サルにもわかる相対性理論③
1.無限大と有限(無限大のスピードとは?)
わたしたちは,ものの個数を1個,2個,3個・・・と数えてゆきます。ものの数を数えていくと,必ず終わりがありますね。終わりのある数のことは有限の数であるといいます。
では,終わりがない数,有限でない数とはどういうものでしょうか?そんなものはこの世の中に存在しないのでしょうか?
ここで頭をやわらかくして,わたしたちは終わりがない有限ではないという不思議な数:無限大というものがあると想像してみましょう。
無限大など実際には存在しないのでしょうか?
でも,たとえばすべての整数には終わりがないので,その数は無限大であるとか,両端のある直線でもその中にある点の個数は無限大であるということを否定はしないでしょう。
それは算数や数学の中だけの話でしょうとあなたは言うかもしれません。
あるいは,宇宙にははてがないので,その大きさは無限大である,あるいは,宇宙には,はじまりがないので無限大の過去があるのか?というような疑問はわいてきませんか?
実は,もっとみじかなところで,わたしたちは意識しないで無限大というものを認めてしまっているかもしれませんよ。
あなたは無意識のうちに世の中の自然におこることの一部は無限大のスピードで伝わるということを認めているかもしれません。
無限大のスピードというのは,言ってみれば一方の端で起こったことが他方の端に一瞬で,すぐに 0 秒で,伝わることを意味します。
アメリカの西海岸で起こった大地震によって,すぐに日本の太平洋岸に津波が起こるかといわれれば,答えはノーですね。
日本の海岸で津波が起こるにしても,それはアメリカ西海岸で地震が起こってからかなりの時間の後のことです。
地震による海の波の伝わる速さは無限大ではないからです。
また,日の出が観測されるのは実際に太陽が見える位置にきてから,約8分後のことです。
このことは,1億4800万km離れた太陽から地球まで光がとどくのには約8分かかることを意味します。
つまり光のスピードも無限大ではなく秒速約30万kmという有限の大きさでしかないわけです。
おそらく,太陽が急になくなったとしても,それが地球にいるわたしたちに影響するのは約8分後のことでしょう。
しかし,硬い金属などの棒の一方の端を押すとその反対側の端はすぐに押されたことを感じて少しでも動くと思っていませんか?
もし,それはあたりまえだと感じて認めているなら,やはり無限大のスピードを無意識のうちにでも認めていることになりますよ。
ここで,話題を少し変えて,無限大という数があるとしてその数の不思議な性質を考えてみましょう。
120とか,340とか,あるいは30万とか,100兆とかにしても,有限の数というのは,それに有限の数を足したり,それから有限の数を引いたりするとその値が変わるのはもちろんですね。120+10=130,120-10=110とかですよね。。。。。
では無限大という数はどうでしょうか。。。想像してみてください。
無限大に有限の数10とか100とかを足したり引いたりしても,無限大は無限大ですね。たとえ1兆を引いても有限にはなりません,無限大のままです。これは無限大のいちじるしい特徴です。
また無限大に無限大を足したとしても,そして無限大の2倍といっても無限大のままです。
ただし無限大から無限大を引いたら,それは有限になるかもしれないし無限大のままかもしれないしよくわかりません。
無限大には,このほかにも掛け算や割り算などいろいろな性質がありますが,わたしたちの以下の話ではこの足し算と引き算の性質だけで十分です。
次に,また,ものや人などが運動する速さ,スピードについて考えてみましょう。
常識で考えると有限のスピードで走っているC君のスピードを有限のスピードで追いかけているB君が測ったときには,止まって見ているA君の測ったC君のスピードよりも小さい値になるでしょう。
たとえばC君は100mを10秒の速さで一直線に走っていてB君は100mを20秒の速さで同じ向きに一直線を走ってC君を追いかけており,A君はそれを止まって見ているとしましょう。
このとき,A君がC君のスピードをはかると1秒間に10mずつ進んでいると観測するでしょう。つまり秒速10mですね。
また,A君がB君のスピードをはかると,1秒間に5mずつ進んでいると観測します。つまり秒速5mですね。
ではB君のはかるC君のスピードはどうでしょうか?
仮に,C君とB君は同じスタートラインから同時にヨーイドンで走り始めたとしましょう。1秒後にはスタートラインからC君は10m,B君は5m前に進んでいますから,B君にとってはC君は1秒間に5mだけ自分より前に進んでいることになります。
だから,B君の測るC君のスピードは秒速5mになります。え?スピードがはかる人によってちがうの?って。。スピードって止まっている人がはかるものしかないでしょ?ですって。。
"はじめに"で述べたでしょ?
A君は自分が止まっていると思っているけど,実は地球だって動いているから,実際には電車に乗っているときのように自分のいる地面そのものがすごいスピードで動いてるかもしれないってことをね。
だから当然,「だれがはかるか?によってスピードはちがう。」というのがいわゆる常識というやつですね。
それはまわりの景色は変わっていくけれども,もしB君がC君をまったく同じスピードで追いかけると,B君のはかったC君のスピードはゼロです。だから,C君は止まっているんだ。
実際は走っているのに止まっているのはおかしい?
じゃ,C君,B君2人とも,秒速10mで走る同じ電車にいて,A君が駅のホームにいて,その電車が通過するのを見ているとしたらどうかな?
A君は,電車といっしょにC君,B君ともに秒速10mで動いていると観測するだろうけれど,B君は,C君を止まっているとしか,つまり秒速 0 mとしか観測しないと思うよ。
それに,B君やC君にとっては,走っているのはホームにいるA君やまわりの景色のほうで電車は止まっているんだ。
こんどは,B君がC君を追いかけるんじゃなくて,C君が自分のほうに向かって走ってきてやがてはすれちがう場合を考えてみよう。
やはり,C君は秒速10m,B君は秒速5mとしよう。
すれちがった瞬間の位置をスタートラインとすると,すれちがってから1秒後にはC君はスタートラインより10m後ろにいて,B君はスタートラインより5m前にいるから,結局,1秒間にC君はB君より15mはなれてしまうことになる。
つまり,B 君がはかるC君のスピードはさっきと向きは反対だけど秒速10m+5m=15mとなって,やはり止まっているA君のはかるC君のスピード,秒速10mとはちがっていて,こんどは増えているんだね、
ところが,もしC君のスピードが有限ではなく無限大であったらどうでしょうか?
C君のスピードが無限大であると仮定してみましょう。
無限大のスピードで人間が走れるわけないじゃないかというのは,今,考えなくていいですよ。
C君はすごいスピードで走れる車を運転していると考えればいいです。その車のスピードが無限大だというのは,あくまで仮定の話です。
仮定なら何でも許されますよね。
こんどはB君がどんなスピードで追いかけたり,すれちがったりしようと,B君のスピードも無限大でないかぎり,C君のスピードをはかったら,やはり無限大で,止まっているA君のはかるスピードと同じです。
これは,さきに無限大の性質を説明したと思いますが,無限大に有限値を足しても引いても,無限大に変わりはないということの反映です。
また,すれちがう向きにC君,B君が走っているときには,ともに無限大スピードであったとすると,B君のはかるC君のスピードは「無限大+無限大=無限大」ですね。
世の中に無限大スピードが存在するとして,これを常識で考えたらこういうことになります。(つづく)
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