電気伝導(オームの法則)
@niftyの物理フォーラム,化学の広場兼用の会議室「小中高の理科質問箱」で電気伝導について泥仕合的な論争が続いているのを傍観していますが,そもそも子供に説明するだけなら以下の程度の説明で十分かと思います。
まず,電流の定義ですが,「電流とは,電荷を運ぶキャリア(carrier)という実体(電子とか正孔とかイオンとか)の如何によらず,単位時間に断面積を通過する電荷量(単位:A(アンペア)=C/sec(クーロン/秒))のこと」です。
通常家庭で流れる電流は数アンペアで,このとき電荷達の平均の移動速さは数ミリメートル/秒程度にすぎません。
それなのに遠くでスイッチを入れてもすぐに近くの電灯が付くのは要するにトコロテン式で遠くの端で電荷が押されると次から次へと押しくらまんじゅうのように押されて,近くでもすぐに同じ速さで電荷が移動するようになるからですね。
電池などの起電力を持ったポンプを閉じた回路につなぐと金属でできた導線の中にも電場Eが生じます。電場Eがあると 大きさがeの電荷は力F=eEを受けることになります。
だから質量mの電荷が速度vで運動するとき,その運動は電荷が電場Eの他に何の力も受けていなければ,ニュートンの運動方程式:d(mv)/dt= eEを満足することになるはずです。
ところが,普通は金属の内部で移動する電荷というのは金属原子の束縛からはずれたと見なしてよい自由電子です。
電子の電荷eは負の数で,金属の中では自由電子という名前は付いていますが,実はそんなに自由なわけではなく金属原子の格子振動(量子論的にはフォノンと言います)や不純物などによって散乱を受けます。
素朴な古典論のドゥルーデモデル(Drude model)では散乱は,イオン芯(原子から自由電子を差し引いた残り)との衝突を意味します。もちろん,電子同士の衝突などは無視できます。
これらの散乱を受ける"各電子の平均の衝突するまでの時間=緩和時間"をτ(秒:sec)と書いておきますが,これは1個の電子が単位時間(1秒間)に衝突する確率が 1/τであることを意味します。
1個の電子が散乱を受けると,それはどの方向に散乱を受ける確率もほぼ同じなので,ある向きに進んでいた1個の電子に着目すると,その向きに走る電子に関しては急に消えたのと同じことになります。
だから,現在の時刻を t として時刻 t + Δt に消えずに残っている確率は (1-Δt/τ)です。そこで,電子の速度をv(t)とすると先のニュートンの運動法則は次のように変更しなければなりません。
つまり ,mv(t+Δt)=(1-Δt/τ)[ mv(t)+eEΔt + O(Δt2)]です。
そして,これをΔt で割ってΔt→0 の極限をとると,右辺のΔtの2次以上の項は消えて,d(mv)/dt=eE-mv/τと書いてよいことになりますね。
そして十分長い時間(といってもすぐですが)の後には平衡に達して左辺の加速度はゼロとしてよいですから速度は一定になるはずです。
このときの,多くの電子の平均の速度もやはり vと書くことにします。
そうすると, 0=eE-mv/τから, eE=mv/τより, v=eEτ/m です。
単位体積当たりの電子の個数をn とすると,"単位時間に単位断面積を通過する電荷量=電流密度"はJ=nevですから,結局 J=(ne2τ/m)E となり電流密度は電場Eに比例しその向きも電場Eと同じということになります。
まあ,この J=σE (ただし,σ=ne2τ/mは電気伝導度)という形でも既にオームの法則(Ohm's law)と呼びますが,より身近な形に直しておきましょう。
電荷が流れている場所の金属線(抵抗)の断面積をS,長さをLとします。
そして,正電荷qが一様電場Eに抵抗して距離Lだけ反対向きに移動するのに必要な仕事=位置エネルギーは,qV=qEL と書けますが,V=ELのことを電圧(単位:V(ボルト)=J/C(ジュール/クーロン))または電位差と呼びます。
電流はI=JS ですから,先のJ=σE という形の式は,I=σES=(σS/L) V ,あるいは逆に V=I{L/(σS) }という形になります。抵抗R をR=L/ (σS) と定義すれば,よく知られたオームの法則の形 V=I R となります。
(参考文献はアシュクロフト・マーミン著「固体物理の基礎」(吉岡書店)」です。)
http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー) TOSHI
http://blog.with2.net/link.php?269343(ブログ・ランキングの投票)
| 固定リンク
「109. 物性物理」カテゴリの記事
- 再掲記事'5):ボーズ・アインシュタイン凝縮 関連(2019.08.01)
- 電気伝導まとめ(2)(2019.07.26)
- 電気伝導まとめ(2)(2019.07.26)
- 電気伝導まとめ(1)(2019.07.25)
- 水蒸気の比熱(2009.02.09)
「103. 電磁気学・光学」カテゴリの記事
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
こんな方法はどうですか?
http://dontsleep.web.fc2.com/energy-ohm.pdf
量子力学的なオームの法則も導けるかもしれない優れものかもしれませんv
投稿: Lr.x | 2011年4月 6日 (水) 02時04分
いきなり現れた、物理を良くわかっていない私の質問にお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
ブログのほかの記事も参考にさせていただきます。
投稿: 初心者S | 2011年1月19日 (水) 11時24分
TOSHIです。
>初心者Sさん。
2chもちょっとのぞいてみました。適切な指摘が書かれているようです。
トコロテン式にこだわられてるみたいですが,例えばアメリカ大陸の西海岸で起こった大地震によってかなり遅れて日本の太平洋岸に津波が起こるというような感じです。
または非常に長い金属製棒の一方をカーンとたたくとやがて少しのタイムラグで反対側にも音が伝わるとか,糸電話の話とか,地震も含めてこれらは全て"弾性波=弾性力がトコロテン式に伝わるもの"の例です。
静電場にもこだわっておられます。
hirotaさんもご指摘のように,電荷が電場の源という話だけでいいのですが,静電場のクーロンの法則にしても,実際にはクーロンの引力が働けばその源の2つの電荷は引き寄せられます。
そこで,静場を維持するためにはそれ以外に電荷を静止させておくための反対向きの力が必要ですから,電磁気だけで考えると動場と運動する電荷を考える方が普通です。
短時間で短距離の局所的な範囲なら単純なモデルとして静場で近似するというのも物理では常等手段ではありますが。。。
では,以後は2ch等の通常の掲示板でがんばってください。
最後にブログの宣伝ですが,バックナンバーには「電場と電束密度,磁場と磁束密度」「運動物体中の電磁気学」など電磁気学や相対論の記事シリーズもありますから,興味おありならそのうちにお読みください。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2011年1月19日 (水) 07時40分
hirotaさん、ありがとうございます。
まずは、回路内で電場がどのように発生するのか、今私が持っている知識で考察してみました(その内容は2chに投稿しています)。
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/sci/1285322732/l50
>>386
非常に長くて、しかも根本的な間違いを含んでいる可能性が大ですが、もし良かったら暇な時にでも読んでみてください。
投稿: 初心者S | 2011年1月18日 (火) 20時38分
電荷があるから電場が存在するという理解で充分だと思います。
もちろん、磁場の変化でも電場は発生しますが、定常電流状態なら磁場変動なしですから、問題ありません。
もっと上に行かなければ理解できないような問題も時にはありますが、大抵はレベル内で間に合う問題だと思います。
投稿: hirota | 2011年1月18日 (火) 16時31分
ありがとうございます。不躾な質問にもかかわらずご丁寧な回答をいただき恐縮です。
どうやら私は電場、電位がなぜ発生するのかという基本的なところで躓いているようです。私の理解は、電荷があるから電場が存在し、電場の中の物理的な空間のある点でのエネルギーをあらわしたのが電位であるという静電場を基礎としたものなのですが、回路学(動電場?)では、電位差が存在することの理由の説明もなく、前提として語られているように思えて混乱しています。
私の印象だと、より高次の物理学(量子力学など)は、この先にある現象を説明しているような気がいたします。
もし、TOSHIさんのおっしゃっている巨視的理論という意味が、古典電磁気学というのはあくまで実学で、実際に目に見える形で現れた結果を扱うものであり、また、私の言っているような微視的な現象を説明している学問は現在ない、ということであれば、それはそれで納得できるのですが。
あるいは以前どこかで聞いたんですが、普通の人間は3次元(時間を含めれば4次元?)空間しか理解できないが、高次の数学を扱う学者は、それ以上の次元の空間について何となくイメージできる、といったようなことと同じで、例えそれを説明する理論があったとしてもワカさんがおっしゃったフェルミ球の話のように今の私にはイメージができない、ということかもしれませんね。
投稿: 初心者S | 2011年1月17日 (月) 16時01分
はじめまして,初心者Sさん。訪問ありがとうございます。ブログ主のTOSHIです。
ご質問,わかる範囲でお答えします。
>まずわからないのが、前提となっている抵抗中の電場が一様であるということです。
コンデンサーなどと違い、一様電場になる条件を満たしているようには思えないのです。
という質問内容ですが,電場Eと電位φの関係は導線回路の場合,線の長さ方向をxとしてE=-dφ/dxが電位の定義です。
1から2に向かって流れるとき∫(1←2)Edx=φ(1)-φ(2)=V(電位差)です。
抵抗部分以外では右辺の電位差Vは0ですからE=0でしょう。
抵抗の中で一様電場というのが気になるなら,考察対象のx~x+Δxの微小部分だけに着目して,xの近傍で局所的には一様でEΔx=-Δφという関係が成立することだけを認め,必ずしも電場一様という前提にこだわる必要はないのではないでしょうか?
(実際回路理論では直流ではなく交流でも抵抗についてはオームの法則使います。)
そういう意味ではなく微視的に一様ではないという意味のご質問だとしても,回路理論も含めた古典電磁気学は流体力学と同じくあくまで巨視的理論です。
キャリアの中心である個々の電子の受ける作用としての場は,巨視的平均のそれであり電子運動のゆらぎなどを無視した統計平均の巨視的電場がEであるという意味で論じています。
あとは,現在物性実験が専門のある大学の先生である「わかさん」のコメントと,それに対する私のレスの問答参照してください。
まず,わかさん。
(※)
久しぶりに覗いてみたらこんなことを...
散乱の話はもう書かれているので(散乱される向きが完全にランダムだったら減速されるのと加速されるのが居るはずで実質なんら変化が無いのではないか,
という気になりそうだ..ザイマンかアシュクロフトマーミン読み直そう)
ちと違う話を。
フェルミ球が電場でちょっとずれる,という見方をすると,一定の速度で動く感じになりますよね。
ただ,量子力学に相当漬かりこんだ人で無いと全く想像不能でしょうが。(※)
および,私のレス。。
(※)
>向きが完全にランダムだったら,減速されるのと加速されるのが居るはずで,実質なんら変化が無いのではないか,という気になりそうだ.
そうではないでしょう。
少なくとも電場があるとそれで加速される向きの電子が他の向きより多いけど,その向きの電子が散乱でランダムに変わってしまうから,やはり「緩和時間当たり1個消える」という感じでしょう。
>フェルミ球が電場でちょっとずれる,という見方をすると一定の速度で動く感じになりますよね。
うん,それはずれますね。電場がかかるとフェルミ球がkについて対称でなくなるので電流密度が0でなくなる,ということですが
それだけでは時間とともに電子の速度は増加しますから一様ではないです。
一様速度になるにはやはりフォノンか格子欠陥による散乱が必要ですね。(※)
そして,わかさん。
(※)ああ,そうか,フェルミ球のずれる量が,散乱を入れないと時間と共にどんどん増えていってしまいますね。やはり散乱を明示的に入れる必要がありますね。(※)
です。
最終的にはフォノンによる散乱の話になるので電子が衝突散乱されるのは初期ドルーデモデルのような素朴な衝突ではないのですが,電子が受ける散乱原因が古典的であれ量子的であれ最終的な結論オームの法則に至る道筋は同じです。
これ以上の疑問は,ブログを見たり2chなどで議論されるよりも,物性の専門書でも読んだ方がベターでしょうね。
もっとも,このブログでもこの記事「電気伝導」は単発記事ではなくジュール熱に言及した「電気伝導(つづき)」という記事があります。
さらに,後の記事としては古典的な「ボルツマン方程式」や「量子的ボルツマン方程式」などもあって,量子物性の格子振動やハートリーフォック近似などからフォノン関連の話へと続いて掘り下げてることはしていますが。。
お力になれれば幸いです。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2011年1月17日 (月) 08時31分
どうもはじめまして。
現在オームの法則を古典的電子論から勉強していて、このブログを拝見させていただきました。
この記事でも書かれているように、古典物理と統計的処理でおおよそ理解できるような気がしていたのですが、いくつかわからない点があり、質問させてください。
まずわからないのが、前提となっている抵抗中の電場が一様であるということです。コンデンサーなどと違い、一様電場になる条件を満たしているようには思えないのです。
また、電子(電荷)がトコロテンのように押し出されて移動するという話と、電子論での挙動の整合性がわかりません。(もしかしたら量子論的に解釈すれば理解できるのかもしれませんが)
最後にこれは上記のことを考えていて出てきた補足的な疑問ですが、電場(電位差)は回路中でどのように伝わるのかということです。電荷が電場を発生させると考えると導体中の電荷の偏りが回路の中で電場を発生させているように思われ(全くの見当違いかもしれません)、その場合はやはりトコロテンモデルで説明するのが良い気がする(導線と抵抗では電荷の移動速度が違うため偏りが生じる等)が、抵抗の中で挙動についてはやはりわかりません。
実はこれらの質問は2chでも行っていて、そこで電流はフェルミ球の移動で説明できるというレスがあったため、キーワード検索でこのサイトを発見したしだいです。
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/sci/1285322732/l50
>>357以下
いきなりの質問で大変恐縮ですが、量子論を勉強すればこれらの疑問が解けるということだけでも結構ですので(何分私にとっては敷居が高く二の足を踏んでおります)、時間のあるときにでもご回答いただければ幸いです。
投稿: 初心者S | 2011年1月15日 (土) 20時24分
ああ,そうか,フェルミ球のずれる量が,散乱を入れないと時間と共にどんどん増えていってしまいますね。やはり散乱を明示的に入れる必要がありますね。
投稿: わか | 2006年6月20日 (火) 23時22分
こんばんは。わかさん。TOSHIです。
ザイマンは確かに固体物理の中で「固体の電子論」にしぼった本なので見てみるといいと思います。私は素粒子系なので物性のわかる人にコメント頂だけるとありがたいです。
>向きが完全にランダムだったら,減速されるのと加速されるのが居るはずで,実質なんら変化が無いのではないか,という気になりそうだ.
そうではないでしょう。少なくとも電場があるとそれで加速される向きの電子が他より多いけど、その向きの電子が散乱でランダムに変わってしまうから、やはり「緩和時間当たり1個消える」という感じでしょう。
>フェルミ球が電場でちょっとずれる,という見方をすると,一定の速度で動く感じになりますよね。
うん、それはずれますね、電場がかかるとフェルミ球がkについて対称でなくなるので電流密度が0でなくなる、ということですがそれだけでは時間とともに電子の速度は増加しますから一様ではないです。
一様速度になるにはやはりフォノンか格子欠陥による散乱が必要ですね。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2006年6月18日 (日) 23時16分
久しぶりに覗いてみたらこんなことを...
散乱の話はもう書かれているので(散乱される向きが完全にランダムだったら,減速されるのと加速されるのが居るはずで,実質なんら変化が無いのではないか,という気になりそうだ....ザイマンかアシュクロフトマーミン読み直そう),ちと違う話を。
フェルミ球が電場でちょっとずれる,という見方をすると,一定の速度で動く感じになりますよね。ただ,量子力学に相当漬かりこんだ人で無いと全く想像不能でしょうが。
投稿: わか | 2006年6月18日 (日) 22時19分
こんばんは、かんねんさん。。TOSHIです。
むずかしいとのご指摘ごもっともです。あわてて省略して主語や述語がわからなくなっていたのでかなり追加し修正しておきました。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2006年6月18日 (日) 17時54分
ありがとうございました。と言っても,私にはちょっと難しいかな。(^_^;)
古典論的イメージではだめなんだろうなとは思いつつ,いざ量子論的イメージを持とうにも,知識と理解力がないので先に進めませんでした。でも「格子振動」って単語はちょっとヒントになりそうです。これをきっかけにして調べてみます。(^^)
投稿: かんねん | 2006年6月18日 (日) 16時16分
ども、かんねんさん、TOSHIです。
まあ、物性理論はかじった程度ですのでもしかしたら化学屋さんのほうがくわしいかもしれません。
固体金属内での電子の運動ですが、量子論ではご存知のように「バンド理論」を考慮しなければならず、自由電子の近似は多少の影響を受けます。
電子の運動量にしても周期的なイオンのポテンシャルが存在しなければ、自由電子なので、どんな運動量の値も連続的に取ることが可能なのですが、金属の中での電子は、束縛電子で遮蔽された格子位置にある周期的な陽イオンの引力を受ける結果、摂動を受けて、運動量(運動エネルギー)の値をとることが不可能な「禁止帯」があり、取り得る値は間にギャップがある不連続なバンド(帯)のくりかえしである「伝導帯」の部分にあたる運動量(エネルギー)の値しかとれません。
「伝導帯」の準位の数はスピンの自由度のため必ず偶数なので、価電子が偶数の元素は「伝導帯」が充満して空きがないため身動きできず、しかも「禁止帯」というエネルギーギャップがあるのでそれが大きいと上の「伝導帯」までジャンプできませんから結局、絶縁体であり非金属ですが、ギャップが小さいと「半導体」になります。
一方、奇数の価電子を持つ金属の場合はバンドが充満しないでほぼ半分の空き準位があるので自由に動ける伝導電子があるため、金属導体となるわけです。
しかし、このときの運動エネルギー値域の「バンド化」による自由電子の伝導電子への変化は、質量mの電子が一見したところ「有効質量」m*の電子に変わるというような効果だけで、実は周期的クーロン力ポテンシャルが「全く規則的に」並んでいてしかも「止まっている」だけでは散乱や衝突などは全く起こりません。つまり緩和時間は∞なので素朴な古典論は誤りなのです。
衝突が起こる、つまり量子論では電子は波でもあり、「電子波束」の分布が対称=「一方向に進行している状態」でなく影響をこうむるのは、並んでいる陽イオンが常温では熱などによって振動する=「格子振動する」、あるいは「格子欠陥がある」=「不純物効果」がなければ、電子が散乱されて進路が変わるようなことはありません。
主に「格子振動」=フォノンと衝突するのが散乱の原因ですが、結局、格子イオンが時間的に変動することによって電子が進路を曲げるということで引力か斥力かは不明だと思います。
つまり、電気的に中性の「電磁波」=光子=フォトンと電子が衝突する=コンプトン効果、のように「格子振動」という調和振動子を量子化した波動=音子=フォノンと電子が衝突する、と思ってください。
たとえば極低温で電子と電子が引き付けあってクーパー対になり、スピンが整数になるのでボソンとしてボーズ-アインシュタイン凝縮して「超伝導状態」になるのも、静電クーロン力が電荷と電荷がフォトンのキャッチボールをするために引力、斥力が起きるように、電子と電子がフォノンのキャッチボールをするために引力が働くわけです。
このようにフォノン=格子振動波をフォトン=光子のように粒子性を持った量子として吸収したり放出したり散乱したりするものとして扱えると考えるのです。
実際には緩和時間は運動量や温度の関数でよりくわしくは「ボルツマンの輸送方程式」という偏微分方程式にしたがって決まります。
これ以上は私も勉強中だし門外漢なのでわかりません。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2006年6月18日 (日) 10時13分
こんばんは。(^^)
聞くは一時の恥。TOSHIさんになら,何となく聞きやすくって。私の頭の中でのイメージ正常化を助けてください。
よく,「電子が金属の原子から抵抗を受ける(=衝突する)」ことが抵抗の正体であると本には書いてありますが,陽イオンと電子の衝突って,どんな感じなんでしょう? というのは,衝突による斥力的イメージではなく,異符号ゆえの引力的な力を想像してしまいます。これをどう理解したらいいのでしょうか?
投稿: かんねん | 2006年6月17日 (土) 21時47分