ガンマ関数とスターリングの公式
今日はガンマ関数(Gamma function)について考察し,ガウスの積公式と統計学などで重要なスターリングの公式(Stirling's formula):n!~(2π)1/2nn+1/2e-n (as n→ ∞)を証明します。
まず,x>0 に対してガンマ関数をΓ(x)=∫0∞e-ttx-1dx
によって定義します。
そして,まずガウスの積公式:
(nxn!)/[x(x+1)..(x+n)] → Γ(x) (as n→ ∞)
を示しましょう。
公式を証明するために,n≧2の整数:nに対して
f(x)≡logΓ(n+x)とおきます。
すると,これは凸関数であることがわかります。
f(x)が凸関数であること証明します。
その手順は次の通りです。
その前に,"f(x)が凸関数である"という定義を明確にして
おきます。
すなわち,これは
"x<yなる任意の実数x,yと0<λ<1なる任意のλに対して,
不等式:f[λx+(1-λ)y]≦λf(x)+(1-λ)f(y)が常に
成り立つ" ことを意味します。
そして,f(x)が2階微分可能なとき対象領域でf(x)が凸関数
であるためには,fのxによる2階導関数f"(x)が非負,つまり
f"(x)≧0 を満足すれば十分です。
一応,これも証明しておきます。
(f"(x)≧0 ならfが凸であることの証明)
f"(x)≧0 のときには1階導関数f'(x)が単調増加です。
そこで,x<yのとき,Δx>0,Δy>0 とすれば,平均値の定理
よりf(x)の差商も単調増加です。
すなわち,
[f(x+Δx)-f(x)]/Δx≦[f(y+Δy)-f(y)]/Δy
for x<y が成立します。
そこで,f[λx+(1-λ)y]-[λf(x)+(1-λ)f(y)]
=λ{f[λx+(1-λ)y]-f(x)}-(1-λ)
{f(y)-f[λx+(1-λ)y]}をλ(1―λ)(y-x)>0
で割れば,
x<λx+(1-λ)y<y,および上記の"差商の単調増加性"
により,これは常にゼロ以下となります。
以上から,"f"(x)≧0 ならf(x)は凸関数である"ことが
示されました。(証明終わり)
ところで,対数が共に凸関数である2つの関数の和の対数は
凸関数,つまりlog(p(x)),log(q(x))が凸なら
log(p(x)+q(x))も凸ですから,無限和である積分を
考えてもそうなります。
それ故,g(x)=∫φ(t,x)dtにおいて,tを任意に固定
したときlog[φ(t,x)]がxの凸関数であれば,
f(x)=log[g(x)]もxの凸関数であることがわかります。
f(x)=logΓ(n+x)=log[∫0∞e-ttn+x-1dx]ですから,
φ(t,x)≡e-ttn+x-1とおけばf(x)=∫0∞φ(t,x)dtで
ありψ(x)≡logφ(t,x)=-t+(n+x-1)logtです。
任意のtについてψ"(x)≧0 ですからψ(x)=logφ(t,x)
は凸です。
そこで,f(x)=logΓ(n+x)も凸関数であることがわかり
ました。
さて,いよいよガウスの積公式の証明に進みます。
f[λx+(1-λ)y]≦λf(x)+(1-λ)f(y)において,
x=0 ,y=1とおけば,f(1-λ)≦λf(0)+(1-λ)f(1)
より,[f(1-λ)-f(0)]/(1-λ)≦f(1)-f(0)が成立
します。
また,x=(1-λ)/λ,y=-1とおけば,
f(0)-f(-1)≦[λ/(1-λ)]{f[(1-λ)/λ]-f(0)}
ですから,
一般に 0<x<1なる任意のxに対して,
f(0)-f(-1)≦[f(x)-f(0)]/x≦f(1)-f(0)
が成立するはずです。
したがって,ガンマ関数の性質:
Γ(n+1)=n!,Γ(x+1)=xΓ(x)により,
log(n-1)≦[logΓ(n+x)-log{(n-1)!}]/x≦logn
(n≧2,0<x<1) となります。
よって,(n-1)x(n-1)!≦Γ(n+x)≦nx(n-1)!が
得られます。
そこで,(n-1)x(n-1)!/[x(x+1)..(x+n-1)]
≦Γ(x)≦nx(n-1)!/[x(x+1)..(x+n-1)]
=(nxn!)[(x+n)/n]/[x(x+1)..(x+n)]です。
nは2以上の任意の整数なので,これを
(nxn!)/[x(x+1)..(x+n)]≦Γ(x)
≦(nxn!)![(x+n)/n]/[x(x+1)..(x+n)]
と書いてもいいわけです。
それ故,結局,
nΓ(x)/(x+n)≦(nxn!)/[x(x+1)..(x+n)]≦Γ(x)
となります。
したがって,n→ ∞ のとき,
(nxn!)/[x(x+1)..(x+n)]→Γ(x) (0<x<1)
なることが導かれました。
ここで簡単のため,
γ(n,x)≡(nxn!)/[x(x+1)..(x+n)]と定義して
おくと,γ(n,x+1)=nγ(n,x)/(x+n+1)です。
そこで,n→ ∞ のとき,
γ(n,x+1) → xΓ(x)=Γ(x+1) です。
それ故, 0<x<1 を満足するxだけでなく任意のx>0
に対して,
"n→ ∞ でγ(n,x)=(nxn!)/[x(x+1)..(x+n)]
→ Γ(x)が成立することがわかりました。
次はスターリングの公式の証明です。
不等式:[1+(1/k)]k<e<[1+(1/k)]k+1をk=1,2,..,n-1
について全て掛け合わせると,不等式:
nne-(n-1)<n!<nn+1e-(n-1) が得られます。
Γ(n)=(n-1)!ですが,Γ(x)≡axx-1/2e-xeμ(x)なる形
を仮定して,右辺の未知関数μ(x)を求めることにします。
この表式では,x=Γ(x+1)/Γ(x)
=[1+(1/x)]x+1/2xe-1eμ(x+1)-μ(x)なので,μ(x)
の満たすべき必要条件は,
μ(x)-μ(x+1)=(x+1/2)log[1+(1/x)]-1です。
そこで,g(x)≡(x+1/2)log[1+(1/x)]-1と置けば,
μ(x)=∑m=0∞g(x+m)と書けます。この級数が収束すれば,
それは左辺の存在を意味するので,これが収束することを見
ておきましょう。
級数展開:(1/2)log[(1+y)/(1-y)]
=y/1+y3/3+y5/5+.. (|y|<1)において,y=1/(2x+1)
を代入します。これはx>0 であれば 0<1/(2x+1)<1なので
全く問題はありません。
そこでg(x)=(x+1/2)log[1+(1/x)]-1
=1/[3(2x+1)2]+1/[5(2x+1)4]+1/[7(2x+1)6]+..
を得ます。
この式の右辺の第2項から後の項の分母の5,7,9..を全て3に
置き換えた等比級数の和は簡単に導出できて,それは
1/[12x(x+1)]=(1/12)[1/x-1/(x+1)]です。
そこで,0<g(x)<(1/12)[1/x-1/(x+1)]であり,
それ故,
0<∑m=0∞g(x+m)
<(1/12)∑m=0∞[1/(x+m)-1/(x+m+1)]
=1/(12x)ですからμ(x)=∑m=0∞g(x+m)は確かに
収束して0<μ(x)<1/(12x)となることがわかります。
そこで,0<θ<1なるあるθを用いてμ(x)=θ/(12x)
と書くことができて,Γ(x)=axx-1/2e-x+θ/(12x)
と書けます。
そして,これにx=nを代入した後に両辺にnを掛けると,
n!=ann+1/2e-n+θ/(12n)となります。
最後に未知の定数aを決めましょう。
先に証明したガウスの積公式:
(nxn!)/[x(x+1)..(x+n)]→Γ(x) (as n→∞)において
x=1/2とおけば,
(n1/2n!2n+1)/[1・3・5・...(2n+1)]→Γ(1/2)
となります。
左辺の分母:[1・3・5・...(2n+1)]は,[(2n+1)!]/2nn!
とも書けますから,既知の数:Γ(1/2)=π1/2は
[n1/2(n!)222n+1]/[(2n+1)!]で近似できることになります。
n!=ann+1/2e-n+θ/(12n)等を代入すると,
[n1/2a2n2n+1e-2n+θ/(6n) 22n+1]
/[(2n+1)a(2n)2n+1/2e-2n+Θ/(24n)]
=ae[θ/(6n)-Θ/(24n)]/[21/2{1+1/(2n)}]
→ Γ(1/2) =π1/2です。
それ故,n→ ∞を考慮してa=(2π)1/2が得られます。
こうして,最終的なスターリングの公式の表式である
n!=(2π)1/2nn+1/2e-n+θ/(12n) が証明されました。
参考文献:
アルティン著,上野健爾 訳「ガンマ関数入門」(日本評論社)
p://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー) TOSHI
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