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2006年8月25日 (金)

ブラックホールの形成時間

 ちまたでは,銀河系の中心には巨大ブラックホールがあるとか言われています。

 しかし,ブラックホールというか,"シュヴァルツシルト半径=事象の地平面"の内部に何かが落ち込んでしまうという現象は実際には観測できないはずです。(検索用=Schwartzschild;シュワルツシルト,シュバルツシルト)

 外部遠方からは,事象の地平面を通過して内側に何かが落ち込んでしまうようには見えず,外から事象の地平面に近づくだけでも我々の時間では無限大の時間がかかります。 

 にもかかわらず,銀河系の中心には実際に巨大ブラックホールがあると言われています。どうしてそんなことがあり得るのでしょうか?

 という質問が「ニフティ物理フォーラム」で過去にありました。

 その当時,これは非常にむずかしい問題だと思いました。

 完全な意味でのブラックホールというものが既にどこかに存在しているとしたら,それに吸収される物体を観測している側からは事象の地平面まで到達するのに無限大時間がかかるため,物体がのみこまれるのを観測できないはずです。

 しかし,曲率から判断される本当の特異点はブラックホールの中心にしかありません。

 シュヴァルツシルト半径は物体自身にとっては特異点でも何でもないですから,物体の固有時間では有限の時間でのみこまれてしまいます。

 したがって,遠方から見ているだけでは光であれ,いつまでたっても吸い込まれませんが,危険を省みず光といっしょに走れば吸い込まれるのがわかるはずです。(何かゼノンの背理(パラドックス)の「アキレスと亀」みたいですね。)

 とは言うものの,実際にそういう観測ができるかというのはむずかしいかもしれません。

 ブラックホールが既にあるとしたらと言った意味は,重力崩壊によってブラックホールができるという通常の星の進化過程なら,それは結局のところ,自由落下と同じなので外部の我々から見て,ブラックホール形成にも無限大時間がかかるはずだという意味です。

 無限大時間ということは,それこそ宇宙開闢から今までかかっても,重力崩壊しかかったまま,ずーっと事象の地平面に凍り付いているはずだ,と質問された当時は思っていました。

 そこで,何らかの重力崩壊以外の理由で,ブラックホールが既存であるということがないとするなら,現時点でも出来かかったままの,つまり「出来そこないのブラックホールもどき」,しかないのではないか?という風に当時の私は考えていました。

  そういうわけですから,「銀河中心に巨大ブラックホールがある。」としてもそれは宇宙ができて後の通常の"星の進化"によるものではなくて,我々の宇宙のビッグバンが開始した頃とか,銀河系が出来たばかりの頃の何らかの重力崩壊以外の作用因でできたものだろうとか,考えていました。

 また,例えば,あるブラックホールがあって,そこに物体が落ち込んでいくとすると, 事象の地平面近くまで落ちたところで,外部から観察すると,その物体はそれ以上落ちていかなくなるように見えると思います。

 しかし,実際にはその物体が落ちたことによって全体の質量が増すはずですから,事象の地平面の内部はそれによって質量的には太るとも思えます。

 重力崩壊の場合,その星がブラックホールになる前といえば,その星の質量全体が中心にあると仮定したときの仮想の事象の地平面は星の半径の内部にあるわけです。

 例えば我々の太陽なら中心から約3kmのところに仮想の事象地平面があるわけですが,重力崩壊して鉄だけの星や中性子星になるということは,

 体積的には星は太るというよりどんどんやせて,地平面がせり出してくることになり,ついには星の半径より外に地平面が出てきたとき,初めてブラックホールになったといえるわけです。

 もっとも,太陽程度の質量では,その進化によって,半径3km程度のミニブラックホールになるわけではありませんが。。。。

 ですから,外部からの吸収により質量的に太るというよりは星が本来持っていて重力崩壊の期間にずっと"不変である全質量=星の自重"が本質的であって,

 それにガスの圧力が抵抗できなくなる内部崩壊の力学が重要であり,自重でつぶれるという意味の方が大きいと思っていたわけです。

 くわしくは,圧力がゼロのダスト物質からなると仮定した球状の密度分布が一般の星の場合の重力崩壊の方程式の解は次のようになります。

 すなわち, t を共動座標の時間,つまり観測者の座標時間ではなく星の固有時間とし,星の半径Rがゼロになる時刻を t0 として書き下すと,

 重力崩壊中の今の時刻 t に対する星の半径R (t ) は, (t0-t )の 2/3乗に比例します。

 もちろん無限大時間でなく,速やかに半径Rはゼロになりますが,これを遠方の観測者がみると,重力崩壊はシュヴァルツシルト時空での自由落下に同等なので,固有時間は有限であっても,座標時間は無限大経過して"半径がシュヴァルツシルト半径の球面=事象の地平面"に到達します。

 ただし,表面から出る光のエネルギーは座標時間と共に指数関数的に減少)しますから,重力崩壊が止まっているように見えても明るさとしては急激に暗くなっていきます。

 一方,これとは独立に一般相対論の球対称一様密度の星のTOV方程式を解くことにより,求められるシュヴァルツシルトの内部解では,

 中心圧力が正であるためには星の半径がシュヴァルツシルト半径の( 9/8 )倍より大きくなければならないので,ブラックホールが存在することは不可能です。

 これがあるので,シュヴァルツシルト自身は,ある意味では"安心していた?"かもしれません。

 しかし実際には例えば一様密度であるという内部解成立以外の条件による解もあるわけで,現実には条件次第でブラックホールは存在可能です。

 そして,一般には核反応や超新星爆発などの現象が中心となって星がブラックホール化するわけですが,ブラックホール化したあとに,外部の物体やエネルギーの吸収によって"星=ブラックホール"が肥大していくというのも可能だと思っていました。

  しかし,現時点では次のような考え方に変わりました。

 重力崩壊が完了する前には,星全体の質量を元にして計算した仮想的な事象の地平面の内部に,星全体があるというわけではなく,崩壊の途中段階ではガウスの法則により仮想半径の外の部分に働く重力は内部にある質量のみに比例し半径の外にある部分の質量は全く無関係です。

 そもそも,地平面内部の質量だけを元に計算した自己無撞着な事象地平面の半径というものを想定すると,最初は内部質量がゼロなので,明らかにそれによる地平面半径もゼロであるというのが真であると考えられます。

 そして事象地平面は崩壊中に固定しているものではなく,重力崩壊が進んでいくと共に内部質量も次第に増加して,それと連動して地平面の半径が次第に成長していくという描像が真であると考えれば,遠方の観測者から見てもブラックホールの形成時間は有限であると考えられ全く何の問題も生じないのではないか,と思うに到りました。

 そして,重力崩壊以外の例えば2つのブラックホール同士の融合についても,こうした考えに基づいて両者の共通の地平面が有限時間で形成されると考えれば,融合によるブラックホールの成長も可能だと思います。

 ただ,し,この場合はやはり互いに自由落下して一方の質量をmとするとき,他方がその地平面に到達するまでの座標時間 t は,素朴に考えるとやはり無限大になりますね。

 具体的には,シュヴァルツシツト半径を rg= 2Gm/c2とすると,球対称時空の計量は動径部分のみで考えたs波では,ds2=c2dτ2=(1-rg/r)c2dt2-dr2/(1-rg/r)です。

 この時空を仮に質量ゼロの光が自由落下すると仮定するなら,"光の経路=測地線"はdτ=0 で与えられます。

 つまり光の固有時間の経過は常にゼロで,光自身は決して歳を取らずτで表わされる固有時では即座に地平面を通過して星の中心に到達するわけですね。

 そして,光の測地線はcdt=±dr/(1-rg/r)となりますから,これを素朴に解くと,時刻t0でr=r0であったとして落下の条件ならばc(t-0)=(r0-r)-rglog(r-rg)/(r0-rg)となります。

 右辺の第1項は単に光速度で等速運動をするという距離を示しており,自由落下の効果は第2項の対数項で表わされます。

 したがって,これは距離rが地平面半径gに近づくときに観測者の座標時間tが-glog 0 +(r0g),つまり無限大になるということを表わしています。

 光ではなくて有限質量の物体の落下の場合は,最小作用の原理,つまりds=cdτの積分が最大になる経路が測地線になります。

 これを解いた結果だけを書くと,ct/(2g)=(-2/3)(r/rg)2/3-2(r/rg)1/2-log[{(r/rg)1/2-1}/{(r/rg)1/2+1}]+const.となり,やはり対数項の影響によって距離rが"地平面半径=g"に近づくときにtは無限大になります。

 しかしrがrg まで到達しなくても,(r-rg)がいわゆる"プランク長さ=約10-35m"程度になるまで,接近すれば重力の量子効果が無視できないことになります。

 でも,この位置では,事実上,両者は合体したと見なしてもかまわないでしょうね。

 そして,rがプランク長さの距離までg接近する時間,つまりglog(r-rg)+(r0g)に(r-rg)=約10-35mを代入した時間は無限大ではなく有限です。

 このときは,逆に対数項の効果はほとんど無視できて,他の有限な項の寄与のほうがはるかに大きいことになります。

 結局,量子効果を考慮すれば,合体までの時間は無限大ではなく有限である,ということになると思うに到りました。

 (この最後の量子効果を考慮する考察の部分については,主にネットで「甘泉法師さん」から得た情報です。ありがとうございます。)

  参考文献:佐藤文隆、原哲也 著 「宇宙物理学」 (朝倉書店)

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                       TOSHI http://blog.with2.net/link.php?269343(ブログ・ランキングの投票)

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コメント

もはやほとんど話題と無関係になってますが、自分で書いた
>蒸発放出で助かるのはバリオン数
が間違っていたので訂正しておきます。
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~nagatani/BHBG/index.html
を見ますと、ブラックホール蒸発末期の高温ではバリオン数が保存しないので、この情報も消滅するようです。

投稿: hirota | 2007年7月27日 (金) 14時27分

TOSHIさま、並びに、T_NAKAさま
情報量の計算において、対数の底を誤りまして、申し訳ありませんでした。
また、TOSHIさまのお体の状態が今ひとつの状態の中で、長々とお邪魔しまして、大変申し訳ありませんでした。
計算式を示す場合は、十分注意したいと思いますので、今後とも、どうかよろしくお願いいたします。

投稿: 凡人 | 2007年7月22日 (日) 14時48分

 こんにちは。T_NAKAさん、TOSHIです。
コメントありがとうございます。

 気象予報士の計算については符号の間違いに気づいただけで数値は検算しませんでしたが、確かに底が2のほうが情報エントロピーらしいですね。

 槌田敦氏については悪名高き「熱学外論」を持っています。まあ、15年くらい前、ニフテイのパソコン通信時代でまだ「物理フォーラム」がないころに「科学フォーラム」の「物理会議室」で、これをよってたかってこきおろしました。私もそのために買って読んだわけですが内容はもう忘れました。というわけで槌田派の言うことはあまり信用できないという先入観があります。

 私は概念として物質エントロピーと情報エントロピーはほとんど同じであるという感覚を持っています。だから、ここの情報に関する話題でも一連のコメントの中でときどき熱力学や統計力学の例を出しています。

 ただ、私としてはこれから先に量子コンピュータなどを真剣にやろうという気持ちがあるのでなければ、今はこの関連の問題にこれ以上あまり深入りしたくはないという気分です。 

 ところで病み上がりのせいか風邪もなかなか治らないですね。熱はないし頭痛もないしセキもあまり出ないので起きていて普通にくつろいでますが、ノドが痛くて鼻水が止まらないのは困ったもんです。
            TOSHI

投稿: TOSHI | 2007年7月22日 (日) 11時59分

各予報士系の情報量の計算が合わなかったのは、符号の問題ではなくて、自然対数を使っているからです。
まあ、相対的な大きさを問題にするだけなら良いのですが、通常情報理論では底が2の対数を使います。
(いわゆるbitという2進数を使ってますから。。)
よって、Bの予報士系: -(0.5*log(0.5)+0.5*log(0.5))=-log(1/2)=-(0-1)=1
となって、「コイン投げの例」と全く同じで確率が1/2(=等確率)になったときに最大1になります。
ですから、この例と「コイン投げの例」は本質的に同じものです。
さて物質エントロピーと情報エントロピーを同一視して良いかという問題は、槌田派が徹底的にこれらを分けるべきとしていて、物理学者の間でも判断が分かれている状況です(基本的に同一視して良いというのが主流ですが、)。ですから、wikiだけ知識や啓蒙本ではなくもう少し教科書レベルの本と向き合って勉強された方良いと思います。

投稿: T_NAKA | 2007年7月22日 (日) 11時03分

 こんにちは。凡人さん、TOSHIです。
コメントありがとうございます。

>今の場合は、S=-Σplogpを物質の情報量としなければならないと思います。

 あれ、これについては大分前に、既に私の誤解であったことを認めておりますが。。。

>ディテールで間違えていました。情報エントロピーの定義はともかく、どうも私自身が参照した本も含めて「情報量」=「エントロピー」としているようです。

 なるほど、よく見るとちょっとぼかしたような発言になってますね。誤りははっきり誤りと書かないといけなかったですね。

 いずれにしろ、言葉の定義より第二法則と矛盾しないということの方が本質的だと思ったので、つまり、絶対値としては「情報エントロピー=情報量=情報の価値」だという意味で私の誤りだったのですが、その「情報量=情報の価値」の喪失が「情報エントロピー」の増大であるという符号の取り方は間違っていなかったという意味で、あえてぼかしたような表現になりました。

 私の紹介したURLの下の内容は「情報の価値=エントロピー」の大きい情報を獲得すると、それだけエントロピーが減少して「情報エントロピー」は最小となる、ということを述べている例として示したもので決して凡人さんの主張を裏付けているものではありません。

>例えば、サイコロを振ったとき、結果を見る前はどの目が出たかまったく分からないので、不確かさ「情報エントロピー」は最大である。「奇数の目が出た」という「情報」を受け取ると、「情報エントロピー」は減少する。「1の目が出た」ことを知れば、結果は一意に確定し、「情報エントロピー」は最小となる。

 いずれにしろ自身が言葉の定義の解釈を誤っていたことを、ボカしたかのようでごめんなさいね。

             TOSHI

 追伸:竹内さんの「熱とはなんだろう」はファインマンの「計算機科学」の副読本になると思って、以前新刊のときに僕もすぐ買って興味深く熟読させていただきました。

>ここで、情報量を上記で定義したとおり、-ΣPi*logPiとして計算すると、各予報士系の情報量は以下の通りとなります。
Aの予報士系:-(0.8*log(0.8)+0.2*log(0.2))=0.50
Bの予報士系:-(0.5*log(0.5)+0.5*log(0.5))=0.69
Cの予報士系:-(0.1*log(0.1)+0.9*log(0.9))=0.33
私の考えに従えば、Cの予報士系が一番価値が高いことになります。

ところで、どうでもいいですが上の計算式、「情報エントロピー=情報量=情報の価値」を計算しているのであれば、全部間違いだと思いますよ。第2項の符号が+になってるけど定義は-です。

投稿: TOSHI | 2007年7月22日 (日) 09時01分

TOSHIさん
T_NAKAさまのご指摘もありますので、そろそろ論議を終了に向かわせたいと思いますが、
>いや、相対的な価値が大きい小さいといういわゆる価値観については各自がどのような価値観を持たれるかは自由だとおもっています。
と仰られることに対し、一言申し上げさせていただきたいと思います。
そもそも、私が問題にしたのは、宇宙全体を一つの系としてみた場合、ブラックホールが物質の情報を消去する事により、熱力学の第二法則を破るのか否かという事です。
だから、ここで問題にしなければならないのは、熱力学に於けるエントロピーに対応する物質の情報量です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%94%E3%83%BC
の中の「性質」の章にも、「外部からの仕事を伴わない気体の混合、あるいは拡散のみによってもエントロピーが増大することから、エントロピーは系の乱雑さを表す状態量と呼ばれることも多い。」と記されていますので、今の場合は、S=-Σplogpを物質の情報量としなければならないと思います。
言い忘れていましたが、これらの事については、『熱とは何だろう』(竹内薫氏、ブルーバックス)の「§ブラックホールの悪魔」(P202-7)を読んで初めて知りました。
物理学や数学などの自然科学の定義は、人間の価値観を捨象した客観的、かつ、共通認識可能なものでなければならないと思います。
そうしなければ、定義それ自体の誤りや、そこから演繹される結論の誤りを免れないのではないかと思います。

投稿: 凡人 | 2007年7月22日 (日) 08時36分

こんばんは。。凡人さん、TOSHIです。コメントありがとうございます。

 いや、相対的な価値が大きい小さいといういわゆる価値観については各自がどのような価値観を持たれるかは自由だとおもっています。

 またΣp=1の条件ではS=-Σplogpが最大になるのはpが全て等しいときであるのは統計力学の「等確率の原理」そのものなのでよく存じています。そのときは情報としては全く何も知らないのでどの選択も対等であるという意味になりエントロピー最大です。

 逆に1つだけのpがp=1で他のすべてのpが0の場合、つまり確実にどれか1つに決まっているという確実な情報が得られた場合にはS=0でエントロピーは最小ですね。

              TOSHI

投稿: TOSHI | 2007年7月22日 (日) 00時26分

>凡人さん

基本的に掲示板とブログのコメント欄とは違うので、延々と反論を書いて占拠してはマナー違反でしょう。
これはもう何回申し上げたか分かりませんが、ご自分独自のご意見はご自分ブログを立ててお書き下さい。

投稿: T_NAKA | 2007年7月22日 (日) 00時20分

さらに追伸
TOSHIさまからご紹介いただいた、以下のURIでも、私の考えを支持しているように思えるのですが、いかがでしょうか?
http://www.keyman.or.jp/3w/prd/79/61004079/?vos=nkeyadww20004079
>例えば、サイコロを振ったとき、結果を見る前はどの目が出たかまったく分からないので、不確かさ「情報エントロピー」は最大である。「奇数の目が出た」という「情報」を受け取ると、「情報エントロピー」は減少する。「1の目が出た」ことを知れば、結果は一意に確定し、「情報エントロピー」は最小となる。

投稿: 凡人 | 2007年7月22日 (日) 00時08分

追伸
-ΣPi*logPiは、i=0は的中した確率、i=1は的中しなかった確率を表しています。
念のため申し上げますが、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%85%E5%A0%B1%E9%87%8F
の「コイン投げの例」もご覧いただけますようお願いします。

投稿: 凡人 | 2007年7月21日 (土) 23時54分

TOSHIさま
風邪気味のところ大変申し訳ありません。
私も少し勘違いしていました。
T_NAKAさまにもお詫び申し上げます。
それは、以下のURIの中に、選択情報量(自己エントロピー)と平均情報量(エントロピー)が記されていましたが、私が論議しているのは、平均情報量(エントロピー)の方だったという事です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%85%E5%A0%B1%E9%87%8F
ところで、この平均情報量(エントロピー)を情報量と定義して、かつ例を交えて、TOSHIさまの以下の内容に異論を唱えさせていただきます。
>情報は決して無価値なものが情報量として大きいわけではありません。
例えば、A,B,Cの3人の気象予報士がいたとして、それぞれの予報士に、明日雨が降るかどうかを一年間聞き続けて、それぞれの予報士の的中率を集計したとします。
その結果、Aの予報士の正解率は80%、Bの予報士の正解率は50%、Cの予報士の正解率は10%となったとします。
ここで、情報量を上記で定義したとおり、-ΣPi*logPiとして計算すると、各予報士系の情報量は以下の通りとなります。
Aの予報士系:-(0.8*log(0.8)+0.2*log(0.2))=0.50
Bの予報士系:-(0.5*log(0.5)+0.5*log(0.5))=0.69
Cの予報士系:-(0.1*log(0.1)+0.9*log(0.9))=0.33
私の考えに従えば、Cの予報士系が一番価値が高いことになります。
それは、Cの予報士の予報結果の逆を信頼することが、一番信頼出来るからです。
しかし、注意しなければならない事は、「Cの予報士の予報結果の逆を信頼することが、一番信頼出来る」という事を確認するためには、それぞれの予報士の予測結果を分析する為に、エネルギーを投入しなければならないという事です。
以上説明してきた通り、情報量は単に多ければ価値がある訳ではないと思います。
多くの情報を収集し、エネルギーをかけて分析し、少ない情報を信頼する事によってこそ、高い価値を得る事が出来るのだと思います。
私は、物理学のレベルで論議していた時は、当然この分析過程は捨象させていただいていました。
だから、「一般的には、機能物は、情報量が(必要以上に)増大すると、機能、または価値が減ぜられると思っています。」と述べさせていただいていた訳です。

投稿: 凡人 | 2007年7月21日 (土) 23時40分

 こんばんは。。凡人さん、ならびにT_NAKAさん。。。コメントありがとうございます。このところ風邪気味でレスおくれました。

 T_NAKAさんは、私が正しいと言われてますが、確かに本質的なことは私の方が正しいのですが、ディテールで間違えていました。

 情報エントロピーの定義はともかく、どうも私自身が参照した本も含めて「情報量」=「エントロピー」としているようです。

 ただし意味は正反対です、生起確率が小さいものほど「もしそれが実際に起きた場合には」情報の価値が大きい=情報量=エントロピーが大きい。おきたときの驚きが大きいのが情報としての価値、ならびに情報量も大きい、という意味です。

 ただし、私がそんな簡単な勘違いを何年もの間、かかえているはずもなく、本質的には間違えていません、そもそも情報量の符号がプラスかマイナスかなどは問題ではなくて、事象が実際に起きるというのは私に言わせれば確率は1ですから、生起確率の小さいものが起きるほど、比較確率は大きいのですね。

 というわけで、情報量=エントロピーの大きいほど、その情報を獲得したときにエントロピーは急に減少し、それを失うとエントロピーが大きくなるということだけが本質的なので、私の今までの論旨は一貫していて修正する必要はありません。

 情報は決して無価値なものが情報量として大きいわけではありません。ブラックホールに無価値なものが吸い込まれても誰も悲しみません。情報理論も無意味な理論ではないです。

 というわけで、ブラックホールに吸い込まれるのは情報として価値のある、つまりエントロピーの絶対値が大きい情報で、それが吸い込まれてなくなることによってエントロピーが大きくなるという意味で熱力学第二法則に矛盾するわけではありません。

 一応、関係ありそうなURLを載せておきます。http://www.keyman.or.jp/3w/prd/79/61004079/?vos=nkeyadww20004079

              TOSHI

 

 

 

投稿: TOSHI | 2007年7月21日 (土) 21時10分

>凡人さん

どう考えても、TOSHIさんの方が正しいし、ご紹介のページの誤読としか思えません。
ご紹介のページでも「確率の対数にマイナスを付けたもの」が情報量になっていますよ。
どうも「情報の量」という言葉を常識で判断したものと「情報量エントロピー」をゴッチャにしていると思います。
例えば常識的には http://www.h5.dion.ne.jp/~terun/doc/entoro.html のように考えられています。
TOSHIさんを質問ぜめにするより、もう少しご自分でお調べになっては如何でしょう。
杉本 大一郎先生の次の著書などが分かり易いですが、残念なことに絶版になっているようです。
『いまさらエントロピー?』 丸善パリティーブックス
『エントロピー入門―地球・情報・社会への適用』中公新書

投稿: T_NAKA | 2007年7月21日 (土) 19時54分

こちらこそ、エントロピーについて、真剣に考える機会を提供していただき、大変有難うございます。
ところで、TOSHIさまの(情報)エントロピーの定義は、以下の通りなのでしょうか?
>一般に情報の確実性は時間と共に失われ確率は1より小さくなっていくので、その対数は負になり、だんだん小さくなります。
>だから情報エントロピーを正の量にするためには、それにマイナス符号をつけて「情報の確実性が失われる」=「情報エントロピーが増える」とみえるようにします。
上記の通りであれば、上記の定義はどのサイト、あるいは書籍等で確認できますでしょうか?
私は、以下のURIで示される定義にもとずいて論議をしておりますので、情報量(エントロピー)について、TOSHIさまと認識の一致が見られないのだ思います。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%85%E5%A0%B1%E9%87%8F
認識の一致が見られない本質的原因は、TOSHIさまが「物質の情報というのは・・、ちゃんと個性を持った価値のある情報のこと」定義している事に対して、私は、「物質の情報というのは、物質が有する個性や価値を捨象した後になお残る情報のこと」と定義している為だと思います。

投稿: 凡人 | 2007年7月21日 (土) 11時01分

 こんばんは。凡人さん、TOSHIです。
コメントありがとうございます。

>TOSHIさまの論理にしたがうと、情報量とエントロピーが反比例するという事になってしまうと思うのですが、いかがでしょうか?

だいたいその通りです。ただし情報量に反比例ではなくて、対数にマイナスだから情報量の桁数に反比例、まあ、普通情報理論では情報量を2進法で表わすのでビット数に反比例ですね。

 情報エントロピーについては2006年7月5日の記事「可逆と不可逆のはざ間(エントロピー増大則)」に少し説明しているので参考にしてください。

 乱雑になるとエントロピーが増加するというのはその通りですが、例えば10^23個の分子の個々の微視的状態の個数が大きいというのが情報がわかるというわけではなくて、それはむしろ、巨視的に粗視化した結果として、そうした個々の状態に関する情報がまったくわからなくなった、情報が失われたということを意味しています。

 2006年7月5日のブログにも書きましたが「粗視化する」というのは凡人さんが意図された「aとcがAの棚にある」という微視的状態の情報を遠くから俯瞰した状況です。

 地球上で普通に暮らしているときは近くの景色を見るとその詳細である家や人や道などが細かくわかりますが、次第に遠ざかって東京タワーの展望台などから見ると塊りにしか見えず、さらに宇宙旅行すると結局は「地球は青かった」という程度のつまらない情報になり、つまり細かい情報が失われた状況になることを「粗視化する」といいます。

 たとえば気体なら、実は多数の気体分子が運動しているという細かい情報を無視して「粗視化」し気体の体積や温度や圧力に着目するのが熱力学です。

 そして、例えば鉄などのスピンの向きは高温では乱雑で無秩序、つまり、どの向きも対等なほぼ完全に対称な状態になります。

 実は個々のスピンの向きは莫大な数だけあるけど、そうした未知の情報がいくつあるかと予想して数えた個数が情報量であるというわけではなくて、その個性を失った莫大な数のスピンはむしろ莫大な情報を失ったと見るわけです。

 そして極低温では温度減少と共に自然に対称性が破れます。

 これを「自発的対称性の破れ」とも言いますが、臨界温度より下になるとスピンの向きが、そろってきて秩序を持つようになり、あらゆる方向が同等であるという等方性の対称性が破れて、スピンは特定の向きを持つようになって磁場=磁性が現われることになります。

 特に絶対零度T=0では非常に多くのおおよそ10^23個くらいの電子のスピンの向き=「aとcがAの棚にある」というような微視的状態の情報が完全に決まっているので情報がすべてわかっている状況であり、取れる状態の数=1となります。

 状態数の対数かける定数がエントロピーなので、絶対零度ではこれは1の対数なので0です。ご存知でしょうが等確率の原理というのがありまして(状態の数)=1/(確率)です。あるいは(確率)=1/(状態の数)です。だから確率の対数にマイナスをつけるとエントロピーなのです。

 たとえば通常の温度Tで熱平衡では系の巨視的状態がエネルギー(内部エネルギー)Eを持つ確率はexp(-E/kT)に比例するので状態数はexp(E/kT)に比例し、エントロピ-はS=E/T+定数という形になりますね。

 「絶対零度で状態が完全に1つに決まっている」というのは情報理論では「情報が確率1で確実にわかっている」ということに相当します。いずれにしてもこの状態ではエントロピーS=0です。

 一般に情報の確実性は時間と共に失われ確率は1より小さくなっていくので、その対数は負になり、だんだん小さくなります。

 だから情報エントロピーを正の量にするためには、それにマイナス符号をつけて「情報の確実性が失われる」=「情報エントロピーが増える」とみえるようにします。 

 凡人さんは個々の情報が失われてまったく個性を持たずその詳細を知ることができない微視状態の個数を情報量であると誤解しているということがよくわかりまいた。

 情報というのは、むしろ(確率)=1/(状態の数)の方に対応しています。太陽から高温=低エントロピーの役に立つ熱を受けて消費し役に立たない高エントロピー=低温になった熱を捨てる、というのは情報で言えば役に立つ情報を手に入れて、むだな意味のない大量で無秩序なものにして捨てることに対応しています。そこで、結局解釈が正反対になったのですね。

 そして燃えて灰になったりブラックホールに吸い込まれて失われたりする物質の情報というのは普通は私の述べている意味の、ちゃんと個性を持った価値のある情報のことで、学者などが統計物理を用いて予測計算する情報の失われていく状態の数のことではありません。ただしその失われる数の対数がエントロピーの増加量になるというのはその通りですが。。。

 というわけで、ブラックホールで情報が消えるのと第二法則の孤立系のエントロピー増大の間には直接的な矛盾はないと思います。

 長々と薀蓄を述べる機会を提供していただきありがとうございました。

              TOSHI

 

投稿: TOSHI | 2007年7月20日 (金) 05時36分

>いや、僕の認識と正反対なので少し驚きました。宇宙全体から情報が失われると一般にいわゆる情報量の対数にマイナスのついたエントロピーは増加するという認識でした。
TOSHIさまの論理にしたがうと、情報量とエントロピーが反比例するという事になってしまうと思うのですが、いかがでしょうか?
ところで、情報量(エントロピー)が増大するというのは、機能、または価値の側面から言えば、例えば、仕事場の道具等を整理しないで使い続けると、どんどんそれらが散らかって、道具の位置の情報量が増え、仕事場としての秩序が無くなるので、仕事場としての機能、または価値を減ぜられるという事だと思います。
道具の位置の情報量が増えるというのは、たとえば、道具が整理されている場合は、「aとbとcの道具はAの棚の中にある。」という情報だけですみますが、散らかっている場合、「aはAの棚の中、bはBの機械の隅、cはCの机の下にある。」という事になり、位置を表すため為の情報(ここでは文言という形での情報)が増えてしまうという事だと思います。
だから一般的には、機能物は、情報量が(必要以上に)増大すると、機能、または価値が減ぜられると思っています。
以上、あまり冴えはありませんでしたが、一応、情報量増大の意味するところを説明して見ました。
情報量(エントロピー)の本当に意味するところは、熱機関や情報通信等の例で、数式を使って説明するのが適切だと思いますが、今のところは、容赦の程をお願い致します。

投稿: 凡人 | 2007年7月20日 (金) 00時58分

こんにちは。。hirotaさん、TOSHIです。コメントありがとうございます。

>しかし、ここで新たな疑問 : 「プランク長さまで接近すれば到達したのと同じ」 というのは、時空が量子化されていて、運動がプランク長さ毎のジャンプと見なせるからだと思いますが、それでは最後のプランク長ジャンプに必要な平均時間 (またはジャンプ確率が 50% に達する時間) はどう評価しますか? これが外部時間でやたらと長かったりすると問題ですが

 についてですが、プランク長さ程度のゆらぎに対する時間は過大評価しても数秒までいかないと思いましたが一応考察してみました。

 重力場中を落下する質量mの物体エネルギーのプランク長さを超える程度の不確定性をΔEとするとそれに対応する時間のゆらぎΔtが求める遷移時間に相当すると思うのでΔEΔt~h(hはプランク定数)から遷移時間Δtが得られるとします。

 重力場のエネルギーを古典力学の万有引力で評価するとポテンシャルはU=-GMm/rで落下しているのを遠心力とつりあった定常系と同一視すると、質量のエネルギーは無視してE=-GMm/(2r)です。

 r は球対称時空の座標なので外部座標です。プランク長さに相当するゆらぎを Δr とするとΔE~GMmΔr/(2r^2) 程度です。ここでr は質量Mの天体のシュバルツシルト半径に等しい:r=rg=2GM/c^2とするとΔE~mc^2Δr/4rgとなります。

 Δt~h/ΔEより、Δt~(h/mc^2)(4rg/Δr)程度と考えられます。h~10^-34J・sec、Δr~10^-35m、c^2~10^17m^2程度なので、半径rg が数百km~数千kmのブラックホールでmはかなり小さいとしてもΔtはかなり小さいと思います。。。

 もっともmがプランク質量程度だとまた問題になるかもしれませんが、ここら辺のデリケートな計算なら重力場を量子化して考察しないとむずかしいと思います。

 しかし、そもそも質量mの小さい量子論の対象である電子などの素粒子では、コンプトン波長より短い領域までを無理に古典物理で考えると構造がない素粒子なので、質量はあるのに大きさがない点粒子と考えた場合、シュバルツシルト半径がいかに小さくても半径が 0 の点粒子はそれ自身が「ブラックホール」になってしまうので、ここらへんの領域を素朴な「一般相対論」で考えるのはもう無理かなと思います。

               TOSHI

投稿: TOSHI | 2007年7月19日 (木) 13時31分

古典力学だとブラックホールと熱力学第ニ法則が矛盾するというのは、単に古典力学ではブラックホールのエントロピーが定義できないというだけのことでしょう。(無理に考えると、輻射がないとすれば絶対零度でエントロピーもゼロかな?)
でも、量子論ならホーキング輻射という黒体輻射があるし、温度もエントロピーもある熱力学対象になる。(黒体輻射の情報量は最低だから、落下物体の情報はほとんど消滅するとしか思えんが)

投稿: hirota | 2007年7月19日 (木) 12時37分

 こんばんは。。。凡人さん、TOSHIです。

 いや、僕の認識と正反対なので少し驚きました。宇宙全体から情報が失われると一般にいわゆる情報量の対数にマイナスのついたエントロピーは増加するという認識でした。

 また、情報のない混沌状態の宇宙空間にどこかのブラックボックスから意味のある情報が入ると、つまり無秩序で一様で等方な容器などに赤インクなどがどこからかしみだしてくるのと同じですが、混沌の中に情報量という秩序が入るとエントロピーは減少するというのが私の常識なのでちょっと驚きました。

           TOSHI

投稿: TOSHI | 2007年7月19日 (木) 00時51分

私は、情報量=エントロピーだと思っておりますが、詳しくは以下をご参照ください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%85%E5%A0%B1%E9%87%8F
私が云わんとしている矛盾とは、もう少しストレートに云うと、仮に物質が事象の地平面を通過して、ブラックホールの内面に取り込まれてしまうとすると、われわれの宇宙全体の系として見た場合、情報量(エントロピー)が減少することになるので、熱力学の第二法則が破れてしまう事になるのではないかという事であります。

なお、
>ブラックホールが蒸発して情報が帰ってくる可能性があるというのは、むしろエントロピー減少プロセスですから、
というのは、保存されていた情報が、蒸発・拡散する過程なので、宇宙全体の系として見た場合、エントロピーが増大するプロセスだと考えます。

>情報というのはたとえば新聞などを燃やしてしまえば灰になるけどもちろん物質というかエネルギーは消失しませんが、書いてある記事などの情報は消失して復活しない不可逆現象で「熱力学第ニ法則」というのはむしろそうして情報が失われるのが当たり前という法則です。
私が今問題にしている「情報」は、あくまでも物質が持っている情報なので、われわれ人間が社会的に規定している情報と同様に扱うことは出来ないのではないかと思います。

投稿: 凡人 | 2007年7月18日 (水) 23時56分

 こんばんは。。。凡人さん。TOSHIです。コメントありがとうございます。

 レスが遅れたのはおっしゃていることの意味が、私にはむずかしくてよくわからなかったからです。

 ホーキング輻射とかブラックホールの蒸発というのは言葉というか、定義くらいは知っていますが、その信憑性とか理論的根拠とかを数式で把握したことがないので、まだ私自身、それを信用さえしていませんから言及する資格があるかどうかわかりません。

 昨日からいろいろ検索してみたのですが、そもそも情報の消失が「パラドクス」だとか書いてあるものが多いのですが、その理由が明確に書かれていません。

 量子力学に反するとか書いてありましたが、情報などという巨視的な統計的現象が微視的ダイナミクスと違うのは、このカオス的世界では日常茶飯事なので、とにかくどういう意味なのかわかりませんでした。

 情報というのはたとえば新聞などを燃やしてしまえば灰になるけどもちろん物質というかエネルギーは消失しませんが、書いてある記事などの情報は消失して復活しない不可逆現象で「熱力学第ニ法則」というのはむしろそうして情報が失われるのが当たり前という法則です。

 今は新しい情報であっても、時間が経てば何もせずほっといても次第に情報としての価値を失っていくというのが情報エントロピー増大の現象です。

 ブラックホールが蒸発して情報が帰ってくる可能性があるというのは、むしろエントロピー減少プロセスですから、自己増殖する生物などの局所的散逸構造のような話なので、むしろ不自然なものと感じます。

 物質やエネルギーは保存するのが自然だから、情報も保存するような錯覚を持つことがありますが、孤立系でほっといても時間が経つと情報は失われるほうが自然だと思います。

 一般に個性のない物質量はエネルギーですが情報はエントロピーだと思います。

 もちろん、自然法則がユニタリな現象であるほうが美しいと思いますが、通常の観測過程でさえそうではないらしいので、まず、ブラックホールに情報が吸い込まれることの何が「パラドクス」なのかを把握することができてから、考えたいと思います。

投稿: TOSHI | 2007年7月18日 (水) 22時19分

固有空間間隔については、書き込んだ直後に 「 経過時間は対数発散だから、距離が冪乗で変わっても時間は倍オーダーでしか変わらないので大勢に影響ない 」 と気が付きました。
しかし、ここで新たな疑問 : 「プランク長さまで接近すれば到達したのと同じ」 というのは、時空が量子化されていて、運動がプランク長さ毎のジャンプと見なせるからだと思いますが、それでは最後のプランク長ジャンプに必要な平均時間 (またはジャンプ確率が 50% に達する時間) はどう評価しますか? これが外部時間でやたらと長かったりすると問題ですが。
 
凡人さんのコメントについては、熱力学第二法則とはエントロピー増大則で、これは情報の消失と同義ですから、情報が保存されなくても何も問題はなく、なにか根本的な所で変です。(蒸発放出で助かるのはバリオン数とかレプトン数の保存則だと思います)
それに、物質とその情報が等価だと見なすには相応の前提が必要でしょう。

投稿: hirota | 2007年7月18日 (水) 11時54分

こんばんは。hirotaさん。TOSHIです。コメントありがとうございます。

>「プランク長さ」というのは、外部座標系での距離ですよね。
そのとき、固有空間間隔はまだ大きいのではないのですか?

ds^2=c^2dτ^2=(1-rg/r)c^2dt^2-dr^2/(1-rg/r)の空間部分=動径部分が固有空間間隔の2乗です。

 よって固有空間間隔はdr/√(1-rg/r)です。(r-rg)がプランク長さで、drもプランク長さ程度とすると固有空間間隔は[「プランク長さ」×r]のルート程度ですね。

「プランク長さ」はだいたい10の-35乗メートルくらいですから、そのルート=平方根でも10の-17乗×√(メートル)くらいです。rがシュバルツシルト半径rg程度とすると、m単位で10^-17√rgくらいですから、固有空間間隔でもかなり小さいと思うのですがいかがでしょうか?。。。。光速に近いと一瞬で通過するような気がします。

              TOSHI

 

投稿: TOSHI | 2007年7月18日 (水) 00時54分

私は、ある啓蒙書を読んで、ホーキングやベッケンシュタインらの計算によって、ブラックホールに吸いこまれた物質の情報は、ブラックホールの事象の地平面上に全て保存され、ブラックホールの蒸発とともに、その情報が全て放出されるので、熱力学の第二法則は破れていないというような事が書いてあると理解しました。
そこで質問ですが、もし仮に、物質とその情報が等価だとすると、物質が事象の地平面を通過するとしてしまうと、私の理解内容と矛盾するという事はないでしょうか?
物質とその情報が等価だとみなす事自体が誤りなのでしょうか?
そもそも、私の啓蒙書の理解内容が狂っているのでしょうか?
よろしければ、アドバイス等をいただけますよう、何卒願いいたします。

投稿: 凡人 | 2007年7月17日 (火) 23時35分

「プランク長さ」というのは、外部座標系での距離ですよね。
そのとき、固有空間間隔はまだ大きいのではないのですか?
もちろん、時間がたてば固有間隔でもプランク長さになるでしょうが、そのときまでの時間はやたらと長くなったりしませんか?

投稿: hirota | 2007年7月17日 (火) 17時35分

 こんにちはKIMさん。コメントありがとうございます。TOSHIです。

 物理フォーラムはニフティの方針で来年3月一杯でなくなりますが、別の場所で継続する予定なので今後もよろしくお願いします。

 本ブログ内容については本日、計算まちがいなどを直して少し修正しましたが、私は「量子効果」によって遠くから見ても有限時間で落下することついてかなり自信を持っています。もっとも、これは私自身の創案ではなく他の人物の案を参考にしました。それがその人本人の創案かどうかは知らないのですが。。。

 無限大は対数程度のオーダーなので、その時間は量子的効果を考えると超新星爆縮するとして、それももちろん重力崩壊の一部ですが、ほんの一瞬のことであるだと考えています。

              TOSHI

投稿: TOSHI | 2006年8月26日 (土) 10時19分

はじめまして。物理フォーラムのほうを読んでいてここを知りました。技術系会社員です。

ブラックホールについてですが、「事象地平面」ができていなくても、TOSHIさんも書いている通り光は出てこなくなりますし、モノを落としても地面に到達しませんし、外部から光で照らしても地面を照らすことはできません(よね?)。つまり、実質「黒い穴」になっているわけで、「事象の地平面はできていないけどブラックホールだ」ということじゃないかと思います。

実はブルーバックス「銀河旅行と一般相対論」石原藤夫著 でそんな話を読みました。

もうひとつ。ブラックホールに落ちていくモノが「事象地平面」を超えるまでに外部では無限の時間が経つため、ブラックホールはその間にホーキング輻射で蒸発してしまい、結局モノが「事象地平面」を超えることはない。。。これはどこかネットで読んだ説です。

投稿: KIM。。 | 2006年8月26日 (土) 01時45分

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