱現象を"準古典近似=WKB近似で表現してもよい"ための条件になります。

 |dk/dr|<<k2の条件下では,さらに

 [k2±idk/dr]1/2~k[1±i(dk/dr)/(2k2)]と近似できるので,

 S2(r)~±∫k(r')dr'+(i/2)ln[k(r)] となります。

 

 以上から,振動的な領域ⅡでのWKB近似解は,

 u(r)=eiS(r)=[k(r)]-1/2exp[±i∫k(r')dr']

 となります。

 

 ここで積分の下限をrに固定します。

 

 方程式が線形なので一般解は線形結合で表わすことができて,

 u(r)=A[k(r)]-1/2cos [ξ2(r)+φ]

と書くことができます。

 

 ξ2(r)は,ξ2(r)≡∫rErk(r')dr'で定義されています。

 次に指数的な領域Ⅰについて,やはりu(r)≡eiS(r)とおくことにより

 S(r)を定義すると,

 

 ほとんど同様な方法によって,

 u(r)=eiS(r)=[κ(r)]-1/2exp[±∫κ(r')dr']

 を得ることができます。

 

 そこで要求される条件として第Ⅰ領域でrの減少する向きに減衰する解を取ると,(r)=A[κ(r)]-1/2exp[-ξ1(r)]となります。

 

 ξ1(r)はξ1(r)≡∫rrEκ(r')dr'で定義されています。

 

 そして,この近似が成立する条件も|dκ/dr|<<κ(r)2です。

 あとはu(r)とu(r)がr=rで滑らかに連結するように全ての不定定数を決めればいいわけです。

 

 ところが,r=rではκ=k=0 なので,そもそもWKB近似が成立する条件は完全に崩れてしまうため,この近似では単に接続させるだけではまずいわけです。

 

 そこでこの折り返し部分で狭い領域Ⅲを考え,その領域では近似的にV(r)を負の傾きを持ちr=rでEを通る直線で近似します。

 

 つまり,V(r)~E[1-a(r-r)] (a>0 )ですね。

 これを解くにはベキ級数解を仮定して係数を比較する手法を用いる必要があるわけで,結局このV(r)に対する動径波動関数u(r)として,厳密には特殊関数の1つであるある種のBessel関数が得られることになります。

 

 これを示すためには長たらしい計算の連鎖が必要なのですが,ここでは省略します。

 

 これは,先に直線近似を仮定しましたが,近似は別に直線でなければならないという明確な理由はなく他の近似をしてもかまわない,という意味で,"本質的でない特別な近似手法に関して真面目に論じる必要はないだろう。"と考えたのがその理由です。

 

 WKB近似の本質は既に述べたと考えられるので,計算結果だけ書くと,

 

 規格化の曖昧さがあるので,AとAはその比だけが決まって

 A2A,また位相の方はφ=-π/4 と決定されます。

 結果をまとめると,u(r)=A[κ(r)]-1/2exp[-∫rrEκ(r')dr'] (r<r),u(r)=2A[k(r)]-1/2cos[∫rErκk(r')dr'-π/4] (r>r)です。

 最後に,規格化条件|uf|2dr=ρf(E)から,uf(r)=u(r)として定数Aを定めることにします。

 

 娘核の重心を中心として十分大きい半径Rを持つ球をとり,その球面上ではf(R)=u(R)= 0 になると仮定します。

 

 r≦RではV2(r) ~ 0 なので,k(r) ~ (2mE/c)1/2=k(一定),f(r) ~ 2Ak1/2cos[k(r-r)-π/4]となります。

 束縛されていないα粒子のエネルギーEはE=c22/(2m)ですから,

 状態密度はρ(E)=dn/dE=(dn/dk)(dk/dE)dE

 =[m/(c2)](dn/dk)です。

 

 2Ak1/2cos(kR+δ)=0 (ただしδ=-kr-π/4 )より,

 kR+δ=(n+1/2)π(nは整数)となるはずですから,

 dn/dk=R/πが得られ,ρ(E)=(mR)/(πc2)

 となります。

 そこで,rER∞κ|uf|2dr=ρf(E)で,

 uf(r)=2Ak1/2cos(kr+δ),ρf(E)=(mR)/(πc2)

 を代入することから,結局,A=[m/(2πc2)]1/2が得られます。

 一方,i(r)の方はV1(r)=-V0(r<R),V1(r)=V(r≧R)から

 直接に解いて,i(r)=Bsin(k0r) (r<R),

 i(r)=Cexp[-κ0(r-R)](r≧R)

 で与えられます。

 

 ここで,k0=(1/c)[2m(E+V0)]1/2,および,

 κ0=(1/c)[2m(V-E)]1/2です。

 定数B,Cについては,r=Rで滑らかに連結する条件と規格化条件から定まりますが,ここではそれを決めることは省略します。

 r=R 付近での動径波動関数として終状態:f(r)

 =[m/(2πc2)]1/2[κ(r)]-1/2exp[-∫rrEκκ(r')dr'](r<r),

 

 始状態:i(r)

 =C exp[-κ0(r-R)](r≧R) の両方が得られました。

 

 これらを実際に,

w=[(2π/hc){hc2/(2m)}2|(duf*/dr)ui-uf*(dui/dr)|2]r=Rに代入してα崩壊の崩壊確率wを計算します。

 

 ここで,duf*/drの計算に際して[κ(r)]-1/2のrによる変動は指数関数の変動に比べごく小さいので,それを無視し,

 

κ(r)としてκ(R)=κ0=(1/c)[2m(V-E)]1/2(一定)を用いることにします。

 このとき,w=C2cκ0,P=exp[-2∫κ(r')dr']=exp[-(2/c)∫RrEκ{2m(2Ze2/r'-E)}1/2dr']となります。

 

 右辺の積分は初等的に実行可能で,

 (2/c)∫RrE{2m(2Ze2/r'-E)}1/2dr'=

[(32mZ24)/(h2E)]1/2{cos-1(R/r)-(R/r)-(R/r)2}1/2}]

となります。

 

 r>>Rなので,右辺の{cos-1(R/r)-(R/r)-(R/r)2}1/2を[π/2-(R/r)1/2]で近似します。

2Ze2/r=Eより,r=2Ze2/Eですから,結局,

P=exp[-{2πe2(2m)1/2/c}(Z/√E)+(4e√m/hc)(ZR)1/2]

となります。

 

半減期と崩壊確率の関係は,

1/2=ln2/w=ln2/(C2cκ0P)ですから,

logT1/2=-logP+const となります。

 

これから,logT1/2a[Z/(√E)]+bと書けることがわかります。

 

この式のパラメータは,a=[2πe2(2m)1/2/c](loge)>0 etc.と陽に表わすこともできますから,結局「Geiger-Nuttallの法則」が理論的に示されたことになります。

 

参考文献;八木浩輔著「原子核と放射」(朝倉現代物理学講座)

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記事リバイバル⑧の1(原子核のα崩壊の理論[Ⅰ])

※前回の記事リバイバル⑦とと前後しますが,「原子核のα崩壊」を量子論の「トンネル効果」と見なしてWKB近似を用いて解いたG.Gamow(ガモフ)の仕事を紹介した2006年の10/4と,10/5の過去記事を再掲載しておきます。※ 

原子番号が (Z+2)の放射性核のα崩壊による半減期を T1/2とし,その崩壊で放出されるα粒子のエネルギーをEとすると,これは 

 logT1/2=a[Z/(√E)]+b  

 という関係式でうまく表現されることが知られています。 

    

(※α粒子はヘリウムの原子核:24Heなのでα崩壊により原子番号(Z+2)の放射性核になります。)

これはガイガーヌッタル(Geiger-Nittal)の法則と呼ばれています。

(なお,ここでのlogは常用対数であり自然対数lnではありません。) 

 このGeiger-Nuttallの法則を説明した有名なジョージ・ガモフ 

(George Gamow)のα崩壊の理論は,量子力学に特有のトンネル効果 

という現象を応用した理論です。
 

 これは,定常的な理論で説明されることも多いようですが, 

ここでは量子遷移を中心とした非定常的な理論とWKB近似に 

よって理論を展開したいと考えます。
 

(※注:WKB近似とは,Wentzel,Kramers,Brillouinによる近似法で 

別名:準古典近似とも呼ばれています。※)
 

 まず,hをPlank定数とし,hc(h/2π)とします。
 

 α崩壊は初期状態:|i>=ψiから終状態:|f>=ψfへの量子遷移であると考えて,崩壊過程に時間を含む摂動論を適用することにします。
 

 摂動論によれば,摂動HamiltonianをH'とするとき, 

 最低次の遷移確率wは,黄金律(Golden rule)として有名な式: 

 w=(2π/c)|<f|H'|i>|2ρf(E)で与えられます。
 

 ここで,<f|H'|i>は<f|H'|i>≡∫ψf*H'ψi3xなる 

H'の行列要素で,ρf(E)は終状態fのエネルギー状態密度です。

 以下,簡単のため,α粒子の軌道角運動量がゼロのS波のみを 

考えることにします。
 

 すると定常状態の波動関数は動径rだけの関数になるので, 

 ψ()=[1/(4π)]1/2u(r)/rと置くと規格化は, 

 1=∫|ψ|24πr2dr=∫|u|2drと書けます。

 

 

 

 そしてH'もrだけの関数であるとすると, 

 <f|H'|i>=∫ψf*H'ψi3x=∫uf*H'uidr 

 と書けます。
 

 さらにuiはそのままでufのみ, 

 ψf()(ρf(E))1/2=[1/(4π)]1/2f(r)/rのように, 

 ∫|uf|2dr=ρf(E)と規格化しておけば, 

 黄金律はw=(2π/c)|∫uf*H'uidr|2と簡単になります。
 

 原子核の半径(有効レンジ)をRとし,核力とクーロン斥力の合成されたポテンシャルV(r)を,V(r)=V1(r)=-V0(r≦R);(V0>0), 

 V(r)=V2(r)=2Ze2/r(r≧R)とモデル化します。 

 (MKS単位では係数4πε0が面倒なので,c.g.s.単位を取ります。)

"α粒子=ヘリウム原子核"の質量をmとすると,Schroedinger方程式は, 

 rの1次元方程式となって, 

 [-c2/(2m)](d2u/dr2)+(V(r)-E)=0 です。
 

 これは,u=ui,V(r)=V1(r),E=Eiと置けば, 

 r≦Rにおける束縛状態ui(r)の満たす方程式になり, 

 u=uf,V(r)=V2(r),E=Efと置けば, 

 r≧Rにおける散乱状態uf(r)の満たす方程式となります。
 

 そして,核力で束縛されている入射α粒子のクーロン障壁によって受ける摂動H'は明らかにH'(r)=V(r)-V1(r)と書けます。
 

 これはr≦Rではゼロであり,r≧Rでは(V2(r)-V1(r)) 

ですから,第1近似の崩壊確率は 

w=(2π/c)|∫Rf*(V2-V1)uidr|2  

 となります。
 

 この崩壊確率wを求める式の積分で,VはSchroedinger方程式 

から,a(r)ua=Eaa+[c2/(2m)](d2a/dr2) 

(a=i,f or 1,2 )となるので,これを代入します。
 

 Ef=Eiであることに注意し,積分を行う際にuのrによる2階導関数を部分積分によって消去して,r=∞ではuもdu/drも消えることを用いると次の表式が得られます。
 

 すなわち,崩壊確率w=(2π/c)|∫Rf*(V2-V1)uidr|2は, 

w=[(2π/c){c2/(2m)}2|(duf*/dr)ui-uf*(dui/dr)|2]r=Rと表現されます。
 

 このことから,ui(r)とuf(r)の動径rが核半径R付近にある,

つまりr~Rのときのそれらの関数形を求めることが非常に重要になります。 (つづく)

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市原悦子さんも天に召される

女優の市原悦子さんが亡くなられました。享年82歳でした。

昨年の菅井きんさん。樹木希林さんに続いて,昔の名優といえばお決まりだった美男美女の主役級ではない。。昭和の女優さんが相次いでこの世を去っていかれました。とても口悔しいことです。

最近は「世界の旅」で懐かしい兼高かおるさんも90歳で亡くなられましたね。

長門,津川兄弟とその奥様など昭和30年代のテレビ創世期から親しんでいた方々が次々と亡くなられてさびしいですが仕方ないですね。

私自身は数え年で今年がまだ古希の若造ですが医者に余命1年とか2年とか言われていたり,世間では,終活などという言葉もありますが。。かの吉田沙織里さんの言のようには,まだ,「この世でやりつくした。」ということも無く,まだまだ煩悩もあり生に未練があります。

 未だ死ぬのは怖くて,遠からず必ずやってくるだろう「無神論者の何も無い無機物に化してしまうこと。=死」と向き合う覚悟はできていません。

 覚悟する間も無く死は突然やってくるんだろうなあ。

 認知症という実質的な死が先に来るかもしれませんが。。

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2019年1月12日 (土)

記事リバイバル⑦(WKB近似・Hamilton-Jacobi・経路積分)

※このブログの過去記事の中から私自身がこれは興味深い 

思ったモノを再掲載しているシリーズの第7弾です。
 

今回は2006年10/8の記事: 

「WKB近似・ハミルトン-ヤコービ方程式・経路積分」 

から全文丸々コピーです。

10年以上も前の記事だからといっても,別にモウロクしたわけでもなく,

むしろ老人性のサバン症候群ではないか?と思うくらい頭だけは若い

ようです。ただし気持ちと裏腹に視力や体が思うように働いてくれない

のがナサケナイですね。調子イイ日と悪い日があります。

昨年5月から8月そして11月14日から1ヶ月の入院中は,思い付きで

アマゾンで購入したハーモニカを吹いてヒマツブシしてました。

幼稚園か小学校のころに吹いてたダケですが。。なぜかメロディー

を吹くのは音符など参照しなくても自由にできるようで童謡はモチロン

「涙そうそう」や「合衆国国歌」など。。私,音感あるのかな?

楽器演奏は認知症の予防にもイイらしいです。

 クラシックも「小夜曲」や「主よj人の望みの喜びよ」くらいは楽に吹け

ましたが,速い曲は練習しても少しムズカシイですね。


 昨日アップした過去記事を読みやすいように再編集しているうち

文字化けがひどくなったので削除して結局編集なしで丸写し。。

以下が過去記事再掲載です。

 
今日は量子論におけるWKB近似が,なぜ準古典近似と呼ばれるのか,を解析力学のハミルトン・ヤコービ(Hamilton-Jacobi)の方程式と関連付けて説明し,さらに経路積分との関連についても手短かに述べてみたいと思います。

 まず,古典力学の力学系での一般化座標をqr(r=1,2...n)とし,系を記述するLagrangian(ラグランジアン)をL(,d,t)とします。

 

 ここで,はqr全体を総称しddotの時間による微分:

rd≡(dqr/dt)の全体を意味します。

 さらに,pr≡(∂L/∂qrd)を一般化運動量と定義します。

 

 このr=(∂L/∂qrd)を解いてrdrとprの関数で表わしたものを,式:Hrrd-Lの右辺のqrd に代入したものを系のHamiltonian:H(,,t)と定義します。

 

 このとき,元々のNewtonの運動方程式は,これをD'Alembertの原理(D'Alembert)で加工して一般化し,一般化座標の方程式に変換したn個のEuler-Lasgrange方程式:[d(∂L/∂qrd)/dt]-∂L/∂qr0 に取って代わられます。

 

 さらに,rd≡(dqr/dt)=(∂H/∂pr),prd≡(dpr/dt)=-(∂H/∂qr)なる形の2n個の1階微分方程式=Hamiltonの正準方程式に変換されます。

 ほとんどのH(,,t)では,一般化座標の変数pr,qrを計算に都合がいいような新変数Pr,Qrに変換して,新しいハミルトニアンとしてK(,,t)を作り,Hamiltonの正準方程式が形としてそのまま保存されるようにできます。

 

 つまり,rd=(∂H/∂pr),prd-(∂H/∂qr)がrd≡(dQr/dt)=(∂K/∂Pr),Prd≡(dPr/dt)=-(∂K/∂Qr)と同値になるようにできます。こうした変換を正準変換と呼びます。

 このとき,新変数による新しいLagrangianをL'=∑Prrd-Kと書けば,元のLagrangian:L=rrd-Hとの間に,ある関数Wが存在して

L=L'+(dW/dt)なる等式が成り立つはずです。

 

 これは,変換の下で理論が不変に保たれるための必要十分条件です。

 

この結果,rrd-H=∑Prrd-K+(dW/dt)と書けます。

 

 関数W は,tの他には,,,の4n個の変数の関数ですが,このうちで独立な変数は2n個だけですから,例えばW=W(,,t)と独立変数を選んでみます。

 

 このときは,dW=∑prdqr∑QrdPr(K-H)dtなる式によってpr=∂W/∂qr,Qr=∂W/∂Pr,K=H+∂W/∂tとなります。

 次に,特に変換によって特異になる危険性を犠牲にしてもHamiltonian:Kが恒等的にゼロになる,つまりK≡0 となる特別な正準変換があったら,と想定してみます。

 

 このときには,Hamiltonの正準方程式は,Prd≡(dPr/dt)=0 ,rd≡(dQr/dt)=0 となり,座標点は全て時間的に静止していてPr=αr(定数),r=βr(定数)とすることができて最高に好都合です。

 

 そして,このとき元の正準変換に戻ってみると,

(,,t)=(β,α,t),(,,t)=(β,α,t)

となり,n個の積分定数または初期条件を含む解が求まるわけです。

 

 つまり"一般化座標の時間的変化=軌道"は全て決まる,あるいは問題は完全に解ける,ことになります。

 そして,W=W(,,t)=W(,α,t),pr=∂W/∂qrr=∂W/∂αrと書くこともできます。

 

 そこで,逆にこうした都合のいい関数Wを求めるための方程式は,

 H+∂W/∂t=K=0 ,つまり,H[,∂W(,t)/∂q,t]+∂W(,t)/∂t=0 で与えられると考えます。

 

 そして,微分方程式:H+∂W/∂t=0 を解くことによって,積分定数αを含むW(,α,t)が得られると考えることもできるわけです。

 

 この方程式:H+∂W/∂t=0 をHamilton-Jacobiの偏微分方程式と呼びます。

 特にHamiltonian:Hが時間tを陽には含まないときは,Hは固定した,に対しては時間的に一定となるので,H(,)=E (定数)と書くことができます。

 

 Hがtを陽に含まない場合には,Noether(ネーター)の定理により,右辺の定数Eがいわゆるエネルギーであり,時間的に変化しない保存量であることはよく知られた事実です。

 

 このとき,H(,)=Eにより,Hamilton-Jacobiの偏微分方程式:H+∂W/∂t= 0 はW(,α,t)/∂t=-E (一定)となりますから,

 W(,α,t)=S(,α)-Etと書いてよいことになります。

 

 pr=∂W/∂qr=∂S/∂qrなので,結局(,∂S/∂)=E (ただし=∂S/∂)と表現できて,方程式は少し簡単になります。 

こうしてHがtを陽に含まない場合,波動光学からのアナロジーでWが一定の面を,ある力学的波動の位相(phase)が一定の面を表わすものであると考えてみます。

 

W=(S-Et)という量から,"Sと同じ単位=(エネルギー×時間)"を持つある比例定数:hcを用いて,単位のない変数(W/hc)={(S/c)-(E/hc)}を作ります。

 

これを位相として,ω=E/hcを角振動数(ω=2πν)とするような波動を考えることにし,その波動を表わす量をψと定義します。

 

すなわち,ψ=Aexp(iW/c)=Aexp[i{(S/c)-ω}t]とします。

ただし,ω≡E/hcです。つまり,E=hcω=hνです。

 

特に1変数のみの系では,=∂S/∂=∇Sから,

ψ=(∇S)ψ=(-ic∇ψ)となるので,記号的には

~(-ic)と見なすことができます。 

cをPlanck定数=(h/2π)と同一視すれば,ψは量子力学の波動関数に対応し,Hamilton-Jacobiの偏微分方程式は正にSchödinger(シュレーディンガー)方程式になります。

 

古典力学と量子力学との間には大きな谷間(gap)があり,それぞれが独立な"法則=公理"を持つ独立な理論なので,古典力学から何の飛躍もなく量子力学を導くことは不可能です。

 

しかし,20世紀初頭の前期量子論の段階では上記のような推論がなされていたと思われます。 

WKB近似という量子力学の問題を解く1つの近似法:つまり,"時間を含まない定常波動関数u(x)をexp[iS(x)]なる形式で表現して近似するという方法"が準古典近似(semi-classicl approximation)という名称で呼ばれているのはこうした理由からでしょう。

ところで,上述のS(,α)をLagrangian:Lで表わすと,

S=∫L(,d,t)dtと書けます。

 

これは,謂ゆる作用(action:作用積分)と呼ばれる量です。

 

つまり,Sは"系の運動はの変分δに対する作用Sの変分がゼロ:

δS=0 となる,またはSが停留値を取る,という条件で与えられる"という1つの基本的な"変分原理=最小作用の原理"の源となる作用関数になっています。

そこで,量子力学でFeynmanの経路積分を用いた理論展開で,時間発展の確率振幅が作用:Sによって,<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|i>=A∫exp[(i/c)S((t))]と表現されることが思い出されます。

 

私見では,これはがあらゆる分岐した経路にわたる積分であるという意味で,多世界解釈にもつながると考えているのですが,それはさておき,経路積分の意味を説明します。

 

 

この経路積分の公式は,作用SをS((t)) ~ Δt∑jNL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]と分割し,中間状態の射影演算子|(tj)><(tj)|を考えたとき,中間状態の完全性を利用すれば得られます。

 

中間状態の完全性とは,あらゆる座標の全空間での"総和=積分"が1になること,∫d|><|=1であることです。

 

よって,遷移確率振幅<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|iを時間分割してj+1|exp{-(i/c)HΔt}|j>と細分化した際,各細分時刻tjにおいて,∫d(tj)|(tj)><(tj)|(=1)を挿入しても結果は変わりません。

 

そして,各々の細分では<j+1|exp{-(i/c)HΔt}|j=<j+1|exp{-(i/c)(tj){(tj+1)-(tj)}+(i/c)ΔtL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]|j>と表現できます。

 

ここで,j(tj),Δt≡(tf-ti)/Nであり,ti≡t0<t1<t2<...<j<tj+1<...<t≡tf です。

 

結局,遷移確率振幅は<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|i>=ΠjNj+1|exp{(i/c)ΔtL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]|j>となります。

 

この式の右辺でN → ∞とした極限が経路積分です。

そして,この経路積分の計算結果においては,被積分関数の指数関数の中で最小作用の原理を満たすδS=0 の部分の寄与が最大になります。

 

つまり,古典的な軌道に相当する経路が"遷移確率振幅=伝播関数(propagator)"に大部分の寄与をすることがわかっています。

 

これは,古典論と量子論の隙間(gap)を埋める話として一つの注目に値する論点であると考えられます。

 

参考文献:大貫義郎著「解析力学」(岩波書店) 並木美喜雄著「解析力学」(丸善) 深谷賢治著「解析力学と微分形式」(岩波書店)

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2019年1月 5日 (土)

記事リバイナル⑥「ブラウン運動とフラクタル次元」

※今年もまだ本調子じゃないので過去記事のおさらいからです。2006年5/26の過去記事「ブラウン運動とフラクタル次元」の再掲載です。※

 今日はブラウン運動と確率微分などについて少しの知見を書いてみようと思います。

 そもそもこういう話を最初に紹介してくれたのは,今は無きおy茶の水の現役高校生の予備校「明聖アカデミー」で知りあったS田先生です。彼はもともと宇宙航空関係の仕事をしていたらしいのですが,本当の専門はやはり私と同じく素粒子論だということでした。

 ただし,私より様々な自然科学分野の興味が広いらしいので教えてもらったことも多いですね。

 ただ,自然科学以外に興味を持たないのが彼の若干の欠点かもしれません。それでよく子供ができたものだと思います。(大きなお世話か?)

 彼の紹介してくれた話は,自然科学におけるブラウン運動は確率過程の一種であり,マルチンゲールと関わる株価変動の過程と非常に類似しているという内容のことです。

 確率微分方程式つまり,通常の微分ではなくて確定値をもたない確率変数による微分で積分を定義する伊藤積分を使用することにより,例えば確率分布を対数正規分布と仮定して株価を予測するブラック・ショールズ方程式(Black-Scholes)などを構成できるというものです。

 マルチンゲール(Martingale)というのは現在の時点で将来の期待値を予測計算すると,それは現在の値に等しいという性質のことで,何のことはない,将来を予測しても平均すると今と同じにしかならないということです。

 (ゼロ・サム(zero-sum)という意味でしょう。)

 マルチンゲールは,上に述べたように株価変動のような確率過程(stochastic process)は時間が経過していっても,結局,基本的には何も儲かることはない,というのが原点の話のようです。

 何か,株価を左右する作用因となるモデルを挿入しない限り,株価を予想することはできない,ということになる当たり前の話です。

 ブラック・ショールズのモデル式も理論的には「ノーベル経済学賞」をもらったほどの優秀な理論ですが,実用的意味で株価予測モデルとして使えるかどうかは,疑問です。

 実は,私も以前,保江邦夫氏の書いたブルーバックスを参照して,ブラック・ショールズモデルによる株価予測プログラムをエクセル(MS-Excel)で作ったことがあります。

 しかし,そのときの作用因は「月齢」というまったく非科学的で根拠のないものです。まあ,お遊びですから,月の満ち欠け次第で,株価が上がったり下がったりするというようなプログラムを作ってみただけです。

 一方,ブラウン運動の経路というのは,いたるところ微分不可能であるようなジグザグ曲線で,有限な領域を運動しているにも関わらず,その経路の長さは無限大になります。

 しかし,実は当然のことでブラウン運動の経路は曲線であるにも関わらず,ハウスドルフ次元(Hausdorff dimension)が1次元ではなくて2次元なのです。

 つまり,ブラウン運動の描くのは,見た目では曲線であるものの,ある意味で面を塗り潰しているようなものです。

 それは面積としてはいくら小さくても,その面積を全部,線の長さに変えてしまうと,長さとしては無限大になるというわけです。

 有名なところでは,ペアノ曲線(Peano Curve)というのがあります。これは平面や立体などを全部,曲線で覆うことができるというもので,ペアノの発見した驚くべき話です。

 一般に,トポロジー(topology:位相幾何学)の見方では,次元というのは写像に関しての不変量です。つまり,「集合をある連続写像で別の集合に写したときには,元の集合と写された集合の次元は全く同じでなければならない,のが当然である。」というわけです。

 したがって,トポロジー的(位相的)には「1次元の写像である曲線で2次元の面を覆う。」などというのは,"トンデモない話"であるわけです。

 このトポロジーでの,われわれが通常用いている空間3次元,平面2次元などの次元のことは位相次元といいます。

 では,なぜペアノ曲線などが有り得るのか?というと,それは次のような理由になります。

 トポロジーによると,2つの集合AとBの間に「連続写像で,かつその逆写像も存在して連続である。」という同相写像の存在条件が満たされていることがAとBが同相(homeomorhic:位相同型)であるための必要十分条件です。

 そして,先の命題は,「同相な多様体(空間,集合)では,その次元も同じである。」ということを述べているに過ぎないわけです。

 したがって,花粉の運動から発見されたブラウン運動などは連続な曲線を描くのですが,いたるところ微分不可能な曲線である。ということは,「逆写像が存在して連続である。」というわけではないということになります。

 このブラウン運動の描く軌道曲線の写像は,当然ながら,トポロジーの意味で同相写像ではないということですね。

 ブラウン運動の曲線長さは有界変動ではないので,これを積分の測度として解析学などで普通に積分として使用されているルベーグ-スティルチェス積分(Lebesgue-Stieltjes integral)の線積分を定義しようとしても定義できません。

 そこで,有界変動でないものについても積分を定義できる方法を第2次大戦中だったか,その直後だったかに考え出したのが,日本の伊藤清氏です。

 彼の考案した確率積分を伊藤積分と呼びます。これはマルチンゲールの性質を満たしています。

 こうした特殊な積分では,積分和を作るのに微小積分区間の先頭の値を取るか,中央の値を取るか,後ろの値を取るか,によって極限値としての積分が異なるのですが,伊藤積分は先頭値を取ることによりマルチンゲールが成立するようになっています。

 中央値を取る積分はストラトノヴィッチ積分(Stratonovich integral)と呼ばれます。例えば量子力学での経路積分(path-integral)は,通常は中央値を用いて定義されるので,ストラトノヴィッチ積分に相当するものです。

  最近フラクタル(fractale)という話もよく聞きますが,フラクタル次元というのはハウスドルフ次元と同じような意味で使います。

 例えば,日本の国のある島の面積の値なら確かに測定することにより決めることができますが,その島の周りの長さというものは,いくら測定しても事実上決定することはできません。

 つまり,「島の周りの長さを測る物差しのサイズが小さければ小さいほど,その長さが大きい値に測定されてしまう。」ということが起こるからです。

 フラクタルというのは,三陸やフィヨルド(fjord)にあるような「リアス式海岸」の形に似ていて,図形の各部分が元の図形と相似である,つまり,図形の輪郭の細部を顕微鏡で見ると大きさは小さいが形は全体と全く同じ,というものです。

 こうしたフラクタル図形の周囲の長さ,非常に短い物差しで測ると,測り切れなくて,長さの総和は物差しのサイズがゼロの極限では無限大になってしまうことになります。

 厳密には,ハウスドルフ次元が,位相次元を超えるものが「フラクタル」と呼ばれるものです。

 長さというのは,位相次元が1の量なのに,それで測って無限大の長さになるということは,ハウスドルフ次元が"位相次元=1"より大きいということです。

  ハウスドルフ次元の定義というのは,説明が結構むずかしいです。

 参考書によれば,

"ある図形を一辺の長さが高々δであるような位相次元sの微小部分のN 個の集まりとしたとき,H (s)≡N・δs (δ→ 0, N→ ∞ )の値が,s<mなら無限大に, s>mではゼロとなるとき,その境界の m をこの図形のハウスドルフ次元と呼ぶ。"

とあります。

 例えば,位相次元が2の正方形の各辺を等分すると,次元 2の微小な正方形の集まりとなります。それを全部加えると,どんなに細分しても合計の面積は有限で同じ値になります。

 ところが,その面積を次元1の微小な線分の集まりとすると,通常はその全ての線分の長さの合計は無限大になります。

 一方,次元が3の立方体の集まりと考えると,体積としては常に高さがゼロなので総体積はゼロです。

 したがって,無限大とゼロの境界の次元2がハウスドルフ次元となると解釈されます。

 フラクタルとか,ブラウン運動とかではない通常の図形の場合なら,ハウスドルフ次元は位相次元と一致するわけですね。

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