n変数の相加平均と相乗平均
今日は,数学の統計学の話題です。
n変数の相加平均と相乗平均(幾何平均)を考察します。
"(相加平均)≧(相乗平均)"という公式の意味は,2変数の場合には,
"x,yが正の数のとき{(x+y)/2}≧(xy)1/2(等号はx=yのとき)が成り立つ。" ということです。
この不等式の成立は自明なのでワザワザ証明はしません。
では,一般のn変数の場合の"(相加平均)≧(相乗平均)"の公式である{(∑i=1nxi)/n}≧(Πi=1nxi)1/n (xiは全て正の数)はどのように証明すればいいのでしょうか?
まあ,一応は数学的帰納法(induction)を用いればいい,ということはすぐに気が付くでしょうね。
まず,n=2M のときにはこの不等式が成立すると仮定して,n=2M+1のときにも成立することを証明します。
{(∑i=1nxi)/n}≧(Πi=1nxi)1/n (n=2M) が成立すると仮定すると,
n+1,n+2,.,2M+1,2M+2,.,2M+1の総個数も丁度 2Mですから,
{(x+y)/2}≧(xy)1/2を使うと,
[{(∑i=1nxi)/n+(∑j=1nxn+j)/n}/2]≧{(Πi=1nxi)1/n(Πj=1nxn+j)1/n}1/2 となります。n=2Mです。
故に,{(∑i=12nxi)/(2n)}≧(Πi=12nxi)1/2n (2n=2M+1)が成立します。
そこで,n=2M+1のときにも{(∑i=1nxi)/n}≧(Πi=1nxi)1/nが成立することが示されました。
すなわち,数学的帰納法により,nが2のベキ乗のときには,常に"(相加平均)≧(相乗平均)"が成り立つことが証明されたわけです。
では,nが2のベキ乗でないときはどうでしょうか?
このときには,2M-1<n<2Mを満足するMが必ず存在するはずです。
そこで,N≡2M,n1≡N-n,<x>≡{(∑i=1nxi)/n}と置きます。
このとき,Nは2のベキ乗なので既に証明した事実によって,
{(∑i=1nxi+n1<x>)/N}≧{(Πi=1nxi)<x>n1}1/N
が成立します。
ところが,この不等式の左辺は丁度<x>に等しいので,両辺をN=2M乗すると,<x>N≧{(Πi=1nxi)<x>n1となります。
さらに,<x>N≧{(Πi=1nxi)<x>n1の両辺を<x>n1で割ると,
<x>n≧(Πi=1nxi)となります。
結局,nが2のベキ乗に等しいとは限らない一般の場合にも,
<x>={(∑i=1nxi)/n}≧(Πi=1nxi)1/n
が成立すること,が示されました。
この後半の証明にはちょっとした工夫が必要でしたね。
これはン十年前,大学の授業で習ったときの記憶なので,参考文献は不明です。
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