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2006年6月30日 (金)

慣性力の反作用

   丁度今,@nifty物理フォーラムで問題になっている話題について論じたいと思います。

 地球の周りをまわっている人工衛星は,互いに力を及ぼしている"万有引力=重力"のおかげで.それを向心力(求心力)として”円運動=周回運動"をしており,"地球によって人工衛星にかかる引力=重力"の反作用は"人工衛星によって地球にかかる引力=重力"であることは言うまでもありません。

 さて人工衛星が静止しているという座標系で見ると静止しているのにもかかわらず人工衛星自身には遠心力というみかけの力なるものが働いていますが,これに対する反作用としての力は何にかかっているのか?というのはちょっと不思議に思える問題です。

 もちろん,遠心力を受けているのに静止しているのは,別に地球から万有引力を受けていて,それとの合力がゼロ だから,釣り合っているというわけです。

 逆に,地球は人工衛星から万有引力を受けながら衛星のまわりを周回しており,もちろん釣り合っておらず運動しているのだから,こちらは合力がゼロである必要はありません。

 慣性力である遠心力はみかけの力だから反作用なんて考える必要はないじゃないか,と言われるかもしれませんが,一般相対性理論の等価原理では慣性力も,れっきとした重力であり,"みかけの重力=非永久重力"か本当の意味の"重力=永久重力"であるかは,結局はその座標空間の曲率がゼロであるかどうか,で区別はできるものの本質においては,その区別は重要ではありません。

 確かにミンコフスキー時空という特殊相対論の慣性系の空間も一様加速系から見ると,一様加速度運動をするリンドラー時空というものになりますが,そのメトリック(計量=2点間の距離を与える指標)はもちろん平坦なミンコフスキーメトリックとは違います。

 ですから,この時空はもはやミンコフスキー時空ではない,と考えるという人もいるかも知れません。

 しかし,ちょっと座標変換をすれば元の平坦計量に戻るわけで,時空多様体という幾何学的見地からすると.座標変換で座標というラベルがいろいろと変わろうと,その幾何学的実体としての時空は同じですから,リンドラー時空をもミンコフスキー時空と呼ぶことに私はあまり抵抗を感じません。

 ちょっと脱線しましたが,加速度αで運動している一様加速系を静止系としたリンドラー時空の中の質量 m の物体は,すべて-mαという,"慣性力=加速度が-αの一様重力"を受けます。

 "重力は外力だから1体問題であり,その反作用なんて考えなくてもいいだろう。"と言う方もおられるでしょう。

 しかし,地球表面上での mgという加速度が g の一様重力も実は地球がその物体に及ぼしているわけで,地球にとっては微々たるものでも,その反作用-mgは逆に物体が地球を引っ張る万有引力として作用しているわけです。

 そこで,慣性力という重力にもそれを及ぼしている実体があると考えるのが自然で2体以上の内力に関わる反作用を考えることもできると思います。

 (もっとも”重力とは時空の曲がりそのものであって,そもそも力ではない”という考えもありますが。。。)

 遠心力やコリオリ力という回転系を基にして生じる力については,マッハ原理で有名なニュートンのバケツ,つまり「水の入ったバケツをひもで吊るして回転(自転)させると真ん中の部分がへこむ,これは普通は慣性力によるものだと考えますが,もし遠方の星がまったくなかったらバケツの水の真ん中がへこむことはないだろう。」という考え方が典型的なものです。

 これは遠心力など回転に基づく力についても,例えば自転している地球などにいる人が自分は止まっているとすると,その受ける遠心力,コリオリ力という'重力'は逆に宇宙全体が回転しているから回転している宇宙の遠方の星が及ぼす重力に起因する,という考え方です。

 実際,ティリングとレンズ(H.Thirring  and J.Lens)の二人は回転宇宙の遠心力への寄与を計算し,宇宙全体の球殻の質量Mをうまく選べば,その力の値がうまく遠心力に一致する,というところまで計算しています。

 ですから,もしも遠心力が回転宇宙の星によるものであるならば,その反作用の力は回転宇宙の星にかかっているとしてよいでしょう。

 もっとも,自転系を静止系にとると宇宙全体がどんな距離でも同一の角速度で回転していることになり,どこか遠方の半径では回転の接線速度が光速に等しくなり,そこでは接線速度方向の長さは自転系の人からみるとローレンツ収縮してゼロになります。

 そこで,多様体の座標系としてみてそこは事象の地平面という特異面でそこから先は不連続で到達できない領域に分割されるしかない,という困難もありますね。

 もっともワイル(Weyl)の「空間・時間・物質」にもありますが慣性系であるか非慣性系であるかは光が通常の光速度で真っ直ぐ進むか否かで判断できる,というのもあります。

 光の運動は"絶対的"であり光線に対して回転しているなら"絶対的に"回転しているというものですが,その系の内部にいる人にとっては,真っ直ぐかどうかということがちゃんと判断できるのか?というのも私には少し疑問に感じることの一つですね。

 そもそも,真っ直ぐな線で進むというのは最短距離を取るという意味ですから,測地線を描いて進むということに過ぎませんからね。もっとも,太陽の引力で光が曲がるというのはちゃんと観測できる現象のようですから私のほうが意味を誤解しているかもしれません。

 フーコーの振り子の回転周期というのも地球が自転していることの証拠である,ということで有名ですが実はある慣性系に対して地球が自転している,ということの証拠であるだけで別に"絶対運動をしている"ことの検証ではないわけです。

 まあ,素朴なマッハ原理,つまり,「どの座標系をとってもよくて運動はまったく相対的である。」かどうか?ということに関する疑問は昔からあって,たとえば数学の完全性,不完全性の定理の証明で有名なゲーデル(Kurt Gödel)の理論的計算による一般相対論に基づいたゲーデル宇宙ではマッハ原理は成立しないそうです。

 回転系ではないリンドラー時空でも全ての宇宙や星が自分にかかる加速度と反対向きの加速度で運動している座標系ですから宇宙全体が自分に慣性力を及ぼしていると考えるのが自然でしょう。

 静止,またはや等速度運動をしている宇宙全体は,その一様性という宇宙原理から,個々の構成物の重力源としの他に,その総体としての一様並進運動が原因で試験物体に重力を及ぼすことはないでしょうが,運動が加速度運動であれば先の遠心力のように物体に及ぼす重力を計算できるでしょう。

 そのときはパラメータとして宇宙全体の一様質量密度を考える必要がありますが,それをうまく調節することにより宇宙全体の物体に及ぼす重力の大きさが物体が当然受ける慣性力の大きさ,と一致するようにできると思います。

 したがって-mαなる慣性力の反作用の力は,やはり宇宙全体にかかるとしてよい,と思います。

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                                  TOSHI

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