音(弾性波)の伝播
先日の記事「電気の伝わる速さ(分布定数回路)」では,一般に運動速度の遅い電流に対し,「電気の伝わる速さ」は"電流=電子流"などよりもはるかに速く,電子などの行列した塊についてトコロテン式であり,実は"光=電磁波"という波動の伝わる速さである,と述べました。
実は,こうしたことは金属などの棒の一方の端をたたいたり押したりする場合の作用の伝達についても同じです。
こうした作用が原因でたたいた信号が反対側の端まで届いたり,押された影響で反対側の端が動きはじめるのも,やはりトコロテン式です。
これも,"瞬時=速度 ∞で"伝わるように思えますが,その伝わる速さは実は"弾性波=音波"の伝わる速さ,つまり音速に等しいわけです。
"音=弾性波"の伝わる速さvは,媒質の弾性率,つまりバネ定数やヤング率などで代表される係数をk,媒質の密度をρとすると,√k/ρに比例します。( v ∝ √k/ρ)
それ故,ρ= 0 であるか ,k = ∞ でない限り,棒の端を押しても,それが瞬時,または速度v=∞で他方の端に届くことはありません。
媒質が必要でない光波とは異なり,音波は媒質が振動することによって伝わるわけです。しかも媒質が軽くて硬いほど音速は大きいので,光とは逆に音は,空気中などよりも硬い物質中でより速く伝わります。
k= ∞ というのは真に硬い物体である剛体を意味します。
この世に理想的な物体である剛体というものがあれば,"音波=弾性波"の速さは光速を超えてしまいますが,実在する物体はタキオンではありませんから,相対性理論に基づいた"実質的に光速を超える速さの信号は有り得ない。"という原則によれば,音速が光速を超えてしまう剛体なるものは現実の世界には存在しない,ことになります。
つまり,物の硬さ(kの大きさ)や密度ρにも,"(弾性波の速さ=音速)≦(光速)でなければならない。"という限界があるということですね。
横波と縦波の違いはありますが,金属などの一方の端から他方の端まで伝わる信号は電気的信号であれ,弾性的信号であれ,実は波動によって媒介されて伝わるものである,ということができます。
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