黒体輻射(キルヒホッフの法則)
ブログネタが枯渇しているので物理ネタばかりで恐縮ですが,今日は黒体輻射に関連した話題を書きます。
プランク(Planck)の黒体輻射の法則はレーリー・ジーンズ(Rayleigh-Jeans)の法則とウィーン(Wien)の法則の両方を説明するものとして与えられ,ここに量子力学の曙が訪れることにとなったのは有名な話です。
Planckの法則のグラフ(エネルギー密度u(λ,T)の波長λに対する分布)
しかし,太陽などは黒体でもないし,しかも内部に熱源を持っていて,正確に熱平衡状 態にはないですが,その場合でも,色温度という考え方があります。
太陽の場合は表面温度はT=6500Kくらいで,分布のピーク波長が可視光線域のスペクトルを放射しています。
こうした温度Tと放出光の周波数ν(または波長λ)との対応関係が,"熱平衡におけるPlanck分布での絶対温度と,その温度での輻射エネルギー強度uが最大である周波数との対応=Wienの変位則"と,大したずれもなく近似的によく成立することはよく知られています。
輻射平衡のエネルギー分布が物質に依らないことは実は19世紀にキルヒホッフ(Kirchhoff)が発見したことです。
温度Tで空洞の壁に向かって,単位時間,単位面積当たりに投射される,周波数がνとν+dνの間にある"電磁波=光"の輻射エネルギーを I(T,ν)dνとします。
そして,このある物質から構成された空洞壁の吸収率をa(T,ν)とし,同じ壁の表面から単位時間,単位面積当たりに放出される輻射エネルギーをe(T,ν)dνとします。
Kirchhoffは,"平衡状態では吸収と放出のバランスにより,I(T,ν)a(T,ν)dν=e(T,ν)dνが成立するはずである"という発想から,
"比:e(T,ν)/a(T,ν)= I(T,ν)が物質の種類によらず温度 T とνだけの関数である"ことを発見したのです。
そして,特に吸収率が100%,つまり a(T,ν)=1が全てのT,νについて成立する理想的な物体を黒体(black-body)と呼んでいるわけです。
一般の物体は黒体ではないので,a(T,ν)<1ですが,それでも a(T,ν)が温度 T だけに依存しνによらないことが多いので,輻射強度 e(T,ν)= I(T,ν)a(T,ν)は,Planckの輻射分布から得られる I(T,ν)にほぼ比例します。
それ故,物体が黒体ではなくても色と温度の関係,つまり最大エネルギー:umaxを与える色(周波数λ)と温度Tの関係はそのまま成立するわけです。
太陽とか生きているときの人体のように発熱源があるとき,必ずしも熱平衡ではない場合もありますが,それでも近似的に色温度の考えは成立しています。
http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー) TOSHI
http://blog.with2.net/link.php?269343(ブログ・ランキングの投票)
| 固定リンク
「111. 量子論」カテゴリの記事
- クライン・ゴルドン方程式(8)(2016.09.01)
- クライン・ゴルドン方程式(7)(2016.08.23)
- Dirac方程式の非相対論極限近似(2)(2016.08.14)
- Dirac方程式の非相対論極限近似(1)(2016.08.10)
- クライン・ゴルドン方程式(6)(2016.07.27)
「103. 電磁気学・光学」カテゴリの記事
この記事へのコメントは終了しました。
コメント