2019年11月13日 (水)

光の量子論11

※「光の量子論10」からの続きです。

(※ 余談):最近IEでは,コピペが,うまくできなく

なったので,Firefoxで開いて試してみると,できた

ので,以後,また,図なども挿入できそうです。

しかし,Win7のサポートが来年早々終わるそうです。

昔,Win10に無料のときにノートをバージョンアップ?した

けど,嫌いになってWin7に戻したのにね。

そのうち新しいソフトなどに対応できなくなったりして

くるのも困るので,イヤイヤ,安価のWin10をバンドルした

NECか富士通当たりの中古デスクトップを購入予定。。

OSやソフトのバージョンアップで利益を得ようとする

MSと縁切りたいけど,無理です。まあ,棺桶両足も近いし。

デスクトップは,確か,2016年だったか?に同じ理由で,

まだ使えるXPマシンから中古のWin7マシンに変えたけど,

3年持ったから,ま,いっか?今の時代,PCを持ち運ばずとも

サーバーを使えばいいし,私ほぼ寝たきりなのでので,画質

が悪く古い液晶ノートも持ってはいるけど.入院用です。

(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.8

の周波数ωの自発放出に伴なう不可避の放射広がりの項

の説明で終わりました。

 

今回は,それ以外の周波数の広がりからです。

 

  • 2.9飽和広がり

前項で得た感受率の表式:

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}.(2.108)は,

入射光ビームの電場に線形応答する原子気体に対して,

双極子モーメント:X12,または,D12について2次まで

正しい結果です。

より高次の項を含む結果については,光学Bloch方程式

を解けば得られます。この高次解を得るためには,最初

から,密度行列に対して,ω~ω0と考えて,

exp{±i(ω0-ω)t}の項だけを残してexp{±i(ω0+ω)t}

の項を無視する回転波近似の方程式,つまり「光の量子論9」

で論じた,dρ22/dt=-dρ11/dt

=(-i/2)Ωexp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}ρ21.(2.78)

および,dρ12/dt=dρ21/dt

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)(2.79)

についての解を求めればいい,ことになります。

しかし,この段階では自発放出の効果が入ってないので,

これを考慮に入れて,この方程式を修正・一般化する必要が

あります。

前に戻り,密度行列の定義:ρij=Cij;i,j=1,2)から,

dρij/dt=Ci(dCj/dt)+Cj(dCi/dt)ですが,

これに,C1については(2.31)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)を採用し,

2については前回,(2.32)に自然放出の項を付加

して修正した(2.99)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)

を代入して,近似抜きの方程式系を得た後に,

cos(ωt)=(1/2){exp(-iωt)+exp(iωt)}として,

ω~ω0と仮定し,exp{±i(ω0-ω)t}の項だけ残し,

exp{±i(ω0+ω)t}の項を無視する近似を適用すれば,

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22.(2.114),

および,dρ12/dt

=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12(2.115)

を得ます。

本当は(2.31)のC1の時間発展方程式の方にも,自然放出

による修正を加えるべきですから,単にγを導入したこれら

の手法が完全に厳密でないのは明らかです。

しかし,修正光学Bloch方程式:(2.114),(2.115)は,実は,

より厳密な計算から得られるものと同一です。

 

 さて,減衰項が存在するので解は完全な振動型ではなく,

十分長い時間が経過すれば定常状態になります。

定常状態の解を求めるには,まず,ρ1221

ρ~12=exp{i(ω0-ω)t}ρ12.(2.116a),

ρ~21=exp{-i(ω0-ω)t}ρ21(2.116b)

と置き換えて,(2.114),(2.115)から振動型因子を消去

します。すると,dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ~12

+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22.(2.117),および,dρ~12/dt

=(iΩ/2)(ρ11-ρ22)-γρ~12-i(ω0-ω)ρ~12.(2.118),

となります。

dρ~21/dtは(2.118)の複素共役で与えられて,

dρ~21/dt=(-iΩ/2)(ρ11-ρ22)-γρ~21

+i(ω0-ω)ρ~21.となります。

これら.3つの方程式の左辺の変化速度を全てゼロと置き,

ρ11+ρ22=1を用いると,定常状態の解が求まります。

ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}(2.119)

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

(2.120)となります、

※(注11-1):上式を証明します。

[証明](2.117)でdρ22/dt=0より,

ρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~21}(実数)を得ます。

一方,(2.118)でdρ12/dt=0,ρ11=1-ρ22より,

(-Ω/2)(11-2ρ22)=(ω0-ω-iγ)ρ~21なので

(Ω/2)(1-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ)ρ~12,または,

(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ)Ωρ~12

を得ます。ここで,Ωρ~12=a+ib(a,bは実数)

と置くと,(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-a(ω0-ω)+bγ,

かつ,0=-b(ω0-ω)―aγです。

b­=-aγ/(ω0-ω)でbを消去して

(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-a(ω0-ω)-aγ2/(ω0-ω)

=-a{(ω0-ω)2+γ2}/(ω0-ω)より,

a=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[(ω0-ω)/{(ω0-ω)2+γ2}],

b=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[-γ/{(ω0-ω)2+γ2}],

それ故,Ωρ~12=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)

[(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}]となります。

故に, Ωρ~12-Ωρ~12=2ib

=i|Ω|2(1-2ρ22)[γ/{(ω0-ω)2+γ2}],

ですが,これを先のρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~12}

に代入すれば,4iγρ22=iγ|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2}

-2iγρ22|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2},なので,

4iγρ22{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}/{(ω0-ω)2+γ2}

=iγ|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2}となります。

したがって,ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

が得られました。

これから,1-2ρ22

={(ω0-ω)2+γ2}/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

ですから,Ωρ~12=(-|Ω|2/2)(1-2ρ22)

×[(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}]

=(-|Ω|2/2)(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

です。

故に,ρ~12=(-Ω/2)(ω0-ω-iγ)

/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}です。それ故.

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

も得られました。[証明終わり](注11-1終わり※)

 

次に,これら定常状態のときの式が感受率に及ぼす

効果を考えます。

前記事の放射広がりの項で与えた,1原子の双極子

モーメントdの表式(2.96)

d(t)=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

より,d(t)=-e{ρ1212exp(-iω0t)+ρ1221exp(iω0t)}

で,X12=∫ψiXψ2dV,eo(2.121)と書けます。

これに対し,気体の分極は(t)=N(t)/V

=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(ω)exp(iωt)}ですから,

(1/2)ε00χ(ω)=-eρ1212exp{-i(ω0-ω)t}(N/V)です。

 

故に,χ(ω)={-2eρ12NX12/(ε00V)}exp{-i(ω0-ω)t}

を得ます。ただし,Ω=eE012/hcであり,|X12{2を配向角平均の

<|X12{2>=(1/3) |D12{2で置き換えます。

すると,Ω=eE012/hcより,Ω*12=eE0|X12|2/hc

~eE0|D12|2/(3hc)となります。

そして,ρ12=-exp{i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}より,

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}](2.122)

を得ます。

|Ω|2=e202|X12|2で,これが分母に含まれていますから

この表式は,もはや電場の1次の感受率ではありません。

そして,この(2.122)の感受率χ(ω)は,先に放射広がの項

で得た(2.108)の感受率;χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}の回転波近似:

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}と,分母の/|Ω|22

を除けば同じです。したがって,その虚部もχ”(ω)

={Ne2|D12|2γ/(ε0cV)}/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

であり,先のχ”(ω)={Ne2|D12|2γ/(ε0cV)}

/{(ω0-ω)2+γ2}と分母の/|Ω|22を除いて同じです。

(2.122)の中には|Ω|22の項が入っており|D12|2∝|Ω|

なので,第1章で考察したのと同様,飽和効果が生じます。

(※入射光ビームが大きくなると,|Ω|2→大ですが,励起原子

の数はN2→(N/2)と,飽和状態に近づき,遷移が減衰します。)

これが入射光の吸収速度,つまり減衰速度を減少させる

のは明らかです。

吸収係数はK(ω)={ω/(cη)}χ” (ω)です。

これは電場の1次の感受率では,ω~ω0,η~1で

K(ω)~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}

×[(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}](2.111)で与えられましたが,

これも,K(ω)~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}

×[(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ+|Ω|2/2}]になります。

そこでK(ω)が最大のω=ω0のときの半分の値:

K(ω0)/2をとるωは,前はω=ω0±γでしたが,これも,,

ω=ω0±(γ2++|Ω|2/2)1/2に変わります。

すなわち,線幅は,2γから2(γ2++|Ω|2/2)1/2.(2.123)に

増加します。この付加的寄与は「飽和による広がり」と

呼ばれます。

 

  • 2.10 放射減衰を伴なうRabi振動

前節で導いた感受率は定常状態の非対角密度行列要素に

支配されることがわかりました。他方,対角密度行列要素は

2つのエネルギー準位の原子占有数を与えます。

単色光の照射によって生じた定常状態の励起状態占有数

に対する減衰を伴なう光学Bloch方程式(2.119)の解:

|C2|2=ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}の結果

は,前の記事「光の量子論3」で,広帯域の光を照射したとき

の,(A+2BW)t>>1の長時間が過ぎると励起状態占有数

が定常状態の値:N2=NBW/(A+2BW)=|C2|2Nに近づく,

という(1.74)の結果と比較することができます。

(※ただし,A=A21,B=B21=B12です。)

これら,2つの表式(2.119),(1.74)は細かい点では違いが

ありますが,共通のより重要な特徴を備えています。

(2.119)は,|Ω|が,自発減衰γ,or離調:ω0-ωより,ずっと

大きくなると,|C2|2=ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

が極限値:1/2に近づくことを示していますが,これは,BW<<1

なら,(1.74)の|C2|2=BW/(A+2BW)が極限値:1/2に飽和して

ゆく様子と,一致しています。

そして,(2.119)をωで積分すると,|Ω|<<γのときには,

∫ρ22dω=π|Ω|2/(4γ).(2.124)を得ます。

※(注11-2):何故なら,∫-∞(x2+a2)-1dx

=[aTan-1(x/a)] -∞=πa/2-(-πa/2)=πaですから

|Ω|<<γなら,∫-∞({(ω0-ω)2++γ2+|Ω|2/2}-1dω

=π(γ2+|Ω|2/2)1/2~πγ です。(注11-2終わり※)

これは,つまり,入射光ビームが弱い極限では,広帯域の励起

原子の数は,光のエネルギー密度に比例することを意味します。

Ωの定義は,Ω=eE012/hcであり,原子内の電子の配向平均

では,<|X12|2>=(1/3)|D12|2です。

また,ビームの平均エネルギー密度は,サイクル平均で,

(1/2)ε02=∫W(ω)dωです。そこで,2.55)の,B12

=πe2|D12|2/(3ε0c2)=π|Ω|2/(ε002)の表式からわかる

ように,∫BWdω=π|Ω|2/2.(2.125)が成立します。

したがって,2γ=A21=1/τ(2.102)を援用すれば,

BW<<Aの弱ビーム極限で∫(BW/A+2BW)dω

~π|Ω|2/(4γ)であり,(1.74)の(A+2BW)=|C2|2の積分

結果が,広帯域の(2.119)の吸収線のωにわたる積分で得る

(2.124)の∫ρ22dω=π|Ω|2/(4γ)のの結果と,正確に一致

します。

定常状態における(2.119)の原子の励起状態占有数は,その

初期値に依存しません。

 

しかし,長時間極限の定常状態ではなく,照射時間が短かいとき

の原子占位数は,本記事最初の光学Bloch方程式(2.114),(2.115)

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22,および,

dρ12/dt

=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12

を初期条件を入れて,もっと一般的に解く必要があります。

ですが,残念なことに,この一般解はあまり明快な形に書けない

ことがわかっています。

そこで解の例として2つの特別な場合を考えます。

まず,(ⅰ)離調:(ω0-ω)がゼロ.を仮定した場合,

次に,(ⅱ)光ビームが弱く,|Ω|<<γの場合の2つ

を考察します。

(ⅰ)光学Bloch方程式(2.114),(2.115)の解はω=ω0でt=0

の初期条件がρ22=0,ρ12=0のときには,ρ22について,

ρ22 (t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

(2.126)となります。

ただし,λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2.(2.127)です。

※(注11-3):上記を証明します。

[証明] ω=ω0では,(2.114)は,

dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ12+(iΩ/2)ρ21-2γρ22,

(2.115)は,dρ12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ12となり,

書けます。そして,ρ21=ρ1222=ρ22です。

この方程式系は,線形変換で,

dρ22/dt=(-i/2)(Ωρ12-Ωρ21*)-2γρ22,

および,Ω(dρ12/dt)-Ω(dρ12/dt)

=(i|Ω|2)(1-2ρ22)-γ(Ωρ12-Ωρ12*)に変換されます。

そこで,f­=ρ22,g=(-i/2)(Ωρ12-Ωρ21*)と置くと,

f,gは共に実数値関数で,df/dt=-2γf+g,かつ,

dg/dt=-|Ω|2f-γg+|Ω|2/2となります。

これは,=[f,g],=[0,|Ω|2/2]なる縦ベクトルに

対して2×2係数行列を^としてd/dt=^です。

ところが,前回の(注10-1)では,線形非同次方程式:

df/dt=af+g(t)の解は,

f(t)=exp(at)[∫0{exp(-at)g(t)}dt]

+f(0)で与えられる,ことを示しました。

そこで,同様に,d/dt=^の解も,記号的に,

(t)=exp(^t)[∫0{exp(-^t)}dt]+(0)

=exp(^t)[-exp(-^t)^-1]0(0)

で与えられるはずです。

ただし,初期条件がρ22(0)=ρ12(0)=0の場合は,(0)=0

です。exp(^t),exp(-^t)は,それぞれ次式で定義されます。

すなわち,exp(^t)=Σn=0{(^t)/n!}であり,かつ,

exp(-^t)=Σn=0{(-^t)/n!} です。

故に,(t)=exp(^t){^-1-exp(-^t)^-1}

が,初期条件を満たす解です。

必要かどうか?は不明ですが,P^の逆行列:^-1の要素

も求めておきます。det(^)=|Ω|2+2γ2であって,

det(^)(^-1)11^22=-γ,det(^)(^-1)12=-^12

=-1,det(^)(^-1)21=-^21=|Ω|2, det(^)(^-1)22

^11=-2γです。

 さて,唐突ですが,=α(≠0)という,行列P^

の固有値αと,その固有ベクトルを求める固有値問題

を考えます。

線形代数学から固有値αは^を単位行列として,

det(^-α^)=0という方程式の解で得られます。

この方程式は,(-2γ-α)(-γ-α)+|Ω|2=0,

つまり,αの2次代数方程式:α2+3γα+2γ2+|Ω|2

=0 を意味します。そこで,解の公式から,解αは

α=-3γ/2±i(|Ω|2-γ2/4)1/2です。ここで,

ビームの電場0が十分大きくて,|Ω|2≧(γ2/4)であると

仮定しました。それ故,実数λをλ=(|Ω|2-γ2/4)1/2

置くと,2つの固有値は,α=α±=-3γ/2±iλ(複号同順)

と書けます。故に.γ+α±=-γ/2±iλです。

そして,α±に属する固有ベクトルを,±(複号同順)とします。

つまり,^x=α,^x=α (x±≠0)です。

これら固有ベクトルの成分:x1,x2は,係数が逆行列を持たぬ

連立方程式:-2γx1+x2=α±1,-|Ω|21-γx2=α±2

から,(γ/2±iλ)x1=x2, or (-γ/2±iλ)x2=-|Ω|21

となるので,例えば.x2=1と置くと,x1=-(-γ/2±iλ)/|Ω|2

を得ます。したがって,定数倍の不定性を除いて,

=[(γ/2-iλ)/|Ω|2,1],==[(γ/2+iλ)/|Ω|2,1]

書けます。

ここで,行列:^を^=(+,)と,定義すると,

^^=^()=(α)が成立します,

右辺は,^=(+,)に,対角要素がαで非対角要素

がゼロの対角行列を掛けたものに等しいです。

そこで,この対角行列を,Λ^とすれば,これて^^=^Λ^

を意味します。そして.^=(+,)には逆行列:^-1が存在

するため, ^^=^Λ^から,Λ^=^-1^^を得ます。

これから,Λ^^-1^^となりますから,結局,

exp(Λ^t)=^-1exp(^t)^を得ます。

逆に,exp(^t)=^exp(Λ^t)^-1です。

同様に,exp(-Λ^t)=^-1exp(-^t)^,かつ,

exp(-P^t) =Q^exp(-Λ^t)Q^-1です。

先に,=[f,g],=[0,|Ω|2/2]に対する

/dt=^の,記号的なものとして得た解:

(t)=exp(^t){^-1-exp(-^t)^-1}は,

^-1(t)=exp(Λ^t)

×{Λ^-1Q^-1-exp(-Λ^t)Λ^-1Q^-1}となります。

exp(±Λ^t)は対角成分が,exp(±αt),exp(±αt)

の対角行列となりますから,具体的解を得るには,後は^-1

求めればいい,だけです。

Q^=(+,)の行列要素は列ベクトルの成分で,

=[(γ/2-iλ)/|Ω|2,1][-(γ+α)/|Ω|2,1],

=[(γ/2+iλ)/|Ω|2,1]=[-(γ+α)/|Ω|2,1]

と表わされます。

^の逆行列^-1の行列要素は,det^(^-1)11^22=1,

det^(^-1)12=-^12=-(γ/2+iλ)/|Ω|2

=(γ+α)/|Ω|2,det^(^-1)21=-^21=-1,

det^(^-1)22^11=(γ/2-iλ)/|Ω|2=-(γ+α)/|Ω|2,

および,det(^)=-2iλ/|Ω|2,or{det(^)}-1=i|Ω|2/(2λ)

で表現されます。

すなわち,逆行列^-1も列ベクトル1,2によって,

^-1=(1.2),ただし,1={i|Ω|2/(2λ)}[1,-1],

2={i/(2λ)}[-(γ/2+iλ),(γ/2-iλ)] 

{i/(2λ)}[(γ+α),-(γ+α)] と表わせます

よって,=[0,|Ω|2/2]に対して,^-1

=[(-i(γ/2+iλ)|Ω|2/(4λ),i(γ/2-iλ)|Ω|2/(4λ)] 

={i|Ω|2/(4λ)}[(γ+α),-(γ+α)]

それ故,Λ^-1Q^-1

{i|Ω|2/(4λ)}[(γ+α)/α.-(γ+α)/α]です。

そこで,先に書いた対角化された方程式の解::

^-1(t)=exp(Λ^t)

×{Λ^-1-1-exp(-Λ^t)Λ^-1-1}の左辺の

列ベクトルを,^-1(t)=[f~,g~]と成分表示すれば,,

f~={i|Ω|2/(4λ)}{(γ+α)/α}{exp(αt)―1}

および,

g~=-{i|Ω|2/(4λ )}{(γ+α)/α}{exp(αt)-1}

となります。

それ故,-(γ+α)f~/|Ω|2-(γ+α)g~/|Ω|2

=-i|Ω|2/(4λα)}{exp(αt)―1},

+i|Ω|2/(4λα)}{exp(αt)-1},

=|Ω|2/|2(2γ2+|Ω|2)}-{i|Ω|2/(4λαα)}

×{αexp(αt)-αexp(αt)}

を得ます。

(※ (γ+α)(γ+α)=γ2/4+λ2=|Ω|2, αα

=(9/4)γ2+λ2=2γ2+|Ω|2です。)

  ところが,y(t)=[f,g]Q^[f~,g~]

ですが,^=(+,)で,

=[-(γ+α)/|Ω|2,1],

=[-(γ+α)/|Ω|2,1]T ですから,

f=―(γ+α)f~/|Ω|2-(γ+α)g~/|Ω|2

=(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)-i{|Ω|2/(4λ)}/(2γ2+|Ω|2)}

×{αexp(αt)-αexp(αt)}をえます。

α±=-3γ/2±iλより,

exp(αt)=exp(-3γt/2)exp(iλt)

exp(αt)=exp(-3γt/2)exp(-iλt)なので

(-i){αexp(αt)-αexp(αt)}

=[(3iγ/2){exp(iλt)-exp(-iλt)}

-λ{exp(iλt)+exp(-iλt)}]

×exp(-3γt/2)

={-2λcos(λt)-3γsin(λt)}exp(-3γt/2)

したがって,f=ρ22=(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)

[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

が証明されました。[証明終わり] (注11-3終わり※)

 

今回は,最後で過去ノートの13年前の計算にケアレスミス

があるのを発見しました。証明なので,何とか結論までたどり

ついてはいましたが,チェックの再計算に老齢のせいか3昼夜

もかかりました。例によって夢中になると寝食を忘れる偏執質

なので何度か低血糖でフラフラになりました。

インスリンを打たなくても長い考え事で,よく低血糖になり,糖分

ある場所まで這っていくほど動けなくなります。眠くなるけど

寝てしまうとアウトですね。 高血糖は長期的,慢性型なので

急性で脳死植物状態になる危険性はないのですがね。

でも,結局,正解を得たので,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

 

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2019年11月 6日 (水)

光の量子論10

※「光の量子論9」からの続きです。

※(余談):今回,この草稿は11/5(火)の早朝にはアップ

できるところまで完成したのですが,直後に月1回の大学病院

での循環器内科と形成外科の外来診察に出かけるためPending

にしました。

最近は食欲がなく,病院では毎度のように待ってるうち低血糖

や貧血などを起こして苦しんだりしてますが,幸い病院なので

誰かが助けてくれます。一応16時前には帰宅し一休みしている

うちに眠ってしまい,起きてTVを見るとプレミア12という野球

放送があり,それを見終えてからアップしました。

今だに,夜零時を過ぎると,なぜか元気になり行動のモチベーション

が上がって,眠くなくなるという不健康な性分は変わりません。

関係ないけど,絶世の美女だったらしい白拍子の静御前の歌

「しづや,しづ,しづのおだまき,繰り返し昔を今になすよしもがな

(成吉思汗?)」(高木彬光 著「ジンギスカンの秘密」から)

など昔の女子の歌が最近また気になってます。

額田王(ぬかだのおおきみ)の,「あかねさす紫のゆき,しめのゆき

野守りは見ずや,君が袖振る」とか小野小町の「花の色は移りに

けりな,いたづらに.わが身世に経る詠め(降る長雨)せし間に」とか

も気になります。

 誰とも縁がなくとも生来の女好き,スケベは,死ぬまで不治の病

です。

与謝野晶子の「柔肌の熱き血潮に触れ揉も見で寂しからずや

道を説く君」などは,まだまだ新しい方ですね。

高校生時代は,なぜか国語だけが田舎の成績でトップクラス

だったので,万葉集から新古今和歌集など和歌は,いろいろ

記憶してます。(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.7

のRabi振動の項で,最後に(注9.4)で密度行列ρ^に

対する光学Bloch方程式の特殊な初期条件の解を求めた

ところで中断でした。

今回は,まず,これまでの道筋を少し要約します。

 

原子密度行列:ρ^=(ρij)の4つの行列要素

ρijは,ρ11=|C1|2=N1/N,ρ22=|C2|2=N2/N,

ρ12=C1221=C21で定義されます。

ここで,C1,C2は,時間に依存する波動関数を2準位原子

の状態:1,2の固有波動関数の重ね合わせとして,次のように

表わしたときの係数です。すなわち,

Ψ(,t)=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)です。

密度行列が従う方程式は,Ci(t)が従う方程式から,

dρij/dt=Ci(dCj/dt)+Cj(dCi/dt)

によって導かれます。

故に,dρ22/dt=-dρ11/dt

=-icos(ωt){Ωexp(iω0t)ρ12

+iΩexp(-iω0t)ρ21},および.

dρ12/dt=-dρ21/dt

=iΩcos(ωt)exp(-iω0t)(ρ11-ρ22)です。

 

これに,cos(ωt)=(1/2){exp(iωt)+exp(-iωt)}

を代入し,ω~ω0において,exp{±i(ω0-ω)t}の項だけ

残し,exp{±i(ω0+ω)t}の項を無視する回転波近似を

すると,dρ22/dt=-dρ11/dt

=(-i/2)Ωexp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}ρ21,および,

dρ12/dt=dρ21/dt

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)を得ます。

これを「光学Bloch方程式」と呼びます。

それは振動磁場内のスピンの運動を記述するために

Blochが導出したものと同類のものであるからです。

ここで考察中の2準位原子の量子力学は,形の上では

同じ自由度が2のスピン:1/2の系のそれに全く等しい,

からです。

そして,前記事では(注9-4)で回転波近似をした密度行列

に対する光学Bloch方程式の解が.初期条件がρ22=0,ρ12=0

(C2=0)の場合に,ρ22=(|Ω|212)sin21t/2).(2.87),

および,ρ12=exp{-i(ω0-ω)t}

×{-(ω0-ω)sin(Ω1t/2)+iΩ1cos(Ω1t/2)}.(2.88)

(ただし,Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2で,Ωは複素数ですが

Ω1は実数)で与えられることを示したところで終わりました。

 さて,この解で入射光の周波数ωと原子遷移の周波数ω0

の離調;ω0-ωがゼロ,つまり,ω=ω0の特別な場合には,,

Ω12=|Ω|2となるため,解はρ22=sin2(|Ω|t/2).(2.89),

および,ρ12=(iΩ/|Ω{2)sin(|Ω|t/2)cos(|Ω|t/2)}

(2.90)と簡単になります。

そこで,この場合,原子は基底状態1と励起状態2との間を

対称的に振動します。これはRabi振動として知られ,|Ω|

はRabi周波数と呼ばれます。

これは,Bloch方程式の場合と同じく振動磁場内のスピン

という類似の問題に対して,Rabiにより初めて得られたもの

です。

さて,光学Bloch方程式は回転波近似が施されている近似

方程式であるため,その解である(2.87),(2.88)は(ω0-ω)

が(ω0+ω)に比べて,はるかに小さいときしか,密度行列の

解の正しい近似とはならず,適切な解として成立しないこと

を強調すべきです。

それ故,(2.87)のρ22=(|Ω|212)sin21t/2)でω=0

12=ω02+|Ω|2と置いても,前々回の記事「光の量子論7」

の(注7.2)でのゼロ周波数静電場ω=0の厳密解|C2|2

={4|Ω|2/(ω02+4|Ω|2)}sin2{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}(2.34)

は得られません。

(2.87),(2.88)は,単一の周波数ωを持つ厳密に単色の入射光

ビームに対する解ですが,実際にはρ22とρ12の正弦関数的挙動

が経験的に観測されるのは,周波数ωが遷移周波数ω0の周りに

あって,その遷移周波数の分布の幅に比べ,周波数ωの広がりが

小さい入射光を用いた場合だけです。

しかし,原子放射過程に広がりを与える過程はまた,光学

Bloch方程式に修正をもたらし,その結果,ρ時間依存性が

変わります。こうした問題については,この第2章の後の方で

論じる予定で,Rabi振動の発生に関する立ち入った考察も,

  • 2.10までPendingです。

 

一方,広帯域の入射ビームという逆の極端な場合は,本章の

初めと第1章で扱ったアインシュタイン理論の領域です。

アインシュタインのB係数の導出に用いた(2.42)の表式:

|C(t)|2­=|Ω|2sin2{(/2ω0-ω)t/2}/(ω0-ω)2は,(2.87)

のρ22(t)=(|Ω|212)sin21t/2)で,(2.84)で定義した

Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2から|Ω|2を省き,Ω12=(ω0-ω)2

とすれば得られる,解(2.87)の特別な場合に相当しています。

|Ω|2が十分小さければ,

|C(t)|2­=|Ω|2sin2{(/2ω0-ω)t/2}/(ω0-ω)2から

(2.55)のB12=πe2|D12|2/(3ε0c2)なる結果を導出するに

至った以前の手順が,そのまま,成立します。

つまり,原子の核を原点とする束縛電子jの位置ベクトル

jとすると,=Σjjによる全電気双極子モーメントが

=-e(e>0)で与えられるため,振動電場E=0cos(ωt)

存在する場合の摂動の双極子近似の相互作用Hamiltonianは,

=-PE=eDE=eDE0cos(ωt)で与えられます。

定義によって,D12=∫ψ1ψ2dVですが,ベクトルDをD

=(X,Y,Z)と成分表示して,そのx成分X=Dcosθについても,

12=∫ψ1Xψ2dVとすれば,X12=D12cosθであって角度平均

では,<|X12|2>=(1/3)D122となります。

そして,一般には複素数のΩは,(2.23)でΩ=eE012/hにより

定義され,単色光の場合の遷移確率:N2/N=|C2(t)|2を示す(2.42)

の|C2(t)|2=(1/2)|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2は,振動

電場E=0cos(ωt)のビーム周波数ωがω0の周りに平均の

エネルギー密度W(ω)の分布を持って幅Δωで広がっているときは,

これは(1/2)|Ω|2に,(1/2)e2|E|02|X12|2/h2を代入し,電磁場

平均エネルギーの,∫W(ω)dω=|1/(2V)∫(ε0|E0|2)dV

=<(1/2)ε0|E0|2>なる対応から.(1/2)|Ω|2

=(1/2)e2|E0|2|X12|2/h2の因子(1/2)|E0|2を,時間平均:

<(1/2)|E0|2>=∫(W(ω)/ε0)dωに置換することで,

準位1→2の広帯域の遷移確率は,

|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)} W(ω)(Int)

で与えられる,とします。

ただし,積分因子(Int)は:Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

×[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2]で定義される量です。

このIntが(tΔω)→∞の極限で,Int=(1/2)πtとなる

ことから,<W(ω)>=∫W(ω)dωについてのB係数を,

12<W(ω)>=<|C(t)|2>={2e2<|X12|2>/(ε0c2)}

×W(ω)(Int)で与え,<W(ω)>=W(ω)(Int)であると

考えると,<|X12|2>=(1/3)D12を代入することで,

12=πe2|D12|2/(3ε0c2)なる計算結果を導いたのでした。

ここで用いた長時間極限:Int=(1/2)πtは,tΔω>>1の

条件下で得たのですが,これは,|Ω|が小さくて,その付帯条件:

|Ω|t<<1(2.91)が満たされていれば,やはり良い近似として

成立します。

この付帯条件は,要するに,入射光が原子遷移を飽和させる

ほどには強くないこと:つまり,アインシュタイン理論で仮定

した「原子遷移と入射エネルギー密度の比例性」を壊すほど

には強くないこと,を保証しています。

なお,光学Bloch方程式の解に含まれている飽和効果に

ついては,§2.9で論じる予定です。

 

  • 2.8 放射広がり

吸収と放出の基礎理論には線幅を広げる1つの機構が既

に含まれています。その広がりは,自発放出のプロセスから

生じるので,「放射による広がり」と呼ばれています。

自発放出の効果を2準位原子気体の感受率の量子力学的

導出の中に取り入れます。このとき,感受率と吸収係数の

関係から,放射によって広がった吸収線の形状に対する表式

が得られます。

 

さて,Z個の電子を持つ原子の気体が,原子の遷移周波数

ω0に近い周波数ωの電磁波から振動効果を受けている場合

を考えます。

前と同様,単一原子が電磁波とH=eDE0cos(ωt)で

記述される相互作用HamiltonianHが作用している場合を

扱います。この単一原子の結果を適当に平均して,乱雑な配向

をした原子(分子)の気体に対する類似の結果を求めます。

まず,印加電場:0cos(ωt)を,

(t)=(1/2)0{exp(-iωt)+exp(iωt)}(2.92)

と書きます。これが,気体に作用すると,(1.79)の=ε0χ

のような分極を生じます。

このχが1次の感受率と呼ばれる量です。

しかし,(2.92)の(t)のような電場では,感受率が周波数

ωに依存するとして,χ(ω)とする必要があり,(1.79)の静場

対する分極の式:=ε0χの代わりに,

(t)=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(-ω)exp(iωt)}

(2.93)と一般化されます。

この時間に依存する分極:(t)を量子力学的に計算し,それで

得た表式を,上の(2.93)の表式と比較することから感受率χ(ω)を

決めることにします。

 そのため,まず,代表的な1個の原子の分極が気体の分極に

与える寄与を調べます。前と同じく原子の核を原点とするZ個の

電子の位置ベクトルの総和:=Σj=1jを考え,そのx成分をXと

します。電気双極子モーメントのxに平行な成分は,-eX

=-eΣj=1jの期待値で与えられます。

よって,原子波動関数をΨ~(t)と書けば,電気双極子モーメントの

x成分dは,d(t)=∫Ψ~*(t)XΨ~(t)dV(2.94)で与えられます。

ただし,dV積分はZ個の電子全ての座標について取ります。

(※ つまり,(2.94)のd(t)=∫Ψ~*(t)XΨ~(t)dVは.電子:j

の波動関数をΨj(,t)(j=12,。。,Z)とするとき,

d(t)=Σj=1∫Ψj*(j,t)xjΨj(l,t)d3jと表わす表式

の記号的表現とかんがえられます。)

cω0=E2-E1を満たす遷移周波数をω0とすると,原子波動関数

Ψ^は,Ψ^(t)=C1(t)ψ1exp(-iE1t)+C2(t)ψ2exp(-iE2t)

(2.95)となりますから,これを(2.94)に代入すると,

d(t)=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

(2.96)が得られます。ただしXij=∫ψiXψjdV(i,j=1,2)

です。被積分関数:ψi()Xψj()は空間座標軸を反転すると,

ψi(-r)(-X)ψj(-r)となるので,空間波動関数のパリティに

依らず,i=jjなら,ψi()Xψj()はの奇関数になるため,

11=X22=0(2.97)となる,という性質を用いました。

また,定義からX21=X12(2.98)ですから,電気双極子

モーメントd(t)は,予期される通り実数量という表式になって

います。

必要な係数:C1(t),C2(t)は「光の量子論7」の

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)(2.31),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)(2.32)

を解けば得られます。

しかし,前述したように,これらの運動方程式から解が導ける

のは,電磁場の印加が無いΩ=0のときの定常状態の

波動関数だけであり,その解はC1,C2の初期値のままの定数

に過ぎません。

 

これは印加電磁場が無くても,励起原子は自発放出によって,

究極的には基底状態にへと減衰するはずである,という(1.77)

2=N20exp(-A21t)という挙動に相反します。

しかし,こうした事情は上記の(2.32)に自発放出を表わす項

付け加えることで,修正されます。

すなわち,Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)

(2.99)なる修正方程式を採用します。これから,もしも,Ω=0

ならdC2/dt)=-γC2により,C2(t)=C2(0)exp(-γt).(2.100)

が得られます。

N個の同じ原子から成る気体では,t=0ではN20個が励起

されているとき,時刻tで励起されている原子の数は,

2(t)=N|C2(t)|2より,N2(t)=N20exp(-2γt).(2.101)である

と評価されます。

これを,(1.77)のN2(t)=N20exp(-A21t)と比較すれば,

2γ=A21=1/τ.(2.102)(※τは蛍光寿命)と書けます。

そして,こうであるなら(2.99)のように,(2.32)に項:

-iγC2=-iA212/2を追加して,

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)とすること

で,蛍光の減衰が正しく与えられます。

他方,(2.31)のC1の発展方程式の方は,以下では使用しない

ので,ここで修正することはしません。

 

さて,アインシュタインのB係数の導出のときと同様,C1,C2

をΩ(Ω*)の1次まで計算します

Ω,or 電場E0は弱い,としているので,方程式(2.99)の

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)の左辺で,

1=1と近似し,また,Ω≠0とします。

そうして,C1=1とした(2.99)の近似をdC2/dt=-γC2

+(-iΩ/2)[exp{i(ω0+ω)t}+exp{i(ω0-ω)t}]

と書き,これを積分すると.

2(t)=(-Ω/2)[exp{i(ω0+ω)t}/(ω0+ω-iγ)

+exp{i(ω0-ω)t}/(ω0-ω-iγ)].(2.103)を得ます。

 

※[注10-1]:線形非同次方程式:df/dt=-af+g(t)

の解を求めるには,定係数線形同次方程式:

df/dt=-afの解:f=bexp(-at)から,定係数bをtの関数

b(t)にする定数変化法を用いれば可能です。

そこで,df/dt=-af+(db/dt)exp(-at)

=-af+g(t)から,db/dt=exp(at)g(t)なので,

b(t)=∫{exp(at)g(t)}より,

f(t)=[∫{exp(at)g(t)}dt]exp(-at)が得られる,という

話を,今から50年くらい前の大学1年のときに習った?こと

思い出しました。(注10-1終わり※)

 

(2.103)のC2(t)の解から,|C2(t)}2は|Ω|2のオーダーの

大きさであるとわかり,規格化条件:|C1(t)}2+|C2(t)}2=1

(2.104)により,|C1(t)}2=1-|C2(t)}2=1+O(|Ω|2)です

から,C1(t)は,1と|Ω|2のオーダーだけ異なるとわかります。

それ故,Ωの1次までの近似では,C1(t)=1(2.105)と置く

ことが正当化されます。

よって,単一原子の電気双極子モーメント:d(t)は(2.96)の

d(t)=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

に,上記のC2=(-Ω/2)[exp{i(ω0+ω)t}/(ω0+ω-iγ)

+exp{i(ω0-ω)t}/(ω0-ω-iγ)].とC1=1を代入すれば

Ωの1次近似までの式として得られます。

ただし,X12=∫ψ1Xψ2dVで.X21=X12.Ω=eE012/hc

ですから,これらも代入すると,d(t)={e2|X12|20/(2hc)}

×[{exp(iωt)/(ω0+ω-iγ)+exp(-iωt)/(ω0-ω-iγ)}

+exp(-iωt)/(ω0+ω-iγ)+exp(iωt)/(ω0-ω-iγ)}]

(2.106)を得ます。

この単一原子の双極子モーメントを,N根の同種原子の

気体分極:Pに結び付ける必要があります。

このとき,乱雑な配向の電子を持つ原子の平均として,|X12|2

に|X12|2=|D12|2/3を代入します。こうすれば,d(t)はtに

おける気体の1原子あたりの平均双極子モ^メントとなり,

気体分極:P(t)は,P(t)=Nd(t)/V.(2.107)で与えられる

ため,これに(2.106)のd(t)={e2|X12|20/(2hc)}

×[{exp(iωt)/(ω0+ω-iγ)+exp(-iωt)/(ω0-ω-iγ)}

+exp(-iωt)/(ω0+ω+iγ)+exp(iωt)/(ω0-ω+iγ)}]

と,|X12|2=|D12|2/3を代入したものを作り,(2.93)の,

(t)=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(-ω)exp(iωt)}

と比較することで,χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}.(2.108),

かつ,χ(-ω)=χ(ω)(2.109)を得ます。

ここで,第1章で求めた2ηκ=χ“(1.84)とK=2ωκ/c

(1.91)によれば,ωに依存した原子の吸収係数K(ω)は,

感受率をχ(ω)=χ’(ω) +iχ”(ω)と書いたときの虚部

χ”(ω)と,K(ω)={ω/(ηc)}χ”(ω)(2.110)によって

関係付けられます。

※(注10-2):以前の記事「光の量子論3」では.感受率

χを複素数に拡張して,χ=χ’+iχ”(χ’,χ”は実数)と

表わしました。

ところで,原子気体に分極がある場合,これを誘電体

と見なして,その誘電率をεとすると,感受率χは=χε0

定義され,D=ε0なので,ε=(1+χ)ε0です。

周波数ω,波数kで時間的,空間的に変動するz軸の正の

向きに進行する平面波:exp{-i(ωt-kx)}を仮想すると,

誘電体内の位相速度:ω/k=(εμ0)-1/2は,自由空間(真空)

中の光速:c=(ε0μ0)-1/2の(1+χ)-1/2倍に相当するので,

(ck/ω)2=1+χと書けますが,これの平方根も複素数です

から,ck/ω=η+iκ(η,κは実数)と書きます。

(※こう定義すると,光学においては,ηが屈折率,κが吸収係数

に相当する,ことがわかります。)

これを,(ck/ω)2=(1+χ’)+iχ”に代入すれば,

η2-κ2=1+χ’.および,2ηκ=χ“.を得ます。

ここで,単位時間に単位面積を通過する場のエネルギー

として定義される,電場,磁場の電磁波の強度:

そのPoyntingベクトルで,××0と定義

して,ベクトルIの大きさのサイクル平均を取り,<I>

書けば,<I>=(1/2)ε0cη|(r,t)|2なる式を得ます。

ただし,E(r,t)は,空間的,時間的に変動する電磁波の

電場であり,これはz軸向きの進行波の形の(r,t)

0exp{i(kz-ωt)}

0exp{iω(ηz/c-t)-ωκz/c}

を想定しています。

サイクル平均強度:<I>はzの関数となるので,改めて

<I>をI=I(z)と書き.I0をz=0におけるサイクル平均強度

すれば,I(z)=I0exp(-Kz)と書けます。

ただし,K=2ωκ/cです。

と書きました。

そこで,2ηκ=χ“を用いると,K={ω/(ηc)}χ”

が得られます。(注10-2終わり※)

さて,ck/ω=(1+χ)1/2=η+iκであって,2ηκ=χ“

を与える実数ηは,光学では屈折率を示しますが,これも

χ“=χ“(ω)と表わしたときはωの関数で,η=η(ω)と

書けます。しかし,この屈折れは,あらゆる周波数ωで1に

近い値であることが知られています。

そして,十分希薄な気体を考えると,ω~ω0で,γ<<ω0

とき,には,χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}.(2.108)の

{ }内では,明らかに,(第1項)>>(第2項です。

そこで,回転波近似を適用して第2項を無視します。

すると,(2.110)の,K(ω)={ω/(ηc)}χ”(ω)は,

η~1として,K(ω)~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}

×[(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}].(2.111)となります。

この吸収係数Kの周波数依存性:F1(ω)

=(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}(2.112)は,Lorentz型曲線

(Lorentz関数曲線)として知られています。

「ローレンツ型分布」の画像検索結果

これは∫F1(ω)dω=1.(2.113)と規格化されるように

係数因子(1/π)を付けています。

そして,F1(ω)の曲線はω=ω0で最大値;1/(πγ)を

取りますが,この1/2の高さ1/(2πγ)に相当するωは,

ω=ω0±γであり,その間のωの全幅は丁度2γです。

こうして,(2.102)の2γ=A21=1/τ(※τは蛍光寿命)

より,このωのω0の周りの放射広がり=2γが,その遷移に

関する自発放出のA係数に等しい幅を生じる.と述べる

ことができます。

 水素の2p状態が自発放出によって1s状態に減衰する

場合は,前々回の記事「光の量子論8」で詳細に計算し,

21~ 6.7×108-1(2.57)なる評価式を得ました。

そこで,この場合,放射広がりは,2γ~ 6.7×10 8-1

大きさです。よって,この遷移に対応する吸収線は,自発放出

のため,角周波数Δωでなく,周波数Δν=Δω/(2π)の意味で,

約10 8Hzの幅を持つことになります。

しかし,これは極端に狭い値であり,大抵の実験で観測される

原子吸収線の幅は,他の機構:例えば後述する予定のドプラー

(Doppler)効果か,または,原子の衝突が原因と考えられます。

ところが.これら別の付加的広がりについては,原理的には,

何らかの方法,例えば気体の冷却とか,気圧を下げるとか,

で減少させることができます。

一方,放射広がりの方は自発放出が原因なので,これを減少

させることは不可能であり,A21はΔωとして到達可能な最小

幅です。

この意味で,この自発放出による線幅を「スペクトル線の固有値」

と呼ばれます。

この放射による線幅は,アインシュタインのB係数の量子論的

表式を導くために「光の量子論7」で決めた|C2(t)|2の(2.44)

の表式|C2(t)|2={2e2{X12|2/(ε0c2)}

ω0-Δω/2ω0+Δω/2[W(ω)sin2{(ω-ω0)t/2}

/(ω-ω0)2]dω.で用いた入射光の周波数幅:Δωに,その最小値

として2γ=A21=1/τを提供します。

この(2.44)は,|C2(t)|2

={2e2|X12|2/(ε0c2)}W(ω)(Int)(2.45),

Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2]

(2.46)と表わされ,tΔω>>1なら,Int=πt/2((2.48)を

得ます。と書きましたが,この誘導放出のB係数を与える

遷移確率の因子Int=πt/2によるtへの直線的依存性は,結局,

自発放出の蛍光寿命よりはるかに大きい長時間,t>>τ

対してしか成立しない,と言えます。

 

今回は,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

 

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2019年10月28日 (月)

光の量子論9

※[光の量子論8」の第2章 原子・放射相互作用の量子力学

の続きです。

※(余談)今回の記事では,最後に(注)として長い計算

をしました。

私は上京してきた1977年以来,コンピュータ歴ウン

十年といっても,数式などは紙に書かないと,ちゃんと

は計算できない,という性分でしたが,近年,いつの頃

からか?ワードの上でタイプして計算し,紙(ノート)

やペンが無くても長い計算が可能な頭になりました。

これだと,紙は節約になるし,眼が悪くても字が拡大

できるのは,いいのですが,やはり紙とペンでやるより.

間違う件数が多くなったかもしれません。

さて,日本代表のラグビーは終わりました。

去年夏サッカーのW杯のときも思いましたが,次頑張る

とかいわれても,私には4年後の次なんかは無いのでね。

(余談終わり※)

さて,本題です。

まず,§2.5のDiracのデルタ関数の項の続きです。

δ関数は次の基本的性質を持っています。

(ⅰ)δ(ω-ω0)=δ(ω0-ω).(2.67)(δは偶関数)

(ⅱ)δ(ω0-bω)=(1/|b|)δ(ω0/b-ω)(2.68)

(ⅲ)δ[(ω1-ω)(ω2-ω)]

={δ(ω1-ω)+δ(ω2-ω)}/|ω1-ω2|.(2.69)

の3つです。

※(注9-1):上記のδ関数の性質を証明します。

[証明]:(ⅰ)∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω=f(ω0)

ですが,ω’=-ωと置けばf(ω)=f(-ω’),

dω’=-dωで.ωのω1→ω2の移動に対して.

ω’は(-ω1)→(-ω2)と移動します。

故に,∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω

=∫-ω2-ω1f(-ω’)δ(ω0+ω’)dω’

f(ω0)=f(-(-ω0))=[f(-ω’)]ω’=-ω0

です。そこで,δ(ω0+ω’)=δ(-ω0―ω’)

よって,ω’=-ωに戻すと,δ(ω0-ω0)

=δ(-ω0+ω)=δ(ω-ω0)を得ます。

(ⅱ) ∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-bω)dωを考えます。

これにおいて,x=bωと置くと,dω=dx/bであり,

ωのω1→ω2の移動に対してxの移動は,bω1→bω2

です。

故に,与式=(1/b)∫bω1bω2f(x/b)δ(ω0-x)dx

ω2>ω1ですからb>0ならbω2>bω1より,右辺

=(1/b)f(ω0/b)ですが,b<0ならbω2<bω1

なので,与式=-(1/b)∫bω2bω1f(x/b)δ(ω0-x)dx

=-(1/b)f(ω0/b)です。

したがって,δ(ω0-bω)=(1/|b|)δ(ω0/b-ω)

を得ました。

(ⅲ)∫ω1ω2f(ω)δ[(ω1-ω)(ω2-ω)]d ω

=∫ω1ω2f(ω)δ[ω2-(ω1+ω2)ω+ω1ω2]d ω

=∫ω1ω2f(ω)δ[{ω-(ω1+ω2)/2}2-{(ω1-ω2)/2}2]

d ωですが,ここでx={ω-(ω1+ω2)/2}2と置きます。

dx=2{ω-(ω1+ω2)/2}dω=±2x1/2dωであり,

ω<(ω1+ω2)/2なら,x1/2=-ω+(ω1+ω2)/2

(x1/2:(ω2-ω1)/2→0)で,ω=-x1/2+(ω1+ω2)/2,

dω=-(1/2)x-1/2dxです。

一方,ω>(ω1+ω2)/2なら,x1/2=ω-(ω1+ω2)/2

で(x1/2:0 →(ω2-ω1)/2),ω=x1/2+(ω1+ω2)/2,

dω=(1/2)x-1/2dxです。

そうして,ωのω1→(ω1+ω2)/2 →ω2の移動に対し,

xは,{(ω1-ω2)/2}2 → 0 → {(ω1-ω2)/2}2tと,ωの

2次曲線上を最小値0を通って往復します。

ω1ω2dω=∫ω1(ω1+ω2)/2dω+∫ω1(ω1+ω2)/2dω

=-(1/2)∫{(ω1-ω2)/2}2 0-1/2dx+(1/2)∫0 {(ω1-ω2)/2}

-1/2dx となります。

それ故,∫ω1ω2f(ω)δ[(ω1-ω)(ω2-ω)]d ω

=∫ω1ω2f(ω)δ[{ω-(ω1+ω2)/2}2-{(ω1-ω2)/2}2]

dω=(1/2)∫0 {(ω1-ω2)/2}[δ[x-{(ω1-ω2)/2}2]x-1/2

×{f(-x1/2+(ω1+ω2)/2)+f(x1/2+(ω1+ω2)/2)}]

dx なる等式を得ます。

 

ω2>ω1で,x={(ω1-ω2)/2}2のときは,常に

1/2=≧0より,x1/2=(ω2-ω1)/2 なので.上式

の右辺={f(ω1)+f(ω2)}/(ω2-ω1)が得られます。

したがって,ω2>ω1または,ω1>ω1の一般の場合,

δ[(ω1-ω)(ω2-ω)]

={δ(ω1-ω)+δ(ω2-ω)}/|ω1-ω2|を得ます。

(証明終わり)   (注9-1終わり※)

 

さて,B係数を導く際に,遷移の時間tが(1/ω0)や

(1/Δω)に比べて長い場合に成立する式:(2.48)から

得られる解を採用しました。

すなわち,前々回の記事「光の量子論7」では,光の

ビーム:W(ω)の存在下で時間tの間の1→2の遷移確率

が.|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)}W(ω)(Int)(2.45)

で与えられるという一般解を得ました。ただし,(Int)は

積分因子で,Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2[sin2{(ω-ω0)t/2}

/(ω-ω0)2]dω(2.46)で与えられます。

この式で,tΔω>>1(t>>1/Δω)の場合には,

Int~∫-∞dω1[sin21t/2)/ω12]=πt/2.(2.48)

なる近似が成立する,と書きましたが,その際,

この解をB係数の評価式として採用しました。

ところで,|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)}W(ω)

×(Int)(2.45)なる表式は,元々確定値ω0における表式

(2.42)|C2(t)|2~|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2

に,原子は広帯域照射を受けているというアインシュタイン

理論の基礎仮定を採用しω0の不確定さΔωを考慮して,

この表式をω0を遷移周波数の中心とするωのある範囲

にわたって積分したものです。

つまり,|C2(t)|2=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2

において,Ω­=eE012/hcと,(1/2)ε002=∫W(ω)dω

を利用して,|C2(t)|2={2e2{X12|2/(ε0c2)}

×∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2[W(ω)sin2{(ω-ω0)t/2}

/(ω-ω0)2]dω としたものです。

 

 

(1/ω0),(1/Δω)は,光の吸収を実験的に観測するとき,

それを制御する特有の時間です。

これがゼロに近づくtの長時間極限では,(2.59)のδ関数

という記号:δ(ω0-ω)

=(2/π)limt→∞sin2{(ω0-ω)t/2}/{(ω0-ω)2t}

を用いると,t→∞の長時間極限で.元の(2.42)式の

|C2(t)|2=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2

を,|C2(t)|2=(π/2)|Ω|2tδ(ω0-ω)

(2.70)という形に書くのが適切ということになります。

 

※(注9-2);上でDiracのδ関数を記号と呼んだのは,

その性質の証明などでは,これを普通の積分可能な関数の

ように,置換積分法などが適用可能として扱いましたが,,

これは,数学的には関数の範疇には入らず,積分記号無し

では意味のない記号のようなものという意味です。

現代的には,Schwartzのdistributionと呼ばれるもの,

または,佐藤の超関数(hyperfunction)と呼ばれるものに

代表される汎関数として定義される超関数の一種です。

(注9-2終わり※)

 

さて,(2.70):|C2(t)|2=(π/2)|Ω|2tδ(ω0-ω)の

結果は,Hamiltonianの時間に依存する部分がcos(ωt)

に比例し,周波数ωがω0のまわりに連続的分布する如何

なる遷移過程にも適用できて,行列要素Ωだけが過程に

よって異なります。そして,δ関数は積分の中にある

ときに限って意味を持ちます。

 

  • 2.6 光学Bloch方程式

(2.31),(2.32)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)

は,(2.8)の波動関数の表現:Ψ(,t)

=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)における

両係数C1,C2の定義と合わせて,振動電場と相互

作用する2準位原子の状態の厳密な記述を与えます。

しかし,すぐ前の§2.3では周波数ωの分布がω0

の付近で滑らかな解を場合の(2.31),(2.32)の解を

問題としていました。

そして,解はΩ or E0についての低次項だけを

拾ったという意味で近似解であり,(2.42)の表式:

|C2(t)|2=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2は,

回転近似と呼ばれる近似式です。

 

そこで,以下では(2.31),(2.32)のより一般的な解

を探すことにします。

しかし,やはり回転波近似を行ないますが.Ω or E0

の全ての次数の項を拾います。さらに,入射光は,単一

周波数ωの振動電場を持った単色光であると仮定します。

ビーム周波数ωに分布があれば,その効果は,単色光

に対する結果を平均すれば得られます。

ここで,原子密度行列:(ρij)の4つの要素を,

ρ11=|C1|2=N1/N,ρ22=|C2|2=N2/N.(2.71)

ρ12=C1221=C21.(2.72)で定義します。

対角要素:ρ1122は明らかに実数であり,規格化

の条件:|C1|2+|C2|2=1の要求は,ρ11+ρ22=1

(2.73)となります。(※ ρij=Cij;i,j=1,2)

原子集団ではN1=N|C1|2,N2=N|C2|2によって,

これらは,2準位内の平均数と結び付いています。

 非対角要素は複素数であり,ρ21=ρ12(2.74)

を満たします。

そして,密度行列が従う方程式は,

dρij/dt=Ci(dCj/dt)+Cj(dCi/dt)

(2.75)です。

故に,dρ22/dt=-dρ11/dt

=-C1(dC1/dt)-C1(dC1/dt)

=-iΩcos(ωt)exp(iω0t)ρ12

+iΩcos(ωt)exp(-iω0t)ρ21

=-icos(ωt){Ωexp(iω0t)ρ12

+iΩexp(-iω0t)ρ21}.(2.76) と書けます。

同様にして,dρ12/dt=-dρ21/dt

=iΩcos(ωt)exp(-iω0t)(ρ11-ρ22).(2.77)

を得ます。

これらは,密度行列に対する厳密な方程式ですが,

ここで回転波近似を施します。すなわち,cos(ωt)

=(1/2){exp(iωt)+exp(-iωt)}を代入し,

結果.ω~ω0より,exp{±i(ω0-ω)t}の項だけを

残しexp{±i(ω0+ω)t}の項を無視する近似をして,

dρ22/dt=-dρ11/dt

=(-i/2)Ωexp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}ρ21.(2.78)

dρ12/dt=dρ21/dt

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)(2.79)

が得られるわけです。

これは,「光学Bloch方程式」と呼ばれるもの

として知られており,振動磁場内のスピンの運動を

記述するためにBlochが導出したものと同類のもの

です。それは,ここで考察した2準位原子の量子力学

が,形式の上では同じ2自由度のスピン:1/2の系の

ものに全く等しい,からです。

 

  • 2.7 Rabi振動

上記最後の方程式(2.78),(2.79)は,これ以上の近似

無しで解くことができます。これらは,原子密度行列の

4つの要素に対する4つの連立方程式系を成しています。

試行解として,ρ11(t)=ρ11(0)exp(λt)(2.80a),

ρ22(t)=ρ22(0)exp(λt)(2.80b),

ρ12(t)=ρ12(0)exp{-i(ω0-ω)t}exp(λt)(2.80c),

ρ21(t)=ρ21(0)exp{i(ω0-ω)t}exp(λt)(2.80d)

を代入すると,4成分の縦ベクトル:

ρ^(0)=[ρ11(0)22(0)12(0), ρ21(0)]に対し,

[-λ,0,(i/2)Ω,(-i/2)Ω]ρ^(0)=0.(2.81a),

[0,-λ,(-i/2)Ω,(i/2)Ω]ρ^(0)=0.(2.81b),

[(i/2)Ω,(-i/2)Ω,i(ω0-ω)-λ,0]ρ^(0)

=0 .(2.81c),

[(-i/2)Ω,(i/2)Ω,0,-i(ω0-ω)-λ]ρ^(0)

=0 .(2.81d)

なる(4×4行列)×ρ^(00の方程式を得ます。

このとき,λの取り得る値は,これがρ^(00という

自明な解以外の解を持つという条件から決まります。

そこで,方程式の係数行列の行列式=0から,

λ22+(ω0-ω)2+|Ω|2}=0.(2.82)なる

特性方程式を得ます。(※ 上式の導出=行列式の計算

の過程は省略そます。)

 この方程式の相異なる3根は,

λ1=0,λ2=iΩ13=-iΩ1.(2.83)で与えられます。

ただし,Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2.(2.84)です。

(※Ωは複素数ですがΩ1は実数であることに注意)

したがって,密度行列要素に対する最も一般的な解は,

ρij(t)=ρij(1)+ρij(2)exp(iΩ1t)+ρij(3)exp(-iΩ1t)

(2.85)で与えられるはずです。

ところが,この一般形は(2.80)で仮定した形の

ρ11(t)=ρ11(0)exp(λt),ρ22(t)=ρ22(0)exp(λt),

ρ12(t)=ρ12(0)exp{-i(ω0-ω)t}exp(λt),

ρ21(t)=ρ21(0)exp{i(ω0-ω)t}exp(λt)

についてのλが満たすべき方程式が上記特性方程式

なので,実は非対角要素には,さらに振動的な指数関数

因子が加わります。

つまり,対角要素は,(2.85)そのままの形で,

ρ11(t)=ρ11(1)+ρ11(2)exp(iΩ1t)+ρ11(3)exp(-iΩ1t),

ρ22(t)=ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)

ですが,非対角要素は,上記の仮定:(2.80)により

ρ12(t)=exp{-i(ω0-ω)t}

×[ρ12(1)+ρ12(2)exp(iΩ1t)+ρ12(3)exp(-iΩ1t)]

ρ21(t)=exp{i(ω0-ω)t}

×[ρ21(1)+ρ21(2)exp(iΩ1t)+ρ21(3)exp(-iΩ1t)]

となります。

 

※(注9-3):特性方程式の解が重根の場合,

それがλ=α≠0なら,それに属する独立な2つの解

としては,exp(αt)の他に,texp(αt)をとることが

できます。この重根がα=0なら,独立解は1とtです。

しかし,今の場合,ρ21(t)=ρ12(t)を考慮すると,

4つの成分のうち独立なのは,ρ11(t),ρ22(t),ρ12(t)

の3つだけと考えられますから,係数行列は3×3で十分

と考えて,λ=λ1=0は真の重根ではなく単根であり1

(定数)のみが,それに属する独立解です。

さらにρ11(t)+ρ22(t),=1の条件をも考慮すれば,

実は独立成分は2つだけです。

しかし,取り合えず,4つの成分全てについて対角要素は

ρ11(t)=ρ11(1)+ρ11(2)exp(iΩ1t)+ρ11(3)exp(-iΩ1t),

ρ22(t)=ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)

となり,非対角要素は,

ρ12(t)=exp{-i(ω0-ω)t}

×[ρ12(1)+ρ12(2)exp(iΩ1t)+ρ12(3)exp(-iΩ1t)]

ρ21(t)=exp{i(ω0-ω)t}

×[ρ21(1)+ρ21(2)exp(iΩ1t)+ρ21(3)exp(-iΩ1t)]

となるとしておきます。(注9-3終わり※)

 

さて,λ=λ1=0に対応する定数項は解を光学Bloch

方程式に代入し返せば決まるはずです。

また,λ2=iΩ13=-iΩ1で,Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2.

ですから,|Ω|2の存在のため原子と光ビーム結合系での

周波数Ω1は,結合がないときの,それぞれの値:ω0やωとは

異なります。

そして,|Ω|2はビームの振動電場の振幅:|E0|の2乗に

比例するので,この結合系の周波数のシフトと分裂は,静電場

を印加したときの原子のエネルギー準位のシフトと分裂から

の類推により,動的シュタルク(Stark)効果と呼ばれています。

これは後の第8章で述べる予定の「共鳴蛍光スペクトル」

の観測にかかる重要な効果をもたらすものです。

 

光学Bloch方程式の解は,任意の初期条件の場合は,

甚だしく長くなるので,以下の議論は特別な場合に限る

ことにします。

※(注9-4);密度行列に対する厳密な方程式:(2.78),(2.79)

の解は.初期条件がρ22=0,ρ12=0(※C2=0)(2.86)の場合,

ρ22=(|Ω|212)sin21t/2).(2.87)

ρ12=exp{-i(ω0-ω)t}(Ω/Ω12)sin(Ω1t/2)

×{-(ω0-ω)sin(Ω1t/2)+iΩ1cos(Ω1t/2)}.(2.88)

となることを証明します。

[証明]:まず,ρ22の一般解:

ρ22(t)=ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)

+ρ22(3)exp(-iΩ1t)において,初期条件;

ρ22(0)=0より,ρ22(1)+ρ22(2)+ρ22(3)=0です。

また,ρ12の一般解:ρ12(t)=exp{-i(ω0-ω)t}

×[ρ12(1)+ρ12(2)exp(iΩ1t)+ρ12(3)exp(-iΩ1t)]

において,初期条件;ρ12(0)=0より

ρ12(1)+ρ12(2)+ρ12(3)=0です。

ここで,Bloch方程式に,これらの一般解を代入して,

それに,条件:ρ11=1-ρ22より,ρ11-ρ22=1-2ρ22,

および,ρ21=ρ12を適用します。

 

まず,(2.78)のdρ22/dt=-dρ11/dt

=(-i/2)Ωexp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}ρ21は.

1ρ22(2)exp(iΩ1t)-iΩ1ρ22(3)exp(-iΩ1t)

=(-i/2)Ω

×{ρ12(1)+ρ12(2)exp(iΩ1t)+ρ12(3)exp(-iΩ1t)]

+(i/2)Ω

×{ρ12(1)*+ρ12(2)*exp(-iΩ1t)+ρ12(3)*exp(iΩ1t)]

(A1)と書けます。

次に,(2.79)の,dρ12/dt=dρ21/dt

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)は.

-i(ω0-ω)exp{-i(ω0-ω)t}ρ12(1)

+i{Ω1-(ω0-ω)}exp[i{Ω1-(ω0-ω)}t].

-i{Ω1+(ω0-ω)}exp[-i{Ω1+(ω0-ω)}t]ρ12(3)

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}

×[1-2{ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)}],

すなわち,-i(ω0-ω)ρ12(1)

+i{Ω1-(ω0-ω)}exp(iΩ1t)ρ12(2)

-i{Ω1+(ω0-ω)}exp(-iΩ1t)ρ12(3)

=(i/2)Ω

[1-2{ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)}]

(A2)と書けます。

そして,(A1)からは,まず,Ωρ12(1)-Ωρ12(1)*=0.(A3),

つまり,Ωρ12(1)は実数である,という結果を得ます。

また,Ω1ρ22(2)=-(1/2)(Ωρ12(2)-Ωρ12(3)*)(A4),

かつ,Ω1ρ22(3)=(1/2)(Ωρ12(3)-Ωρ12(2)*).(A5)を

得ます。

一方,(A2)からは,まず,

-(ω0-ω)ρ12(1)=(1/2)Ω(1-2ρ22(1))より,

ρ22(1)=1/2+{(ω0-ω)/Ω}ρ12(1)(A6)を得ます。

次に,{Ω1-(ω0-ω)}ρ12(2)=-Ωρ22(2)(A7),

かつ,{Ω1+(ω0-ω)}ρ12(3)=Ωρ22(3)(A8)

も得られます。

さて,Ωρ22(2)=-{Ω1-(ω0-ω)}ρ12(2)(A5),

および.Ωρ22(3)={Ω1+(ω0-ω)}ρ12(3)(A6)

を得ます。と書きました。

ところが,ρ22(2)+ρ22(3)=-ρ22(1)

かつ,ρ12(2)+ρ12(3)=-ρ12(1)なので,これは,

Ωρ22(1)=(ω0-ω)ρ12(1)+Ω112(2)-ρ12(3))

を意味します。

一方,Ωρ22(1)=Ω/2+(ω0-ω)ρ12(1)

ですから,(ω0-ω)ρ12(1)+Ω112(2)-ρ12(3))

=Ω/2+(ω0-ω)ρ12(1),つまり,ρ12(2)-ρ12(3)

=(1/2)(Ω/Ω1)が得られます。

以上から,Ωρ22(1)=(ω0-ω)ρ12(1)

+Ω112(2)-ρ12(3))=(ω0-ω)ρ12(1)+Ω/2です。

これと,ρ12(2)+ρ12(3)=-ρ12(1)から,辺々加えて

12(2)=(1/2)(Ω/Ω1)-ρ12(1)(A7),また後の式から

前の式を引いて,2ρ12(3)=-(1/2)(Ω/Ω1)-ρ12(1)(A8)

です。しかし,これらは,これ以上,何も新しい式を生まない

ことがわかりました。これ以上の変形をしてもトートロジー

なので,この手順は,ここで停止です。

そこで,次策として,取り合えず,

ρ22=ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)

に戻って,このρ22=|C2|2が実数であることに着目します。

つまり,ρ22=ρ22なので,

ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)

=ρ22(1)*+ρ22(2)*exp(-iΩ1t)+ρ22(3)*exp(iΩ1t)

です。

それ故,ρ22(1) =ρ22(1) *は実数であること,および,,

ρ22(2)=ρ22(3),かつ,ρ22(3)=ρ22(2)*であることが

わかります。故に,ρ22(2)=a+ib(a,bは実数)と置けば,

ρ22(3)=a-ibです。そして,さらに.Ωρ12(1)=c(実数)

と置きます。

すると,まず, ρ22(1)=-(ρ22(2)+ρ22(3))=-2a

(実数)と書けます。

また,前に得た式:Ωρ22(1)=(ω0-ω)ρ12(1)+Ω/2

により,|Ω|2ρ22(1)=c(ω0-ω)+|Ω|2/2なので,

-2a=c(ω0-ω)/|Ω|2+1/2,

あるいは,a=-1/4-(c/2)(ω0-ω)/|Ω|2という

aとcの関係式が得られます。

他方.Ω12(2)+ρ12(3))=-Ωρ12(1)=-c

Ω12(2)-ρ12(3))=(1/2)(|Ω|21)ですから,

Ωρ122) =(1/4)(|Ω|21)-c/2(実数)(A7)

Ωρ12(3) =-{(1/4)(|Ω|21)+c/2}(実数)

(A8)です。

また,先の(A5),(A6)は,,

|Ω|2ρ22(2)=-{Ω1-(ω0-ω)}Ωρ12(2).

|Ω|2ρ22(3)={Ω1+(ω0-ω)}Ωρ12(3)です。

 

そこで,結局,cかaの一方の具体的な値がわかれば,

ρ12(1)=c/Ωとρ22(1)=-2aだけでなく,(A7)(A8)

から,Ωρ122)ρ122)がわかり,それから芋づる式に,

(A5),(A6)から|Ω|2ρ22(2),|Ω|2ρ22(3)もわかるので,

ρ12とρ22の全ての定係数が決まるので,解が定まって

問題は完全に解決します。

 

それ故,以下,これら以外の式からaまたはcを導出

することを試みます。

まず,2ib=ρ22(2)-ρ22(3)ですから,

2ib|Ω|2=|Ω|222(2)-ρ22(3))

=-{Ω1-(ω0-ω)}Ωρ12(2)-{Ω1+(ω0-ω)}Ωρ12(3)

=-Ω1Ω12(2)+ρ12(3))+(ω0-ω)Ω12(2)-ρ12(3))

です。つまり,cΩ1+(ω0-ω)Ω12(2)-ρ12(3))

=2ib|Ω|2ですが,Ω12(2)-ρ12(3))=(1/2)(|Ω|21)

であり,これは実数なのでcΩ1+(1/2)(ω0-ω)(|Ω|21)

=2ib|Ω|2(となり(実数)=(純虚数)と書けることになります。

これが成立するには両辺ともゼロであることが必要十分であり,

特にb=0です。

左辺=0からは,c=-(1/2)(ω0-ω)(|Ω|212)を得ます。

かくして,cの値が決定されました。

 

したがって,まず,aをcで表わす関係式;

a=-1/4-(c/2)(ω0-ω)/|Ω|2により,

a=-1/4+(1/4)(ω0-ω)212

={1/(4Ω12)}{(ω0-ω)2-Ω12}を得ます。

ところが,(2.84)のΩ1の定義:Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2

によれば.(ω0-ω)2-Ω12=-|Ω|2です。

そこで,結局,b=0より,ρ22(2)=ρ22(3)=a=-|Ω|2/(4Ω12)

を得ます。さらに,ρ22(1)=-2a=|Ω|2/(2Ω12)も得られます。

 

一方,Ωρ12(2)=(1/4)(|Ω|21)-c/2

=(1/4)(|Ω|212){(ω0-ω)+Ω1}によって,

ρ12(2)=(1/4)(Ω/Ω12){(ω0-ω)+Ω1}であり,,

Ωρ12(3)=-{(1/4)(|Ω|21)+c/2}

=(1/4)(|Ω|212){(ω0-ω)-Ω1}によって,

ρ12(3)=(1/4)(Ω/Ω12){(ω0-ω)-Ω1}を得ます。

最後に,ρ12(1)=c/Ω=-(1/2)(Ω/Ω12)(ω0-ω)

です。

以上から,

ρ22=ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)

=|Ω|2/(2Ω12)[1-(1/2)|exp(iΩ1t)+exp(-iΩ1t){}

=||Ω|2/(2Ω12)}{1-cos(Ω1t)}です。

すなわち,ρ22(t)=(|Ω|212)sin21t/2)

を得ました。

また, ρ12exp{i(ω0-ω)t}

=ρ12(1)+ρ12(2)exp(iΩ1t)+ρ12(3)exp(-iΩ1t)

=-(1/2)(Ω/Ω12)(ω0-ω)

+(1/4)(Ω/Ω12){(ω0-ω)+Ω1}exp(iΩ1t)

+(1/4)(Ω/Ω12){(ω0-ω)-Ω1}exp(-iΩ1t)

=-{Ω/(2Ω12)}(ω0-ω){1-cos(Ω1t)}

+{Ω/(4Ω1)}{2isin(Ω1t)}

=-(Ω/Ω12)}(ω0-ω)sin21t/2)

+{Ω/Ω1)isin(Ω1t)cos(Ω1t/2)

故に,ρ12(t)=(Ω/Ω12)exp{-i(ω0-ω)t}

sin(Ω1t/2)[-(ω0-ω)sin(Ω1t/2)+iΩ1cos(Ω1t/2)]

が得られます。(証明終わり)  (注9-4終わり※)

 今回は計算が長くなったので,ここまでにします。(つづく)

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

 

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2019年10月20日 (日)

雑感(つづき)

10/8に最近の雑感を箇条書きで書きました。

(1)2020東京オリンピック

何故,無理してまで,アスリートだけでなく観客

も含め,熱中症など危険が予測される,特に近年の

日本の夏=灼熱と多湿の季節にあえて屋外競技を

強行するのか?疑問です。単純な解決策は1964年の

ときと同じく開催を秋にすることです。主だった欧米

諸国の希望?バカンス時期に合わせたとか,いろいろな

都合もあるのでしょうが。。健康第一です。

と書きましたが,まさか,時期でなく場所の方を札幌

に変えろと一方的に決められるとは?驚きました。

東京オリンピックなのに札幌で,この時期で,そこまで

の変更の余地があるなら,スポンサーである米放映権など

無視して,時期の方を台風も終わる10月末頃に変えた方

現実的な策だと思います。

東京周辺の夏が暑くて,選手も観客も危険だ,というなら

トライアスロンやゴルフ,サッカーなど,長時間の屋外競技

は全てそうですし,マラソンと競歩だけ場所変更というのも

変な話です。

一方,経済効果を無視して場所じゃなく時期を延期すれば.

健康面や施設の準備も含めて.ほぼ全て解決です。それでダメ

というなら,いまどきは前と違ってオリンピック立候補をやめる

都市も続出のようですから,返上すると脅迫するのもいいかも。。

日本だって8月は高校野球やインターハイにプロ野球(ナイター)

などの最盛期だし,10月末頃ならシーズンオフで,適切なのでは?

極端な話.冬だって水泳ができて,逆に夏だってスキーやアイス

スケートでも可能な時代だし,どうしても米の都合に合わせるのが

必要なら,もう,これからは南半球での開催しかないでしょう。

 

(2)太陽光発電の勧め,を書いていたら,丁度30年くらいも前の

リチウム電池の開発で,吉野さんがノーベル化学賞をもらうという

タイムリーな出来事がありました。

コスト削減,かつ大量蓄電可能なモノを最先端の技術者が

本気で研究すれば,化石燃料も放射性核も不要で十分な電力の

供給を可能にできる道が開けるのでは?と改めて思いました。

 

最後に,台風,大雨洪水の警報ですが,地震刑法も含め,本当に

人命のため避難が必要で,避難所に移動するのも命に危険な

可能性がある場合,本気で助ける気があるのなら,歩けない人

でも何でも窓口に来るのを待ってるという,お役所仕事的対応

じゃなく,人も車も大いに不足なのは承知なのですが,何とか

各戸をまわって,直接避難の必要性を説き,避難所までの移動

の手助けまで,しないと,犠牲者はなくならないと思います。

情報を耳や目に伝えても,人が実際に行動に出る,というのとは

雲泥の差があるので,自己責任が基本とはいっても,後からヘリ

などで救助するよりも,予め誰かが手を引っ張ってでも助ける,と

いう行為があってもいいと思うのですが。。。

まあ,こんなこと言いながらも自らが歩行困難で,天災に逢あったら

半分以上は諦める,他人任せの無責任ジジイです。

実際は,ヨソの被害は「対岸の火事」で,目下の興味はラグビー

いうような罰当たりなのですが。。。

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2019年10月12日 (土)

光の量子論8

※第2章 原子・放射相互作用の量子力学

の続きです。

※(余談)このブログをアップする時点で10/12に入った

真夜中です。まもなく,関東に大きい台風が来るらしい

ですが,ほぼ寝たきり生活の死に損ないジジイなので,

自分のことダケであれば,あまり気にしません。

15日に2ヶ月分の年金が入る予定で.まだ今月の家賃

も払っていません。ここ西巣鴨に引っ越してきたのは,

6年間住んでいた,巣鴨駅から健康な足で徒歩10分の

アパートの建てかえ,立ちのきのせいで,やむなく

2016年の10月に移ってきたので,ほぼ3年経ちました

が.以来,偶数月の家賃は僅かながら年金が入るまで常に

未払いですが,家主も管理会社も優しいのか,前に住んで

いたときの管理のエイブルと違って,義務的であろう家賃

の催促のクレームもないので助かっています。まあ,催促

されてもギリギリで暮らしていて,無いソデは振れません

が。。その代わり,次の奇数月は前月の残りの金で期限通り

に払っています。ときどき入院していても,支払いはネット

バンクからしているので,幸い半月以上の滞納はゼロです。

というわけで,年金前の今頃が最も金欠で食べ物も食事用

のモノくらいしかなく,好きな間食もできず,仕方なくブログ

書きなどに集中するしか,他に能動的なことはできないため,

入院中を除いて,大体2ヶ月ごとの金欠時期にブログ記事アップ

が増えるわけです。

村上春樹さん,また,ノーベル賞ダメでしたね。

まあ,アインシュタインもノーベル賞をもらったけど,

「相対性理論」にじゃなく,光量子論でしたかね。

大体,賞を選ぶ側が選ばれる側を正しく評価できるほど

優秀とは限らないので,お金が欲しいなら別ですが,ガッカリ

することもないような。ノーベル賞より上だから選ばれない

とかね。。(余談終わり※)

さて,本論に入ります。

  • 2.4 B係数の表式

多数存在する同種の原子数をNとし,それらに

同時に相互作用H1が加わったとします。

これらの原子は,時刻tで,ψ1に見出される確率

|C1|2と,ψ2に見出される確率:|C2|2を持ちます。

それ故,2つの状態にある平均粒子数は,それぞれ,

1=N|C1|2N,N2=N|C2|2.(2.50)となります。

同種の原子,または分子から成る気体であっても,

対応する電子状態の空間的配向は,原子(分子)から,

次の原子(分子)へと不規則に変化します。

前にx軸の正の向きにとった電磁波の電場の向き

の単位ベクトルをεとします。

すると,行列要素X12はX12εD12.(2.51)と,

書けます。ただし,12=∫ψ1ψ2dV(2.52)です。

与えられた1対の状態ψ1とψ2に対して,D12は,

空間的に,ある方向を向きますが,原子(分子)の配向が

乱雑なため,それは気体中では不規則な運動をします。

12と電場の単位ベクトルεのなす角をθとすると,

|X12|2を求めるための配向による平均は,<cos2θ>

=1/3.(2.53)で与えられる,cos2θの平均値を含んで

います。

※(注8-1):実際,具体的に計算すると,<cos2θ>

=∫-11d(cosθ)cos2θ/∫-11d(cosθ)=(2/3)/2

=1/3 です。(注8-1終わり※)

こうして,前記事の,|C2(t)|2=πe2{X12|2

×W(ω)t/(ε0c2)(2.49)の因子:|X12|2を,

<|X12|2>=(1/3)|12|2.(2.54)に置換する必要

があることがわかります。

そこで,前記事で得たB係数の評価式:(2.49)

のB12=πe2{X12|2/(ε0c2)と上の(2.54)から,

12=πe2{12|2/(3ε0c2).(2.55)という,

アインシュタイン係数に対する量子力学による

結果が得られます。

 

入射電磁波を遮断すると,H1は無くなるので,

ψ12はHだけから成る全Hamiltonianの定常

状態に戻ります。

(※H=T+V:原子のHamiltonianです。)

仮に,状態2が状態1よりエネルギーが低くても,

本章の議論では,入射ビ-ム照射が無いと1から2

への遷移は起こることが無いと結論されます。

何故なら,本章の「半古典的方法」では自発放出の

過程を含まないからです。

その過程を含む満足な扱いをするには,量子力学に

よる「放射場(量子化された輻射場)」を用いる必要

があります。ですが,そうした扱いは第5章までは

Pendingとします。

 

しかしながら,自発放出のA係数の正しい表式は,

既に,第1章の§1.6 (本ブログでは光の量子論2)

で,熱平衡の場合のアインシュタインの現象論を空洞

放射のPlanckの法則と比較することから,

21={hcω3/(π23)}B21(1.51),および,

(g1/g2)B12=B21.(1.50)なる式として得ています。

 

これに,上の(2.55)のB12=πe2|12|2/(3ε0c2)

とω~ω0を代入すれば,A21={hcω03/(π23)}

×(g1/g2){πe2|12|2/(3ε0c2)},すなわち,

21={g12ω03|12|2|/(3πε02c3)}.(2.56)

 

これからA係数の値は水素原子の場合には容易に

計算できます。

状態1を1s,状態2を2p状態として1と2の間

の遷移を考えます。1s状態と遷移速度が等しい3つ

の2p状態があり,それらを合成したB12係数は(2.55)

で与えられた,B12=πe2{12|2/(3ε0c2)の3倍の値

を有し,その場合のD12は1s状態と2p状態のどれか

1つの間の行列要素を意味します。

1=1,g2=3とし,前々記事で求めたボーア半径

の値:a0=4πε0c2/(me2)~ 5×10-11m(2.16)

や,Ω=215/2eE00/(35c)(2.27)の表式,そして,

ω0=(3/4)ω(2.28),hcω=me4/(32π2ε02c2)

(2.29).および,Ω­=eE012/hc(2.23)を用いて,

(2.56)の3倍のA21=e2ω03|12|2/(3πε0c3)

を計算します。|12|2=3|X12|2ですから,まず,

12を計算します。

定義によって,X12=∫ψ1()xψ2()d3

です。ただし,r|r|とおけばxrcosθです。

 

量子力学の初等的教科書によれば,

水素原子の1s(n=1,l=0)の状態の波動関数は

ψ1()=π-1/20-3/2exp(-r/a0)です。

また,2p(n=2,l=1)の状態でm=0の状態の

波動関数は,ψ2()=(2a0)-3/2(2-r/a0)

exp{-r/(2a0)}{3/(8π)}1/2cosθ です。

それ故,X12=π-1/20-3/2{3/(8π)}1/2(2a0)-3/2

×(2π)∫-11d(cosθ)cos2θ

×∫0[r3(2-r/a0)exp{-3r/(2a0)}dr

=(2-3/2/31/2)a0-3

×∫0[r3(2-r/a0)exp{-3r/(2a0)}dr

と書けます。

ここで,u=3r/(2a0)⇔r=(2a0/3)uと,

動径部分の積分変数をrからuに置換すると,

0[r3(2-r/a0)exp{-3r/(2a0)}dr

=(25/34)a040[(u3-u4/3)exp(-u)du

=(25/34)a04{Γ(4)-Γ(5)/3}=-(29/34)a04

です。

故に,X12=-(2-3/2/31/2)a0-3×(29/34)a04

=-(215/2/39/2)a0を得ます。そこで,|X12|2

=21502/39です。

したがって,|12|2=3|X12|2より.

21=e2ω03|12|2/(3πε0c3)

=e2ω03|X12|2/(πε0c3)}

=e2ω0321502/(39πε0c3)

となりますが.この右辺に,

ω0=(3/4)me4/(32π2ε02c3)

=3me4/(27π2ε02c3),および,

0=4πε0c2/(me2)を代入します。

ω03=33312/(221π6ε06c9),および,

02=24π2ε02c4/(m24) なので,

21=e2ω0321502/(39πε0c3)

=me10/(2236π5ε05c63)を得ます。

最後に,具体的な現在の観測値:

m~ 3.1×10-31kg,e~ 1.6×10-19C,

ε0~ 8.85×10-12F/m,c~ 3×108m/s.

c ~ 1.254×10-34Js,π=3.1415..

を代入して長い計算をすると,A21の分子

=me10~3.4×1021910kgであり,分母

=2236π5ε05c63~ 5.07×10-2285-263

ですから,結局,A21~ 6.7×108-1.(2.57)

を得ました。(※ 参考の教科書の(2.57)と

僅かに違うので,計算違いがあるかも

知れません。しかし,オーダー的には両者は

一致しました。)

 

※(注8-2):単位のチェックをします。

SI単位系での静電気力のCoulombの法則:

F=(4πε0)-12/r2から,誘電率の単位は,

0]=[e2/r2]/[F]を満たすはずです。

つまり,F/m=C2-2-1ですから,

F=C2-1-1です。ただし,誘電率の単位:

F/mのFはファラッド(Farad)です。また,

Nは力の単位:Newtonで,N=kgms-2でも

あります。

21の表式の分子の単位は,[me10]=C10kg

でしたが,分母の単位は,[2236π5ε05c63]

=F5―263=(C2-1-1)5-2(Nm)63

=C10-1Ns3=C10-1(kgms-2)s3

=C10 kgsです。

したがって,[A21]=[me10/2236π5ε05c63]

=s-1を得ました。(注8-2終わり※)

さて,前に,「光の量子論3」では,Aの逆数:I,

つまり,A=1/I(1.78)で与えられるIは,対象と

する遷移の「蛍光寿命」,または「放射寿命」として

知られています。 と書きました。

そこで,(2.57)のA21~ 6.7×108-1から,水素原子の

2p状態の放射寿命は,およそ,1.5×10-9sであることが

わかります。

このA21~ 6.7×108-1で示される自然放出の速さ

と比較して,これと同じ遷移の誘導放出の速さは,W(ω)

~ 108(W/m2)の強度と,dω~ 2π×1010-1程度の幅

を持ったビームの場合:B21W(ω)dω~3×107-1(2.59)

くらいで,自然放出の速さの100分の1以下です。

 

  • 2.5 Diracのデルタ関数

アインシュタインの係数を計算する上述の方法は広い

使い道があるので.この結果を他の問題にも適用しやすい

形に直しておきます。

まず,Diracのデルタ関数:δを次式で定義します。

すなわち,δ(ω0-ω)

=(2/π)limt→∞sin2{(ω0-ω)t/2}/{(ω0-ω)2t}

(2.59)です。

前記事では,積分因子:IntをInt

=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω[sin2{(ω-ω0)t/2}/{(ω-ω0)2]

(2.46)と定義し,これについて,Δω>>1なら,ω1=ω-ω0

として.Int~∫dω1[sin21t/2)/ω12]=πt/2.(2.48)

となることを,記述しました。

 それ故,∫δ(ω0-ω)dω=1.(2.60)です。

デルタ関数δ(ω0-ω)は,ω=ω0では無限大であり,

ω≠ω0では至るところゼロです。

したがって,もっと一般的に.ω1<ω0<ω2の場合

は,∫ω1ω2δ(ω0-ω)dω=1,その他の場合(ω0<ω1

またはω0>ω2)には.∫ω1ω2δ(ω0-ω)dω=0.(2.61)

と書けます。

そして(2.59)のデルタ関数δの定義:δ(ω0-ω)

=(2/π)limt→∞sin2{(ω0-ω)t/2}/{(ω0-ω)2t}

を利用すると,δ-関数の性質を証明することができます。

まず,ω=ω0を特異点としないωの任意関数をf(ω)

として,∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω

=(2/π)limt→∞ω1ω2dωf(ω)sin2{(ω0-ω)t/2}

/{(ω0-ω)2t}(2.62)を考えます。

(※左辺の積分が,右辺の積分の極限値によって定義

される,と解釈します。)

右辺の積分変数をx=(ω-ω0)tに置換すると

ω1<ω0<ω2の場合は,∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω0)dω

=(2/π)limt→∞(ω1-ω0)t(ω2-ω0)tf(x/t+ω0)

|sin2(x/2)/x2}dx=(2/π)f(ω0)

-∞|sin2(x/2)/x2}dx=f(ω0)(2.63)であり,

その他の場合は,∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω=0 

という妹性質が得られます。

※(注8.3):(2.63)を証明します。

ω=ω0を特異点としない関数fでは,たとえ

ω=ω0で連続な関数でなくても被積分関数因子と

しては,limt→∞f(x/t+ω0)=f(ω0)と挙動し,

ω1<ω0<ω2の場合は,limt→∞(ω1-ω0)t(ω2-ω0)t

=∫-∞です。そして,∫-∞|sin2(x/2)/x2}dx

=π/2なる公式を用いると,右辺=f(ω0)です。

 その他のω0の場合には,limt→∞(ω1-ω0)t(ω2-ω0)t

=∫ or ∫-∞-∞=0ですから,(2.63)とその後の

言明の成立は明らかです。(注8.3終わり※)

 

さて,δ(ω0-ω)

=(2/π)limt→∞sin2{(ω0-ω)t/2}/{(ω0-ω)2t}

(2.59)で与えた特殊な極限,以外にも,これと等価な

δ関数の別の表わし方が多々あります。

それがδ関数である,という基準は,

ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω=f(ω0)(ω1<ω0<ω2)

(2.63),および,∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω

(それ以外)を満たすことです。

※(注8.4):次の式がDiracのδ関数を表わすこと。

つまり,δ(ω0-ω)

={1/(2π)}limT1,T2→∞-T1T2exp{i(ω0-ω)t}dt

=limT1,T2→∞[exp{i(ω0-ω)T2}-exp{-i(ω0-ω)T1}

/|2πi(ω0-ω)].(2.64)であること,を証明します。

これの特別な場合:T=T1=T2である場合には,,

δ(ω0-ω)=limT→∞[sin{(ω0-ω)T}/{π(ω0-ω)}]

=(2/π)limT→∞[sin{(ω0-ω)T/2}/(ω0-ω)}](2.65)

です。

また,別の表式;δ(ω0-ω)

=(1/π)limε→0[ε/{(ω0-ω)2+ε2}](2.66)

をも証明します。

[証明]:まず,{1/(2π)}limT1,T2→∞ω1ω2dω

-T1T2exp{i(ω0-ω)t}dtを計算します。

与式=(1/π)[∫-∞dt[exp{i(ω0-ω2)t}/(-2it)

-∫-∞dtexp{i(ω0-ω1)t}/(-2it)]です。

ところが,数学公式:

a>0なら∫-∞{sin(ax)/x}dx=πより,

-∞[{exp(iax)-exp(-iax)}/(2ix)]dx=π

です。そしてy=-xと置けば,

-∞{exp(iax)/x}dx=-∫-∞{exp(-iay)/(-y}dy

=-∫-∞{exp(-iay)/y}dy

故に,∫-∞exp(iax)/x)}dx

=-∫-∞{exp(-iax)/x}dxです。

それ故,a>0なら,

-∞[{exp(-iax)}/(-ix)]dx=πであり,

他方a<0なら,

-∞[{exp(-iax)}/(-ix)]dx=-πです。,

故に,ω1<ω0<ω2の場合,

-∞dtexp{i(ω0-ω1)t}/(-2it)]=π/2,。

-∞dtexp{i(ω0-ω2)t}/(-2it)]=-π/2,

したがって,(1/π)[∫-∞dt[exp{i(ω0-ω2)t}/(-2it)

-∫-∞dtexp{i(ω0-ω1)t}/(-2it)]=1を得ます。

一方,ω01,またはω0>ω2の場合は

-∞dtexp{i(ω0-ω1)t}/(-2it)]

=∫-∞dtexp{i(ω0-ω2)t}/(-2it)]となるため,

(1/π)[∫-∞dt[exp{i(ω0-ω2)t}/(-2it)

-∫-∞dtexp{i(ω0-ω1)t}/(-2it)]=0です。

以上から,δ(ω0-ω)

={1/(2π)}limT1,T2→∞-T1T2exp{i(ω0-ω)t}dt

が証明されました。

 

次に,(1/π)limε→0ω1ω22/{(ω0-ω)2+ε2}]dω

を計算します。

ε/(x2+ε2)={1/(2i)}{1/(x-iε)-1/(x+iε)}

と書けることを利用します。

複素z平面上での閉路:C1を(実軸)+(右回り下半円周)

にとれば.原点Oを通る虚数上の点z=-iεは,C1

囲まれた領域内の極であり,z=iεは極ではないので,

Cauchyの留数定理から.∫C1{1/(z-iε)}dz=0,

C1{1/(z+iε)}dz=-2πiです。

故に,∫C1[ε/(z2+ε2)]dz=πとなります。

他方,閉路:C2を(実軸)+(左回り上半円周)にとれば

z=iεの方がC2内の極ですから,

C2{1/(z-iε)}dz=2πi,∫C2{1/(z+iε)}dz=0

です。故に,やはり,∫C2[ε/(z2+ε2)]dz=πという

結果を得ます。

しかし,いずれの閉路でも,半円周の半径Rを∞の極限に

とると,ε→+0のとき,[ε/(z2+ε2)]dzは(1/R)の

オーダーで減衰するため,半円周上の積分の寄与はゼロです。

そこで,∫(実軸)dz[ε/(z2+ε2)]dz

=∫x1x2[ε/(x2+ε2)]dxは,実軸上の区間:[x1,x2]

が区間内に原点Oを含めばπに等しく,さもないとゼロです。

あるいは,関数論に頼らず,x=εtanθ,

dx=εsec2θdθと変数置換すれば,

x1x2[ε/(x2+ε2)]dx=∫θ1θ2dθ=θ2-θ1

=Tan-1(x2/ε)-Tan-1(x1/ε)を得ますから,x2>0 ,x1<0

の場合は,ε→+0の極限で右辺=π/2-(-π/2)=πであり,

1とx2が同符号の場合なら右辺=0 です。

以上から,(1/π)limε→0ω1ω22/{(ω0-ω)2+ε2}]dω

は.ω1<ω0<ω2なら1の等しく,さもないときはゼロです。

したがって,δ(ω0-ω)

=(1/π)limε→0[ε/{(ω0-ω)2+ε2}]が示されました。

(証明終わり)  (注8-4終わり※)

 

 途中ですが今回はここまでです。(つづく)

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

 

PS:最近は韓国のKPOPアイドルの方に魅かれます。

女子ゴルファーも美しいのは,私にはどちらかというと韓国人。

昔も女子フィギュアは,浅田真央の時代も非国民といわれながらも

キム:ヨナが好きで応援してた。好き嫌いは理屈じゃない。。

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2019年10月 8日 (火)

雑感(最近注目していること)

 以前から主張していることと,新たに着目して

いることなどをつらつらと羅列してみます。

(1)2020東京オリンピック

何故,無理してまで,アスリートだけでなく観客

も含め,熱中症など危険が予測される,特に近年の

日本の夏=灼熱と多湿の季節にあえて屋外競技を

強行するのか?疑問です。単純な解決策は1964年の

ときと同じく開催を秋にすることです。主だった欧米

諸国の希望?バカンス時期に合わせたとか,いろいろな

都合もあるのでしょうが。。健康第一です。

暑さ対策の工事などの予算削減にもなるだろうし,

前倒しなら競技施設工事など間に合わない,ということ

なども有り得ますが延期ならそういう問題はないです。

チケットも,まだ完全な日程が決まってないので,それ

に合った販売はやり直してもいいでしょう。

確かカタールのドーハでの次期サッカーワールド杯

は,ヨーロッパのオフシーズンではないけど,冬開催に

変更した,と聞いています。

(2)太陽光発電

最近の千葉などの停電被害で思いついたわけじゃなく,

前から「電気代は一生払わなきゃいけないのか?」と

いうCMに対して,自分で発電すれば,むしろ売るほど

の電気が作れてメンテナンス以外に料金は不要になる

と主張していました。

かつての減反政策で,まだかなりの農閑地があると

思います。太陽光パネルが設置できない場所でも僅かな

送電線で近くの空き地から屋内に電気を引き込めばいい

だけです。売電のためならともかく自給自足のためだけ

なら,東電,関電など大手から送電線を借りる必要もなく

電信柱や大掛かりな変圧器も不要,交流を直流に変換する

必要さえなく,何より災害があっても太陽は無くならない

し,電気代は太陽光発電のメンテナンス程度でこれまで

の1割もいらないでしょう。

日本の電気代は,今は少しは競争原理が働くようになって

きてはいますが,元々独占の大手電力会社が勝手に決めら

れるようだし,石油価格と連動してるように

見えません。数年前ネットで調べたときは,そのときの

レートで先進国で第8位くらいの値段だと見ました。

 

私が10年くらい前まで,住んでいた中古マンション

では入居時に約25万円で電気温水器を新調して夜間電力

を風呂などに利用していました。

電力量が小さいとか,蓄電能力が足りない,とかいわれて

ますが,そもそも日本の科学力を本格的につぎ込めば,家庭

の電気程度でのネックは簡単にクリアできて,需要が全家庭

ともなれば,経済的にも安価になるでしょう。

効率が悪いとか,すぐには無理だとかブツブツ反対意見が

多いのは,電力会社の利権に群らがる方たちと,その宣伝活動

に毒されているのみです。

現在,高齢で独身一人暮らしのアパートでの私の生活は,

心不全なので貧乏でも冷暖房で適温で生活しないと,これ

をケチっては命が危ないので,ほとんど電気に頼ってます

が電気代はせいぜい月1万円強程度で年12万程度です。

同じペースなら10年で120万,20年で240万ですね。

初期投資200万もあれば太陽光で自給自足できると思うの

ですが,それ以後,一切電気代は払わなくていいわけです。

いっぺんに200万払うのは貧乏人には,きついですが,

例えば,今日本の人口1億2千万くらいですが.おそらく

独立生計の家庭数は5000万世帯くらいとすれば.全部で

約10兆円で総太陽光化ができる計算になります。

そうすると家庭については,以後,電気代は払わなくて

よくなります。

日本の国債は今1300兆円くらいですか? 金利は小さい

ので,国の予算のうち,国債金利1%としても1.3兆円も

払ってるのかどうか知りませんが,そんな無駄金の10年分

程度をまわして10年計画で全て補助してもらって総家庭

を太陽光化してもらえれば,企業向け電力は,いざ知らず,

家庭には東電も関電も火力発電所.原子力発電所も不要

です。石油も石炭も必要ないし,車も電気自動車なら

ガソリンもLPGも不要です。

そもそも,地球上のエネルギーは化石燃料も含め全て

太陽の恵みで一応タダなんですから。

(3)プラスチック分解酵素

英米の研究チームが,偶然プラスチックを食べて

分解し無害化する微生物,バクテリア,または酵素を

発見したと聞いています。

一方,日本の技術は,かつてはヘドロだらけだった海

や富栄養化したりして魚の住めなくなった川や池の水

を浄化したりする技術,薬品を開発したりしています。

プラスチックについても,より大掛かりに進めて全世界

の海水からそれを一挙に除去するプロジェクトを組んで

ほしいものです。

(4)人工光合成について

地球温暖化,それに伴なう異常気象は,アメリカのゴア氏

の著書「不都合な真実」から注目されるようになりました

が,近年の異常気象が温暖化ガスとしての二酸化炭素増加

が主因かどうかはともかく,少なくともアマゾン密林火災

などの森林減少の放置,昔からの焼畑農法や伐採で,多くの

森林や草原が砂漠と化して,雨雪も降らず,結局,ヤギや牛

などの草食も含め,主に人間の生命活動が原因で気象が

オカシクなってきているのは紛れもない事実です。

 

 これを防ぐには,唯一,光合成で二酸化炭素を吸って酸素

を吐き出すことが生命活動の植物を増加させる,植林など

で砂漠を再緑化する事業などの推進を考えていました。

飢えた民の抵抗活動はともかく,侵略戦争や権力闘争を

している場合じゃない。

地球滅亡が近づいているのです。

地震はともかく氷河期や恐竜を滅ぼしたらしい地磁気逆転

などは恐らく人類滅亡より後のことだろうし今の問題では

ないでしょう。

無駄な抵抗と知りつつ,個人的に70億総植林運動など

で地球生命の滅亡を遅らせられるなど考えてましたが,

ここにきてプラスチックの分解バクテリアと同じく人工的

に光合成を起こさせる道もあるらしい,ということを知り,

啓蒙書などを読んでいますが,そもそも眼が悪くてあまり読め

ません。前なら,この程度2日もかからず読めたはずなのに。

歯がゆい毎日です。

 

死に損ないの貧相なクソジジイが.エラソーに何,言ってん

だか。子も孫も家族もいないんだから,あと10年もない死後

の地球の心配なんか関係ないじゃんねェ。。。

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2019年10月 4日 (金)

光の量子論7

※第2章 原子・放射相互作用の量子力学

の続きです。

余談抜きで本論に入ります。

  • 2.3 遷移速度

前の記事で,(2.13),(2.14)の方程式が,

2 exp(-iω0t)I12=i(dC1/dt),

1 exp(iω0t)I12=i(dC2/dt)

と簡単になる,と書きましたが,

これに,さらに,I12=Ωcos(ωt)を代入

すれば,それぞれの式から,

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)(2.31),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)(2.32)

を得ます。

※(注7-1):|C1|2+|C2{2が時間的に一定不変であり,

(2.31),(2.32)が規格化条件と矛盾しない,ことを証明

します。

(証明):(d/dt){|C1|2+|C2{2}

=C1(dC1*/dt)+(dC1/dt)C1

+C2(dC2*/dt)+(dC2/dt)C2

です。

これに,上記の(2.31),(2.32)を代入すると,

(d/dt){|C1|2+|C2{2}

=iC1*cos(ωt)exp(iω0t)C2}

+(-i){Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2}C1

+iC2{Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C1}

+(-i){Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1}C2

=0 が得られました。(証明終わり)

(注7-1終わり※)

 

※(注7-2):原子に作用する電場が時間的に一定

である特別な場合,つまりω=0の場合,について

(2.31).(2.32)を解き,まず,解のC2が,

22/dt2-iω0(dC2/dt)+|Ω|22=0

(2.33)を満たすことを示します。

そして,これから,ω=0では,

|C2|2={4|Ω|2/(ω02+4|Ω|2)}

×sin2{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}(2.34)

となることを証明します。

そして,|C1|2は,規格化条件|C1|2+|C2|2=1

から決まります。

(証明);ω=0では,(2.31),()2.32)の

Ωcosωtexp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)と

Ωcosωtexp(iω0t)C1=i(dC2/dt)は,

dC1/dt=(-i)Ωexp(-iω0t)C2,および,

dC2/dt=(-i)Ωexp(iω0t)C1です。

2番目の式をtで微分すれば,

22/dt2=(-i)Ωexp(iω0t)(dC1/dt)

+ω0Ωexp(iω0t)C1となります。

右辺の(dC1/dt)に(-i)Ωexp(-iω0t)C2

を,Ωexp(iω0t)C1に{i(dC2/dt)}を代入

すると,d22/dt2=-ΩΩC2+iω0dC2/dt

となります。よって,

22/dt2-iω0dC2/dt+|Ω|22=0

が得られました。

これは定数係数の2階線形常微分方程式です。

特性方程式は,λ2-iω0λ+|Ω|2λ=0で

解として,λ={iω0±(-ω02-4|Ω|2)1/2}/2

=(i/2){ω0±(ω02+4|Ω|2)1/}を得ます。

λ±=(1/2){ω0±(ω02+4|Ω|2)1/}(複号同順)

と置けば,C2=Aexp(iλt)+Bexp(iλt)}

ですが,t=0でC2=0ですからB=-Aです。

故に,C2=2Aexp(iω0t/2)

×sin{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t},となります。

これを,dC2/dt=(-i)Ωexp(iω0t)C1

に代入します。

(-i)Ωexp(iω0t)C1=2Aexp(iω0t/2)

×[(iω0/2)sin{(ω02+4|Ω|2)1/t/2}

+(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/

2cos{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}]より,

1=iA(Ω)-1exp(-iω0t/2)

×[iω0sin{(ω02+4|Ω|2)1/2t/2}

+(ω02+4|Ω|2)1/2cos{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}]

ですが,t=0でC1=1なので,

iA(Ω)-102+4|Ω|2)1/2=1より.

Ω=iA(ω02+4|Ω|2)1/2 を得ます。

故に,A=(-i)Ω/(ω02+4|Ω|2)1/2

です。

結局,C2=(-i){2Ω/(ω02+4|Ω|2)1/2}

exp(iω0t/2)×sin{(ω02+4|Ω|2)1/t/2},

となります。

したがって,|C2|2=4|Ω|2/(ω02+4|Ω|2)

×sin2{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/t}が得られました。

(証明終わり)  (注7-2終わり※)

 

アインシュタインB係数の計算は,原理的に上

の(注)のω=0の例題に似ていますが,この場合は

ω0に近いωに対する(2.31),(2.32)の解を求める

必要があります。

解の満たすべき初期条件は,やはりC1(0)=1,

2(0)=0.(2.35)です。

この場合も,|C2(t)|2が,時刻tにψ2に原子

を見出す確率であり,|C2(t)|2/tが量子力学的

遷移速度と定義されるものを与えます。

これをアインシュタイン理論のB12の定義と比較

すると,B12W(ω)={C2(t){2/t(2.36)が成立

すべきである,ことがわかります。

しかし,(2.31),(2.32)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)

は,形は簡単ですが,これを一般のωに対して解く

のは,かなり困難なので.とりあえず,近似解を探す

必要があります。

ところで,前記事の最後では,「大抵の光ビーム

では,Ω<<<ω0.(2.30)が成立しています。」

と書きました。そこで,Ω<<<ω0を想定すると,

これはC1,C2をΩのベキ級数として求めるのが

有効ではないか?ということを示唆しています。

そこで,このベキ展開を次のように,逐次近似の

反復法で試行してみます。すまわち,まず,

初期値:C1=1,C2=0を,(2.31),(2.32)の.

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)

の左辺に代入すると,dC1/dt=0.,および,

dC2/dt=(-i)Ωcos(ωt)exp(iω0t)

=(-i/2)Ω

×[exp{i(ω+ω0)t}+exp{i(ω-ω0)t}]

を得ます。そこで第1近似値として.

1(t)=1,および,C2(t)

=(-Ω/2)[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

+(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)

(2.37)が得られました。

次に.これを,さらに,(2.31)の左辺に代入します。

すると,dC1/dt

=(i|Ω|2/2)cos(ωt)exp(-iω0t)

×[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

+(i|Ω|2/2)cos(ωt)exp(-iω0t)

×[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0) です。

ここで,cos(ωt)exp(-iω0t)

=(1/2)[exp{i(ω-ω0)t}+exp{-i(ω+ω0)t}]

を代入すれば,

右辺=(i|Ω|2/4)[exp{i(ω-ω0)t}-exp(2iωt)

+exp{-i(ω+ω0)t}+1]/(ω+ω0)

+(i|Ω|2/4)[exp{i(ω-ω0)t}+exp{-2i(ω-ω0)t}]

+exp{-i(ω+ω0)t}-exp(-2iω0t}]/(ω-ω0)

となります。

したがって,長い式ですが,C1の第2近似値

として,C1(t)=∫01(dC1/dt)+C1(0)

=1+(|Ω|2/4)

×[-exp{i(ω-ω0)t}/(ω2-ω02)

+exp(2iωt)/{2ω(ω+ω0)}

+exp{-i(ω+ω0)t}/(ω+ω0)2+1/(ω+ω0)

-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)2

+exp{-2i(ω-ω0)t}/{2(ω-ω0)2}

+exp{-i(ω+ω0)t}/(ω2-ω02)

-exp(-2iω0t}{2ω0(ω-ω0)}が得られます。

つまり,C1(t)=+(|Ω|2/4)×(tの関数)

(2.38)の形の第2近似値を得ます。

第3近似値も同様に求めることができて,

以下,同様に反復するわけです。

そして,

dC2/dt=(―i)Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1

であり,C2(t)=∫01(dC2/dt)ですから,C1

|Ω|の偶数ベキ,C2はΩ,またはΩの奇数ベキに

展開されることはわかります。

Ωは,Ω=eE012/hc.(2.23)と定義されていた

ことを思い出すと,これら2つの級数は電場の強さ:

0のベキに展開したものと見なすこともできます。

 

 さて,前章で既に論じたことですが,電磁波の電場

が.E(,t)0cos(kr-ωt),磁場がB(,t)

0cos(kr-ωt)と表わされる場合,1サイクル

の周期はT=2π/ωですから,cos2(kr-ωt)の

サイクル平均は,<cos2(kr-ωt)>

=(1/T)∫0cos2(kr-ωt)=1/2です。

それ故,電磁場のエネルギー:

(1/2)∫(ε02+μ0-12)dVのサイクル平均が,

<(1/2)∫(ε02+μ0-12)dV>

=(1/4)∫(ε002+μ0-102)dVで与えられます。

 

ところが,Maxwellの方程式:∇×E=-∂B/∂t

より,k×E0=ωB0であり,kの向きをz軸正の向き

に取り,E0がxの正の向き,B0がyの正の向きに偏光

しているとして,kE0=ωB0を得ます。

そして,真空(自由空間)中では(k/ω)=c-1

=(ε0μ0)1/2ですから,結局,μ0-102=ε002が成立

します。したがって,この電磁波の総エネルギーの

サイクル平均は,(1/2)∫(ε02+μ0-12)dV>

=(1/2)∫ε002dVとなり,サイクル平均のエネルギー

密度は,(1/2)ε002で与えられることがわかります。

すなわち.周波数ωの光のサイクル平均の

エネルギー密度がW(ω)の定義ですから,

結局,W(ω)=(1/2)ε002です。

これは,第1章の(1.34)で与えた∫0W(ω)dω

={1/(2V)}∫ε0|(,t)|2dVに似ていますが.

今のW(ω)=(1/2)ε002の式では,既に,体積積分

が実行済みです。

Ωが小さいのでC2(t)の表式を,E0,または,Ω

or Ωの1次までのオーダーまで取り,(2.36)の等式

12W(ω)={C2(t){2/tの両辺のE0のベキを比較

すればBが求められるはずです。

アインシュタインB係数を計算すべき周波数

ω~ω0においては,(2.37)の第1近似解:C2(t)

=(-Ω/2)[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

+(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)は,

既に,この比較の目的にかなっています。

元々,アインシュタイン理論では,E0の高次

の項が重要という状況には対応していません。

ω~ω0の光を考えると,Ω<<<ω0より,

ω>>Ωであり,Ωの1次までとるのが良い近似です。

そして,(2.37)のC2(t)の第2項は第1項より

はるかに大きいことがわかります。

ω → ω0の極限では,C2(t)の第1項は,

(-Ω/2)[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

→ {-Ω/(4ω0)}{1-exp(2iω0t)}

={iΩ/(2ω0)}exp{(iω0t)sin(ω0t)

となり,他方,第2項は,

(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)

→ (iΩ/2)(ω-ω0)t/(ω-ω0)

=(iΩ/2)t となります。

したがって,ω~ω0では,C2(t)

~ (iΩ/2ω0)[exp{(iω0t)sin(ω0t)+ω0t}

を得ます。

後述するように,原子遷移が起こる特有の時間

間隔tは10-7sec程度か,それよりやや長いくらい

ですが,(2.65)より.ω0は1015Hz程度なので,

こうした対象では,ω0t>>1.(2.41)が極めて良く

成立しています。

それ故,(2.37)の第1項を無視するのが良い近似

になると考えられます。

そこで,ω→ω0とする前の元の式で第1項を無視

すれば,C2(t)~(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}

/(ω-ω0)=(iΩ)exp{i(ω-ω0)t/2}

×sin{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0) であり,

|C2(t)|2~|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2

(2.42)なる近似を得ます。

そこで,ω~ω0のときは,

|C2(t)|2~(1/4)|Ω|22(2.43)が得られます。

これは,時間tの2乗に比例して増加しますが,(2.42)

からわかるようにωがω0と少しでも異なるなら時間的

に振動します。

このように,(2.37)の第1項を無視する近似は,

回転波近似と呼ばれています。

 

さて,これまでは遷移周波数ω0を厳密な数値を持った

確定値と見なしてきました。これは,ω0の数値には常に

若干の不安定さが伴なう,という実際の実験の際の事情

には合致しません。

如何なる分光器でも測定スペクトル線が,あるΔωと

いう量だけ,ぼやけているような有限の分解能を持ちます。

もしも,完全な周波数分解能を備えた理想的な実験装置

を目論んだとしても,スペクトル線の本来の幅には,より

根本的な限界が存在します。(※ ちまり,量子力学の基礎

を成す,Heisenbergの不確定性原理に根ざす限界です。)

ω0の不確定さを考慮に入れるには,|C2(t)|2の表式

をωのある範囲にわたって積分すればいいだけです。

そこで,ω0を遷移周波数の中心とすると,

|C2(t)|2=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2は.

Ω­=eE012/hcと,(1/2)ε002=∫W(ω)dωを

利用して,|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)}

ω0-Δω/2ω0+Δω/2[W(ω)sin2{(ω-ω0)t/2}

/(ω-ω0)2]dω.(2.44)とすれば得られます。

ここで,原子は広帯域の照射を受けているという

アインシュタイ理論の基礎となる仮定を採用し,Δω

の範囲にわたって放射エネルギー密度が一定値:W(ω0)

であるとします。

このとき,(2.44)は,|C2(t)|2

={2e2|X12|2/(ε0c2)} W(ω)(Int)(2.45)

と書けます。

ただし,Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2].(2.46)です。

 

この積分:Intは2つの極限で解析的に表わすこと

ができます。まず,tΔω<<1のときは,

Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2].

~[sin2{(Δωt/4}/(Δω/2)2]Δω,

つまり,Int~(1/4)t2Δω.(2.47)となります。

一方,tΔω>>」1なら,∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

~∫-∞dω11=ω-ω0) ですから,

公式:∫0[sin2(ax)/x2dx=πa/2より,

-∞[sin2(ax)/x2dx=πa なので,

Int~∫-∞dω1[sin21t/2)/ω12]=πt/2

(2.48)を得ます。

アインシュタインB係数は(2.36)のB12W(ω)

=|C2(t)|2/tにより,原子遷移確率が経過時間t

に比例する理論と結びついています。

そこで,|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)}

×W(ω)(Int)(2.45)なる式にtΔω>>1のとき

の近似値Int=πt/2(2.48)を代入した式:

|C2(t)|2=πe2|X12|2W(ω)t/(ε0c2)(2.49)

から,B12=|C2(t)|2/{W(ω)t}(2.36)によって,

12=πe2|X12|2/(ε0c2)が得られます。

 

(2.49)の近似は規格化条件:|C1|2+|C2|2=1に

反するような|C2(t)|2が1を超える大きいtに

対しては破綻します。しかし,一旦,Bの大きさが計算

されると,原子の励起度の長時間挙動は,先の記事:

「光の量子論3」の第1章(§1.9原子励起)の

項で与えた,(1.70)のN2の評価式:

2={NBW/(A+2BW)}

×[1-exp{-(A+2BW)t}]において,

(A+2BW)t>>1.(1.73)

の長時間が過ぎると,定常状態の値:

2=NBW/(A+2BW)(1.74)に近づく,

と述べた方法で,決定することはできます。

今回はここまでにします。(つづく)

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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2019年9月27日 (金)

光の量子論6

※(余談):眼が良くて本が読めていた頃は,これは,

と思った専門書をノートに写経しながら読むとき

は1冊入魂で,日本語なら,大体300ページくらい

の本を3ヶ月くらいで読了するというペースでした。

大体3~4ページ/日ですね。文庫本の小説程度

ならせいぜい2~3日で読了ですがね。

 

 まあ,研究者じゃないし,普通は日々の生活の

糧を得るための無関係な労働があるので,

入魂とはいっても,それだけに時間を集中する

ことはできませんでしたが。入院中は1ヶ月以上

もヒマなので,読書三昧,昔購入していていつかは

読もうろおもいながら積ん読状態の本を持ち込んで

読みました。

ちなみに2007年3/24に帝京病院循環内科に

入院時は「常微分方程式論」でフロベニウスの方法

確定・不確定特異点などの勉強を10日程度で読了,

4/3に心臓手術のため順天堂心臓血管外科のCCU

に転院後は詠む本がないので見舞いの友人に自宅

のカギを貸して「ポアンカレを読む」という副題のフックス

型微分方程式論の第1巻をもってきてもらい,4/10の10

時間程度の手術当日と次の日は休みましたが,ICUから

戻って4/22の退院の前日まで読書にふけりました。教授

回診の主治医天野先生私の枕元の専門書をひっくり返

して首をかしげていたような記憶が。。。

 ときどき,お金にもならないのに,40~50面下げて,

いつまでも何やってんだろう?と思うことも多々あり,

生きてた頃のオフクロにも,帰省して夜コツコツ

やってると,「まだやってんの?」と言われました

しかし,受験勉強でもなく,それだけに完全に没頭する

わけでもなく,適当に飲み屋でダベったりウタったり,

PCでネットの買い物やゲーム,そして,AV

(オーディオ・ヴィジュアルだよ,アレもあるけど),将棋

を指したりで,インドアな受け身の趣味ばかりですが,

それほど金かからない遊びも適当にやっていました。

それでメシを食おうと思わなければ, 理論物理では

文献や書物さえ読めばいいし,それが好きなら野球ならプロ

になれなきゃ草野球でもいい,という感じで,細々とでも

やり続ける。やめるという選択肢は元々頭になく,

しつこい(偏執狂の)性格ですからね。

発明,発見をしなくても,誰かが見つけてくれて,それ

を納得できれば十分,あるのは毒にも薬にもならない好奇心

だけです。なので,元々研究者向きではない。もちろん,誰も

見つけてないモノゴトにも好奇心があるので,万が一という

ことも有り得るけど,宝くじ1等当選なみですから無理

でしょう。

何せ,この世界,頭がいいのに実験物理で折角.大学の助手

になっても,教授に院生時代から実験でこき使われ疲れて

ウツ病になったり,あるいは挫折してユメ半ばで事故か自殺

かわからないような死に方をした奴も知っているし,

博士を取ったけど,ずっと希望のポストにありつけず,

貧乏なフリーター続けて優秀でも普通の人間の生活

もできない奴もいるし,逆に完全に興味が移って,別の

ことで金銭的に大成功した人たちもいるらしいです。

 

私は来年70歳の未だにブログ原稿で過去の読書を

反芻してるけど.これも入魂状態で,寝食を忘れて何時間

もやってると,よく低血糖でフラフラになります。

糖尿病だけど主食のチョコなどを食べないとね。

 

もっとも,昔の3ヶ月で読了というのは,途中で

わからない箇所に遭遇してつまづくことがなければ,

の話です。ほとんどの場合は,ただ1行の式がどうしても

わからず,本屋や図書館めぐりで10冊以上も参照した挙句

1年,2年も経つうちにその読書を止めてしまう。半永久的

Pendingというのも多々ありました。

大学や研究所勤めでもなく,近くに気軽に相談できる相手

はいないし,そもそもこの分野,相談しても自分が理解でき

なきゃ無意味ですしね。

昔の人がちゃんと証明したことだから,その式を認めて.

とりあえず先に進むという器用なことができないんですね。

それができていたらヒョットして別の道に進めたかも。。

所詮,専門を学ぶ学生時代は大学と大学院を足しても10年

も無いですから。今も原稿を書いてて,自分が理解できない

なら書くの中止です。先はもう無い。棺おけ片足半なのに

(余談おわり※)

 

第2章 原子・放射相互作用の量子力学

前章の,Planckの放射法則とEinstein係数

では,現象論的なアインシュタイン理論の不備

な点を幾つか露呈しています。

 

まず,この理論からは,A,B係数の値を計算

する処方箋が得られません。

そこで,これは遷移確率の量子力学的理論

に期待する他ないです。

 

より深刻なことはアインシュタイン理論

は入射光の周波数分布が,原子遷移の線幅に

わたって滑らかな,広帯域照射の場合にしか

当てはまらない,という点です。

しかし,レーザー光源による実験などでは,

周波数分布が原子遷移の線幅より狭いビーム

を使用することが珍しくないです。

 

そこで,本章は,B係数の量子力学的計算から

始めます。

原子状態は量子論で,電磁場は古典論で,と

いう半古典論を用いる,(光+量子論)としても,

得られる結果は全く同一ですが,原子・放射

相互作用の効果に関する,より一般的な理論と

して,本章の後部では「光学Bloch方程式」を

与えます。

 

  • 2.1 時間に依存する量子力学

※アインシュタインのB係数の計算

(誘導放出プロセスの時間的速さ)

出発点として,時間に依存する波動方程式

Ψ=ihc(∂Ψ/∂t)(2.1)を用います。

 まず,放射がない場合の孤立した原子の問題

を考えます。

 原子のHamiltonian:HはT+Vという形で

あり,時間tを陽に含まないものです。

このとき,H=Hとした波動方程式

Ψ=ihc(∂Ψ/∂t)は,

Ψ(,t)=exp(-iEt/hc()(2.2)

という,時間に依存する位相因子と,

時間に依らない,ψ()=Enψ()(2.3)

なる,エネルギー固有値方程式を満たす波動関数

ψ(r)との積に分離できる解を持ちます。

(2.2),(2.3)を満たす,こうした形の解で

表わされる原子状態は,定常状態として知られて

います。

B係数の計算では,エネルギー固有値がE1とE2

(E2>E1)である,という,次の2つの固有値方程式

を満たす,2つのエネルギー固有状態:

ψ1()とψ2()のみを考えます。

ψ1()=E1ψ1().(2.4a)

ψ2()=E2ψ2().(2.4b)

だけを問題とするわけです。

対応する時間に依存する波動関数は.

Ψ1(,t)=exp(-iE1t)ψ1()(2.5a)

Ψ2(,t)=exp(-iE2t)ψ2()(2.5b)

です。

そして,hcω0=E2-E1(2.6)を満たす角周波数

ω0を「遷移周波数」と呼びます。

 

nは原子のみのエネルギーですが,原子と放射

電磁波の系については,Hamiltonian:Hに電磁波

のエネルギー:Hを付け加えることで記述できます。

ただし,Hは位置だけでなく時間tにも依存

する量(演算子)です。

それ故,系のトータルのHamiltonianは,

H=H+H.(2.7)で与えられます。

 

さて,ある瞬間tに,原子は状態ψ1にあるとします。

しかし,Hがあるため,ψ1は定常状態ではなくなり

その後のある時刻にψ2に見出される確率が,ゼロでは

なく有限になります。

この確率を1から2への遷移速度として表わす

ことができます。

光の周波数がω0に近いときは,放射過程に関与

するのは,この選ばれた2つの原子状態だけです。

したがって,如何なる時刻tでも,原子波動関数Ψ

は,Ψ(,t)

=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)(2.8)と

表わすことができます。

そして,ψ12が,

∫ψ(()dV=δmn(m,n=1.2)と直交

規格化されているとすれば,Ψが確率振幅という意味

を持つための条件は,

∫|Ψ(,t)|2dV=|C1(t)|2+|C2(t)|2=1(2.9)

で与えられます。

 

こうした条件下で,(2.8)のΨ(,t)

=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)を,

Ψ=ihc(∂Ψ/∂t)(H=H+H)に代入すると,

(C11Ψ1+C22Ψ2)+H(C1Ψ1+C2Ψ2)

=(C11Ψ1+C22Ψ2)

+ihc1(∂C1/∂t)+Ψ2(dC2/dt)},

すなわち,H(C1Ψ1+C2Ψ2)

=ihc1(∂C1/∂t)+Ψ2(dC2/dt)}(2.10)

を得ます。

これに,左からΨ1を掛けて全空間で積分

すれば,C1∫ψ1ψ1dV+C2exp(-iω0t)

×∫ψ1ψ2dV=ihc(dC1/dt)(2.11)

となります。

ここで,Hのψ()による行列要素;Iij

をhcij=∫ψiψdV(i,j=1,2)(2.12)

なる記号で定義すれば,(2.11)は.

111+C2 exp(-iω0t)I12=i(dC1/dt)

(2.13)と簡単になります。

一方,同じ(2.10)に,左からΨ2を掛けて

全空間で積分すれば,

1 exp(iω0t)I21+C222=i(dC2/dt)(2.14)

が得られます。

そこで,原理的に(2.13)と(2.14)の連立方程式を

解けば,C1(t),C2(t)を陽に得ることができる

ため,(2.8)式のΨ(,t)

=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)

によって.Ψ(,t)が決定されること

になります。

 

  • 2.2 相互作用Hamiltonianの形

電磁場と原子の相互作用hamiltonianの完全な形

はやや複雑で,詳しい議論は第5章まで保留します。

しかし,Bを計算するには,相互作用の完全な形で

はなく,主な特徴を知るだけで十分です。

 

さて,電荷が(-e)(e>0)のZ個の電子で囲まれた

電荷Zeの原子核から成る原子を考えます。

この系の原点Oは,この核の位置とします。

そして,これが直線偏光の電磁波と相互作用

するとします。

 

本章では,電磁波の場の形として時間に依存

する部分が実数のものを用います。すなわち,

電場は,0cos(kz-ωt)であり,磁場

0cos(kz-ωt)であって,

0はx方向に,0はy方向に偏光していると

します。

 

原子内電子の典型的軌道半径は,mを電子質量

として,a0=4πε0c2/(me2)~ 5×10-11

(2.16)というBohr(ボーア)半径で与えられます。

周波数が約1018Hzより小さいとすると,この半径

は電磁波の波長:λよりも,ずっと小さいです。

k=2π/λですから,こうした周波数では

ka0<<1であり,原子内部での電磁場の空間的

変化は非常に小さいと考えられます。

したがって,0cos(kz-ωt)の中のkz

を無視するのが良い近似となります。

そうして,原子の全双極子モーメントは=Σjj

(2.17)と置けば,=-eで与えられます。

ただし,jは核を原点Oとした各電子:jの位置

ベクトルです。

このとき,相互作用Hamiltonian:Hは.

=-PE=eDE0cosωt(2.18)と書けます。

(※Hへの他の寄与は,第5章の§5.3で詳述する

予定ですが,それらは上記の(2.18)よりはるかに

小さいものです。上記は,Hの主要項だけを

取った,いわゆる「双極子近似」です。)

 

(2.18)は実数で,奇のパリティを持っています。

つまり,j→ --jの置換でHは符号を変えます。

そこで,(2.12)で定義した行列要素Iijのうち,

体積積分の被積分関数が奇関数となるものは,消えて

ゼロになるため,I11=I22=0.(2.19)です。

 

一方,2つの原子状態;ψ1とψ2が逆のパリティを

持つときには,I12とI21はゼロになるとは限らず,

これらはI21=I12(2.20)の関係があります。

 

以上を考慮すると,(2.13),(2.14)の方程式;

111+C2 exp(-iω0t)I12=i(dC1/dt)

1 exp(iω0t)I21+C222=i(dC2/dt)は,

2 exp(-iω0t)I12=i(dC1/dt),

1 exp(iω0t)I12=i(dC2/dt)

と簡単になります。

 

ところで,0はx方向を向いている,としている

ので,I12の陽な形はI12=(eE012/hc)cosωt

(2.21)と書けます。

ただし,X12=∫ψ1Xψ2dV.(2.22)です。

ここで,Xはのx成分です。

つまり,=(X,Y,Z)であり,電子の位置を

j=(xj,yj,zj)とすれば,X=Σjjです。

さらに,Ω=eE012/hc.(2.23)と置けば,

12=Ωcosωt(2.24)と,より簡単になります。

 

1例として水素原子の1sから2pへの遷移を

考えてみます。

電子のスピン自由度を考慮すると,1s状態は2重に

,2p状態は6重に縮退しています。しかし,相互作用

Hamiltonianは,電子のスピンには無関係なので,遷移

でスピン量子数に変化はありません。

それ故,与えられたスピン量子数を持つ1s基底状態

の電子に対して遷移が許される2p状態は3つです。

その上,x方向に偏った電磁波のΩの中の積分X12は,

2p状態への遷移に対するもの除いてゼロになります。

 

※(注6-1):上述の水素原子の2つの状態:

ψ1()=π-1/20-3/2exp(-r/a0) (2.25)

ψ12()=π-1/2(2a0)-5/2xexp{-r/(2a0)}

(2.26)に対して,Ω=215/2eE00/(35c)(2.27)

であることを証明します。

そして,hcω0=E2-E1を満たす遷移周波数:

ω0は,ω0=(3/4)ω,(2.28),

ただし,hcω=me4/(32π2ε02c2)(2.29)

で与えられることを,以下に示します。

さらに,Ω=eE012/hc ~ ω0,

つまり,hω0~eE012であるためには,

3×1011(V/m)程度の強さの電場E0が必要である

ことを示します。(V=ボルト;volt)

(証明):まず,X12=∫ψ1xψ2dV

=2-5/2π-10-4(2π)∫-11d(cosθ)cos2θ

×∫0drr4exp{-3r/(2a0)}

=(4/3)2-5/20-4(2a0/3)5

0duu4exp(-u)=215/20/35です。

何故なら,∫0duu4exp(-u)

=4!∫0duexp(-u)=24

=3×23 であるからです。

それ故,Ω=eE012/hc=215/2eE00/(35c) 

が得られます。

また,量子力学参考書によれば,水素様原子の

束縛状態の電子のエネルギー固有値は,主量子数:n

(n=1,2..)に対して,E=-{hc2/(2m)}(Z/a0)2

×(1/n2)で与えられます。

故に,Z=1の水素原子で,2pと1sの間の遷移

周波数:ω0は,hcω0=E2-E1=(3/4){hc2/(2ma02)}

を満たします。

これに,a0=4πε0c2/(me2)を代入すると,

結局,hω0=(3/4){me4/(32π2ε02c2)}となります。

そして,hcV=eE012=215/2eE00/35,かつ,

cω0=(3/4){hc2/(2ma02)}より,hcV~hcω0

すれば,E0~ |36/(210√2)}{hc2/(me)}(1/a03)

が必要です。

この右辺に具体的数値を代入します。

すなわち,a0=4πε0c2/(me2)~ 5×10-11m,

e~1.6×10-19C,hc ~ 1.054×10-34Js,また,

mc2~ 0.51 MeV=5.1×106eVより,

m ~ 0.51×106(eV/c2)です。

そして,c2~9×10162/s2です。

したがって,E0~ |36/(210√2)}{hc2/(me)}

×(1/a03)={(729/1024√2)×1.0542×10-68(J22)

×(1/125)×1033-3)}

/{0.51×106(eV/c2)(1.6×10-19C)}です。

ここで,V=J/Cを用いると,

eV~1.6×10-19((CV)=1.6×10-19

なので,左辺 ~ 3.1×1011

(J22-3-12-2-1)となります。

結局,E0~3.1×1011V/m を得ました。

(証明終わり)  (注6-1終わり※)

 

大抵の光ビームでは,それに対してΩ<<<ω0

(2.30)が成立しています。

光ビームが強い場合は第9章で記述する予定です。

 

 今回はここまでです。

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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