パチンコ玉でわかる弾性衝突
パチンコの玉というのは,とても硬くて反発係数がほぼ1(完全弾性衝突に近い)なので,衝突によって運動量だけでなくエネルギーもほぼ保存されるという性質があります。
そこで机の上などに静止している1個のパチンコ球に同じパチンコ玉を1個転がして衝突させると,衝突した方の球が止まり,衝突された方の球が同じスピードで転がり出します。
このことから,非常に多くのことがわかります。
例えば,2個の球が接して止まっているときに,その右から1個の球を衝突させると,左側の1個だけが最初の衝突球と同じ速さで動き出し衝突した方の球は衝突と同時に右側の方の球にくっついたままでそれら2つの球は共に静止すると予想されます。
頭の中だけで考えて,これが何故そうなるか?がわかりますか?
もしも,接して静止していた標的の2個の球を少しだけ離して並べて置いたならどうなるかを考えると,誰でもこの答えがわかります。
まず,右から1個の球を左に転がして右側の標的球に衝突させると,最初に述べた話から衝突させた球は止まって,衝突された方の1個だけが同じスピードで左に転がり出します。
そして,新しく転がり出した球はすぐに,少し離れたもう1個の球に衝突して,再び衝突した方は止まって,衝突された方の最後の1個の標的球が同じスピードで転がり出すだろうことが容易に想像できるでしょう。
最初の2個の標的球の間隔を,いくらでもゼロに近づけたとしても結果は全く同じはずなので最初に考えていた予想が説明できるのですね。
このことから,仮に1個の標的が止まっているとき,接触した2個の球を転がして衝突させて,全部で3個になる場合も,衝突後は左側の2個だけがくっついたまま元の2個の球と同じ速さで転がり,右側に衝突した1個は急停止することになると予想されます。
これも,衝突させる方の2個の球が少し離れていて1つずつ衝突すると想定すれば理解できるでしょう。
このことを応用すれば,例えば3個の球が静止しているときに5個の球を衝突させると,球は入れ替わりますが5個が運動して3個が静止するという状態は変わらないだろう,ということまで予想できます。
ことほど左様に,「物理学」というのは単に式を使って計算しなくても,頭で考えるだけで,色々なことがわかるという話を題材にした学問であるということが理解頂けると思います。
ここまで予想した後に実際に実験で確かめてみるのも面白いでしょうね。
ただ,ここで前提とした反発係数が1(完全弾性衝突)のときの1個と1個の衝突結果を式を使わずに説明するのはむずかしいでしょうね。
(衝突結果は1通りしかなくて,前提とする衝突結果では確かに運動量もエネルギーも保存する完全弾性衝突になっているという程度でもいいですが。。。)
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