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2006年7月 8日 (土)

2台のロケットのパラドックス

 特殊相対性理論の話題を1つ提供したいと思います。(@nifty物理フォーラム過去ログ→ http://sci.la.coocan.jp/fphys/log/sotai/9.html )

 "2台のそれぞれ長さLのロケットA,Bが,最初間隔Sだけはなれていて,同時に加速を始めて同じように加速を続けた場合,そのロケットの長さと間隔を,静止観測者と,ロケット搭乗の観測者が見るとどのように見えるでしょうか?"

 という問題です。

 これに関して,松田卓也氏と木下篤哉氏の「相対論の正しい間違い方」でのほぼ同じ問題:車両と連結器の話があります。

 そして,この著書での回答に対して,原田稔氏が反論しています。

(原田稔 「反論:相対論の正しい間違え方」に対する回答への反論」(雑誌:パリティ;2001年4月号)参照)

 私見ですが,これは私には"ピントはずれな"反論にみえます。

 すなわち,原田氏の言辞は別に間違っているというほどのことはなく,ある意味で正しいのですが,

 松田氏と木下氏もそのような単純な間違いをするはずがなく,彼らが主張していないことに原田氏が反論しているので噛み合わず,結果として無関係な主張となっているようにみえるのです。

 ローレンツ収縮の問題ですが,もちろん静止慣性系から運動慣性系をみれば2台のロケットのみならず,その間隔も収縮するのは当たり前のことですね。

 問題は静止していたものが加速していくという設定です,もちろん,「加速系だから特殊相対論では扱えない。」というような馬鹿なことを主張するつもりは全然ありません。
 
 静止系の観測者からみれば,先頭のロケットAの頭と2
番目のロケットBのお尻は観測者の同時刻であれば,加速が終わった段階では同じ速度になっているはずですから、ロケット系はいわゆるローレンツ収縮しているはずです。

 しかし,時空図を書いてみれば明白なことなのですが,それぞれのロケットはたとえば加速度 ∞ で瞬時に速度vになったとしても,その長さとか間隔とかはもとのLやSと変わるものなのか?という問題があります。

 実は時空図を書いてみると,加速の前後でロケットの先端点も後端点も同じ加速度運動の世界線を描くので,ロケットの長さも間隔も静止系から見て加速の前後で変わらないと見るのが正しい,ということがわかります。

 (※↓琉球大のいろものさん(前野さん)の図を頂きました。

 ロケットの先端と後端が速度ゼロから同じように加速されて同じ軌道(世界線)を描いて一定速度になるなら長さLは変わらりません。 )

 

 
 一方,ロケット系の観測者にとっては,静止観測者の同時刻は同時刻ではありません。

 ロケット系の同時刻は静止系の時刻では前の方が,後ろより進んでいるので,加速の途中ならば,加速によって前のロケットの速さのほうが,後ろのそれより大きくなっているはずです。

 

 

 これに対して,通常の特殊相対論のケースである,観測者に対してロケットが等速直線運動している,あるいは静止したロケットに対して,観測者のほうが等速直線運動をしている場合は,観測者にとってはロケットの長さもその間隔も共にローレンツ収縮しています。

   つまり,静止観測者から見て「ロケットの長さも間隔も加速度運動の前後で変わらない。」のにも関わらず,特殊相対論では「それらはローレンツ収縮していなければならない。」のです。

 ということは,ローレンツ収縮の結果として,静止観測者の見る運動中の長さはLやSのまま変わらないのですから,加速を終わったロケット自身の慣性系では静止時のロケットは元の長さLや間隔Sではなくて収縮の逆数であるγ倍である,γLやγSに伸びていなければならない,ということになります

 ここで,もちろんγ=1/{√1-(v/c)2}=1/√(1-β2)です。

 したがって,もし数台のロケットとか車両を連結して加速しようとすると,静止系から見たローレンツ収縮に対応するために伸びる必要があるので,連結器のところも伸びなければならないことになります。

 その効果として,ある加速度以上では,ローレンツ収縮による収縮に反する力がかかる結果として耐えることができずにバラバラに破壊されることになります。連結を分子間力とみれば分子がバラバラになると見てもいいわけです。

 「ローレンツ収縮というのは,単に座標系間の運動学的なみかけの問題であって力学は関係ないから,実際に物体に力がかかって収縮するわけではない,つまり収縮して見えるだけであって,物理的に力がかかって収縮するわけではない。」とお考えの方が大勢おられるはずです。

 (かつては私もそうだったのでこの話題が@niftyで出たときに「冗談だろう」と思った口です。)

 だから,こうした話はトンデモではないか?と考えられるかもしれませんが,私は今は正しい捉え方である,と思っています。

 つまり,現実の運動では静止状態から運動状態に至るときに,収縮に抗する力が働くわけです。

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                               TOSHI

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コメント

本件について、
http://mb2.jp/_grn/2250.html-34-36
で纏めて見たのですが、誤り等があれば教えていただけないでしょうか?

投稿: 凡人 | 2019年3月30日 (土) 23時56分

 こんばんは。。わかさん、TOSHIです。

 神戸大教授の松田卓也さんのホームページ
http://nova.planet.sci.kobe-u.ac.jp/~matsuda/matsuda.html

で公開されておりますところの
論文「2台の宇宙船のパラドックス」

http://nova.scitec.kobe-u.ac.jp/~matsuda/pdf/0309SpaceshipParadox.pdf

 でも参考になさったらいいと思います。木下篤也氏は@nifty前身のニフティサーブのサイエンスフォーラム物理会議室の元議長でこの話の元ネタは彼によるものです。

 くわしくは

投稿: TOSHI | 2006年7月10日 (月) 03時17分

この問題,”静止系から見た同時”に加速した結果,”運動系から見たら一方が加速しはじめてから他方が加速する”事になって,引っ張られて千切れる,という事ですよね。

連結器がある程度の強度を持っていて,加速度が常識的な大きさであれば,二機のロケットの間で連結器を介して引っ張り合う力が働いて,ロケットの系で見て距離が一定になるように動く(問題の前提とは外れてしまいますが)事で破壊を免れるように感じます。

投稿: わか | 2006年7月 9日 (日) 17時49分

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