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2006年9月21日 (木)

電子を大きさのない点であると考える背景

  その昔,ニフティの「物理フォーラム」で受けた質問の中に次のような

ものがありました。

 "なぜ,電子を大きさのない点(電荷)と考えるのか?その理由を

お教え下さい。

 
電子,および素粒子を大きさを持たない点として取り扱うと,色々な問題

が発生して,現在建設中の新しい理論では,その解決策として,大きさの

ある弦として考え直すという話を聞いたことがあります。

 問題点があるにも関わらず,,

なぜ電子を点と考えざるを得なかったのか?


 その背景(点でない場合の問題点,歴史的な経緯,等)が知りたい

のですが"。。


 
というものです。

 それに対して,その当時も「物理フォーラム」スタッフの1人であった

私が回答したことがありますが,それをそのまま記事として掲載したい

と思います。

 それは次のような内容です。


まず,,電子は光子などと同様.レプトンと言われて

陽子,パイ(π)などクォークがグルオンで結合されているというハドロンとは異なり,それ自身が素粒子である,つまり"構造を持たない粒子"であると仮定されています。

 構造を持たないのであれば,それ自身,1点であるわけです。

 もし2点以上であれば,その2点を結びつける力とは何か?ということも物理的問題として生じますから,構造があるということになり論理的にも矛盾します。

 そして,たとえば電子が剛体であると仮定しても,そうしたものは相対論によって存在を否定されています。

 そうでないなら弾性体ですが,もし電子が大きさを持つ弾性体なら,押せば縮み引っ張れば伸びるなどの性質を持ち,弾性振動して音が出たりします。

 しかし寡聞にしてそういうことは聞いたことがありません。

 また,そもそも電子や素粒子の電荷とか,そういう固有の性質は大きさを持つ,つまりそれらが2点以上から成るなら,電子が同時に異なる場所でそういう性質を持つ,ことを意味するので,相対性理論に反する,あるいは因果律に反するということになります。

 同時に,というのはその距離がいくら小さくても情報の伝達速度は光速を超えますからね。

 こうした同時に2点以上に存在するというような性質を非局所性といいます。

 これに対して1点に固有であるということを局所性といいます。

 というわけで,素粒子であるなら,古典論的には広がりを持たないということになっています。

 量子論では粒子はみな波動として広がりを持つわけですから,そもそも量子論では素朴な形の相対論的因果律は成立しません。

 つまり,量子論は本質的に非局所的,非因果的なので,いわゆる相対論を破り,量子テレポーテーションを起こす,というものです。

 波なので,東京と大阪に同時に存在できるわけです。

 このことは,"アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンのパラドックス=EPRのパラドックス"に代表されることです。

 1980年代にアスペ(Aspect)等により"ベル(Bell)の不等式が成立するか否か?"に関する実験によって,この不等式が成立しないことから非局所性の意味が確かめられました。

 結局,"量子論はEPRの意味での相対性理論とは矛盾する理論であり,それでも現実の現象とは合致する理論である。"ということで解決しました。

 そして,「相対論的場の量子論」においては素粒子とは,例えば"光=光子"の場合の電磁波における電場,磁場のように,"粒子=量子場"であるという発想になっています。

 そして,"1点=局所的"というのは,場が4次元時空の各1点ごとで定義された関数になっていて,広がりを持った2点以上で定義された関数ではないという意味に解釈されます。

  問題点というのは点粒子を考えると古典論では電子が"無限大の自己エネルギーを持つ"="例えばクーロンの法則で電荷が小さくても自分自身との距離はゼロなので,それでも自分自身に働くクーロン力はゼロなので矛盾しないのですが,

 クーロンの静電エネルギーは無限大になる。"ということなどですね。

 一応,それは,"小さい電子の半径"などを仮定することにより解決しよう,という試みがなされましたが解決されていないまま,量子論に移り量子電磁力学というものに移行しました。

 そこでも自己エネルギーは無限大になりましたが,古典論の高次の無限大でなく,幸い対数程度の低い次数の無限大であったため,"ファインマン,朝永,シュヴィンガーのくりこみ理論"によって,処方箋的に無限大を除去することに成功しました。

こうした実験結果と合わせるだけの理論を 「有効理論」と言います。

 くりこみというのは,見方によっては無限大から無限大を引くというような荒っぽい方法であります。

 この無限大になる計算も,仮に素粒子が1点でなく広がりを持てば無限大にはならず有限になるというので,湯川や片山の素領域など非局所場の理論や中野の剛体模型などいろいろと考案されましたが,根本的な解決には至っていない,

 と私は思っています。

 そして,"重力場=一般相対性理論の量子化"については現在までのところ,点粒子の理論では,くりこみさえも不可能であることがわかっています。

 そこで,現在流行っていると言われている「超弦理論」では,まだ誰も成功していない重力場の量子化をもめざして点粒子の代わりに弦粒子を想定しているわけです。

 この「超弦理論」においては,量子論における相対論的微視的因果性などの問題はクリアされていると言われており,弦理論に,さらに超対称性,すなわちボーズ粒子とフェルミ粒子の入れ替え対称性を導入した理論として,トポロジー(位相幾何学)なども関わる難解な話になっているらしいです。

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                       TOSHI 

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コメント

すみません。
それと、もしよろしければ、このようなことを勉強するための、オススメの本がありましたら、教えていただけないでしょうか?
よろしくお願いいたします。

投稿: 月影 | 2016年1月26日 (火) 23時56分

かなりわかりやすくて感動しました。ありがとうございました。

投稿: 月影 | 2016年1月26日 (火) 23時52分

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