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2006年7月12日 (水)

オゾンホール

 "フロンガスなどのオゾンを破壊する物質は南極で排出されているわけではないのに,なぜ極地のオゾンを破壊し特に南極にオゾンホールができるのだろうか?"という疑問がありましたが,それに対しての若干の考察をしてみたいと思います。

 もちろん,その原因についてのこうした考察を自分独自で構築したわけではなくて,例によっていくつかの定説なり知見なり,を見聞きして自分なりにまとめたものですが。。。

 オゾンO3は酸素O2よりエネルギー的に準位が高い物質なのですが,安定な酸素O2に光(紫外線領域の電磁波)hνが当たると,そのエネルギーを吸収して,1つの酸素分子が2つの発生期の酸素原子Oに分解され,それが酸素O2と結合するためにに生じます。

 したがって,オゾンは酸素状態より,エネルギーが高く不安定なのですから,それ自身,自然に酸素に変化してしまう,つまり破壊されるのですが,太陽から紫外線がそそがれている限りは再びオゾンが作られて結局オゾンの方が卓越した形で平衡状態になり,オゾン層ができているわけです。

 自然に酸素になるとは書きましたが,実際にはオゾンが酸素原子と酸素分子に分解されるにも光(紫外線)を吸収することが必要です。

 オゾンはエネルギー的には酸素より不安定なのですが,それでも"酸素原子+酸素分子"の状態よりは安定なので,オゾンを分解するには,"光=電磁波"のエネルギー hνが必要なのです。

 まとめると,O+O→O2やO+O2→O3は触媒は必要でもエネルギーは必要でなく,むしろ自然に反応が進んで発熱するのですが,O2→O+O,O3→O+O2には紫外線エネルギー hνが必要で,このため紫外線はこうした反応によって吸収されて地球にそそぐ量は減るわけです。

 つまり,オゾン層で多量の紫外線が吸収され,その結果として人体に有害で特に"皮膚ガンの原因となる放射線=紫外線"からシールドされているのですね。
 
 しかし,上層大気中にフッ素や塩素などフロンガスが多く蓄積されると,それらがオゾンからの酸素原子と結合しては酸素を作るということを繰り返すので,オゾン層内部で先述の"平衡状態=バランス"が崩れて,オゾンが減少する反応,つまりオゾンが酸素になる反応の方が超過して,オゾン層が破壊されてゆきます。

 そして,"なぜ極地においてその破壊が著しいか?"の回答は,

 "極地では極夜といって冬には昼がなく夜だけになってしまう現象があり,夏では昼の時間が長いですからオゾンホールはやや小さくなるようですが,太陽高度が低く日射量が少ないので,太陽による"紫外線などの電磁波"の量が周りよりもかなり少ないため,酸素からオゾンがつくられる反応が少なくてバランスが崩れるからではないか?"

 と思われます。

 南極では"極夜渦"という非常に低温の領域ができていて,まわりに大きな大陸などないために,よそから気流が流れ込みにくい状態となり,オゾン層の破壊がよそからの気流によって解消されにくい状況にあります。

 それに対して,同じ極地でも北極でも,もちろん極夜はあるのですが,南極とは異なり,それ自身は大陸ではないのに,近くを複雑な地形のユーラシア大陸が取り囲んでいます。

 そのため,大気に温度差が生じやすく,他の部分から"気流=風"が流出入する関係で,そこだけに孤立した渦ができる可能性が少ない,つまり周りからオゾンが流れ込むため,南極のようにはオゾンホールとして孤立しにくい状況にあるのでしょう。

 話は変わりますが,地上付近では,一般に人体に有害なオゾンが少ないのは,逆に上空のオゾン層の影響で紫外線が少ないからだと思います。

 それでも真夏など紫外線が比較的強いときには地上付近でもオゾン濃度が増えていわゆる"光化学スモッグ"が発生しますね。

 まあ,平たく言えば,紫外線量とオゾン量は,一方が多ければ他方も多く,一方が少なければ他方も少ない,という関係でバランスしているようです。 

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                       TOSHI 

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202. 気象・地学・環境」カテゴリの記事

コメント

 いやあ、どうもずいぶんお久しぶりですねえ。アクシオンさん。TOSHIです。

 急にフォーラムから消えられたのでどうなさったかと思っていましたが、「相対論の正しい間違え方」は出版されてよかったですねえ。。

>「2台のロケットのパラドックス」の方にコメントしようかと思いましたが、どちらかというとこちらの方が“本業”なので一言。

 そうですねえ、「気象」が本業でしたねえ。私も「気象関係」と無縁ではなく「放射能拡散」の数値モデルを作ったときには筑波にある「気象研」の小出さんや木村さんにお世話になりました。

>南極のオゾンホールは、極地成層圏雲(PSC)によって効率よくオゾンが破壊されるために生じます。

 PSCですか。。それはよく知りませんでした。オゾン破壊のメカニズムについては私の文章は想像で書いたので、詳細なことについては調べてみたいと思います。

 コメントありがとうございました。

           TOSHI

投稿: TOSHI | 2006年7月27日 (木) 22時12分

お久しぶりです。TOSHIさん。

「2台のロケットのパラドックス」の方にコメントしようかと思いましたが、どちらかというとこちらの方が“本業”なので一言。

南極のオゾンホールは、極地成層圏雲(PSC)によって効率よくオゾンが破壊されるために生じます。PSCは非常に低温でなければ生じ得ない雲なので、南極にできるというわけです。PSCの見た目はかなりキレイみたいです(見たわけではありません。実際に越冬した人から聞いただけです)。

AXION

投稿: AXION | 2006年7月27日 (木) 20時41分

 こんにちは。。。昼酔者さん、TOSHIです。

 どうもご指摘ありがとうございました。おっしゃる通りです。夏はホールが小さくなりますね。訂正しておきます。

             TOSHI

投稿: TOSHI | 2006年7月13日 (木) 12時32分

>夏でも昼の時間が非常に短いわけですから

という記述は間違っていると思います。
高緯度地方ですから、夏は白夜で昼の時間が長い。
平均すると、昼夜の時間は地球上どこも1日12時間ずつではないでしょうか。
もちろん、高緯度地方では単位面積あたりに受けるhνは小さいのですが。

投稿: 昼酔者 | 2006年7月13日 (木) 11時44分

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