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2006年6月21日 (水)

永山則夫「無知の涙」

 久しぶりに永山則夫氏の「無知の涙」を読んでみた。

 彼は,昭和43年~44年(1968年~1969年)にかけてタクシー運転手などの連続射殺で殺人を犯した。そして,連続射殺魔として19歳で逮捕され,再審請求や嘆願書にも関わらず,ついに1990年代後半に死刑を執行された。

 永山則夫という死刑囚の獄中での手記が,この「無知の涙」の中に凝縮されている。もちろん,彼は無実ではなく,実際に殺人をしたとも述べている。。。

 彼の殺人には,ある意味で動機とか理由とかいうものがない。強いて言えば,彼は生きるために殺したのだ。彼は,北海道か東北だったかの片田舎で人間とは思えないほどの悲惨な青春を送っている。しかし,それが免罪符だと主張しているわけではない。

 彼は,獄中で文字を学び,遅ればせながら学習して誤字だらけの手記が始まる。彼は「資本論」などを読み,マルキシズムに引かれてゆく。後に彼はこうした世界観を事前に知っていたら,殺人を犯すことはなかった。と述懐している。

 しかし当時の学生運動については,彼は「お坊ちゃんのお遊びだ。」と辛辣に批判している。

 彼は詩人でもあり,いろいろと感動的内容の詩も書いている。最後は支援者と獄中結婚し,大勢の嘆願書にもかかわらず,死刑は執行されてしまった。

 正義とか善悪とかというものはまったく相対的のもので,実際の世の中は,「暴れん坊将軍」とか「水戸黄門」とかのように,完全に白黒がはっきりした世界とは対極にあるものだ。

 もちろん,私には彼の心中がわかるわけではないが,この書を名著として推薦したい。というわけで本日は書物の紹介でした。

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