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2006年8月24日 (木)

浅川マキ,山崎ハコ(暗い唄)

 私が昔から好きな女性歌手は,なぜか一般大衆から暗い唄を唄うといわれています。

 大学1年の頃(1969年),初めて聴いた浅川マキの唄の印象は強烈でした。

       

 それ以来,私は例によって若気の至りを引きずって,昔のままの初期の浅川マキの唄に今でも惚れていて,今ではCD化されたものをよく聞きます。

 近藤等則らとのセッションによる前衛的な方向へ移った後の曲も全集という形で出たセットの中にあるので所持はしていますが,どうも好きになれず,それはほとんど聴いていません。

 私は,やはり,初期の唄が好きです。

 最も好きなのは「ちっちゃなときから」で,その次は「ブルー・スピリット・ブルース」ですが,その他,有名な「かもめ」や「少年」,「ガソリン・アレイ」,「前科者のクリスマス」,「雪の海」,「花いちもんめ」,「めくら花」,「セントジェームス医院」など好きな曲は枚挙にいとまがありません。

 彼女の魅力は,その声の独特な響きとツヤもそうですが,マキ自身や寺山修司氏らによる歌詞のモラルを無視したような部分に共感を感じるところにもあると思います。

 たとえば,「私が娼婦になったならいつでもドアは開けておく,海からツバメが来るように(私が娼婦になったなら)」とか,「私が着いたのはニューオリンズの朝日楼という名の女郎屋だった。(朝日のあたる家)」とか,「おいらが恋した女は港町のあばずれ,いつもドアの前で着替えして男達の気をひく浮気女(かもめ)」とか,それぞれの曲にかならずそうしたフレーズがあります。

 1960~70年代の「イージー・ライダー」の時代のアメリカで「ビッチ(牝犬)」と蔑まれていた「アウトサイダーのあばずれ女たち」に助けられて生き延びてゆく,陵辱され殺された恋人の復讐のためにアメリカ本土に渡ったお尋ね者の元オリンピック代表アマチュアボクサ-:暮海猛夫(くれみたけお)(漫画「I・飢男(アイウエオ)(小池一夫・池上遼一)」に通ずるものを感じたりもします。

 小池一夫といえばそのヒット作「子連れ狼」もお尋ね者が主人公であり,反権力的=反モラル的な傾向が強いものが多いと思います。

 また浅川マキは,山下洋輔のアレンジで,ジャズ・ピアノのインストゥルメンタルがメインですけれど,ビリー・ホリディ(Billie Holiday)の歌唱曲「奇妙な果実(strange fruits)」をもカバーしています。

 これも衝撃的な歌詞です。

 「南部の木に奇妙な(黒い)果実がなるという。」で始まり「black body is swinging in southern breeze」(黒い実(体)が南部のそよ風になびいている(スウィングしている))と続いていきます。

 コラボレーションでは,つのだひろ とのデュエットで「それはスポットライトではない」というのもあったと思います。

 もう1回挙げますが,LPにしかないと思う「ブルー・スピリット・ブルース」,は珠玉の名曲ですね。

 ライブでは泉谷しげるの飛び入りのギターもありました。しかし,聴いた曲でいちばん暗いと思ったのは「さかみち」という唄だと思いますね。

 学生運動が盛んだったその暗い時代に,男性シンガーで一見明るく彼女とは対照的に見える岡林信康も好きでしたが,彼も実は暗いものをわざと明るく唄っていたに過ぎません。

 有名な「山谷ブルース」の最後の部分,「働く俺達の世の中がきっと,きっと来るさそのうちに」というフレーズは陳腐だと思って昔は嫌いでしたが,やがてそれは反歌であり,彼自身の唄うものを聴くと「そんな世の中など決して来ない」という哀しい響きを感じるようになりました。

 彼の意に反して日本共産党民青の愛唱曲になってしまった「友よ」という唄もあります。「夜明けは近い」というところが気に入られたのでしょうが,これも実は反歌ですね。

 ここは大勢で合唱するようなものではなくて,実は「夜明けは遠い,来ない,決して来ない。」という本当は哀しいフレーズなのですがね。。。。

 彼の曲の中で最も暗いと思うのは被差別部落の靴職人の女の子を想定したと思われる「チューリップのアップリケ」です。

      

 カラオケではなかなかない曲なのですが,数年前,江戸川橋の「サンドール」(現在は「神楽坂」にあります)というスナックで唄ったときに,見知らぬ若い女性の客にほめられ,代わりに「ワールド・アパート(World apart)」という曲を唄っていただきました。

 これは,私がLDで見たことがある南アフリカのアパルトヘイト(Apartheid)の時代を描いた映画「ワールド・アパート」の主題歌だったらしいのですが,私の記憶にはなかった曲です。

 ,「チューリップのアップリケは唄うと,ときどき泣いてしまう唄ですが,その他に泣ける唄はジャニス・ジョプリン(Janis Joplin)の「ミー・アンド・ボビー・マギー(Me And Bobby MacGee)」くらいですかね。

 そうそう岡林の部落差別に関係した歌詞の唄としては,「チューリップのアップリケ」以外に「手紙」というのがありました。これもほろりと来る唄ですね。。

 話は脱線してしまいましたが,それから何年も経って,東京に就職したとき(1977年)に同期の友達に聴かせてもらったLPレコード「山崎ハコ・ファースト・ライブ」で,またまた強烈な衝撃を受けました。

          

 それは「ハーモニカ吹きの男」から始まるLPですが特に最後の「向かい風」が絶品で「走れ,走れ,走れ,走れ,生きてる証拠にー」というのを聴くと本当に走りたくなってしまいます。

 このLPは後になって中古で入手して永久保存のためDATに記録してときどき自身が「暗くなるために」聴いています。

 山崎ハコは自身の頭の中のイメージを,彼女のソプラノで独特のスキャットに乗せて叫ぶように,そのまま表現する才能があるようで感心します。

 また歌詞でも,例えばララバイというのは子守唄という意味ですが,日本人ならグッバイとかバイバイとか別れ言葉のイメージを浮かべる響きを持っていると感じるのではないでしょうか。

 彼女はそうした韻(いん)を,その雰囲気のままに盛り込んでゆくように歌詞を作っていく,と感じました。

 また大分の日田の生まれで九州弁はピッタリときます。

 その後,テープやCDも集めましたが最も「暗い」と感じたのは「ダージリン」という唄ですね。

 「雨上がりの朝,いつもの道をスニーカーの爪先を見つめながら歩くのさ」とダージリンを飲みに喫茶店へ向かうのですが,こんなフレーズは普通では浮かんできませんね。なんて「暗い」のでしょうか? 

 内容が暗くてモラルに反するものとしては「兄妹(きょうだい)心中」という哀しい曲もあります。

 一般にヒットした曲は五木廣之作詞の「織江の唄」だけで,これは映画「青春の門」の主題歌です。カラオケではこれと「望郷」,「気分を変えて」(←香坂みゆきもカバーしています。)くらいしか見たことがありません。

 ほかに「地獄(心だけ愛して)」というのも映画の主題歌だったと思います。

 古い映画で確か若いときの野川由美子が主人公で中国の前線での日本人の従軍慰安婦の前途に何の希望もない地獄のような生活を描いたものを昔深夜に見たような気がします。(※これは私の誤りらしいです。)

 とりとめがないのでこれで終わります。暗い気分になりたくなったら,こうした曲を聴くのがいちばんですね。

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» 今日は山崎ハコの暗い歌を。。 [T_NAKAの阿房ブログ]
えーと、最初の曲は確かTOSHIさんのブログで言及されていたものです。 http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/post_c683.html この曲は神代辰巳監督の「地獄」という映画の挿入歌です。原田美枝子主演で、地獄というのは比喩ではなくて、死んだら行くこと... [続きを読む]

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