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2006年6月29日 (木)

タキオンと因果律

相対論ではタキオン(超光速粒子)の存在は否定されません。

 

これは虚数の質量を持ち光速より遅い速度では走ることができず,

エネルギーを貰えば貰うほど速度が遅くなるという不思議な粒子

です。

 

これが存在すると,因果律(原因の方が結果より前:という基本法則)

が破られます。

 

因果律が破られる事実は具体的には次のように示されます。

 

まず,ある座標系,これを仮に静止系Sとします。

 

この系に対して,x軸の正の向きに相対的に等速度運動している系S'

考えます。

 

それは宇宙船に固定された系であるとしてもかまいません。

 

ただし,これはタキオンではないのでその速度の大きさvは

光速cより小さいとします。

 

静止系Sと運動系S'の双方の時刻ゼロ(t=t'=0 )に,双方

の座標系の原点が一致する(x=x'=0 となる)ように座標系

を取ります。

 

そして,x 軸の正の向き(=右向き)に運動する系S'の原点に

固定されている宇宙船から,時刻ゼロ(t=t'=0 )に光速より

速いタキオン信号をこの運動系でのx軸であるx'軸の負の向き

に発信します。

 

この信号を原点よりも左遠方のある位置で受け取った静止S系

にいる人が,受け取ったと同時に別のタキオン信号をx軸の正の

向きに返して,最初から静止S系の原点にじっとしていた別の人

が受け取るとします。

 

 

相対論のLorentz変換を使って,これを計算すると,最後に戻した

信号が静止していた原点にいる人に到達する時刻が静止系で負

になります。

 

そこで,じっと原点に静止していた観測者が時刻ゼロにすれ違った

宇宙船が信号を発するよりも前に,戻ってきたタキオン信号を受け

取ることになります。
 
 つまり,信号を発する前に信号が返ってくるという不思議なことに

なりますから,これは未来の情報が過去に伝わるという現象の例に

なっています。

 

これで因果律は破れます。

 

では具体的な計算を見てみましょう。

 

宇宙船の速さをv<c,タキオンの速さをw>cとして2次元

のLorentz変換で計算します。

  

一般的に扱うために宇宙船から発射するタキオン信号の速さを

1,受け取ってから返すタキオン信号の速さをw2とします。

 

ただし,w1,w2>cです。

 

最初にタキオンを発信するときの位置は,原点x=x'=0 で,

そのときの時刻はt=t'=0 です。

 

ただし,前の説明段階でも述べたように,信号を受けて返す人

慣性系(静止系)をS,それに対して速度vで運動し宇宙船が静止

して見える慣性系をS'として,S系の2次元座標を(x,t),

S'系での同じ点の座標を(x',t')としています。

 

そして,宇宙船から発信された最初の信号が左遠方の別の人に届

くまでの時間(届く時刻)を宇宙船S'系の時刻でt1'とします。

 

すると,届いたときの点のx'座標は,明らかにx1'=-w11'

です。

 

このとき,静止している観測者の系からみた位置での時刻は,

1=γ(t1'-vw11'/c2)=γt1'(1-vw1/c2) です。

 

ただし,γ={1-(v/c)2}-1/2です。

 

そして,観測者の系からみた位置座標は,

1=γ(x1'+vt1')=γt1'(v-w1)

です。

 

この時刻1に,位置x1から速度w2で信号を返します。

 

この信号が原点に静止している別のS系の観測者に届く時刻を,

その原点に静止している人の時刻でt2とし,これを求めます。

 

1+w2(t2-t1)=0 (原点)ですから,これに,

1=γt1'(v-w1),t1γt1'(1-vw1/c2)を代入

すると,γt1'(v-w1)+w22-γw21'(1-vw1/c2)=0

となります。

 

これを解けば,t2γt1'{1-vw1/c2+(w1-v)/w2}

を得ます。

 

したがって,例えばw1>c2/vかつw2>(w1-v)であれば,

2<0 ですから,信号を発信した時刻t=0 より前に,まだ発信

してもいない信号が返って来ることになり,これは因果律を破

ってしまいます。

 

もしも,w1=w2=wならt2=γt1'{2-v(w/c2+1/w)}

です。

 

そこで,w>c2(1+1/γ)/vの条件でt2<0 になりますから,

発信信号と返信信号のタキオンの速さが全く同じであるとし

ても因果律を破ることが可能です。

 

w=cの臨界値,つまり信号がタキオンではなくて真空中の光

=電磁波"なら,受けて返した信号が原点に届く時刻は,

2=2γt1'(1-v/c)であり,このt2はv<cなら正,

v=cならゼロです。

 

この例では,光速を超えるだけでは因果律が破られるとは限らず,

もうちょっと大きい速度のタキオンが必要なようです。

(※これはチョッと計算を間違えたかな?)

 

しかし,宇宙船の速度vも光速に近くなれば信号速度が光速を超

えただけで因果律が成立しないことにはなりますね。

 

もしも,どこかに計算間違いありましたら,ご指摘ください。

  

PS:ここで用いたLorentz変換は光速度不変に基づくもので,

相対論的運動学(幾何学)の式です。

 

力学(mechanics or dynamics)を導入せず,運動学(kinematics)

だけの話なら,議論に質量は入ってこないので虚数質量という

問題も生じません。

 

また,S'系のSに対する相対速度の大きさvがv<cを満たす

なら.γ={1-(v/c)2}-1/2も普通の実数です。

 

この例では,信号速度の大きさwについてw>cであっても,

宇宙船の速度の大きさvが超光速,つまり,v>cでない限り

はγが虚数になることはないので普通に計算できて因果律の

議論ができるのですね。

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