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2006年10月

2006年10月31日 (火)

数列の和とベルヌーイ多項式

 今思い返してみると,Bernoulli多項式を利用すればべき乗数列の和の公式の導出は非常に簡単でしたね。

 Bernoulli多項式Bn(x)に対しては,Bn(x+1)-Bn(x)=nxn-1が成立します。

 そこで,j={Bj+1(x+1)-Bj+1(x)}/(j+1)となり,したがって∑k=1nj={Bj+1(n+1)-Bj+1}/(j+1)と書けることが直ちにわかります。

 そして,∫xx+1n(1-y)dy=(-x)nより,Bn(1-x)=(-1)nn(x)です。

   

 それ故,Bj+1(n+1)=(-1)j+1j+1(-n)=(-1)j+1r=0j+1(-1)rj+1rr(-n)j+1-r=∑r=0j+1j+1rrj+1-r=∑r=0j+1j+1rrj+1-rとなります。

 

 そこで,直接∑k=1nj=∑r=0j[j+1rrj+1-r/(j+1)]=∑r=0j[jrrj+1-r/(j+1-r)]から,Bernoulli数による数列の和(べき乗数列の和)の公式は簡単に導出できることがわかります。

  

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ベルヌーイ数とゼータ関数(その2)

またまた前記事からの続きです。

 

今回はkが2以上の偶数の自然数のときのζ(k)の値を求めて,この項目については終わりにしたいと思います。

まず,zを複素数,xを 0<x<1を満たす実数とし,zの複素関数f(z)≡exz/(ez-1)を考えます。

既に前記事で述べたように,f(t)≡ext/(et-1)はBernoulli多項式k(x)の母関数表示として(t)=0k(x)tk-1/k!と展開できます。

ここで,複素z平面上で原点を中心とした半径Rの円周をとり,それを左周りに1回転する外周(contour)をCとします。

 

このとき,留数定理によって,R→ ∞の極限では,lim∫C[f(z)/(z-t)]dz=2πi[f(t)+∑n=-∞{e2πinx/(2πin-t)}]となります。

 

ただし.t≠2πinとしています。

被積分関数:[f(z)/(z-t)]=xz/{(ez-1)(z-t)}はzの関数として,R→ ∞の極限でのCの内部に特異点z=tとz=2πin(nは全ての整数)の1位の極を持つ以外は正則です。

 

そして,z→ 2πinのときにはl'Hospital(ロピタル)の定理により,

(z-2πin)/(ez-1)→ 1/e2πin=1となるため,それらの留数が

(t),およびe2πinx/(2πin-t) となるからです。

0<x<1のときには,R→ ∞の極限で左辺の積分は,

|∫C[f(z)/(z-t)]dz|<2πxR/{(eR-1)~ 2πe-(1-x)R→ 0

です。

 

そこで,この場合,f(t)=-∑n=-∞{e2πinx/(2πin-t)]

=1/t-∑n≠0(e2πinx/2πin)k=1(t/2πin)k-1

となります。

これは,さらに,(t)

1/t-∑n≠0(e2πinx/2πin)-n≠0k=2[e2πinxk-1/(2πin)k]と書くことができます。

 

これと,f(t)=k=0k(x)tk-1/k!のtk-1の係数を比較することから,B1(x)=-∑n≠0(e2πinx/2πin),およびBk(x)=-k!∑n≠0[e2πinx/(2πin)k](k≧2)が得られます。

最後に得た 0<x<1に対する式:

k(x)=-k!∑n≠0[e2πinx/(2πin)k](k≧2)において,

右辺はx∈[0,1]で一様収束します。

 

左辺もこの区間で連続なことに着目すれば,xの区間[0,1]ではこの等式が確かに成立することがわかります。

 

さらに,右辺は周期1の周期関数なので左辺を周期的に拡張することによって,k(x-[x])=-k!∑n≠0[e2πinx/(2πin)k](k≧2)を得ます。

そこで,k≧2で,かつkが偶数ならk(x-[x])=2(-1)k/2-1!∑n=1cos(2πnx)/(2πn)k,またkが奇数ならk(x-[x])=2(-1)(k+1)/2!∑n=1sin(2πnx)/(2πn)kと書けます。

結局,k≧2でkが偶数のときには,両辺でx=0と置くことで,

ζ(k)=n=1(1/nk)=-(-1)k/2(1/2)Bk(2π)k/k!が得られます。

 

例えば,B2=1/6,B4=-1/30,B61/42ですから,

ζ(2)=∑n=1(1/n2)=π2/6,ζ(4)=∑n=1(1/n4)=π4/90,

ζ(6)=∑n=1(1/n6)=π6/945 となります。

kが奇数ときのζ(k)=∑n=1(1/nk)の値については,これらの式からは明確な値を求めることができませんでした。

 

参考文献;荒川恒男・伊吹山知義・金子昌信 著「ベルヌーイ数とゼータ関数」(牧野書店)

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2006年10月30日 (月)

ベルヌーイ数とゼータ関数

 前記事の続きです。今日はベルヌーイ数(Bernoulli number)とゼータ関数の関係の一部について述べてみたいと思います。 

 まず,Bernoulli多項式:Bn(x)というものを定義します。

 

 "n(x)はxx+1n(y)dy=xn が成立する唯一の多項式である。"

 と定義します。

 

 Bernoulli多項式:Bn(x)の定義が一意的であることは明らかです。

 このBn(x)が,n(x)=∑r=0n(-1)rnrrn-r

 =B0n-n1n-1n22n-2-..(-1)n-1nn-1n-1(-1)nnと書けることは,右辺を直接積分してみればわかります。

 

 実際,上のn(x)の表式の右辺の変数xをyに変更し,[x,x+1]の区間でyで積分すると,∑r=0n(-1)rnrr[(x+1)n+1-rn+1-r]/(n+1-r)

となります。

これは前記事で得た公式:S(x)=∑r=0n[nrrn+1-r/(n+1-r)]において,xの代わりに(-x-1),および(-x)をそれぞれ代入したものの差を取って(-1)n+1を掛けたものに等しいです。

 

すなわち,xx+1(-1)rnrrn-rdy=(-1)n[S(-x)-S(-x-1)] です。

 

(x)はSn(x+1)-Sn(x)=(x+1)nを満たすxの(n+1)次多項式ですから,この等式のxを(-x-1)に置き換えると,

  

(-1)n[S(-x)-S(-x-1)]=(-1)n(-x)n=xn

  

を得ます。

 

したがって,多項式の[x,x+1]の区間での積分の一意性によって,

n(x)=∑r=0n(-1)rnrrn-rが示されたことになります。

これによって,text/(et1)=∑n=0n(x)tn/n!なる恒等式が成立することもわかります。

 

なぜなら,右辺のxをyに変更して[x,x+1]の区間でyで積分すると,∫xx+1n(y)dy=xnによってn=0nn/n!=extとなりますが,

 

左辺を同じようにして積分するとxtとなりますから,両辺が共にxで何回でも連続微分可能なため,両辺が等しいことは明らかです。 

また,明らかにn(0)=(-1)nnです。

 

text/(et1)=∑n=0n(x)tn/n!においてx=1とおくことにより,Bn(1)=Bnもわかります。

 

nが1以外の奇数ならBn0 なので,n(0)=(-1)nnより,

n(0)=Bn(1)=Bn(n≧2)が成立します。

 

そして,xx+1n(y)dy=xnをxで微分すると,

n(x+1)-Bn(x)=nxn-1ですから,xx+1[Bn'(y)/n]dy=xn-1

より,n'(x)=nBn-1(x)も成り立ちます。 

ここで,唐突ですが,a,bをa≦bなる任意の整数としMを任意の自然数とすると,区間[a,b]でCM級の任意関数f(x)に対して,

 

abf(n)

=∫abf(x)dx+{f(a)+f(b)}/2+∑k=1M-1[Bk+1{f(k)(b)-f(k)(a)}/(k+1)!]-{(-1)M/M!}abM(x-[x])f(M)(x)dx

 

なる公式が成立します。

 

ただし,M=1のときには右辺の∑の項はゼロであると規約します。

これを証明するため,区間 [0,1]においてCM 級の任意関数g(x)と,

1(x)=(x-1/2)なる関係式を用います。

 

すなわち,∫01g(x)dx=∫011'(x)g(x)dx={g(1)+g(0)}/2-∫011(x)g'(x)dxなる等式が成立することを利用します。

k'(x)=Bk+1(x)/(k+1)を用いて部分積分を繰り返せば,

  

01g(x)dx

={g(1)+g(0)}/2-(1/2)[B2(x)g'(x)] 01

 +(1/2)∫012(x)g”(x)dx

 

=...  

={g(1)+g(0)}/2+∑1M-1{(-1)k/(k+1)!}[Bk+1(x)g(k)(x)] 01{(-1)M/M!}01M(x)g(M)(x)dx

  

を得ます。

ここで,k≧2 ではk(0)=Bk(1)=Bkであり,(-1)kk=Bk でもあるのでこれらの置き換えをします。

  

結局,{g(1)+g(0)}/2

=∫01g(x)dx-∑k=1M-1{k+1/(k+1)!}{g(k)(1)-g(k)(0)}-{(-1)M/M!}01M(x)g(M)(x)dx が得られます。

そして,g(x)≡f(x+n)(a≦n≦b-1)として右辺最後の項の[0,1]での積分変数xをx+nに置き換えます。

 

n≦x<n+1に対しn=[x]ですから,書き直して,

 

{f(n+1)+f(n)}/2

=∫nn+1f(x)dx+∑k=1M-1{k+1/(k+1)!}{f(k)(n+1)-f(k)(n)}-{(-1)M/M!}nn+1M(x-[x])f(M)(x)dx

 

となります。

上に得られた式をn=aからn=b-1まで加え合わせた後に,両辺に{f(a)+f(b)}/2を加えることにより,

  

abf(n)

=∫abf(x)dx+{f(a)+f(b)}/2+∑1M-1[Bk+1{f(k)(b)

-f(k)(a)}/(k+1)!]-{(-1)M/M!}abM(x-[x])f(M)(x)dx

 

が証明されました。

 

この公式は,Euler-Maclaurinの和公式と呼ばれています。

では,これをRiemannのゼータ関数に適用してみましょう。

 

まず,∑n=1(1/ns)の有限和:∑n=1N(1/ns)を考えることにして,

f(x)≡x-sと定義します。

 

このとき,f(k)(x)=(-s)(-s-1)..(-s-k+1)x-s-k

=(-1)k(s)k-s-k です。

 

ここで,記号:(s)k≡s(s+1)..(s+k-1) を用いました。

ただし,k=0 では(s)k≡0 と規約します。

a=1,b=NとしてEuler-Maclaulinの和公式を使うと,

 

s≠1なら,n=1N(1/ns)

=(1-1/Ns-1)/(s-1)+(1/2)(1+1/Ns)+∑k=1M-1[Bk+1/(k+1)!](s)k(1-1/Ns+k)-{(s)M/M!}1NM(x-[x])x-s-Mdx

 

が得られます。

Riemannのゼータ関数は,まず,Re(s)>1なる複素数sに対し,

ζ(s)≡∑n=1(1/ns) と定義されます。

 

この範囲では左辺も右辺もN→∞で絶対収束するので,N→∞の極限でも等式として正しく成立します。

 

そこで,このEuler^Maclaurinの和公式で,N→∞の極限を取ると,

 

ζ(s)=∑n=1(1/ns)=1/(s-1)+1/2+∑k=1M-1[Bk+1/(k+1)!](s)k-{(s)M/M!}1M(x-[x])x-s-Mdx

 

となります。

 

Re(s)>1ではζ(s)≡∑n=1(1/ns)なので,最左辺でn=1N(1/ns)のN→∞の極限をζ(s)と表現しましたが,Re(s)>1以外ではn=1N(1/ns)は有限値に収束しないので,この等式は成立しません。

しかし,最右辺の積分は,Re(s)>1だけでなくRe(s)>1-M の範囲でも絶対収束するので,右辺の和公式によりゼータ関数ζ(s)を定義し直すことによって,自然にRe(s)>1-M の範囲に解析接続されると考えます。

 

Mは任意の自然数ですから,結局,ζ(s)はs=1に特異点(1位の極)を持つだけで,それを除く全複素s平面に解析接続されます。

ここで,mを任意の自然数とし,ζ(s)のsをs=1-mとおいてM=mとすれば,(1-m)M=0 ですから右辺の積分項は消えてζ(1-m)は次のようになります。

 

ζ(1-m)=-1/m+1/2+∑k=1m-1[Bk+1/(k+1)!](1-m)(2-m)..(k-m)と書くことができます。

m=1なら,ζ(0)=-1+1/2=-1/2=-B1です。

  

そこで,m≧2とすると,

(1-m)(2-m)...(k-m)=(-1)kk!m-1kですから,

  

1m-1[Bk+1/(k+1)!](1-m)(2-m)...(k-m)

=∑k=1m-1[(-1)kk+1/(k+1)] m-1k=(1/m)∑k=1m-1(-1)k mk+1k+1

=-(1/m)∑k=2m mkk=-(1/m)∑k=0m—1mkk+1/m+1/2-Bm/m

=-1+1/m+1/2-Bm/m

 

となります。

よって,いずれにしてもζ(1-m)=-Bm/mが成立するという美しい結果が得られました。

 

特に,ζ(0)=1+1+1+...+1=-1/2 なる形式的,象徴的な等式も得られ,mが 3 以上の奇数ならζ(1-m)=0 ということも示されたため,

 

s=-2,-4,-6...がζ(s)の零点であることもわかったことに満足して,今日はここまでにしておきます。

 

それにしても,"参考文献:荒川恒男・伊吹山知義・金子昌信 著「ベルヌーイ数とゼータ関数」(牧野書店)"は読み返してみるとまた新しい驚きを覚えました。

 

この種のマニアックな本としては秀逸ですね。

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2006年10月28日 (土)

数列の和とベルヌーイ数

 皆さん,ベルヌーイ数(Bernoulli number)というものをご存知でしょうか?

 

 私は,かつて御茶ノ水の予備校のアルバイト講師をしていた時代に,当時同僚のS田先生から,ベキ乗数列の和:Sj(n)=∑k=1njはBernoulli数という有理数を係数とするnの多項式で表わすことができる,という話を聞いて,そういう数が存在することを初めて知りました。

 

 そして後になって,こうした数がゼータ関数とも大いに関係がありRiemann予想では重要な意味を持つことも知ったのでした。

 今日は,そのとき聞いた数列の和の公式やBernoulli数などについて説明したいと思います。

 まず,Bernoullli自身の定義によると,Bernoulli数:Bnとは,

 漸化式:∑r=0nn+1rr=n+1によって定義される数Brです。

 

 すなわち,n=0 としてB01,n=1として,B02B1=2より11/2,

以下,B21/6,B30,B4=-1/30と続きます。

 

 nが1以外の奇数ならBn0 となることも証明できますが,

 この証明は数列の和の公式の証明の後で行なうことにします。

 さて,各項がその項の順番を表わす自然数のベキ乗で表わされる数列の和,謂ゆるべき乗和をSj(n)≡∑k=1njとします。

 

 このとき,Sj(n)=∑k=1nj=∑r=0[jrrj+1-r/(j+1-r)]なる

 等式が成立する,という数列の和の公式を以下で証明します。

 例えば,S0(n)=n,S1(n)=n2/2+n/2=n(n+1)/2,

 2(n)=n3/3+2/2+n/6=n(n+1)(2n+1)/6,

 3(n)=n4/4+3/2+2/4=n2(n+1)2/4,

 

 4(n)=n5/5+4/2+3/3-/30

 =n(n+1)(2n+1)(3n2+3n-1)/30 etc.です。

 まず,0(n)=nは自明です。そこでj≧1とします。

 

 2項展開によって,(m+1)j+1-mj+1=∑r=0j+1rrすから,

これをm=1,2..nについて総和することにより,

(n+1)j+11=∑r=0j+1rr(n)を得ます。

 

 したがって,Sj(n)=[(n+1)j+11-∑r=0j-1j+1rr(n)]/(j+1)と書くことができます。

 帰納的に考えると,Sj(n)はnj+1/(j+1)で始まるnの(j+1)次多項式ですから,nを連続変数xに拡張してSj(x)はxj+1/(j+1)で始まるxの(j+1)次多項式です。

 

 2つの多項式f(x),g(x)についてf(n)=g(n)が全ての自然数nに対して成り立つなら,f(x)=g(x)が成り立つので,

 

 Sj(n+1)-Sj(n)=(n+1)jによりj(x+1)-Sj(x)=(x+1)jが成立します。

 

 この恒等式でx=0 とおけば,j(1)=1なのでSj(0)=0 を得ます。

 そして,Sj(x+1)-Sj(x)=(x+1)jにおいて,両辺をxで微分するとj'(x+1)-Sj'(x)=j(x+1)j-1です。

 

 x=0,1,2,...n-1とおいて両辺の和を取ると,恒等式:

 Sj'(n)-Sj'(0)=jSj-1(n) が得られます。

  

 ここで,bj≡Sj'(0)とします。(ただし,b01とします。)

 

 Sj'(x)=jSj-1(x)+bjをさらにxで微分すると,

  j"(x)=jSj-1'(x)です。この式でx=0 とおいて

  Sj"(0)=jbj-1を得ます。

 

 Sj"(x)=jSj-1'(x)をさらに微分して,x=0 とおくと

  Sj(3)(0)=j(j-1)bj-2となり,以下,これを繰り返して,

  

 j(r)(0)=j(j-1)..(j-r+2)bj-r+1 (r=2,3,.j+1 )

 を得ます。

 

 したがって,Taylor展開により, 

 j(x)=∑r=0j+1j(r)(0)xr/r!=∑r=1j+1[j+1rj-r+1r/(j+1)]

 =r=0[j+1rrj-r+1/(j+1)] が得られます。

 

 この式でx=1とおけば,j+1=r=0j+1rrとなります。

 

 したがって,rはベルヌーイ数:Brの定義を満足しており,これらr

 Bernoulli数Brに一致することがわかります。

 

 そして,同時に,j(n)=∑k=0njr=0[j+1rrj-r+1/(j+1)]

 =∑r=0[jrrj+1-r/(j+1-r)]となって,求める数列の和の公式

 も証明されます。

 

 ここで,最後の等号では2項係数の簡単な関係式:

 j+1r/(j+1)=jr/(j+1-r) を用いました。

 次に,jを奇数としj(x+1)-Sj(x)=(x+1)jにおいて,x=-1とおけば,j(-1)=0 です。

 

 そこで,等式:(j+1)Sj(x)=r=0j+1rrj-r+1において,x=-1とおけば,∑r=0j+1rr(-1)r0 となります。

 

 これを,r=0j+1rr=j+1から辺々引けばrが奇数の項だけが残って,2s=0(j-1)/2j+12s+12s+1=j+1となります。

 

 ここで,左辺のs=0 の項は,B11/2 により右辺のj+1と相殺するので,結局,s=1(j-1)/2j+12s+12s+10 となります。

 

 この式でj=3,5,7...としていくことにより,nが1以外の奇数の場合,

 Bn0 となることが証明されます。

 さらに,ベキ級数によるBernoulli数の別の定義を与えておきます。

 

 それは,tet/(et1)=∑n=0nn/n! における右辺のべき級数展開の係数BnとしてBernoulli数を定義するものです。

 

 このベキ級数展開表示を母関数表示といいます。

 後の定義と前の定義が一致しなければ無意味ですから,両者が同じ定義になっていることを確かめてみましょう。

 

 それには,(∑n=0nn/n!)(et1)=tetの両辺のtのベキの係数を比較して,r=0nn+1r=n+1が得られることを示せばいいです。

 すなわち,後の定義によれば,(∑n=0nn/n!)(∑m=11m/m!)

 =∑n=1[∑r=0n-1r/{r!(n-r)!}]tn =∑n=1n/(nー1)!

 が成立します。

 

 このことから,係数を比較して,∑r=0n-1r/{r!(n-r)!}

 =1/(n-1)! (n=1,2,..)となることがわかります。

 

 これは,n→n+1とシフトしてr=0nn+1r=n+1を意味します。

 

 こうして,前の定義を示す等式の成立が示されたので,両者の定義が確かに同義であることがわかりました。

 

 参考文献;荒川恒男・伊吹山知義・金子昌信 著「ベルヌーイ数とゼータ関数」(牧野書店)

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2006年10月27日 (金)

量子力学の交換関係の問題(その2)

今回も量子力学の交換関係の問題を解きます。

 

"線形演算子:A,Bが,[A,[A,B]]=0 または[B,[A,B]]=0 を満足するとき,e=e{A+B+[A,B]/2}が成立することを証明せよ。"

 

という問題です。

[解答] [A,[A,B]]=0 と仮定し,関数f(x)をf(x)≡exAxB と定義します。このとき,もちろんf(0)=1です。

 

 また,f(x)をxで微分すると,df/dx=AxAxB+exABexB{A+xABe-xA}f(x)と書くことができます。

 そこで,今度はg(x)≡exABe-xAという関数gを考えます。

 

 するとg(0)=B です。

 

 次にこれをxで微分すると,dg/dx=xA[A,B]e-xAですから,

 x=0 とおいてg'(0)=[A,B]です。

 

 さらに微分すると,d2/dx2=exA[A,[A,B]]e-xAよりg"(0)=[A,[A,B]]を得ます。

 

 結局,帰納的に考えると,g(x)=exABe-xAは,g(x)=B+[A,B]x+[A,[A,B]]x2/2!+[A,[A,[A,B]]]x3/3!+..とMaclaurin展開されることになります。

 そして,特にx=1とおくと,g(1)=Be-A =B+[A,B]+[A,[A,B]]/2!+[A,[A,[A,B]]]/3!+..が成立します。

 

 まあ,これは余談ですね。

 

 ところで,仮定より[A,[A,B]]=0ですから,この場合には

 g(x)=exABe-xAB+[A,B]xとなりますね。

 したがって,df/dx={A+B+[A,B]x}f(x)です。

 

 f(0)=1という条件下でこの線形微分方程式を解くと,解は一意的で

 f(x)=e{(A+B)x+[A,B]x^2/2}となります。

 

 これにx=1を代入すると,(1)=e=e{A+B+[A,B]/2} 

 が得られます。

一方,[B,[A,B]]=0 のときは,

df/dx=xAxB+exAxB

=f(x){-xBxB} と書けます。

 

そして,[B,[A,B]]=0 なら-xBxB=A+[A,B]xなので,

df/dx=f(x){A+B+[A,B]x}となり,同様にして

同じ結果が得られます。

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2006年10月25日 (水)

素数定理への入り口

 "実数x以下の素数全体の個数をπ(x)とすると,x→ ∞ではπ(x)~(x/logx)となる。"という素数定理に関する部分は時間がなくて尻切れトンボになってしまいました。

Eulerによるゼータ関数ζ(s)の素数pによる無限積表示ζ(s)=Π(1-1/ps)-1でs=1とおけば,Π(1-1/p)-1=∑(1/n)と書けます。

 

[∑1n(1/n)-logn]→γ (n→ ∞)(ただしγはEuler数で 0<γ<1)ですから,∑1x(1/n)~logx (x→ ∞)です。

 

したがって,[-∑log(1-1/p)]~ log(logx)です。

 

ところが,log(1-x)~ -xですから,上式は(1/p)~log(logx)なることを示唆しており,これは素数定理への入り口を与えるものでしょう。

 

ここでの∑はp≦xのあらゆる素数にわたる総和です。

と書きましたが,どうしてこれが素数定理への入り口になるのか?の明確な意味を述べていませんでした。

 

昨晩から今朝までの夜勤の合間の休憩時間にちょっと計算し,これは次のような意味であろうと推測しました。 

 p~x付近でのπ(x)の変化をΔπとすると,その付近での∑(1/p)の変化はΔ[∑(1/p)]~(1/x)Δπと近似できるため,

 

 ∑(1/p)~log(logx)から,(1/x)Δπ~Δlog(logx)=[Δlogx]/logx=Δx/(xlogx)です。すなわちΔπ~Δx/logxと考えられます。

 

 したがってπ(x)~∫dx(1/logx)であると予想されるわけです。

 素数定理としては,このままの式でもいいのでしょうが,xが大きいときは分母のlogxは大体xの桁数を表わすだけなので,これはxに対してほとんど変動がないのと同じです。

 

 結局,π(x)~(x/logx)であるとしても,同じ意味と思われます。

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2006年10月24日 (火)

素数を分母とする循環小数とその周辺

 今日は素数を分母とする循環小数の周辺の話題について書いてみます。

 

 10と互いに素な素数,2と5を除く素数pを分母とする分数 1/pを, 

 1/p = 0.12..am12..am12..am..なる循環小数で表わすと,

 

 (10m/p)-1/p=(1/p)(10m-1)=(10m-1)/p

 =10m-1110m-22+..m=(自然数) なる式が成立します。

 

 そこで,1/pの循環節の長さは(10m-1)をpで割ったときに割り切れるような自然数mの最小値であるということができます。

 例えば,分数1/7(素数pが7の1/p)を考えたときには,106-1=999999を7で割ると割り切れて商は142857です。

 

 一方,1/7を小数で表現すると,1/7=0.142857142857142857..となりますから,循環節の長さは確かに6=p-1です。

 "Fermatの小定理"から,素数pに対しては10p-1≡1(mod p)が成立するので,(10m-1)をpで割ったときに割り切れる最小の自然数mは必ず(p-1)の約数です。

 

 というわけで循環節の長さが最大となるのはm=p-1のときです。

 

※ 2006年9/12の記事「オイラーの定理とフェルマーの小定理(合同式)」,続く9/13の記事「フェルマーの小定理の別証明」も参照してください。

 では,mが丁度,最大値(p-1)になるのはどういう場合でしょうか?

 

 それは,k=1,2,..,(p-2)に対しては決して10k≡1(mod p)とならないときですから,pが10を原始根とする場合です。

 

 体(Z/pZ)からゼロと合同な元を除いた既約剰余類のつくる巡回群=(Z/pZ)×を剰余類rの巡回群として<r>={1,r,r2,r3,..,rp-2}={1,2,..,p-1}と書くことができるとき,rとして取り得る値がpの原始根の定義です。

 

 そして,pが10を原始根とする場合に限って,1/pの循環節の長さが最大の(p-1)になります。

 例えば,p=7のとき10,102,103,104,105,106は7を法として,それぞれ3,2,6,4,5,1となりますから,この場合は10は原始根であり,確かにp-1=6が循環節の長さです。

 Gaussによれば,10を原始根とする100までの素数は.7,17,19,23,29,47,59,61,97の9個だそうですから,例えば1/47は循環小数で小数点以下46桁までを繰り返すということになりますね。

 実数x以下の自然数で10を原始根とする素数pの個数をπ10(x)とし,x以下の素数全体の個数をπ(x)とします。

 

 それらのx→ ∞での比をCとすると,[π10(x)/π(x)] → Cですが,E.Artinによると,C=Π[1-1/p(p-1)]~ 0.37395だそうです。

 Artinのこの予想が正しいとすると,素数定理;

 π(x)~ (x/logx)(x→ ∞)を用いることで,

 π10(x)~ C(x/logx) と書けることになります。

 ところで,Eulerによるゼータ関数:ζ(s)の素数pによる無限積表示:

 ζ(s)=Π(1-1/ps)-1で,s=1とおけば,Π(1-1/p)-1=∑(1/n)

 です。

 

 そして,∑1n[1/(k+1)]<∫1n(1/x)dx<∑1n(1/k)より,0<[∑1n(1/k)-logn]<1 です。

 

 これから,n→∞に対して1n(1/k)-logn→γ (0<γ<1)です。

 

 そこで,x→∞に対して∑1x(1/n)~ logx が成立します。

 ただし,γはオイラー数(Euler number)です。

 

 したがって,Eulerの無限積表示:Π(1-1/p)-1=∑(1/n)は,

 [-∑log(1-1/p)]~ log(logx) なることを意味します。

 

 ところが,log(1-x)~ -xですから,これは∑(1/p)~ log(logx)であることを示唆していて,素数定理への入り口を与えるものでしょう。

 素数定理π(x)~ (x/logx)の証明には,実は,

 

"ζ(s) の自明でない零点は全てRe(s)=1/2 の上にある。"というリーマン予想(Riemann's hypothesis)は必要なく,

 

 "ζ(s)が Re(s)≧1では零にならない。"という性質だけで十分です。

 

 これを用いてHadamard(アダマール)らによって,素数定理は既に証明されています。

 しかし,RiemannはRiemann予想を解決することで,もっと複雑な素数公式を得ることを目指していたらしいですね。

 

 参考文献;黒川信重 他 著「ゼータの世界」(日本評論社)

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2006年10月23日 (月)

観測の問題(デコヒーレンス)

今日は観測に伴なって固有状態の干渉項が消滅すること

=デコヒーレンス (decoherence)の現象を最近の理論に基づいて

述べてみたいと思います。

 

ただし私自身は本質的には多世界解釈の方に傾いています。

まず,"観測可能量(observable)=物理量=線型演算子"O^とその

あらゆる固有値:oiに属する固有状態:|i>の集合,つまり,

O^|i>=i|i>を満たす|i>の集合があり,これら

完全系を形成している,すなわち,∑i|i><i|=1

が成立しているとします。

"任意の状態=純粋状態":|ψ>は|ψ>=∑ii|i>と展開可能

この同じ状態|ψ>において,物理量O^を状態を乱すことなく

独立に多数回観測したときにはO^の固有値以外が観測されること

はなく,観測値がoiである確率が|ci|2で与えられます。

そして∑i|ci|21が成立しているというのが量子力学

の観測に関する枠組みと考えられます。

 

しかも,通常は固有状態|i>は正規直交化されていて,

<i|j>=δijなのでci=<i|ψ>なる式が成立して

います。 

したがって,この純粋状態|ψ>における物理量O^の観測値

の"期待値=平均値"は,

<O>ψ=∑i|ci|2i=∑ii|ψ><ψ|i><i|O^|i>

=∑i<ψ|i><i|O^|i><i|ψ>=<ψ|O^|ψ>

で与えられます。

 

つまり,<O>ψ=<ψ|O^|ψ>であり.

<O>ψ=∑i<ψ|O^|i><i|ψ>=∑i<i|ψ><ψ|O^|i>

=Tr(PψO^)となります。

ここで射影演算子とよばれるPψはPψ|ψ><ψ|で定義され,

物理量X^の対角和(trace)は,Tr(X^)≡∑i<i|X^|i>で定義

されます。

 

そして対角和の値が,これを定義する完全系{|i>}の選択に依

ないことも簡単にわかります。

ところで,もしもこの体系が,状態間の干渉が存在するような状態

の重ね合わせのみで成り立つ純粋状態ではなく,

 

情報の欠如などによって統計的に純粋状態:ψ,φ,χ,...が

それぞれ確率:W(ψ),W(φ),W(χ),...で混合している混合

状態であるとすれば,

 

O^の期待値は<O>=∑ψ(ψ)<ψ|O^|ψ> 

で与えられます。

 

これも,<O>=∑ψ(ψ)<ψ|O^|ψ>

=∑ψiW(ψ)<ψ|O^|i><i|ψ>

=∑iψ(ψ)<i|ψ><ψ|O^|i>=Tr(ρ^O^)

となり,純粋状態の<O>ψ=Tr(Pψ)と同じ形に

書けます。

 

ここでρ^はρ^≡∑ψ(ψ)|ψ><ψ|=∑ψ(ψ)Pψと定義

されて統計作用素(密度演算子)と呼ばれます。

対象となる体系のHamiltonianをHとすると統計作用素ρ^

時間に依存する量子力学の線形演算子に相違ないので,

Heisenbergの運動方程式:ic(∂ρ^/∂t)=[H,ρ^]

を満足します。

 

ただし,hc≡h/(2π)でhはPlanck定数です。

 

実は状態|ψ>はSchroedinger表示の時間を含む状態ベクトル

|ψ(t)>で,これがSchroedingerの方程式:

ihc(∂/∂t)|ψ(t)>=H|ψ(t)> を満たします。

 

逆に統計作用素ρ^≡∑ψ(ψ)|ψ(t)><ψ(t)|が時間

を含むHeisenberg表示の作用素となるため,Heisenbergの

運動方程式:ihc(∂ρ/∂t)=[H,ρ^]を満たすと考えて

よいわけです。

時間発展の演算子をU(t',t)=e-iH(t'-t)とすると,

|ψ(t')>=U(t',t)|ψ(t)>ですから,

ρ^(t)≡∑ψ(ψ)|ψ(t)><ψ(t)|によって

ρ^(t')=U(t',t)ρ(t)U(t',t)-1となります。

 

統計作用素ρの時間発展はユニタリ変換によって行われる

のでρ^や,ρ^に関わる関係式は時間発展によって変化しません。

簡単のため,スピンが1/2の区別できる粒子が2個ある体系に

ついて考察します。

 

スピン1/2の1粒子のスピン角運動量の演算子をとすると,

それは2行2列の行列表示では,Pauliのスピン行列σを用いて,

=(c/2)σと表わされます。

 

σz の固有値+1,-1の固有状態を,それぞれ|α>,|β>とします。

 

2つの粒子それぞれのこうした状態を,それぞれ,(i)

と|β(i)>(i=1,2)で指定することにします。

このとき,全系の任意の状態ベクトルは(1)>|α(2)>,

(1)>|β(2)>,|β(1)>|α(2)>,|β(1)>|β(2)>の1次結合

で表わされます。

 

そして,例えばスピンがゼロの状態は,

|0>=(1/21/2)(|α(1)>|β(2)>-|β(1)>|α(2)>)

で与えられます。

 

この状態での統計作用素ρ^0は,

ρ^0 =(1/2)(|α(1)>|β(2)>-|β(1)>|α(2)>)

(<α(1)|<β(2)|-<β(1)|<α(2)|)

=(1/2)(|α(1)><α(1)|(2)><β(2)|

-|α(1)<β(1)|(2)><α(2)|

-|β(1)><α(1)|(2)><α(2)|

+|β(1)><β(1)|(2)><α(2)|)

となります。

 

ただし,記号は直積を表わしています。

 

このρ^0は確かに,純粋状態を示す"統計作用素=射影演算子"

です。

ここで,一般に粒子1のみに関する物理量S(1)を測定する場合

を想定すると,このときも対象としては全体系ですから,

物理量を表わす作用素はS(1)(2)です。

 

その期待値は,

<S(1)(2)>=Tr(ρ^(1)(2))

=∑ij<i(1)|<j(2)|ρ^(1)|j(2)>|i(1)

=Tr(ρ^(1)(1))  と書くことができます。

 

ここで,ρ^(1)<j(2)|ρ^|j(2)>=Tr,2(ρ^) です。

そして,部分系である粒子1の物理量S(1)の測定の期待値は全て

<S(1)(2)>=Tr(ρ^(1)(1))の形で表わせるので,

 

実質的には,ρ^(1)が部分系である粒子1の状態を示す統計作用素

であると見なすことができるでしょう。

ここで,ρ^=ρ^0 の場合には,

ρ^0(1)=<α(2)|ρ^0(2)>+<β(2)|ρ^0(2)

=(1/2)(|α(1)><α(1)|+|β(1)><β(1)|) です。

 

そこで,全系が純粋状態でも,部分系である粒子1の状態は

z成分のスピンが上向きと下向きが1対1に混合した混合状態

となることがわかります。

話を戻して,体系の状態が|ψ>で物理量O^の固有状態での

展開が,|ψ>=∑ii|i>(∑i|ci|21) で与えられると

します。

 

O^の測定装置はマクロな物体ですが,装置も状態ベクトル

表わすことができると仮想して,その初めの状態を|o>A

とします。

そして,対象が状態|i>にあるとき,それを測定したときの

"対象=体系と装置"の変化を|i>|o>A|i>|i>A

とします。

そこで,|ψ>を測定したときには,

|ψ>|o>A → ∑ii|i>|i>A となります。

 

この最後の状態はもちろん純粋状態であって,物理量O^の期待値

を取れば当然|,i>|i>A 間の干渉が現われるはずです。

 

最初の状態が純粋状態であって時間発展がユニタリですから当然

それは予想されたことです。

しかし,我々の観測の経験では,測定の最後の状態は

|i>|i>Aの状態がW(oi)=|ci|2の確率で混じり合って

いて,決して干渉作用など起きない混合状態です。

簡単のために,1電子のスピンのz成分を観測するStern-Gerlach

の実験のようなものを考察します。

 

これは,不均一な磁場の中にスピン磁気モーメントを持つ電子

が入射してスピンが上向きか下向きかが検出される実験です。

 

入射電子はある一定のスピン状態にあって,

|ψ>=(c1|α>+2|β>)|φ>,(|c1|2|c2|21)

であるとします。

 

ただし,|φ>は電子線の空間的運動を表わす状態ベクトルです。

 

入射電子が磁場の中を通るとスピンの向きによって空間的運動

は上下に分裂するので,

 

|ψ> → |γ>≡c1|α>|φ>+2|β>|φ

 

となります。

そして,上下にある検出装置の統計作用素=密度行列をそれぞれρAαAβ,対象と装置の全体系の"統計作用素=密度行列"をη0

すると,

 

η0=|γ><γ|ρAαρAβ

=(|c1|2ρ++|c2|2ρ--12*ρ+-21*ρ-+)ρAαρAβ

 

と書けます。

 

ここで,

 

 ρ++=|α><α|><φ|,

 ρ--=|β><β|><φ|,

 ρ+-=|α><β|><φ|,

 ρ-+=|β><α|><φ|

 

です。

測定装置が状態ベクトルで表わされている状況では,ユニタリ性の故,

測定の結果として,干渉項ρ+--+が消えることは決して有り得ないことです。

 

そこで装置は初めから混合状態にあると考えます。

 

すなわちマクロな装置はN個~ Avogadro数個程度の粒子の集合系

であり,このN粒子の系の多数の状態ベクトルの混合状態が装置を

表わしていると考えるわけです。

そして,測定にはある時間にわたって全体系の密度行列η0を調べる

必要があります。

 

それぞれ,N,N'粒子系から成る上下の検出装置に対して

η0(N,N')≡|γ><γ|ρAα(N)ρAβ(N') と定義

します。

 

相互作用が起こる直前の時刻をt0 として,時刻tでの全体系の

統計作用素をN,N'を省略してη(t)と書くと,η(t0)=η0

対し, 

η(t)=∑N,NW(N)W(N')(t,t0)η0(N,N')(t,t0)-1

(ただし∑(N)=1)

と書くことができます。

η0(N,N')=|γ><γ|ρAα(N)ρAβ(N')において,

例えばρ+-に関わる部分は,

|α><β|><φ|ρAα(N)ρAβ(N') です。

 

装置との相互作用部分がスピンに依らないとすれば,時間発展

は,(t,t0)>ρAα(N)<φAβ(N')(t,t0)-1

となります。

 

ここで,|φ>はρAα(N)のみ,<φ|はρAβ(N')のみと相互作用

するので左右に分けました。

 

tを相互作用が終わった時刻とし,N個の粒子の個数に比例する

運動長さの単位をL(N)とすると,そのオーダーはL(N)~N1/3

です。

 

そして,比例定数として波数因子kを掛けた位相の変化がある

と考えられるので,

左の(t,t0)>ρAα(N)は因子ikL(N) を,

右の<φAβ(N')(t,t0)-1は因子eikL(N')

を含むはずです。

ここで,η(t)=∑N,N’...を連続化して積分式にすると,

η(t)=∫dL∫dL'W(L-L0)W(L'-L0)(t,t0)

η0(L,L')(t,t0)-1(ただし∫dL(L-L0)=1)

となります。

 

位相部分だけに着目すると,L(N)~N1/3が大きい極限で

密度行列要素は,それぞれ,

 

ρ++→ 1,ρ--→ 1,ρ+-→eik(L-L')-+→e-ik(L-L')

 

となります。

 

ところで,Riemann^Lebesgueの定理によれば,L,L'が無限大の

極限では,

∫dL∫dL'W(L-L0)W(L'-L0)eik(L-L') → 0

となります。

 

このことから"統計作用素=密度行列"からρ+-とρ-+の干渉項

が消えてρ++とρ--の項のみがそのままの形で残ることになり,

事実上デコヒーレンスが実現されることになると考えられます。

ただし,清水明氏の量子測定の原理とその問題点」に書かれて

いますが,

"測定装置の他に環境も含めたとしても干渉項のオーダー

観測時間をT,光速をcとして,exp[-(正定数)×cT3]が限界

あり決して正確にゼロになって消えるわけではない。"

という問題は残っています。

一方,szの測定によって必ずしもσzの固有状態である

|α>,|β>が観測されると考える必要はないという本質的な

問題もあります。

 

例えば,|χ±>≡(1/21/2)(|α>±|β>)(複号同順)はσx

対してのスピンの+,-の固有状態です。

 

先の統計作用素において非干渉成分として,

ρ++=|α><α|><φ|,ρ--

=|β><β|><φ| の代わりに,

 

ρ'++=|χ><χ||φ'><φ'|,

ρ'--=|χ><χ||φ'><φ'|

 

が残ると考えても何の不都合もないからですね。

こちらの問題は(猫生)か(猫死)のどちらか一方のみの状態が観測

されるとして定式化しても,

 

それらの重ね合わせ状態が観測されるとして定式化しても,

"統計作用素=密度行列"のデコヒーレンスだけからは,

それらは全く同等である,ことから多世界解釈の問題でもあり

超選択則関わる問題ですね。

 

例えば変換群の異なる既約表現にまたがる重ね合わせ状態は

観測されない,とかの原理的問題であると思います。

 

具体的には既約表現の問題とは,ちょっと違うかもしれないです

が,アイソピン(荷電スピン)に関わる2次元特殊ユニタリ群

SU(2)において,

 

陽子と中性子の重ね合わせ状態は決して観測されない,という

のも超選択則の例です。

 

これに対して,φメソンやKメソンにはむしろ混合(mixing)が

ある状態で存在する方が普通なので,自然がどういうメカニズム

になっているのかは不思議なことです。

 

これに関しては,観測を行なう以前の物理系の状態を記述する

"波動関数や密度行列をも実在であると考えるかどうか?"

という哲学的な問題も関連あるかもしれません。

 

参考文献;町田茂 著「基礎量子力学」(丸善),

ボーム 著「量子論」(みすず書房)

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2006年10月21日 (土)

ポアンカレの補題

n次元空間におけるk次微分形式(differential form)(k≦n)を,

ω=(1/k!)ai1 i2..ikdxi1∧dxi2∧..∧dxik

   =∑ai1 i2..ikdxi1∧dxi2∧..∧dxik  とします。

 

ただし,∑はi1i2<..<ik≦nのあらゆる組み合わせの総和を示しています。

 

同じ添字が2度現われる場合には,それについて総和を取るアインシュタインの規約を採用します。

 

そして,このk次微分形式ωの外微分dωを,

dω≡(1/k!)(∂ai1 i2..ik/∂xp)dxp∧dxi1∧dxi2∧..∧dxik

で定義します。

したがって,d(dω)=(1/k!)(∂2i1 i2..ik/∂xp∂xq)dxp∧dxq∧dxi1∧dxi2∧..∧dxikとなります。

 

この式の右辺では,添え字pとqに関して,(∂2i1 i2..ik/∂xp∂xq)は対称なのに対して,dxp∧dxq は反対称です。

 

そこで,d(dω)=-d(dω)となるためd(dω)は消えます。

 

つまり,d(dω)=0 です。

 

これを"完全形式は閉形式である。"と言って"ポアンカレの補題(Poincare'Lemma)"と呼びます。

この補題の逆命題="可縮な領域では閉形式は完全形式である。"ことも"ポアンカレの補題"といわれます。

 

可縮であるとは,簡単に言えば,ホモトピークラスがゼロであるとか,2次元ならその領域内の任意の閉曲線を領域内部で縮めて1点にすることができる,あるいは単連結であることを意味します。

 

(厳密には可縮と単連結は微妙に異なる概念ですが,まあ大体同じであると考えてもめったに問題にはなりません。)

 

今のPoincare'の補題は,"k次微分形式ωが可縮な領域でdω=0 を満たすならその領域ではω=dθとなる(k-1)次微分形式θが存在する。"ことを意味します。

 

この後者のPoincareの補題の成立を証明したいと思います。

 

まず,ωとしては前と同じように,

 

ω=(1/k!)ai1 i2..ik(x1,x2,..,xn)dxi1∧dxi2∧..∧dxik=Σai1 i2..ik(x1,x2..,xn)dxi1∧dxi2∧..∧dxik;とし,dω=0

 

と仮定します。

 

そして,ωにおいて変数をxiからyi(x)に変更したものを,

 

Φ*ω≡∑i1 i2..ik(y1(x),y2(x),...,yn(x))(∂yi1/∂xj1)(∂yi2/∂xj2)..(∂yik/∂xjk)dxj1∧dxj2∧..∧dxjk

 

とします。

 

微分形式とは重積分の中から被積分関数×微分を取り出したものですから,変数変換をしたときに置換積分の規則が成立するのは当然です。

 

今の場合,元々ω=(1/k!)ai1 i2...ik(y1,y2,..,yn)dyi1∧dyi2∧..∧dyikがn次元y空間の微分形式として与えられているとき,

iにyi(x)を代入して,m次元x空間の変数の微分形式に変えたと考える方が普通です。

 

そしてΦ*ωを"引き戻し"と呼びます。

ここで変数を1つ増やして,それをτとしτ∈[0,1] とします。

 

そしてp(x)=τxp と変数変換します。

 

この変換に対して,Φ*ω=∑τki1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)dxi1∧dxi2∧..∧dxik +∑∑'s=1k(-1)s-1τk-1i1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)xsdτ∧dxi1∧dxi2∧..∧dxik となります。

 

ここで∑'s=1kdτ∧dxi1∧dxi2∧..∧dxikの中からdxis だけ落とした総和を示しています。

ところで,Jacobi小行列を,Ji1 i2..ik;j1 j2..jk≡∂(i1,yi2,.,yik)/∂(xj1,xj2,.,xjk)と,その分母の変数xjrの1つをτに置き換えたものも含めたJacobi行列で定義すれば,d(Φ*ω)=Φ*dωです。

 

ただし,Φ*dω=∑[∂i1 i2..ik(y1(x),y2(x),..,yn(x))/∂yp]

i1 i2..ik;j1 j2..jk(∂yp/∂xp)dxpdxj1∧dxj2∧..∧dxjk 

です。

 

そこで,dω≡0 なら,もちろんΦ*dω=0 ですね。

  

したがって,仮定によってd(Φ*ω)=0 です。

 

そこでΦ*ωを外微分したとき,dτ∧dxi1∧dxi2∧..∧dxikの係数も当然ながらゼロでなければならないので,

 

∂[τki1i2...ik(τx1,τx2,..,τxn)]/∂τ=∑(-1)p-1(∂/∂ip){(-1)s-1τk-1i1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)xs}

となることが必要です。

 

この両辺をτで 0 から1 まで積分すると,

 

左辺=ai1 i2..ik(x1,x2,..,xn),

右辺=∑(-1)p-1∫dτ(∂/∂ip){(-1)s-1τk-1i1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)xs} 

 

となります。

こうして,θ≡∑∑'s=1k(-1)s-1∫dτk-1i1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)xs}と置けば,確かに陽にω=dθとなることが示されたわけです。

 

ここで可縮という条件をどこで使ったか?というと,

 

τ∈[0,1]としたときに,このあらゆるτに関してi1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)が定義できて,しかもそれが対象領域内に留まることを前提として話をしている, 

 

というところです。

Poincareの補題とStokesの定理:∫Cdω=∫C ωは,一方から他方が導けるという表裏一体の関係にあるとも思われます。

 

これらは物理学では星印作用素=Hodge作用素を使って,ベクトルの法則の微分形を積分形と結びつけるのに役立つ重要な命題ですね。

参考文献;木村利栄,菅野礼司 著「微分形式による解析力学」(吉岡書店)

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2006年10月20日 (金)

経済制裁という名の宣戦布告

 国連安保理事会で全会一致で北朝鮮制裁決議が通ったそうな。。

 日本でもテロ特措法の延期が国会で可決されたらしい。そして日本政府も経済制裁への道を歩んでゆきつつあるらしい。

 しかし,国連安保理なんて名前ばかりで,内実は世界の警察を標榜する米国を中心とした大国主義のエゴの象徴です。

 いつから,日本は他の国を制裁できるほど偉くなったのでしょう。

 制裁というからには,自らが神のごとく絶対的正義を断行する,などという思い上がった思想が根底にあるのでしょうか。

 たとえ"気違い"が刃物を持ったからといって,彼の支配する国を制裁することに何の理があるのでしょう。

 大量殺戮兵器を持っていても貧乏な弱小国であることには変わりなく,それを"イジメよう"と宣戦布告するのはいかがなものでしょうか?

 まだ,”おカゴでホイサッサ"の江戸時代の国を自分の国の体制と違うという理由で制裁とはおこがましい。内政干渉もいいところです。

 核がどうしたというのか?

 かつて敗戦時には自衛権さえ放棄したのではなかったのか。。

 かつて,9.11の後に米国でなされたアフガン報復決議にただ一人反対した勇気ある黒人女性下院議員バーバラ・リーなる人がいたという。

 彼女は脅迫やイヤガラセにも屈しなかったといいますが,今となっては彼女の方に理があることは間違いないでしょう。

 日本の国会議員は自民党から共産党までいずれも俗物ばかりで,こうした独自の反対行動を実行できる者などいないようです。

 世論におもねるのはニュースを商売とするマスコミという輩と同じです。

 政治家というより政治屋というべきでしょう。

 「赤信号みんなで渡れば怖くない。」というのはもう古いギャグですが,現在の心境は「核ミサイルみんなで当たれば怖くない,みんなで死ぬなら怖くない。」というところでしょうか?

 かつてゼロメートル地帯に住んでいたときは大地震が来たら死ぬのも仕方ない,という覚悟ができていました。

 そう,不意に核攻撃されたらそれはもう仕方ないのです。

 核の傘の中にいようが自分が核武装しようが,防げはしません。シェルターにでもこもるくらいしかないでしょうが,貧乏人にはどうしようもないです。

 もっとも,「かの国」を追い詰めても暴発して"真珠湾攻撃"が起こるとは思えませんね。金正日将軍にはそんな度胸はないし,軍部もそうだと思います。

 かつて,一億総玉砕を唱えて竹槍の訓練までした国とは国民性が違うのでは?と思います。

 まあ,何が言いたいかといえば,覚悟もなしにこちらからケンカを仕掛けるポチにはウンザリだということです。

 この国には民主主義というのは根付かない。ファッシズムに似たものしかないようです。

 話は変わりますが,都会の殺伐とした空気は何とかならないものでしょうか?

 先日も巣鴨の地下鉄ホームで電車を待っていたら,何か足を棒でこづかれたのでよく見ると目の見えない若い女性の白い杖がうろうろしています。

 こづかれた人々はよけるだけで何もしません。見かねて左腕を取って盲人用の黄色い線の上に並ばせてあげたら,実は上の改札口まで行きたいと言います。

 盲人でも,いつも通う道なら他人に頼らずとも行けるはずと思ったら,その日は山手線で人身事故があって不通なのでやむなく地下鉄に乗ったらしいです。

 そこで身障者用のエレベーターに案内したら,まだエレベーターが来ないのにコツコツと杖でさぐっています。

 これは仕方ないと思って電車を1,2本やり過ごして一緒にエレベータに乗って上の改札口まで送ってきました。私も時間がなかったのでそこで別れましたがその後も少し心配でした。

 いつもはこうした偽善的行為はしないし,行為そのものの自己満足によって既に報われる,ということで余りやりたくないとも思ってますが,あまりにも殺伐としていて他人の無関心に呆れたのでやっただけです。まあ、自慢話ですが。。。。

 もっとも若い女性だし目が見えないのでこちらの老醜も見えないはず,というスケベ心があったかもしれません。

 相手がクソジジイやクソババアならやらなかったかもね。。。

 ああ,それにしてもむなしい,生きることは死ぬより苦しいものですね。 

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2006年10月19日 (木)

同時刻の相対性

 特殊相対性理論の比較的軽い話題である"同時刻の相対性"の例としてよく出される有名な仮想実験について簡単に考察してみたいと思います。

まず,特殊相対性理論の基になる原理="いかなる慣性座標系でも光速cは一定である"という光速度不変の原理を仮定し,その結果として慣性系の座標間にLorentz(ローレンツ)変換が成立するとします。

一定速度で走っている電車の,ある列車の中央に爆弾があって,爆弾の両側にはある特定波長の光を感知するセンサーがあるとします。

 

そして,リモコンでテレビのスイッチを入れるような要領で,列車の両側から爆弾の方へと,特定波長のレーザー光を同時に発射します。

 

列車中央にある爆弾の両側のセンサーが同時に光が到達したと感知したときに限って爆弾が爆発する,という仮想実験を考えます。

 列車の中で列車の両端から同時に光線を発すれば,爆弾は中央にあるのですから,それは確かに爆発します。

 

これを外の例えばプラットホームに静止している観測者が通過する電車の中の実験として観測したとしても,爆弾が爆発するという同じ事象が観測者によって異なることは有り得ないので,やはり爆弾は爆発すると観測するはずですね。

 しかし,静止観測者にとっては光線が到達するまでの時間に中央の爆弾も列車と共に前に移動しているのですから,もしも両端からの光の発射時刻が本当に同時なら,前の方からの光が先に届き,後ろの方からの光は後から届くことになるので爆弾は爆発しないことになります。

 

これは何か変ですね。

 理論の帰結として,こういうことが生じるのであれば,これは"パラドックス=矛盾"であり,理論自体がおかしい,という結論になります。

 

ところが,実は静止観測者からみれば列車両端からのレーザー光の発射は同時ではなく,前からのレーザー光発射の方が後ろからの発射よりも後であるというのが正解で,光はやはり同時に爆弾に届くので矛盾はないということになります。

 これを計算で確かめるため,走っている列車の長さをL,列車の速さをvとし,列車の進行方向を静止系Sのx軸,かつ列車と共にvで走る慣性系S'のx'軸の共通の正の向きとします。

  

 

そして,列車中央の爆弾はS'系の原点x'=0 にあるとします。また,γ≡1/(1-v2/c2)1/2と定義しておきます。

 列車内では両側からの光が中央の爆弾に届いて,それが爆発するのは両側から光を発射した同時刻からL/(2c)だけ経過した時刻であり,確かに同時刻です。

 しかし列車内の時刻をt',静止観測者の同じ時刻をtとすると列車内の座標x'ではLorentz変換によってt=γ(t'+x'v/c2)となります。

 

そこで,列車内での光の同時発射時刻をt'とすると静止観測者の系での光の発射時刻は前端ではt1=γ[t'+Lv/(2c2)],後端ではt2=γ[t'-Lv/(2c2)]となります。

 

したがって,前端での発射時刻t1が後端での発射時刻t2より後になっています。t1-t2=γLv/c2>0 ですね。

 

つまり,この列車内での同時刻が静止観測者にとっては同時刻ではないのですね。こうしたことを"同時刻の相対性"といいます。

  

そして,外の静止観測者にとって光が爆弾まで走る時間をΔtとすると,その間に爆弾はvΔtだけ前に移動しています。

   

爆弾がvΔtだけ移動する前の元の中央の位置に静止していたとして,両側からの光がそこに到達するのに要する時間をΔt0とします。

 

光の走る距離は,前からの距離が中心よりvΔtだけ短く,後ろからの距離がvΔtだけ長いので,両側からの光が爆弾まで届く時刻が同時刻になるためにはt1+Δt0-vΔt/c=t2+Δt0+vΔt/cとなることが必要です。

 

左辺から右辺を引き算してΔt0を消去すると,c(t1-t2)= 2vΔtとなります。前に計算したt1,t2からc(t1-t2)=γLv/cですからΔt=γL/(2c)ですね。

 

一方列車内では,光が爆弾まで走る時間はΔt'=L/(2c)ですから,Δt'=Δt/γ=Δt(1-v2/c2)1/2です。

 

"外部静止系の経過時間Δtよりもvで走る列車内の経過時間Δt'の方が遅い"ということで,有名な"相対論における時間の遅れ"が存在することを意味しています。

列車の長さについては,静止系でみるとLorentz収縮してL/γ=L(1-v2/c2)1/2であるはずなのに,この計算では,逆にγLとなって伸びているように見えて変だと感じるかもしれません。

しかし,そもそもLorentz収縮するのは両端を静止系の同時刻で見たときの運動系の長さです。

 

今の場合,列車の方のS'系の時刻が同時刻t'であり,列車からみると静止系の方が(-v)で運動しているのですから,列車のS系での長さはγLなのに,それをS'系から見るとγL/γ=LにLorentz収縮していると見るのが正しいのですね。

 もしも,静止系で列車の両端をその同時刻tで見ると,Lorentz変換は座標(x,t)と(x',t')の間でx=γ(x'+vt'),かつt=γ(t'+x'v/c2)で与えられます。

 

 前端の座標はx1=γ(L/2+vt1'),後端の座標はx2=γ(-L/2+vt2')であり,また同時刻tはt=γ[t1'+Lv/(2c2)]=γ[t2'-Lv/(2c2)]という変換性を持ちます。

 

 したがって,静止系で見た列車の長さはx1-x2=γL+γv(t1'-t2')=γL-γLv2/c2=γL(1-v2/c2)=γL/γ2=L/γ=L(1ーv2/c2)1/2となって,確かにLorentz収縮した長さL/γ=L(1ーv2/c2)1/2が実現していることがわかりますね。

 

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ファン・デル・ワールスの力と状態方程式

 2006年10/14の記事「零点エネルギーとファン・デル・ワールス力」では,希ガスの原子間に働く引力としてファン・デル・ワールス(Van der Waals)の力が存在すること,

 

 そしてその引力ポテンシャルが(r)=-A/r6(A>0)なる形で与えられることを導きました。

 

 これは希ガスだけではなく,一般に気体分子の分子間力である,と考えることができます。

各気体分子を半径がσの剛体球で近似し,他の分子は決してその半径σより内側には侵入不可能で,衝突しても完全反射されるという等方的モデルを想定します。

 

これは半径σの内部では,そのポテンシャルΦ(r)がΦ(r)=∞(r<σ)となることに相当します。rはもちろん気体の分子間の距離です。

しかし,半径σの外側r>σでは中性の分子間のVan der waalsの引力が働く,Φ(r)=-ε0(σ/r)60>0)であるとします。

 

これを不完全気体の1つのモデルとして,Van der Waalsの状態方程式:(P+a/V2)(V-b)=NkBTを導出しようと思います。

 

ここでNは体積Vの中にある気体分子の個数,Pは気体の圧力,Tはその絶対温度,kBはBoltzmann定数です。

まず,Helmholtzの自由エネルギーをFとすると,圧力Pは,P=-(∂F/∂V)で与えられることがわかっています。

 

そこで,先のポテンシャルΦを用いて統計力学の"状態和=分配関数"を求め,それによってFを計算するという方針を立てます。

 系全体のHamiltonian:Hは仮定によってH=∑pi2/(2m)+∑i<jΦ(rij)で与えられると考えられます。ここでΦ(rij)はi,jの2体粒子間のポテンシャルでrijはi,j間の距離を表わすとします。

 古典近似での状態和をZとすると,F=-kBlogZですが,このZはZ=[1/(N!h3N)]∫exp{-H/(kBT)}dx1dy1dz1...dpxNdpyNdpzN で与えられます。

 

 積分は座標については体積Vの容器の中全体で,運動量については-∞から+∞までの範囲で行ないます。

 

 運動量についての積分は各座標について独立に行なうことができます。

 

 その結果は通常の理想気体と同じなので,Z=(2πmkBT/h2)3N/2Ωとなります。

 

 ここに,ΩはΩ≡(1/N!)∫exp[-∑i<jΦ(rij)/(kBT)]dx1dy1dz1...dxNdyNdzN で与えられる量です。

 Φ(r)はrの増加と共に絶対値が急速に減少する関数です。

 

 今fij≡f(rij)≡exp[-Φ(rij)/(kBT)]-1とおけば,rijが大きくなるとfijは急激にゼロに近づきます。

 

 一方,Ω=(1/N!)∫Π(fij+1)dx1..dzN となります。そして,Π(fij+1)~1+∑fij+..と展開されます。

 

 右辺の第3項以降は小さいので無視するという近似をすれば,Ω~(1/N!){VN+[N(N-1)VN-2/2]∫f12dx1dy1..dz2}~(VN/N!){1+(N/V)2/2}∫f(r)4πr2drとなります。

 この近似では,さらに近似log(1+x)~xによって,F=-kBlogZはF=F0-(NkBT/V)(N/2)∫f(r)4πr2drと書けます。

 

 自由粒子のHelmholtzエネルギー:F0では,

 -(∂F0/∂V)=NkBT(dlogV/dV)=NkBT/Vですから,

 P=-(∂F/∂V)より,PV/(NkBT)~ 1+B(T)/V,

 B(T)=-(N/2)∫f(r)4πr2drと書くことができます。

 

 ここで,B(T)は第2ビリアル係数と呼ばれています。

 一般には,さらに

 PV/(NkBT)=1+B(T)/V+C(T)/V2+D(T)/V3+..

と展開することが可能です。

  

 C(T),D(T)をそれぞれ第3,第4ビリアル係数と呼びます。

 

 しかし,ここではrijが大きくなるとfijは急激にゼロに近づくので右辺第3項以下を切り捨てて第2項までで近似します。

 (T)=-(N/2)∫0{f(r)4πr2dr

 =-2πN∫0{f(r)r2dr

 =2πN∫σ{1-exp[ε0(σ/r)6/(kBT)]}r2dr

 となります。

ここで,{1-exp[ε0(σ/r)6/(kBT)]}

=-∑(σ/r){ε0/(kBT)}ν/ν!なので,

 

B(T)

=(2πNσ3/3)+2πN∫σ{1-exp[ε0(σ/r)6/(kBT)]}r2dr

=(2πNσ3/3)-2πNσ3∑{ε0/(kBT)}ν/[(6ν-3)ν!]

~(2πNσ3/3){1-ε0/(kBT)}です。

 

すなわち,B(T)~ (2πNσ3/3){1-ε0/(kBT)}となります。

そこで,b≡(N/2)(4πσ3/3),a≡(N2/2)(4πε0σ3/3)/(kBT)とおけば,結局,PV/(NkBT)=1+b/V-a/(NkBTV)となり,

NkBT(1+b/V)=V(P+a/V2)です。

 

これの両辺を,(1+b/V)で割り,1/(1+b/V)~1-b/Vと近似することによって,Van der Waalsの状態方程式 (P+a/V2)(V-b)=NkBTが得られます。

ここで,b=(N/2)(4πσ3/3)は大体N個の気体分子による排除体積を示していると考えられます。

また,nを単位体積当たりの分子数n≡N/Vとしuを単位体積当たりの並進運動のエネルギーとすると,

 

-a/V2=(n2/2)∫0{Φ(r)4πr2dr です。

 

これの効果は,理想気体における圧力P=(2/3)uが,不完全気体では,

 

P=(2/3)u-a/V2=(2/3){u-(3/2)(a/V2)}

 =(2/3)[u+(3/2)(n2/2)∫0{Φ(r)4πr2dr]

 

となって,引力ポテンシャルΦ(r)<0 により圧力が低減される意味を持つと考えられます。

そして,係数n2/2は単位体積当たりの2体の組み合わせ:n(n-1)/2 に起因すると考えられますから,項a/V2は圧力P以外の気体分子の凝集力を示していると考えられます。

 参考文献:中村伝著「統計力学」(岩波全書) 原島鮮 著「熱力学・統計力学」(培風館)

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2006年10月16日 (月)

量子力学の交換関係の問題

 久しぶりに問題を出しますが,今回は簡単なのですぐに解答も添えておきます。

 [B,[A,B]]=0 なら[A,f(B)]=[A,B](d/dB)f(B)であることを証明せよ。

という問題です。

 解答は以下の通りです。

 まず,f(B)=Bnのときには,(d/dB)f(B)=nBn-1ですから,

 [A,Bn]=n[A,B]Bn-1となることが簡単にわかります。

 例えばn=2 のとき,[A,B2]=AB2-B2A=AB2-BAB+BAB-B2A=[A,B]B+B[A,B]ですが,[B,[A,B]]=0 なので[A,B]B=B[A,B]です。

 故に,[A,B2]=2[A,B]Bとなります。

 そこで,n=kに対して[A,Bk]=k[A,B]Bk-1が成立すると仮定して数学的帰納法で証明します。

 [A,Bk+1]=ABk+1-Bk+1A=AB・Bk-BABk+BABk-B・Bk

 =[A,B]Bk+B[A,Bk]です。

 これに,[A,Bk]=k[A,B]Bk-1を代入すると,

 [A,Bk+1]=[A,B]Bk+kB[A,B]Bk-1ですが,[B,[A,B]]=0 より,B[A,B]=[A,B]Bですから,

 [A,Bk+1]=[A,B]Bk+k[A,B]Bk=(k+1)[A,B]Bk

 となります。

 よって,n=k+1でも成立するので,帰納法によって

 [A,Bn]=n[A,B]Bn-1 となることが証明されました。

 このことから,f(B)がBの多項式(polymonial)であるときには[A,f(B)]=[A,B](d/dB)f(B)が成立することも明らかです。

 そこでfが解析的であるとして,これをMaclaulin展開してみます。

 すなわち,f(B)=∑ann,an=[dnf/dBn]B=0/n!と展開します。

 このとき,[A,f(B)]=[A,B]∑nann-1=[A,B](d/dB)f(B)となりますから,fがBで展開可能なら[A,f(B)]=[A,B](d/dB)f(B)となります。

 ところで,演算子の関数とかその微分というのは何を意味するのでしょうか?

 この問題での関数の意味は,xを単なる数の変数としたときのf(x)と,その微分式(df/dx)にxの代わりに形式的に演算子Bを代入したものですね。

 一般に級数展開には収束半径:r>0 が存在しますが,演算子Bにノルムを与えるならf(B)=∑ann は,このノルムが収束半径rより小さいなら強収束する,という意味に取れます。

 そしてBのノルムとしては任意に小さい値を与えることが可能ですから,形式的な公式:[A,f(B)]=[A,B](d/dB)f(B)は,

 特異点を除いて無限回微分可能なあらゆる関数fに対して成立すると考えてよいと思われます。

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2006年10月15日 (日)

ガンマ関数の1公式の証明

 T_NAKAさんの阿房ブログに出題されたΓ関数についての問題:

 Γ(s)Γ(1-s)=π/sin(sπ)を示せ。

 について,私も解答を考えてみたのでここに掲載します。

 Γ(s)Γ(1-s)=π/sin(sπ)の証明について,最初から結果を見越してφ(s)=Γ(s)Γ(1-s)sin(sπ)と置き,φ(s)=π(一定)となることを証明する方法があります。

 φ(s)でsをs+1に置き換えると,φ(s+1)=Γ(s+1)Γ(-s)sin{(s+1)π}=sΓ(s){Γ(1-s)/(-s)}{-sin(sπ)}=φ(s)となるのでφ(s)は周期1の周期関数になることがわかります。

 しかも sin(sπ)/s=π-s2/3!+...をφ(s)=φ(s+1)=Γ(s+1)Γ(1-s)sin(sπ)/sに代入してs=0 とおくことによりφ(0)=πが得られます。

 したがって,mが整数ならφ(m)=πです。

 そして,f(s)=2sΓ(s/2)Γ{(s+1)/2}とおくとf(s+1)=sf(s)ですから,Aを定数としてf(s)=AΓ(s)が成立するはずです。

 そこで,Γ(s/2)Γ{(s+1)/2}=A2-sΓ(s)です。この式とこれのsを(1-s)に置き換えたもの:Γ(1-s/2)Γ{1-(s+1)/2}=A2s-1Γ(1-s)とを掛け合わせます。 

 sin(sπ/2)sin{(s+1)π/2}=2-1sin(sπ)なる公式を用いると,φ(s/2)φ{(s+1)/2}=(A2/4)φ(s)=Bφ(s)が得られます。

 この式でs=2kとおくとπφ(k+1/2)=Bπですから,φ(k+1/2)=B(一定)が得られます。

 ところで,Γ(s/2)Γ{(s+1)/2}=A2-sΓ(s)でs=1とおけばΓ(1/2)=A/2ですから,A=2√πとなります。そこでsが1/2の倍数のときもφ(k+1/2)=πですね。

 またφ(s/2)φ[(s+1)/2]=πφ(s)が成立することもわかりました。

 そこで,log{φ(s/2)}+log[φ{(s+1)/2}]=log{φ(s)}+logπですから,log{φ(s)}の2階導関数をψ(s)とおけば(1/4)[ψ(s/2)+ψ{(s+1)/2}]=ψ(s)です。

 sを閉区間[0,1]に限ればψ(s)は連続関数なので有界であり,ある正の数Mが存在して|ψ(s)|≦Mと書けますが,ψ(s)は周期1の周期関数なので,全区間で|ψ(s)|≦Mとなることがわかります。

 ところが,ψ(s)=(1/4)[ψ(s/2)+ψ{(s+1)/2}]なので|ψ(s)|≦(1/4)(M+M)≦M/2です。

 これを繰り返せば,|ψ(s)|≦M/2nがn→∞ でも成立するので,結局ψ(s)=0 です。よってlog[φ(s)]はsの1次関数でしかも周期1の周期関数ということになるのでこれは定数です。

 したがって,φ(s)=π(一定)が得られ,結局Γ(s)Γ(1-s)sin(sπ)=πという式が証明されました。

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2006年10月14日 (土)

零点エネルギーとファン・デル・ワールス力

 希ガスの原子が分極して振動していると仮定して,"2つの同種の中性原子間に働く引力=ファン・デル・ワールス力(ファンデルワールスの力:Van der Waals force)のエネルギーを見積もってみましょう。

 まず,2つの原子の原子核が大きく離れているとして,その一方を原点Oとし,他方の原子核の位置ベクトルをとします。

 

 そして,それぞれの原子の分極ベクトルを1,2とします。

 

 ただし,分極ベクトルとは外郭電子全体の平均位置を始点として原子核を終点とするベクトルです。

 

 一般に,原子番号をZ,素電荷をe>0 とすると分極ベクトルがなら双極子ベクトル=Zeとなります。

 このとき,"相互作用Hamiltonian=2つの同種中性原子の間に働くCoulomb相互作用のエネルギー"は,

  

 H'=Z22(1/||-1/|1|-1/|2|+1/|12|)

  

 と表わされます。

 ここで,R=||,d=||とし,θをのなす角とすれば,

 Rdcosθ=()ですから,1/||

 =1/(R2+d22Rdcosθ)1/2 と書けます。

 

 これはcosθを変数とするLegendre多項式で展開すると,

 1/||=1/(R2+d22Rdcosθ)1/2

 (1/R)∑n=0n(cosθ)(-d/R)n となります。

 そして,d1=|1|,d2=|2|とし,1のなす角をθ1,2のなす角をθ2,と(12)のなす角をθ3とすれば,

 

 [(12)]=(1)-(2) なので,

 |12|cosθ3=d1cosθ1-d2cosθ2 が成立します。

 

 それ故,(1/||-1/|1|-1/|2|+1/|12|)

=(1/R)[1-∑n=0n(cosθ1)(-d1/R)n-∑n=0n(cosθ2)(-d2/R)n+∑n=0n(cosθ3)(-|12|/R)n] と展開されます。

 

 P0(cosθ)=1,P1(cosθ)=cosθ,P2(cosθ)=(3cos2θ-1)/2ですから,n=0 とn=1の項は相殺されて消えてしまいます。

 

そこで,Rが大きいことを考慮して,n=3 以降の項を無視し,ゼロでない最初の項のn=2の項だけを取ると,

 

[(12)-3(1)(2)]/R3 となります。

 

ただし≡(/R)です。

 

結局,近似的に,H'=(Z22/R3)[(12)-3(1)(2)]となります。

 ところで,希ガス原子の質量をmとして,その分極振動を角振動数ω0の1次元調和振動子で近似すると,

  

 H0=p12/m2+mω0212/2+p22/m2+mω0222/2

   =pS2/m2+mω02S2/2+pA2/m2+mω02A2/2

  

となります。

 

 ただし,この表現では,S(12)/√2,A(12)/√2とし,対応して運動量もS(12)/√2,A(12)/√2としました。

 一方,上記の2次の摂動Hamiltonian:

 H'=(Z22/R3)[(12)-3(1)(2)]は,

 

 H'={22/(2R3)}[S23(S)2]-{Z22/(2R3)}[A23(A)2]=-{Z22/(2R3)}P2(cosθS)S2+{22/(2R3)}P2(cosθA)A2となります。

 

 ここで,さらにP2(cosθS)≒P2(cosθA)=C(一定)と近似します・

 こうすれば,トータルのHamiltonian:H=H0H'は,

 H=S2/m2+[mω02(CZ22/R3)]S2/2+pA2/m2+[mω02A2(CZ22/R3)]A2/2となります。

 

 そこで,ω±02±{CZ22/(mR3)}]1/2~ ω0[1±{CZ22/(mR3ω0)}/2 -{CZ22/(mR3ω0)}2/8±...](複号同順)と定義すれば,Hamiltonian:Hは角振動数ω±1次元調和振動子の和で書けます。

 元のH0の基底状態の零点エネルギーは,hc≡h/(2π)(hはPlanck定数)とおくと,(1/2)hcω0×2=hcω0ですが,

 

 Coulomb力の摂動を受けたH=H0H'の基底状態の零点エネルギーは,

 (1/2)hc-+ω+)≡hcω0ΔUとなります。

 

 ただし,相互作用エネルギー:ΔUはΔU≡-hcω0{CZ22/(mR3ω0)}2/8=-A/R6(A>0)です。

 

 これは,中性原子同士が引き付け合う距離の6乗に反比例するファン・デル・ワールス(Van der Waals)の引力です。

 

 ここでは,中性原子間の引力としてVan der Waals力を紹介しましたが,通常はむしろ電気的に中性な気体分子の分子間力を与えるものとして知られています。

 参考文献;キッテル「固体物理学入門:第6版」(丸善), べシィック・スミス共著(町田一成訳)「ボーズ・アインシュタイン凝縮」(吉岡書店),犬井鉄郎「偏微分方程式とその応用」(コロナ社)

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2006年10月13日 (金)

超弦理論テキストにおける計算ミス

 ちょっとブログネタに困ったので,いささか僭越ながら超弦理論(superstring theory)について勉強している私のノートの中から,英語のテキストで計算ミスと思われる部分の修正について書いてみます。

問題の超弦理論のテキストは,1999年7月から2000年9月頃まで読んでいて,最近また再読を始め,またp.276でスピン群の表現の理解のために私の読書がストップしている本です。

 

それは,M.B.Green,J.H.Schwarz & E.Witten 著「Superstring Theory,(vol.Ⅰ)」というテキストです。この中の計算ミスがちょっと気になったので,ここで指摘しておこうと思います。

 

問題の箇所はChapter.4(第4章)Worldsheet Supersymmmetry in string theoryの部分です。

 

第4章でボソン弦にフェルミオン・パートナーを加えたもののうち,時空次元がD次元のNS型の弦での光錐(lightcone)ゲージにおいて,弦の角運動量を示すJμν=lμν+Eμν+Kμν=Lμν+Kμνのうち,ボソン部分の交換関係の式が間違っていると思ったのです。

 

すなわち,p.213の(4.3.17)の表式[Li-,Lj-]=-(p+)-2mΔm-miαmj-α-mjαmi)において,(4.3.18)式ではΔm=m(D-2)/8+(1/m)[2a-(D-2)/8]が与えられているのですが,これが私のチェックした計算と異なっています。

私の計算によると,Δm2=-[(D-2)/8](m3-m)+2m2-2ma+2m2(m-1)=[-(D-2)/8+2]m3+m[-2a+(D-2)/8]より,-Δm=m(D-18)/8+(1/m)[2a-(D-2)/8]となりました。

 

私は自分の計算の方が正しいと信じて,以下読み継いでいます。

フェルミオン部分の交換関係については,[Ki-,Kj-]=(p+)-2m-miαmj-α-mjαmi)なので,いずれの表式でもD=10(時空が10 次元)でa=1/2のときに,正しい交換関係[Ji-,Jj-]=0 が得られます。

 

D=10,a=1/2でアノマリー,あるいはゴーストが消えるのは,どちらの計算結果でも同じなので,まあ理論全体にとっては全く問題ないのですが,ちょっと気になるミスだと私は思ったので,書いてみました。

第2章(chapter.2)のボソン弦における同様な式ではチェックの結果,計算に間違いはなくD=26(時空が26次元),かつa=1でアノマリーあるいはゴーストが消えます。

  

ボソン弦だけでは基底状態にタキオンが現われるのが欠点ですが,スーパーストリング(超弦)ではタキオンは現われず,基底状態のモードの質量が ゼロになるのがいいところですね。

 

そういえばポルチンスキー(Polchinski)もせっかく高価な洋書2冊「String TheoryⅠ,Ⅱ」を買って読み始めた矢先に日本語訳の「ストリング理論」が出版されて,私はやはり安易な道に走ってしまいました。

 

参考文献:M.B.Green.J.H.Schwarz&E.Witten「Superstring theory」vol.Ⅰ,Cambridge universal press 

 

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2006年10月12日 (木)

算術幾何平均と楕円積分

 今日はちょっとマニアックですが算術幾何平均と楕円積分との関係について述べてみたいと思います。

 まず,算術幾何平均(Aeithmetic geometric mean)とは何か?という定義から始めるとa>0,b>0 の場合には次のように定義されます。

すなわち,a0=a,b0=b,an+1(an+bn)/2,bn+1(ann)1/2によって算術平均と幾何平均の交互の数列{an},{bn}をつくります。

 

すると,仮にa≧bならnn+1n+1nであり,b≧aならann+1n+1nなので,2つの数列は共に上下に有界です。しかも単調増加,または単調減少なので共に収束します。

 

{an},{bn}のn→ ∞での極限値をそれぞれα,βとすると,α=(α+β)/2,β=(αβ)1/2より,α=βとなります。この極限値α=βをaとbの算術幾何平均と定義し,これをM(a,b)と書くことにします。

一方,第1種の楕円積分(Elliptic integral)をF(φ,k)≡∫0φdφ/(1-k2sin2φ)1/2で定義します。

 

ここで,x=sinφとおくと,dx=cosφdφ,or dφ=dx/(1-x2)1/2ですから,F(φ,k)=∫0xdx/{(1-x2)(1-k22)}1/2とも書けます。

 

 この積分をu(x)とおくと,ksinφがφ=2π=(π/2)×4の周期を持つことに対応して,u(x)の逆関数x(u)は,2つの定積分:

  

K=∫01dx/{(1-x2)(1-k22)}1/2,

K'=∫01dx/{(1-x2)(1-k'22)}1/2

 

から決まる周期:4Kと2iK'を持つことを確かめることができます。

ただし,k'2=1-k2です。

本記事での目的は,1/M(1,k')=2K/π,かつ 1/M(1,k)=2K'/πを示すことです。

 

 結果としてk=√2,k'=iを代入したとき,ω≡F(π/2,i)

=∫0π/2dφ/(1+sin2φ)1/2=∫01dx/(1-x4)1/2とおけば,

ω=(π/2)/M(1,√2)が示されます。

 

つまり,レムニスケート(Lemniscate)積分:

0π/2dφ/(1+sin2φ)1/2=∫01dx/(1-x4)1/2の値が

1と√2の算術幾何平均に等しいことがわかります。

もっとも,1/M(1,k')=2K/π,k'=i によって,

(π/2)/M(1,i)=F(π/2,√2)=∫0π/2dφ/(1-2sin2φ)1/2

=∫01dx/{(1-x2)(1-2x2)}1/2の方を示すのには,算術幾何平均を正の実数だけでなく複素数の範囲まで拡張する必要があるので,ここでは割愛します。

 さて,(π/2)/M(1,√2)=ω≡F(π/2,i)に対して,Gaussの2つの証明を紹介しましょう。

まず,1つ目の証明は,M(λa,λb)=λM(a,b)=λM(an,bn)なる性質から,

 

等式:M[1+2t/(1+t2),1-2t/(1+t2)]

=M[(1+t)2,(1-t)2]/(1+t2)=M(1+t2,1-t2)/(1+t2)

が得られることから出発します。

  

一方,M(b,a)=M(a,b)より,M(1+k,1-k)はkの偶関数なので,

1/M(1+k,1-k)=1+a12+a24+..と展開可能とします。

 

k=2t/(1+t2)とすると,M[1+2t/(1+t2),1-2t/(1+t2)]

=M(1+t2,1-t2)/(1+t2)から,

 

1+a1[2t/(1+t2)]2+a2[2t/(1+t2)]4+..

(1+t2)(1+a14+a28+..)です。

 

両辺を(1+t2)で割って2tを掛けると,

2t/(1+t2)+a1[2t/(1+t2)]3+a2[2t/(1+t2)]5+..

2t(1+a14+a28+..) が得られます。

左辺をtのベキ級数に展開するため,1/(1+t2)=1-t2+t4-t6+..,(1+t2)-3=∑m=1[(-1)(-3-1)...(1-3-m+1)t2m/m!] etc.

を用います。

 

そして,上の恒等式の両辺のtのベキの係数を比較すると,

 0 =1-4a19a116a225a236a3=..

 =(2n-1)2n-1(2n)2n が得られます。

 

よって,n[1・3・5・..(2n-1)/{2・4・6・...(2n)}]2

 [1・3・5・..(2n-1)/(2n!)]2 です。

この結果をまとめると,

1/M(1+k,1-k)=∑n=1[1・3・5・..(2n-1)/(2n!)]22n

となります。

 

一方,1/(1-k2sin2φ)1/21+(1/2)2sin2φ+(1/2)2(1・3)4sin4φ/2!+(1/2)3(1・3・5)6sin6φ/3!+..と展開できます。

  

そして,∫0π/2sin2nφdφ=[1・3・5・...(2n-1)/ (2n!)](π/2)ですから,結局,(2/π)K=n=1[[1・3・5・...(2n-1)/(2n!)]22nとなることがわかります。

以上から,1/M(1+k,1-k)=(2/π)Kですが,M(1+k,1-k)=M[1,(1―k2)1/2]=M(1,k')ですから,1/(1,k')=(2/π)Kです。

 

kをk'=(1―k2)1/2で置き換えれば,1/M(1,k)=(2/π)K'も得られ,

結局(π/2)/M(1,√2)=ω≡F(π/2,i)=∫dφ/(1+sin2φ)1/2

=∫dx/(1-x4)1/2が示されたことになるように見えます。

しかし,実は上に求めた級数の収束半径は1なので,Lemniscate積分には適用できません。

 

そこで,Gaussの与えたもう一つの証明を見てみましょう。

 

まず,次の積分I(a,b)を,

I(a,b)≡∫0π/2[dφ/(a2cos2φ+b2sin2φ)1/2

で定義します。

 

この積分において,sinφ=2asinφ'/{a+b+(a-b)sin2φ'}によって変数変換をして置換積分をすると,

 

I(a,b)≡∫0π/2dφ/(a2cos2φ+b2sin2φ)1/2

=∫0π/2dφ'/(a12cos2φ'+b12sin2φ')1/2=I(a1,b1)

 

となります。

 

もちろん,1(a+b)/2,b1(ab)1/2です。

(a,b)=I(a1,b1)=I(a2,b2)=...=I(an,bn)=...ですから,n → ∞ に対してI(an,bn) → I(a,b)です。

 

ところが,an → M(a,b),bn → M(a,b)より,

 

I(a,b)=I(M(a,b),M(a,b))

=1/M(a,b)]∫0π/2dφ/(cos2φ+sin2φ)1/2

=π/[2M(a,b)] が得られます。

 

この結果から,a=1,b=kにより,やはり1/M(1.k)=(2/π)K'が得られます。

 

上に証明された結論に基づいて,ω≡F(π/2,i)=∫0π/2dφ/(1+sin2φ)1/2=∫01dx/(1-x4)1/2を計算する代わりに,

 

実際にエクセル(Excel)を使って算術幾何平均を計算することによって(π/2)/M(1,√2)を求めました。

 

これは,10回程度の繰り返し計算でほぼ収束して,ω=1.311028777146なる値になることがわかりました。

 

 話は変わりますが,こうしたことに興味を抱いたのは斉藤利弥 著の「線形微分方程式とフックス関数(ポアンカレ)を読む)」(河合文化教育研究所)に興味を持ったためです。

zの1価解析関数F(z)があるとき,これが変換群Gに属する任意の変換Tに対してF(Tz)=F(z)を満たすなら,この関数FをGに対する保型関数と呼びます。

 

そして,特に群Gがメビウス変換=1次分数変換T=(az+b)/(cz+d)の集合で,これがある条件を満足するときに構成されるFuchs(フックス)群であるときにはGに対する保型関数をFuchs関数と言います。

特に,2階線形常微分方程式d2y/dx2 =Q(x)yの2つの独立な解f(x)とφ(x)の比をz(x)=f(x)/φ(x)とします。

 

 複素平面上の1点xからxに戻る有向閉曲線で作られるホモトピークラスの作る群である基本群から派生する変換に対して閉曲線1回転でxに戻ったとき,t(f(x),φ(x))が変換される1次変換の2行2列の行列をモノドロミー行列(Monodromy matrix)といいます。

 

この行列の作るMonodromy群の行列で,z(x)=f(x)/φ(x)がメビウス変換を受けても,xの方は1回転で単に元に戻ることから,

 

z(x)の逆関数x(z)が1価ならメビウス変換群の保型関数になることがわかります。

こうしたFuchsの発想から,係数に確定特異点のある線形常微分方程式の解の多価性と関連してFuchs関数を分析することで,壮大なPoincare'(ポアンカレ)の世界が広がります。

 

これの第1歩として,今日のトピックである算術幾何平均と楕円関数の話題があるわけです。私はまだ端緒に付いたにすぎません。

参考文献;斉藤利弥著「線形微分方程式とフックス関数(ポアンカレを読む)」(河合文化教育研究所), J.J.グレイ著「線形微分方程式と群論」(シュプリンガーフェアラーク東京), 久賀道郎著「ガロアの夢」(日本評論社), 高木貞治著「近世数学史談」(共立出版)

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2006年10月11日 (水)

ボーズ・アインシュタイン凝縮とゼータ関数

 今日はボーズ・アインシュタイン凝縮(Bose-Einstein condensation)とゼータ関数(Zeta)の間の,ほんの少しの関係について述べてみます。 

 量子統計力学によれば,非常に多数個(N個)のボーズ粒子(Boson)のみからなる系が絶対温度Tの平衡状態にあるとき,

  

エネルギーがεrの状態rに存在する平均粒子数nrはBose-Einstein分布:

 n r[exp{(εr-μ)/(kBT)}-1]-1で与えられます。

 

 そして,系の最低のエネルギー状態はεr0 ですから,粒子数rが負になるという有り得ない状況にならないためには,exp{-μ/(kBT)}は常に1より小さくない必要があります。

  

 そこで,Bose粒子では,化学ポテンシャルμは常にゼロ以下である必要があります。

 そして,状態のエネルギー準位密度をg(ε)とすれば,この温度での化学ポテンシャルは,∫0[exp{(ε-μ)/(kBT)}-1]-1g(ε)dε=Nという条件から決まります。

系の体積をV,Planck定数をhとすると,位置座標で積分した後の運動量p空間での半径pの運動量球殻の位相体積要素は4πVp2dpです。

 

量子統計力学の意味では,位相体積:ΔqxΔqyΔqzΔpxΔpyΔpz=h3につき1つの割合で状態が存在するので,運動量球殻の位相体積要素中の状態密度は4π(V/h3)p2dpで与えられます。

 

粒子が自由粒子であると考えると,エネルギーと運動量の関係はε=p2/(2m),またはp2=2mεですから,p2dp=(2mε)1/2mdεより,

  

エネルギー準位状態密度は,g(ε)=2πV(2m/h2)3/2ε1/2で与えられることがわかります。

したがって,(2πV/h3)(2mkBT)3/20[x1/2/{exp(x+α)-1}]dx=Nによってαが決定されます。α=-μ/(kBT)≧ 0 です。

 

1/{exp(x+α)-1}=exp{-(x+α)}/[1-exp{-(x+α)}]=∑n=1[exp{-n(x+α)}]なる級数展開を利用すると,

 

0dx[x1/2/{exp(x+α)-1}]=(π1/2/2)F(exp(-α))

 ≡(π1/2/2)∑n=1{exp(-nα)/n3/2} となります。

 

なぜなら,∫01/2exp(-nx)dx=2∫02exp(-nu2)du

=-(d/dn)(π/n)1/2=π1/2/(2n3/2)だからですね。

そして,関数F(exp(-α))≡∑n=1{exp(-nα)/n3/2}が最大値を取るのは明らかにα=0 のときです。

  

すなわち,F(1)=∑n=1(1/n3/2)=ζ(3/2)≒2.612となるときです。

関数ζはゼータ関数です。

そして,先のαを決めるための条件は(2πmkT/h2)3/2F(exp(-α))=(N/V)という形です。

 

そこで,温度Tを下げてゆくとF(exp(-α))が増加するしかないので,αは正の値からゼロに近づいてゆくわけですが,ゼロを超えて負になることはできません。

  

それ故,極限,つまりα=0 での臨界温度をTcとおけば,規格化条件は,

(N/V)=(2πmkc/h2)3/2ζ(3/2)≒2.612(2πmkc/h2)3/2

となります。

もしも,このTcよりさらに温度Tが低くなれば,もはや

(2πmkT/h2)3/2F(exp(-α)e)=(N/V)という式からは

物理的に意味のある化学ポテンシャルは見つかりません。

 

しかし,実は化学ポテンシャルμが負の値からゼロに近づくとき,

"エネルギーの最低状態=(ε00 のゼロ状態)"を占める粒子数0は,

0[exp{-μ/(kBT)}-1]-1によって無限大に近づきます。

この矛盾が生じた原因は,粒子の総数が∑rr=Nであるという条件式の総和:∑を積分:∫dεに置き換えたためと考えられます。

 

つまり,エネルギー準位密度:g(ε)=2πV(2m/h2)3/2ε1/2ε→ 0 でゼロとなります。

 

このため,正味の無限大へと発散する項:g(ε)[exp{ε/(kBT)}-1]~ const.ε-1/2が,積分∫dεε-1/2の結果で消えるとしてしまったためです。

 

現実には,限りなく大きくなるはずのゼロ状態の粒子数の項が見落とされて切り捨てられたのが原因と解釈されます。

そこで,∑rrからゼロ状態の項だけを抜き出し残りを積分で置き換えるという操作をすれば,

  

(2πmkT/h2)3/2F(exp(-α))=(N/V)の代わりに,

0+V(2πmkT/h2)3/2F(exp(-α))=N なる式が得られます。

 

これが改めてαを決定する式になります。

ところで,0が大きくなって,これが無視できず,Nと比較できるオーダーになるのは,01/{exp(-α)-1}~ Nのとき,つまりα~ (1/N)となるときです。

 

このとき,F(exp(-α))~F(1)=ζ(3/2)≒2.612 と見なしていいですから,0+V(2πmkT/h2)3/2F(exp(-α))=Nなる条件式は,

  

より簡単な温度だけによる表式で,0=N[1-(T/Tc)3/2]と表わすこともできます。

例えばBose気体などでは臨界温度Tcから下では多くの粒子がなだれ的にゼロ状態へと落ち込んでゆくことになりますが,これを理想Bose-Einstein凝縮と言います。

 

液体ヘリウム:4Heでは上式による臨界温度Tcの計算値は,2.13Kですが,これは実際の液体ヘリウムで超流動や超伝導を起こす転移温度:2.19Kと極めて近い値です。

 

実際,現在の理論では超流動や超伝導の主因はBose-Einstein凝縮であるとされています。

電子のようなフェルミ粒子(Fermion)では粒子数分布はFermi-Dirac分布に従うので,こうした凝縮は起きないはずです。

 

しかし,実際の物質中では陽イオンの格子振動を量子化したフォノン(phonon)という量子の交換によって,電子同士にも電荷による斥力を上回る引力が働くため,Cooper対という電子対が構成されることがあります。

 

この電子対は複合粒子としては1つのBose粒子なので,低温でBose-Einstein凝縮を起こし,そのために超伝導が起こるとされています。

 

これは有名なBCS理論(Bardeen-Cooper-Schriefer)ですね。

 

なお,ζ(3/2)=∑n=1(1/n3/2)の近似値をパソコンで計算してみましたがエクセル(Excel)だと1万項の和をとっても2.6に到達しませんでした。

 

そこで,CompaqのVisual-Fortranで計算プログラムを作り,倍精度で10億項まで和をとったところ,

  

項:1/n3/2の大きさが10-14程度のところでζ(3/2)~2.6123121という非常に良い近似値を得ました。

 

参考文献;中村伝著「統計力学」(岩波全書)

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2006年10月 9日 (月)

非共変ゲージの非局所性(電磁場)

今日は電磁気学のごく軽い話題を一つ述べてみましょう。

 

真空中のMaxwell方程式において,電場を,磁場をとするとき,

電磁場のスカラーポテンシャルをΦ,ベクトルポテンシャルを

とすれば,=∇×,=-∇Φ-∂/∂tと書けます。

 

 もしも,非共変ゲージ(gauge)であるCoulombゲージ:=0 を

 採用するなら,例えばΦの満たすべき方程式は,∇=ρ/ε0より

 ∇2Φ=-ρ0というPoisson方程式になります。

 

 これを解くためには,"2G=δ3()を満たし無限遠でゼロとなる

 球対称なG()=Green関数がG()=[-1/(4πr)]で与えられる

 こと"を利用します。

 

 G()を用いれば,2Φ=-ρ0の解である一般的な

 スカラー・ポテンシャルは,

 Φ(,t)=(1/4πε0)∫d3'[ρ(',t)/|'|]

 で与えられることがわかります。

  

 これは,静電Coulombポテンシャルと同じ形になっていて,

 見かけ上は何の問題もないように見えます。

 

 しかし,実は定常的で電荷密度が時間的に一定:

 ρ(,t)=ρ()の静電場とは異なり,電荷密度ρに時間t

 が含まれていることに気付きます。

 

 そこで,一見したところ,右辺の∫d3'の積分により,時刻t

 での'電荷密度ρ=ρ(',t)の瞬間の変化が即座に,

 つまり超光速でスカラーポテンシャルΦ(,t)に反映される

 ことになります。

 

 それ故,このポテンシャルは"相対論を破っている=非局所的

 である(超光速である)"ことになり,結果,物理的に因果律と矛盾

 するように見えます。

 

 しかし,スカラーポテンシャルΦは観測可能量ではなく,観測

 される量で,このΦと関係あるのは電場=-∇Φ-∂/∂t

 のみですから,問題ないことがわかります。

 

 すなわち,電場はゲージ変換の不変量ですから,非共変な

 Coulombゲージを取ろうと,相対論的に共変なゲージ,例えば

 Lorenzゲージ:∇-(1/c)(∂Φ/∂t)=0 を取ろうと, 

 =-∇Φ-∂/∂tは全く同じ値の電場を与えます。

  

 見かけ上は,相対論を破っている,非局所的であるように

 見えても,観測される量という意味では相対論との矛盾はない

 といえるわけです。

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2006年10月 8日 (日)

WKB近似,ハミルトン・ヤコービ方程式,経路積分

今日は量子論におけるWKB近似が,なぜ準古典近似と呼ばれるのか,を解析力学のハミルトン・ヤコービ(Hamilton-Jacobi)の方程式と関連付けて説明し,さらに経路積分との関連についても手短かに述べてみたいと思います。 

 まず,古典力学の力学系での一般化座標をqr(r=1,2...n)とし,系を記述するLagrangian(ラグランジアン)をL(,d,t)とします。

 

 ここで,はqr全体を総称しddotの時間による微分:qrd≡(dqr/dt)の全体を意味します。

 さらに,pr≡(∂L/∂qrd)を一般化運動量と定義します。

 

 このr=(∂L/∂qrd)を解いてrdrとprの関数で表わしたものを,式:Hrrd-Lの右辺のqrd に代入したものを系のHamiltonian:H(,,t)と定義します。

 

 このとき,元々のNewtonの運動方程式は,これをD'Alembertの原理(D'Alembert)で加工して一般化し,一般化座標の方程式に変換したn個のEuler-Lasgrange方程式:[d(∂L/∂qrd)/dt]-∂L/∂qr0 に取って代わられます。

 

 さらに,rd≡(dqr/dt)=(∂H/∂pr),prd≡(dpr/dt)=-(∂H/∂qr)なる形の2n個の1階微分方程式=Hamiltonの正準方程式に変換されます。

 ほとんどのH(,,t)では,一般化座標の変数pr,qrを計算に都合がいいような新変数Pr,Qrに変換して,新しいハミルトニアンとしてK(,,t)を作り,Hamiltonの正準方程式が形としてそのまま保存されるようにできます。

 

 つまり,rd=(∂H/∂pr),prd-(∂H/∂qr)がrd≡(dQr/dt)=(∂K/∂Pr),Prd≡(dPr/dt)=-(∂K/∂Qr)と同値になるようにできます。こうした変換を正準変換と呼びます。

 このとき,新変数による新しいLagrangianをL'=∑Prrd-Kと書けば,元のLagrangian:L=rrd-Hとの間に,ある関数Wが存在して

L=L'+(dW/dt)なる等式が成り立つはずです。

 

 これは,変換の下で理論が不変に保たれるための必要十分条件です。

 

この結果,rrd-H=∑Prrd-K+(dW/dt)と書けます。

 

 関数W は,tの他には,,,の4n個の変数の関数ですが,このうちで独立な変数は2n個だけですから,例えばW=W(,,t)と独立変数を選んでみます。

 

 このときは,dW=∑prdqr∑QrdPr(K-H)dtなる式によってpr=∂W/∂qr,Qr=∂W/∂Pr,K=H+∂W/∂tとなります。

 次に,特に変換によって特異になる危険性を犠牲にしてもHamiltonian:Kが恒等的にゼロになる,つまりK≡0 となる特別な正準変換があったら,と想定してみます。

 

 このときには,Hamiltonの正準方程式は,Prd≡(dPr/dt)=0 ,rd≡(dQr/dt)=0 となり,座標点は全て時間的に静止していてPr=αr(定数),r=βr(定数)とすることができて最高に好都合です。

 

 そして,このとき元の正準変換に戻ってみると,

(,,t)=(β,α,t),(,,t)=(β,α,t)

となり,n個の積分定数または初期条件を含む解が求まるわけです。

 

 つまり"一般化座標の時間的変化=軌道"は全て決まる,あるいは問題は完全に解ける,ことになります。

 そして,W=W(,,t)=W(,α,t),pr=∂W/∂qrr=∂W/∂αrと書くこともできます。

 

 そこで,逆にこうした都合のいい関数Wを求めるための方程式は,

 H+∂W/∂t=K=0 ,つまり,H[,∂W(,t)/∂q,t]+∂W(,t)/∂t=0 で与えられると考えます。

 

 そして,微分方程式:H+∂W/∂t=0 を解くことによって,積分定数αを含むW(,α,t)が得られると考えることもできるわけです。

 

 この方程式:H+∂W/∂t=0 をHamilton-Jacobiの偏微分方程式と呼びます。

 特にHamiltonian:Hが時間tを陽には含まないときは,Hは固定した,に対しては時間的に一定となるので,H(,)=E (定数)と書くことができます。

 

 Hがtを陽に含まない場合には,Noether(ネーター)の定理により,右辺の定数Eがいわゆるエネルギーであり,時間的に変化しない保存量であることはよく知られた事実です。

 

 このとき,H(,)=Eにより,Hamilton-Jacobiの偏微分方程式:H+∂W/∂t= 0 はW(,α,t)/∂t=-E (一定)となりますから,

 W(,α,t)=S(,α)-Etと書いてよいことになります。

 

 pr=∂W/∂qr=∂S/∂qrなので,結局(,∂S/∂)=E (ただし=∂S/∂)と表現できて,方程式は少し簡単になります。 

こうしてHがtを陽に含まない場合,波動光学からのアナロジーでWが一定の面を,ある力学的波動の位相(phase)が一定の面を表わすものであると考えてみます。

 

W=(S-Et)という量から,"Sと同じ単位=(エネルギー×時間)"を持つある比例定数:hcを用いて,単位のない変数(W/hc)={(S/c)-(E/hc)}を作ります。

  

これを位相として,ω=E/hcを角振動数(ω=2πν)とするような波動を考えることにし,その波動を表わす量をψと定義します。

 

すなわち,ψ=Aexp(iW/c)=Aexp[i{(S/c)-ω}t]とします。

ただし,ω≡E/hcです。つまり,E=hcω=hνです。

 

特に1変数のみの系では,=∂S/∂=∇Sから,

ψ=(∇S)ψ=(-ic∇ψ)となるので,記号的には

~(-ic)と見なすことができます。 

cをPlanck定数=(h/2π)と同一視すれば,ψは量子力学の波動関数に対応し,Hamilton-Jacobiの偏微分方程式は正にSchödinger(シュレーディンガー)方程式になります。

 

古典力学と量子力学との間には大きな谷間(gap)があり,それぞれが独立な"法則=公理"を持つ独立な理論なので,古典力学から何の飛躍もなく量子力学を導くことは不可能です。

 

しかし,20世紀初頭の前期量子論の段階では上記のような推論がなされていたと思われます。 

WKB近似という量子力学の問題を解く1つの近似法:つまり,"時間を含まない定常波動関数u(x)をexp[iS(x)]なる形式で表現して近似するという方法"が準古典近似(semi-classicl approximation)という名称で呼ばれているのはこうした理由からでしょう。

ところで,上述のS(,α)をLagrangian:Lで表わすと,

S=∫L(,d,t)dtと書けます。

 

これは,謂ゆる作用(action:作用積分)と呼ばれる量です。

 

つまり,Sは"系の運動はの変分δに対する作用Sの変分がゼロ:

δS=0 となる,またはSが停留値を取る,という条件で与えられる"という1つの基本的な"変分原理=最小作用の原理"の源となる作用関数になっています。

そこで,量子力学でFeynmanの経路積分を用いた理論展開で,時間発展の確率振幅が作用:Sによって,<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|i>=A∫exp[(i/c)S((t))]と表現されることが思い出されます。

 

私見では,これはがあらゆる分岐した経路にわたる積分であるという意味で,多世界解釈にもつながると考えているのですが,それはさておき,経路積分の意味を説明します。

 

 

この経路積分の公式は,作用SをS((t)) ~ Δt∑jNL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]と分割し,中間状態の射影演算子|(tj)><(tj)|を考えたとき,中間状態の完全性を利用すれば得られます。

 

中間状態の完全性とは,あらゆる座標の全空間での"総和=積分"が1になること,∫d|><|=1であることです。

 

よって,遷移確率振幅<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|iを時間分割してj+1|exp{-(i/c)HΔt}|j>と細分化した際,各細分時刻tjにおいて,∫d(tj)|(tj)><(tj)|(=1)を挿入しても結果は変わりません。

 

そして,各々の細分では<j+1|exp{-(i/c)HΔt}|j=<j+1|exp{-(i/c)(tj){(tj+1)-(tj)}+(i/c)ΔtL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]|j>と表現できます。

 

ここで,j(tj),Δt≡(tf-ti)/Nであり,ti≡t0<t1<t2<...<j<tj+1<...<t≡tf です。

 

結局,遷移確率振幅は<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|i>=ΠjNj+1|exp{(i/c)ΔtL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]|j>となります。

 

この式の右辺でN → ∞とした極限が経路積分です。

そして,この経路積分の計算結果においては,被積分関数の指数関数の中で最小作用の原理を満たすδS=0 の部分の寄与が最大になります。

 

つまり,古典的な軌道に相当する経路が"遷移確率振幅=伝播関数(propagator)"に大部分の寄与をすることがわかっています。

  

これは,古典論と量子論の隙間(gap)を埋める話として一つの注目に値する論点であると考えられます。

    

参考文献:大貫義郎著「解析力学」(岩波書店) 並木美喜雄著「解析力学」(丸善) 深谷賢治著「解析力学と微分形式」(岩波書店)

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2006年10月 6日 (金)

イジメ自殺に思う

 ニュースによると去年の今頃,北海道で女子中学生が学校の教室で首吊り自殺をはかり,その後死亡したらしいのですが,そのとき明らかに"いじめられた。"という内容の長い遺書を残していたということです。

 しかし,当地の教育関係者が,実質的にそうした事実を握りつぶしたと言う報道がなされています。

 まあ,厳密に言えば証拠はすべて情況証拠であり,たとえ遺書があろうと,それに本心が書かれるとは限らないわけです。

 自殺の真意は本人以外には知り得ないとは思いますが,法廷ではないので証拠不十分などという理由でイジメがあったかどうかをも本気で調査せず,"事なかれ"を決めるのはいかがなものかと思います。

 一般論で言うと日本社会とかアメリカの田舎などでは,他人と同じであることが徳であるとされ,少しでも個性的であって突出した者はそれが優れてであろうと劣ってであろうと関係なく集団から疎外されパージを受けるという傾向が見受けられます。

 かつての映画「イージー・ライダー」ですね。個人主義の国を標榜するアメリカですらそうですから,ましてや日本ではなおさらでしょう。

 パージを受けたり追い詰められた者の行動としては,それが外に向かうと"窮鼠猫を噛む。"というわけでアメリカなどでは拳銃の乱射などとなり,日本では長じて後の大阪の池田小学校事件や奈良の女児殺害事件となるなどと推察されます。

 一方,内に向かうと自殺する,ということになる場合も多々であるようです。

 私自身イジメを受けた経験者という立場で考えると,もし殴る蹴るのイジメだったらほとんどトラウマ(=心的外傷)は残らず,また暴力には抵抗することも可能なので,私的にはあまりダメージはありませんが,シカトとか面前での陰口など陰湿なと感じる行為にはどうにも抵抗できません。

 面前での罵倒であれば暴力などで対抗できますが,陰口というのはそれとなく自分のことではないかと仄めかすという意味の罵倒なので,本人には妄想=被害妄想(← "自他共にイヤラシイことと認じていること")と区別できないのがミソです。

 対抗しようとしても,被害妄想だと言われたら逆に自分自身だけが恥を掻いて傷つき,さらにミジメになり,うつ病のようなノイローゼ傾向へと意図的に導かれるわけです。

 殴る蹴るのイジメならストレスのたまった動物にもあることで,人間も動物なのでイジメはある種の種としての免疫活動であり,本能であるとさえ云えると思います。これを絶滅させることはこの世がストレスのないユートピアにでもならない限り不可能なことだと思います。

 つまり,学校とか教室とかが,例えばやりたくもない勉強を無理矢理させられる生徒達と教えたくもないことを教えなければいけない教師という雰囲気と化している場合とか,そうでなくても閉じ込められたニワトリ小屋のような1つのストレス社会となっていると考えることもできます。

 かつて雨続きのときには狭い部屋に大勢で閉じ込められているというストレスのためか,飯場では必ず誰かを対象にしてイジメが起きたと聞いています。

  "閉鎖社会において受けるストレスのため,その生態系にある種のゆがみが生じ,それを除去しようとする免疫反応としてイジメが起こるのであろう。だから,根本的解決法は全員がそのストレスから解放されることしかないだろう。"

 とかいう理屈も考えましたが,まあ,そんな評論家的なことばかり言っていても始まりません。

 いずれにしてもイジメを受けたとすれば,"彼女が皆にとってキモイ"のではなく,"イジメた側が本当にキモイ奴らである",ことは間違いないでしょう。

 明日は我が身だということを肝に銘じて思い知るがいいと思います。

 若いから簡単に自殺できるのかも知れません。

 復讐のために自殺するという意味があるのかもしれませんが,私は自分が死んだのでは決して復讐になるとは思えません。

 歳を取れば取るほど命が惜しくなります。

 生きていて後から思えば"あれくらいのこと"で自殺したらかえって相手の思う壺だと思える時が来たかもしれませんが,渦中にあった本人にとっては"あれくらいのこと"とは思えないほど苦しかったに違いありません。

                           合掌。。。。 

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2006年10月 5日 (木)

原子核のα崩壊の理論(Ⅱ)

 前記事の続きです。

 

 動径波動関数:u(r)(特にuf(r))を具体的に求めるために1次元のSchroedinger方程式に対してWKB近似(準古典近似)を行ないます。

 まず,波動方程式:[-c2/(2m)](d2u/dr2)+[V(r)-E]= 0 において,V(r)=Eを満たすrをrと名付けます。

 

 こうすれば,V(r)は減少関数ですから,r<rではV(r)>E,r>rではV(r)<Eです。

 そこで,r<rの部分を領域Ⅰとして,

 κ(r)≡(1/c)[2m{V(r)-E}]1/2と定義すると,

 

 これはこの領域Ⅰでは常に正の実数で,

 波動方程式は,d2/dr2-κ(r)2=0 です。

 

 同様にr>rの部分を領域Ⅱとして,

 k(r)=(1/c)[2m{E-V(r)}]1/2と定義すると,

 

 これはこの領域Ⅱでは常に正の実数で,

 波動方程式は,d2u/dr2+k(r)2=0 です。

 

 さて,まず領域Ⅱ:謂ゆる振動的領域においてWKB近似を実行します。

 

 平面波の拡張として,u(r)≡eiS(r)とおくことでS(r)を定義すると

 波動方程式d2/dr2-κ(r)2=0 は,

 (dS/dr)2+id2S/dr2=-k(r)2となります。

 

 これを積分すると,形式的に

 S(r)=±∫[k(r')2+id2S/dr'2]1/2dr'を得ます。

 

 ここで,第1近似としてこの式の右辺の被積分関数で項d2S/dr2を無視すると,S(r)~S1(r)=±∫k(r')dr'となります。

  

 さらに,d21/dr2=±dk/drですから,第2近似として

 S(r)~S2(r)=±∫[k(r')2±idk(r')/dr']1/2dr'

 (複号同順)を得ます。

 

 この第2近似のS2(r)をS(r)と同一視する近似を採用します。

 これをWKB近似といいます。

 この近似が正当化されるためには,S2(r)~S1(r)が成立することが必要かつ十分な条件です。

 

 そのためには,|dk/dr|<<k(r)2であることが必要です。

 

 u(r)≡eiS(r)を1次元の波と考えると,λ(r)=2π/k(r)は局所的な波長を意味しますから,この条件は|dλ/dr|<<1です。

 

 あるいは,V(r)が有意な変化をする距離をdとすると,λ(x)<<dという条件に相当します。

 

 いずれにしろ,|dk/dr|<<k(r)2が散乱現象を"準古典近似=WKB近似で表現してもよい"ための条件になります。

 |dk/dr|<<k2の条件下では,さらに

  [k2±idk/dr]1/2~k[1±i(dk/dr)/(2k2)]と近似できるので,

 S2(r)~±∫k(r')dr'+(i/2)ln[k(r)] となります。

 

 以上から,振動的な領域ⅡでのWKB近似解は,

 u(r)=eiS(r)=[k(r)]-1/2exp[±i∫k(r')dr']

 となります。

 

 ここで積分の下限をrに固定します。

 

 方程式が線形なので一般解は線形結合で表わすことができて,

 u(r)=A[k(r)]-1/2cos [ξ2(r)+φ]

と書くことができます。

 

 ξ2(r)は,ξ2(r)≡∫rErk(r')dr'で定義されています。

 次に指数的な領域Ⅰについて,やはりu(r)≡eiS(r)とおくことにより

 S(r)を定義すると,

 

 ほとんど同様な方法によって,

 u(r)=eiS(r)=[κ(r)]-1/2exp[±∫κ(r')dr']

 を得ることができます。

 

 そこで要求される条件として第Ⅰ領域でrの減少する向きに減衰する解を取ると,(r)=A[κ(r)]-1/2exp[-ξ1(r)]となります。

 

 ξ1(r)はξ1(r)≡∫rrEκ(r')dr'で定義されています。

 

 そして,この近似が成立する条件も|dκ/dr|<<κ(r)2です。

 あとはu(r)とu(r)がr=rで滑らかに連結するように全ての不定定数を決めればいいわけです。

 

 ところが,r=rではκ=k=0 なので,そもそもWKB近似が成立する条件は完全に崩れてしまうため,この近似では単に接続させるだけではまずいわけです。

 

 そこでこの折り返し部分で狭い領域Ⅲを考え,その領域では近似的にV(r)を負の傾きを持ちr=rでEを通る直線で近似します。

 

 つまり,V(r)~E[1-a(r-r)] (a>0 )ですね。

 これを解くにはベキ級数解を仮定して係数を比較する手法を用いる必要があるわけで,結局このV(r)に対する動径波動関数u(r)として,厳密には特殊関数の1つであるある種のBessel関数が得られることになります。

 

 これを示すためには長たらしい計算の連鎖が必要なのですが,ここでは省略します。

 

 これは,先に直線近似を仮定しましたが,近似は別に直線でなければならないという明確な理由はなく他の近似をしてもかまわない,という意味で,"本質的でない特別な近似手法に関して真面目に論じる必要はないだろう。"と考えたのがその理由です。

 

 WKB近似の本質は既に述べたと考えられるので,計算結果だけ書くと,

 

 規格化の曖昧さがあるので,AとAはその比だけが決まって

 A2A,また位相の方はφ=-π/4 と決定されます。

 結果をまとめると,u(r)=A[κ(r)]-1/2exp[-∫rrEκ(r')dr'] (r<r),u(r)=2A[k(r)]-1/2cos[∫rErκk(r')dr'-π/4] (r>r)です。

 最後に,規格化条件|uf|2dr=ρf(E)から,uf(r)=u(r)として定数Aを定めることにします。

 

 娘核の重心を中心として十分大きい半径Rを持つ球をとり,その球面上ではf(R)=u(R)= 0 になると仮定します。

 

 r≦RではV2(r) ~ 0 なので,k(r) ~ (2mE/c)1/2=k(一定),f(r) ~ 2Ak1/2cos[k(r-r)-π/4]となります。

 束縛されていないα粒子のエネルギーEはE=c22/(2m)ですから,

 状態密度はρ(E)=dn/dE=(dn/dk)(dk/dE)dE

 =[m/(c2)](dn/dk)です。

 

 2Ak1/2cos(kR+δ)=0 (ただしδ=-kr-π/4 )より,

 kR+δ=(n+1/2)π(nは整数)となるはずですから,

 dn/dk=R/πが得られ,ρ(E)=(mR)/(πc2)

 となります。

 そこで,rER∞κ|uf|2dr=ρf(E)で,

 uf(r)=2Ak1/2cos(kr+δ),ρf(E)=(mR)/(πc2)

 を代入することから,結局,A=[m/(2πc2)]1/2が得られます。

 一方,i(r)の方はV1(r)=-V0(r<R),V1(r)=V(r≧R)から

 直接に解いて,i(r)=Bsin(k0r) (r<R),

 i(r)=Cexp[-κ0(r-R)](r≧R)

 で与えられます。

 

 ここで,k0=(1/c)[2m(E+V0)]1/2,および,

 κ0=(1/c)[2m(V-E)]1/2です。

 定数B,Cについては,r=Rで滑らかに連結する条件と規格化条件から定まりますが,ここではそれを決めることは省略します。

 r=R 付近での動径波動関数として終状態:f(r)

 =[m/(2πc2)]1/2[κ(r)]-1/2exp[-∫rrEκκ(r')dr'](r<r),

 

 始状態:i(r)

 =C exp[-κ0(r-R)](r≧R) の両方が得られました。

 

 これらを実際に,

w=[(2π/hc){hc2/(2m)}2|(duf*/dr)ui-uf*(dui/dr)|2]r=Rに代入してα崩壊の崩壊確率wを計算します。

 

 ここで,duf*/drの計算に際して[κ(r)]-1/2のrによる変動は指数関数の変動に比べごく小さいので,それを無視し,

 

κ(r)としてκ(R)=κ0=(1/c)[2m(V-E)]1/2(一定)を用いることにします。

 このとき,w=C2cκ0,P=exp[-2∫κ(r')dr']=exp[-(2/c)∫RrEκ{2m(2Ze2/r'-E)}1/2dr']となります。

 

 右辺の積分は初等的に実行可能で,

 (2/c)∫RrE{2m(2Ze2/r'-E)}1/2dr'=

[(32mZ24)/(h2E)]1/2{cos-1(R/r)-(R/r)-(R/r)2}1/2}]

となります。

 

 r>>Rなので,右辺の{cos-1(R/r)-(R/r)-(R/r)2}1/2を[π/2-(R/r)1/2]で近似します。

2Ze2/r=Eより,r=2Ze2/Eですから,結局,

P=exp[-{2πe2(2m)1/2/c}(Z/√E)+(4e√m/hc)(ZR)1/2]

となります。

 

半減期と崩壊確率の関係は,

1/2=ln2/w=ln2/(C2cκ0P)ですから,

logT1/2=-logP+const となります。

 

これから,logT1/2a[Z/(√E)]+bと書けることがわかります。

 

この式のパラメータは,a=[2πe2(2m)1/2/c](loge)>0 etc.と陽に表わすこともできますから,結局「Geiger-Nuttallの法則」が理論的に示されたことになります。

 

参考文献;八木浩輔著「原子核と放射」(朝倉現代物理学講座)

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2006年10月 4日 (水)

原子核のα崩壊の理論(Ⅰ)

 原子番号が (Z+2)の放射性核のα崩壊による半減期を T1/2とし,その崩壊で放出されるα粒子のエネルギーをEとすると,これは

  

 logT1/2=a[Z/(√E)]+b 

 

 という関係式でうまく表現されることが知られています。

    

(※α粒子はヘリウムの原子核:24Heなのでα崩壊により原子番号(Z+2)の放射性核は原子番号Zの原子核になります。)

 

 これは,ガイガー・ヌッタル(Geiger-Nuttall)の法則と呼ばれています。

(ここでのlogは常用対数であり自然対数lnではありません。)

 

 このGeiger-Nuttallの法則を説明した有名なジョージ・ガモフ(George Gamow)のα崩壊の理論は,量子力学に特有のトンネル効果という現象を応用した理論です。

 

 これは,定常的な理論で説明されることも多いようですが,ここでは量子遷移を中心とした非定常的な理論とWKB近似によって理論を展開したいと考えます。

 

(※注:WKB近似とは,Wentzel,Kramers,Brillouinによる近似法で,別名:準古典近似とも呼ばれています。※)

 まず,hをPlank定数とし,hc(h/2π)とします。

 

 α崩壊は初期状態:|i>=ψiから終状態:|f>=ψfへの量子遷移であると考えて,崩壊過程に時間を含む摂動論を適用することにします。

 

 摂動論によれば,摂動HamiltonianをH'とするとき,

 最低次の遷移確率wは,黄金律(Golden rule)として有名な式:

 w=(2π/c)|<f|H'|i>|2ρf(E)で与えられます。

 

 ここで,<f|H'|i>は<f|H'|i>≡∫ψf*H'ψi3xなるH'の行列要素で,ρf(E)は終状態fのエネルギー状態密度です。

 以下,簡単のため,α粒子の軌道角運動量がゼロのS波のみを考えることにします。

 

 すると定常状態の波動関数は動径rだけの関数になるので,

 ψ()=[1/(4π)]1/2u(r)/rと置くと規格化は,

 1=∫|ψ|24πr2dr=∫|u|2drと書けます。

 

 そしてH'もrだけの関数であるとすると,

 <f|H'|i>=∫ψf*H'ψi3x=∫uf*H'uidr

 と書けます。

 

 さらにuiはそのままでufのみ,

 ψf()(ρf(E))1/2=[1/(4π)]1/2f(r)/rのように,

 ∫|uf|2dr=ρf(E)と規格化しておけば,

  

 黄金律はw=(2π/c)|∫uf*H'uidr|2と簡単になります。

 原子核の半径(有効レンジ)をRとし,核力とクーロン斥力の合成されたポテンシャルV(r)を,V(r)=V1(r)=-V0(r≦R);(V0>0),

 V(r)=V2(r)=2Ze2/r(r≧R)とモデル化します。

  

 (MKS単位では係数4πε0が面倒なので,c.g.s.単位を取ります。)

 "α粒子=ヘリウム原子核"の質量をmとすると,Schroedinger方程式は,

 rの1次元方程式となって,

 [-c2/(2m)](d2u/dr2)+(V(r)-E)=0 です。

 

 これは,u=ui,V(r)=V1(r),E=Eiと置けば,

 r≦Rにおける束縛状態ui(r)の満たす方程式になり,

  

 u=uf,V(r)=V2(r),E=Efと置けば,

 r≧Rにおける散乱状態uf(r)の満たす方程式となります。

 そして,核力で束縛されている入射α粒子のクーロン障壁によって受ける摂動H'は明らかにH'(r)=V(r)-V1(r)と書けます。

 

 これはr≦Rではゼロであり,r≧Rでは(V2(r)-V1(r))ですから,

 第1近似の崩壊確率はw=(2π/c)|∫Rf*(V2-V1)uidr|2

 となります。

 この崩壊確率wを求める式の積分で,VはSchroedinger方程式から,

 Va(r)ua=Eaa+[c2/(2m)](d2a/dr2) (a=i,f or 1,2 )

となるので,これを代入します。

 

 Ef=Eiであることに注意し,積分を行う際にuのrによる2階導関数を部分積分によって消去して,r=∞ではuもdu/drも消えることを用いると次の表式が得られます。

 すなわち,崩壊確率w=(2π/c)|∫Rf*(V2-V1)uidr|2は,

w=[(2π/c){c2/(2m)}2|(duf*/dr)ui-uf*(dui/dr)|2]r=Rと表現されます。

 

 このことから,ui(r)とuf(r)の動径rが核半径R付近にある,つまりr~Rのときのそれらの関数形を求めることが非常に重要になります。

(つづく)

 

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2006年10月 3日 (火)

ホイヘンスの原理の正当性

 今日は,"光波=電磁波"に関するホイヘンスの原理

 (Huygens' principle)を電磁気学の立場から証明することを

 考えてみます。

 

 線形波について成立すると考えられているHuygensの原理とは,

 

 "ある時刻での先端波面上の各点を源とする波(要素波)全体

 の重ねわせから成る包絡面が,次に続く時刻の先端の波面

 となって波が伝播する。そして,特に波は後戻りすることは

 ない。
 

 という原理・法則です

 (※↓下の説明図はネットで検索した図の流用(無断借用?)

 です。) 

 

  
   

 

  さて,真空中の電磁場,のうちで特に電場=(Ex,E,Ez)の

 成分の1つをψ(,t)とします。

 

 これは波動方程式△ψ-2(2ψ/∂t2),または

 D'Alembert方程式:(△-c-22/∂t2(,t)=0

 の解です。

 

 初期時刻:t=t'における初期条件:ψ(,t')=f(,t')

 および∂ψ(,t')/∂t'=g(,t')を満たす解:ψ(,t)

 を求める問題を,電場ψに対するCauchy問題(初期値問題)と

 いいます。

  

これは,波動方程式に対するGreen関数:

(,t)={1/(4πc)}[δ(r-ct)-δ(r+ct)]/r

を用いるとすぐに解けます。r≡||です。

  

すなわち,ψ(,t)

=∫d3x'[{∂D(',t-t')/∂t}f(',t')

+D(',t-t')g(',t')]

と表現できます。

 

 ただし,Green関数:D(,t)は,

 t=0 でD(,t)=0,∂D(,t)/∂t=δ3()

 を満たすD'Alembert方程式:

 (△-c-22/∂t2)D(,t)=0 の解です。

 

 つまり,D(,t)は,

 f(,0)=0,g(,0)=δ3()のCauchy問題の解になって

 います。

 

 このGreen関数は,D(,t)

 ={1/(4πc)}[δ(r-ct)-δ(r+ct)]/r

 =Dret(,t)-Dadv(,t)という形をしていて,

 

 t>0 のときはD(,t)=Dret(,t),

 t<0 のときはD(,t)=-Dadv(,t)

 です。

 

 そこで,θ(t)をHeaviside関数とすると,

 Dret(,t)=θ(t)D(,t)と書けます。

 これを遅延Green関数と呼びます。

 

 遅延Green関数:Dret(,t)は,

 (△-c-22/∂t2)Dret(,t)

 =-(1/c23()δ(t) なる方程式を満たします。

  

 Huygensの原理は今の時刻の波面をもとにして,今より

 後の波面を 予測する原理ですから,これの証明には,

 遅延Green関数:ret(,t)=θ(t)D(,t)だけを考慮

 すれば十分と考えられます。

  

 さて,閉曲面Sで囲まれた領域Vを考え,その中で定義された

 任意の関数ψ(,t)とφ(,t)に対してGreenの定理を適用

 します。

  

 すなわち,

 ∫dt∫V3[φ(,t)△ψ(,t)-ψ(,t)△φ(,t)]

 =∫dt∫SdS[φ(,t)(∂ψ(,t)/∂n)

 -ψ(,t)(∂φ(,t)/∂n)] です。

 

 ただし,は面積要素dSへの外向き法線方向です。

 

 この式で,'にtをt'に変更した後,

 φ(',t')=Dret(',t-t')

={1/(4πcR)}δ(|'|-c(t-t'))

を代入します。

 

ただし,R≡|'|です。

 

△'ψ=c-2(2ψ/∂t'2),△'φ

=-c-2δ3(')δ(t'-t)ですから,

'とおくとR=||であり,次式を得ます。

 

ψ(,t)

=∫V3x'[Dret(',t-t')

{∂ψ(',t')/∂t'}

+{∂Dret(',t-t')/∂t}ψ(',t')]

 

+(1/4π)∫SdS''[∇'ψ(',t')/R

-(/R3)ψ(',t')-{/(cR2)}{∂ψ(',t')/∂t'}]t'=t-R/c 

です。    

 

これをKirchhoffの積分表示といいます。

 

ここで,Huygensの原理を証明するために,原点Oにある点光源

から真空中に球面波が発射されるとします。

 

すると,時刻tで座標が(r≡||)の観測点Pでの波は,

ψ(,t)=(A/r)exp{-iω(t-r/c)}で与えられます。

 

Aは振幅です。これは一般には位置座標の関数:A=A()ですが,

特に球対称な波であるS波のみを考えてAは定数であるとします。

 

まず,Sで囲まれた領域Vは閉曲面Sの外部空間全体と考えます。

 

Kirchhoffの積分表示の右辺で, 

ret(',t-t')

{1/(4πc)}[θ(t-t')δ(|'|-c(t-t'))]

/|'|を含む第1項では,t-t'>0 かつ

|'|=c(t-t')を満た領域V内の点x'以外の寄与

はゼロです。

 

今のケースでは,VをSの外部領域としているので,Pに到る

点においてV内の点x'には,光源からの光波はまだ全く届いて

ないはずなので,第1項の寄与はゼロです。