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2006年8月26日 (土)

ホワイトノイズ,1/f ゆらぎ

 以前,マイナスイオンについてかなり"マユツバなもの"だと書きましたが,最近電気店で見たコピーはさらに奇妙でした。

 

 「プラス電子が減少してマイナス電子が増えるから健康になる。」などと"トンデモない"文言に遭遇してあきれています。

 

 プラス電子って電子の反粒子の陽電子のことでしょうか?だったら,そんなもの減少もなにも発見することすら大変なことですよ。

 

ところで,ちょっと前に「身体にやさしい1/fゆらぎ」というキャッチフレーズがはやりましたが,こちらの方はどうやら根拠は無いですが一応もっともらしくまともなようです。

 

そもそも,ここでいう"ゆらぎ(fluctuation)"とは電気回路などの雑音(ノイズ)のことでしょう。

 

電気抵抗Rがつながれた回路では,一般に熱雑音に起因する起電力V(t)が生じますが,これを振動数 fの単振動の周波数成分にフーリエ(Fourier)分解してみます。

 

振動数fは正であるとしfにおけるフーリエ振幅成分をV(f)とします。振幅の強度としてサンプル平均<|V(f)|2>Δfを取り,これの2倍(=fと-fの2つ)をパワースペクトル(power spectrum)S(f)Δfとして定義します。

 

雑音電圧V(t)の自己相関関数はΦ(τ)≡<V(t)V(t+τ)>=∫0dfcos(2πfτ)S(f)となることがわかります。

 

これは「ウィーナー・ヒンチンの定理(Wiener-Khintchine's theorem)」として知られています。

特に,"S(f)=振幅強度の平均"が振動数fによらず一定のとき,これは光の白色光と同じく全ての色が同じ割合で混合したものという意味で白色雑音(ホワイトノイズ)と呼ばれます。

 

白色雑音の場合,S(f)=4D(一定)と置いて先の積分に代入すると,自己相関関数Φ(τ)は,Φ(τ)=2Dδ(τ)とディラック(Dirac)のデルタ関数になります。

これをRC回路に適用します。すなわち,回路方程式をdQ/dt=-Q/(CR)+V(t)/Rと書き,回路内に熱雑音起電力V(t)があるとして,Qのゆらぎを考えます。

 

雑音は白色としてその起電力V(t)の自己相関関数をΦ(τ)=2Dδ(τ)とします。

すると,一般にブラウン運動に対するランダムな揺動力R(t)を導入したランジュバン(Langevin)方程式m(du/dt)=-mγu+R(t)からのアナロジーでブラウン粒子の速度uの2乗平均に相当するQの2乗平均は,Φ(τ)=2Dδ(τ)によってCD/Rに等しくなります。

 

これは,また平衡状態でのコンデンサーのエネルギーE=Q2/(2C)に対するボルツマン(Boltzmann)分布の因子exp(-E/kBT)によっても決まります。

 

すなわち,こちらからの計算ではQ2の平均値は∫-∞[Q2exp{-Q2/(2CkBT}]dQ/[∫-∞exp{-Q2/(2CkB)}dQ]=CkBTです。

 

そこで,ホワイトノイズとしての起電力V(t)は,そのパワースペクトルS(f)=4D(一定)が,D=RkBTを満たすことがわかります。これは「ナイキスト(Nyquist)の定理」と呼ばれます。

 

コンデンサーから電荷が失われて熱雑音だけになり平衡状態になったときの雑音電圧はパワースペクトルがS(f)=4RkBTのホワイトノイズであることがわかります。

しかし,一般にはレーザー光線(Laser)のスペクトルのコヒーレンス時間(可干渉時間)のように,

 

自己相関関数:Φ(t)には"相関がある時間が一瞬である"という理想的ケースはほとんど無く,むしろある有限なスパンτがある方が現実的です。

 

Φ(t)=(D/τ)exp(-|t|/τ),つまり完全なホワイトノイズであるよりも,釣り鐘型のある幅を持ったローレンツ(Lorentz)型雑音であると考えたほうが現実的だと思います。

 

そして,一般の電気回路にはこうしたナイキスト雑音の他に,より周期が長くてノイズのパワースペクトルS(f)が1/fに比例する,つまり

 

"ある振動数fの"雑音の強さ=雑音エネルギー"がfに反比例する。"というような"1/f雑音"が混じっていることが知られています。

また,自然界のバイオリズムとか生理的に心地よいリズムとして,この1/f雑音分布が最適である,という生物的パターンがあるらしいとも聞いています。

 

すなわち,私にとっては根拠は不明なのですが,

 

"振動数fがゼロの極限=超低音でゆったりとしたノイズの成分が最も多く,高音になるにつれてノイズの量が少ないというパターン=1/fゆらぎパターン"が,まるで"フィボナッチ数列=黄金分割"が美しさと関係あるように,心拍数のリズムなど生物である人間の快感のリズムと関係がある

 

らしいという話があります。

  

これは,経験上マユツバな話では無くかなりもっともらしい話だと感じました。

 

参考文献:北原和夫著「非平衡系の統計力学](岩波書店)

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コメント

難しい数式はわからないのですが、ホワイトノイズに由来するということでしょうか?
ピンクノイズとする記述もあるのですが.......

http://ja.wikipedia.org/wiki/1/fゆらぎ

投稿: 通りすがりの者 | 2013年8月 2日 (金) 08時18分

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