相対論的場の量子論の続きです。
前記事の最後では,便利な個数演算子:Nk^を導入し,正規順序
(normal-ordering)を取って再定義した自由場のエネルギー・
運動量4元ベクトル演算子をPμ^=ΣkkμNk^と表現して,
Pμ^の固有状態,特にH^=P0^=ΣkωkNk^のエネルギー
固有値:E=Σknkωkに属する固有状態がNk^の固有値nk
(状態の占有数=運動量がkの量子の個数)の総目録{..,nk,..}
のみによって完全に決定されて,
総個数:N^=ΣkNk^の固有値n=Σknkに属する固有状態:
Φ(..,nk,..)で尽くされることを見ました。
ずっと昔の学生時代から,量子論の本質は変換理論にある,と教えられ,そう認識してきましたが,
ここまでの段階でも,"場の量子化(第二量子化)というのは,通常の"座標表示の状態ベクトル=波動関数"を運動量表示,あるいは個数表示の状態ベクトルに変換するという表示の変換を意味する"ということが,再認識されましたね。
さて,その続きです。同種量子の区別不可能性からです。
§2.2 状態の対称性(Symmetry of states)
さて,古典自由 Klein-Gordon場に正準量子化の手続きを適用した結果,量子個数による多粒子の記述が得られました。
自由場に対しては,量子個数(占有数)演算子:Nk^はHamiltonian:H^と交換し,そこで量子個数(Nk^or nk)は運動の常数(定数=保存量)になります。
※(注15-1):何故なら,自由場ではH^=Σkk0Nk^ですが,
全てのk,k'に対して[Nk^,Nk'^]=0 なので,明らかに全てのkに対して[H^,Nk^]=0 です。
したがって,dNk^/dt=i[H^,Nk^]=0 です。
(注15-1終わり)※
そして,自由なH^に加え,占有数nkを変化させる相互作用項:
Hint^を付加すると,興味深い物理的問題に遭遇します。
しかし,今の自由 Klein-Gordon場の論議だけでも,まだ対象とする量子が"対称場の統計=Bose-Einstein統計"に従うことを証明するという問題が残されています。
まず,対象としている1種類の実スカラー粒子だけから構成される任意の状態は,異なるkでの占有数のnkの組み合わせにわたって,
固有状態:Φ(..,nk,..)=Πk(nk!)-1/2(ak^+)nkΦk(0)
を重ね合わせたもので与えられます。
そして,Φ(..,nk,..)は,各々のkについての量子個数nkを全て与えることにより,完全に決定され,記述できます。
各々のkについての,基本的な正準交換関係:[ak^,ak'^+]=δkk',
[ak^,ak'^]=[ak^+,ak'^+]=0 に従って,全てのak^+は互
いに交換するため,
Φ(..,nk,..)=Πk(nk!)-1/2(ak^+)nkΦk(0)の右辺において,
生成演算子ak^+の順序を決める必要はなく,それ故,個々のkに
対する量子は全く区別できないと結論されます。
このことは,異なる固有状態に対する展開係数の対称性に反映され
ます。以下,その詳細を検討します。
これは,Φ=[C0+Σn=1∞(1/n!)1/2{∫d3k1..d3knCn(k1,..,kn)
×a^+(k1)..a^+(kn)})Φ0 において,
演算子a^+(kj)の順序を交換しても状態は不変であるという事実
が,展開係数Cn(k1,..,kn)の引数kjの交換対称性に帰着するとい
う主張です。
ここで,因子(1/n!)1/2は係数Cnに課せられる規格化条件が簡単で便利な形になるよう挿入されました。
こうすれば,規格化は次のように書けます。
1=<Φ|Φ>=|C0|2+Σn=1∞∫d3k1..d3kn|Cn(k1,..,kn)|2
です。
※(注15-2):|Φ>=[C0+Σn=1∞(1/n!)1/2{∫d3k1..d3kn
Cn(k1,..,kn)a^+(k1)..a^+(kn)})|Φ0>に対して,
<Φ|=<Φ0|{C0*+Σm=1∞(1/m!)1/2{∫d3k1'..d3km'
Cm*(k1',..,km')a^(km')..a^(k1')}}
です。
故に,<Φ|Φ>=<Φ0|{C0*+Σm=1∞(m!)-1/2{∫d3k1'..d3km'
Cm*(k1',..,km')a^(km')..a^(k1')}
×[C0+Σn=1∞(n!)-1/2{∫d3k1..d3kn
Cn(k1,..,kn)×a^+(k1)..a^+(kn)}|Φ0>
=|C0|2+C0{Σm=1∞(m!)-1/2{∫d3k1'..d3km'
Cm*(k1',..,km')×<Φ0|a^(km')..a^(k1')|Φ0>}
+C0*{Σn=1∞(n!)-1/2{∫d3k1..d3knCn(k1,..,kn)
×<Φ0|a^+(k1)..a^+(kn)|Φ0>}
+Σm=1∞Σn=1∞(m!n!)-1/2∫d3k1'..d3km'd3k1..d3kn
Cm*(k1',..,km')Cn(k1,..,kn)
×<Φ0|a^(km')..a^(k1')a^+(k1)..a^+(kn)|Φ0>
です。
ところが,明らかに,<Φ0|a^(km')..a^(k1')|Φ0>=0,
かつ,<Φ0|a^+(k1)..a^+(kn)|Φ0>=0 です。
そして,<Φ0|a^(km')..a^(k1')a^+(k1)..a^+(kn)|Φ0>は,
m≠nの場合には,a^(k),a^+(k)のどちらかの数が多くて,
生成・消滅ペアから余るので真空Φ0で挟む結果ゼロです。
他方,m=nなら,
<Φ0|a^(kn')..a^(k1')a^+(k1)..a^+(kn)|Φ0>
=ΣPδ3(kP1'-k1)δ3(kP2'-k1)..δ3(kPn'-kn)となり,
<Φ|Φ>=|C0|2+Σn=1∞(n!)-1∫d3k1'..d3kn'd3k1..d3kn
Cm*(k1',..,km')Cn(k1,..,kn)
×{ΣPδ3(kP1'-k1)δ3(kP2'-k1)..δ3(kPn'-kn)}
です。
ただし,和記号:ΣPにおける下添Pはn個kのmode番号{1,2,.,n}に対する置換(Permutation)を意味します。
つまり,Pは並替え順列の写像:P≡{(1,2,..,n)→(P1P2,..,Pn)}を意味し,それ故,ΣPは全部で丁度n!通りあるそうした全ての置換Pにわたる総和です。
そして,ΣPの各項に係数Cm*(k1',..,km')Cn(k1,..,kn)を掛け,
∫d3k1'..d3kn'の積分を実行すると,
重ね合わせの係数Cnのkに対する対称性から,n!個の置換Pの各々について全て同一の積分結果を与えるため,Pの個数n!が先頭の因子(n!)-1と相殺します。
(※↑ここでの因子(1/n!)1/2の挿入の理由説明では,これから示すべき展開係数Cn(k1,..,kn)の引数kjの交換対称性は既知としました。)
結局,<Φ|Φ>
=|C0|2+Σn=1∞(n!)-1∫d3k1..d3kn|Cn(k1,.., kn)|2
を得ます。
(注15-2終わり)※
そして,係数Cn(k1,..,kn)はn量子を含む状態のエネルギー・運動量分布を示しています。
Cn(k1,..,kn)は,与えられたkの集合を持つn個の同種粒子の集まりに対する,運動量空間での波動関数と見ることができます。
|C0|2+Σn=1∞(n!)-1∫d3k1..d3kn|Cn(k1,.., kn)|2=1 から.
|Cn(k1,.., kn)|2をkの個数がnの場合の存在確率密度と見なし,
Cn(k1,.., kn)を確率振幅を示す複素数と解釈するわけです。
そして,Φ=[C0+Σn=1∞(1/n!)1/2{∫d3k1..d3kn
Cn(k1,..,kn)a^+(k1)..a^+(kn)}]Φ0において,
a^+(k1),..,a^+(kn)のそれぞれを互いに入れ替えても
状態として同じであるため,
波動関数:Cn(k1,..,kn)は,引数k1,.., knについて交換対称
な関数であることがわかります。
つまり,Cn(..kj,., ki..)=Cn(..ki,..,kj..)なることを示す
ことができます。
※(注15-3):すなわち,
Φ'=[C0+Σn=1∞(1/n!)1/2{∫d3k1..d3kn Cn(..ki,., kj..)
×a^+(k1)..a^+(kj).. a^+(ki)..a^+(kn)]Φ0 ,
Φ=[C0+Σn=1∞(1/n!)1/2{∫d3k1..d3knCn(..kj,., ki..)
×a^+(k1)..a^+(kj)..a^+(ki)..a^+(kn)]Φ0
に対してΦ'とΦとが同一であるべき,という要求から,
0=Φ'-Φ=Σn=1∞(1/n!)1/2{∫d3k1..d3kn
{Cn(..kj,., ki..)-Cn(..ki,..,kj..)}
×a^+(k1)..a^+(kj)..a^+(ki)..a^+(kn)]Φ0
ですから,
Cn(..kj,., ki..)=Cn(..ki,..,kj..)
と結論するわけです。(注15-3終わり)※
上に論じたように,状態を決定付けることは,様々なk値を持つ量子
の個数を全て与えるというだけの操作です。
同種量子は区別不可能であり,量子aが運動量kiを,量子bが運動量
kjを持つつ確率も,aとbを交換した場合の確率も同じです。
つまり,|Cn(..kj,., ki..)|2=|Cn(..ki,..,kj..)|2です。
こういう理由で,多体系の波動関数に対称性の条件が存在するのは,
a^+(k)の交換可能性の結果と考えられます。
これは正準量子化の手法で生じる実スカラー場の量子(=粒子描像の波)が"対称統計=Bose-Einstein統計"に従うこと,を示すものです。
§2.3場の観測可能性と微視的因果律
(Measurability of the Field and Microscopic Causality)
古典的には場φ(x)は,1つの物理量(observable=可観測量)であり,
その点xにおける強さ:φ(x)は測定可能なものでした。
量子論では,第1章の場の量子化への序文(introduction)で論じた条件により,量子領域において時空点xで定義される局所的な場の演算子として,φ^(x)を導入しました。
場の量子論においては古典論とは対照的に,ゼロでない交換関係が存在するため,場の強さの正確な測定には限界があります。
例えば,2つの異なる時空点xとyにおける場の強さ:φ^の正確な測定が可能なのは,交換子:[φ^(x),φ^(y)]がゼロとなって消える場合に限られます。
ところが,
φ^(x)=∫d2k{a^(k)fk(x)+a^+(k)fk*(x)}
=∫d3k(2π)-3/2(2ωk)-1/2×[a^(k)exp(-ikx)
+a^+(k)exp(ikx)}
という形で,既に自由Klein-Gordon場:φ^(x)の陽な解表現が
得られています。
ただし,kx=kμxμ=k0x0-kx,k0=ωk≡(k2+m2)1/2,
f k(x)=(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(-ikx) です。
場の同時刻交換関係だけから導き出されたa^(k),a^+(k)
の交換関係:[a^(k),a^+(k')]=δ3(k-k'),および,
[a^(k),a^(k')]=[a^+(k),a^+(k')]=0 から逆に,
同時刻とは限らない任意の時空点x,yにおける場の交換子:
[φ^(x),φ^(y)]を評価できます。
すなわち,
[φ^(x),φ^(y)]=∫d3kd3k'(2π)-3(4ωkωk')-1/2
×([a^(k),a^+(k')]exp{-ik(x-y)}
+[a^+(k),a^(k')]exp{ik(x-y)})
=∫d3k(2π)-3(2ωk)-1[exp{-ik(x-y)}-exp{ik(x-y)}]
={-i/(2π)3}∫d3k[exp{ik(x-y)}sin{ωk(x0-y0)}/ωk]
です。
こう表現される関数を,iΔ(x-y)と定義します。
つまり,iΔ(x-y)=[φ^(x),φ^(y)] です。
※(注15-4):
∫d3k(ωk)-1[exp{ik(x-y)}-exp{-ik(x-y)}/(2i)]
=∫d3k(ωk)-1[exp{{-ik(x-y)+iωk(x0-y0)}
-exp{ik(x-y)-iωk(x0-y0)}/(2i)}
ところが,∫-∞∞d3k(ωk)-1exp{-ik(x-y)}
=-∫∞-∞d3k(ωk)-1exp{ik(x-y)}
=∫-∞∞d3k(ωk)-1exp{ik(x-y)}なので,
∫d3k(ωk)-1[exp{ik(x-y)}-exp{-ik(x-y)}/(2i)]
=∫d3k(ωk)-1exp{ik(x-y)}exp{iωk(x0-y0)}
-exp{-iωk(x0-y0)}
=∫d3k[exp{ik(x-y)}sin{ωk(x0-y0)}/ωk]
(注15-4終わり※
Δ(x-y)は,不変特性関数の族(相対論的波動方程式の境界条件に従うGreen関数の集合)に属する関数の1つです。
そのLorentz不変性は,
iΔ(x-y)=∫d3k(2π)-3(2ωk)-1[exp{-ik(x-y)}
-exp{ik(x-y)}]なる形から明らかです。
つまり,Lorentz不変な指数関数が,不変体積要素
∫d3k(2ωk)-1=∫d4kδ(k2-m2)θ(k0)の上にわたって積分
されるからです。
ここで,θ(k0)はk0>0ならθ(k0)≡1,k0>0 ならθ(k0)≡0 で定義されるHeaviside関数(階段関数)です。
※(注15-5):まず,次のようなδ-関数の性質を証明します。
すなわち,
a>0 ならδ(x2-a2)={δ(x-a)+δ(x+a)}/(2a)
なる性質です。
これは,以下のようにして証明することができます。
まず,∫-∞∞f(x)δ(x2-a2)dx
=∫0∞f(x)δ(x2-a2)dx+∫-∞0f(x)δ(x2-a2)dxです。
y=x2-a2と変数置換すると,2xdx=dyです。
0≦x<∞では,x=(a2+y)1/2.dx=dy/{2(a2+y)}1/2
ですから,∫0∞f(x)δ(x2-a2)dx
=∫-a2∞dy[f((a2+y)1/2)δ(y)/{2(a2+y)1/2}]
=f(a)/(2a)です。
-∞≦x<0では,x=-(a2+y)1/2,dx=-dy/{2(a2+y)}1/2
ですから,∫-∞0f(x)δ(x2-a2)dx
=∫-a2∞dy[f(-(a2+y)1/2)δ(y)/{2(a2+y)1/2}]
=f(-a)/(2a) です。
故に,∫-∞∞f(x)δ(x2-a2)dx
={f(a)+f(-a)}/(2a) となります。
右辺は,∫-∞∞[f(x){δ(x-a)+δ(x+a)}/(2a)]dx
に等しいので,a>0 では,
δ(x2-a2)={δ(x-a)+δ(x+a)}/(2a)
と結論されます。
そこで,F(k0,k)を任意関数とすると,
δ(k2-m2)=δ((k0)2-k2-m2)=δ((k0)2-ωk2)
={δ(k0-ωk)+δ(k0+ωk)}/(2ωk)なので,
∫-∞∞dk0F(k0,k)δ(k2-m2)θ(k0)
=F(ωk,k)/(2ωk) です。
したがって,∫d3k[F(ωk,k)/2ωk]
=∫d3k∫-∞∞dk0δ(k2-m2)θ(k0)F(k0,k)
=∫d4kδ(k2-m2)θ(k0)F(k0,k) です。
以上から,∫d3k(2ωk)-1=∫d4kδ(k2-m2)θ(k0)
を得ました。
(注15-5終わり)※
ここで,またまた,一休みです。
(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (McGrawHill)
PS: 40年くらい前の学生(院生)の時代には,指導教官から,
「細かいところに拘泥していると,学生時代の数年間では,とても論文も書ける最先端のオリジナルな領域には到達できないから,1度目の勉強,読書では,ある程度は書いてあることを信用してとにかく先に進め。。」
というようなことを,よく言われていました。
しかし,私の専攻は,実験ではなく理論ということもあり,
「一言でも理解できないことがあったり,証明や検算をすべきことがあれば決して避けて通れず,早く(または速く)わかる必要などないいずれわかればいい。理解できないたった1行があればそれに数年,いやもっと費やすことも厭わない。」
というような,1回精読主義のバカな性分を通したためか?
結局,この道では飯を食うことはできず,
今も,ライフワークの1つですが,全くお金には結び付かない趣味と
化しています。
本を読んで理解した履歴の過去ノートにも,種本の内容よりもはるか
に大量の注がそのまま書いてあり,証明や検算の山です。
それでも,ブログの科学記事に載せてある注は,ノートにある注の全部
ではなく7~8割くらいです。
"当たり前と思えることでも証明しなければ"という性格は,むしろ
数学や数理物理学の方に向いていたのかも。。。
これ(=何かひっかかると,どこまでも追求する性格)で,
さらに,早く(速く)解決できる能力があれば,
"杉下右京"なのですがね。。
ただし,ポリシーは自分とはかなり違います。
ドラマ(フィクション)だし警察だから仕方ないのでしょうが,
「たとえ法律の方が間違っていても,それを破れば犯罪であり断罪さるべきである」とか,「目的が正当であれば手段は正当化される,のは間違いである。」などの"杉下右京"のポリシーでは,
昨今の中東のジャスミン革命を含む,あらゆる革命は許されません。
革命とは,富める者から無理やり財を略奪する義賊に似た行為です
からね。
上のポリシーもドグマではなく,TPOで使い分けなければ。。
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