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2006年10月21日 (土)

ポアンカレの補題

n次元空間におけるk次微分形式(differential form)(k≦n)を,

ω=(1/k!)ai1 i2..ikdxi1∧dxi2∧..∧dxik

   =∑ai1 i2..ikdxi1∧dxi2∧..∧dxik  とします。

 

ただし,∑はi1i2<..<ik≦nのあらゆる組み合わせの総和を示しています。

 

同じ添字が2度現われる場合には,それについて総和を取るアインシュタインの規約を採用します。

 

そして,このk次微分形式ωの外微分dωを,

dω≡(1/k!)(∂ai1 i2..ik/∂xp)dxp∧dxi1∧dxi2∧..∧dxik

で定義します。

したがって,d(dω)=(1/k!)(∂2i1 i2..ik/∂xp∂xq)dxp∧dxq∧dxi1∧dxi2∧..∧dxikとなります。

 

この式の右辺では,添え字pとqに関して,(∂2i1 i2..ik/∂xp∂xq)は対称なのに対して,dxp∧dxq は反対称です。

 

そこで,d(dω)=-d(dω)となるためd(dω)は消えます。

 

つまり,d(dω)=0 です。

 

これを"完全形式は閉形式である。"と言って"ポアンカレの補題(Poincare'Lemma)"と呼びます。

この補題の逆命題="可縮な領域では閉形式は完全形式である。"ことも"ポアンカレの補題"といわれます。

 

可縮であるとは,簡単に言えば,ホモトピークラスがゼロであるとか,2次元ならその領域内の任意の閉曲線を領域内部で縮めて1点にすることができる,あるいは単連結であることを意味します。

 

(厳密には可縮と単連結は微妙に異なる概念ですが,まあ大体同じであると考えてもめったに問題にはなりません。)

 

今のPoincare'の補題は,"k次微分形式ωが可縮な領域でdω=0 を満たすならその領域ではω=dθとなる(k-1)次微分形式θが存在する。"ことを意味します。

 

この後者のPoincareの補題の成立を証明したいと思います。

 

まず,ωとしては前と同じように,

 

ω=(1/k!)ai1 i2..ik(x1,x2,..,xn)dxi1∧dxi2∧..∧dxik=Σai1 i2..ik(x1,x2..,xn)dxi1∧dxi2∧..∧dxik;とし,dω=0

 

と仮定します。

 

そして,ωにおいて変数をxiからyi(x)に変更したものを,

 

Φ*ω≡∑i1 i2..ik(y1(x),y2(x),...,yn(x))(∂yi1/∂xj1)(∂yi2/∂xj2)..(∂yik/∂xjk)dxj1∧dxj2∧..∧dxjk

 

とします。

 

微分形式とは重積分の中から被積分関数×微分を取り出したものですから,変数変換をしたときに置換積分の規則が成立するのは当然です。

 

今の場合,元々ω=(1/k!)ai1 i2...ik(y1,y2,..,yn)dyi1∧dyi2∧..∧dyikがn次元y空間の微分形式として与えられているとき,

iにyi(x)を代入して,m次元x空間の変数の微分形式に変えたと考える方が普通です。

 

そしてΦ*ωを"引き戻し"と呼びます。

ここで変数を1つ増やして,それをτとしτ∈[0,1] とします。

 

そしてp(x)=τxp と変数変換します。

 

この変換に対して,Φ*ω=∑τki1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)dxi1∧dxi2∧..∧dxik +∑∑'s=1k(-1)s-1τk-1i1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)xsdτ∧dxi1∧dxi2∧..∧dxik となります。

 

ここで∑'s=1kdτ∧dxi1∧dxi2∧..∧dxikの中からdxis だけ落とした総和を示しています。

ところで,Jacobi小行列を,Ji1 i2..ik;j1 j2..jk≡∂(i1,yi2,.,yik)/∂(xj1,xj2,.,xjk)と,その分母の変数xjrの1つをτに置き換えたものも含めたJacobi行列で定義すれば,d(Φ*ω)=Φ*dωです。

 

ただし,Φ*dω=∑[∂i1 i2..ik(y1(x),y2(x),..,yn(x))/∂yp]

i1 i2..ik;j1 j2..jk(∂yp/∂xp)dxpdxj1∧dxj2∧..∧dxjk 

です。

 

そこで,dω≡0 なら,もちろんΦ*dω=0 ですね。

  

したがって,仮定によってd(Φ*ω)=0 です。

 

そこでΦ*ωを外微分したとき,dτ∧dxi1∧dxi2∧..∧dxikの係数も当然ながらゼロでなければならないので,

 

∂[τki1i2...ik(τx1,τx2,..,τxn)]/∂τ=∑(-1)p-1(∂/∂ip){(-1)s-1τk-1i1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)xs}

となることが必要です。

 

この両辺をτで 0 から1 まで積分すると,

 

左辺=ai1 i2..ik(x1,x2,..,xn),

右辺=∑(-1)p-1∫dτ(∂/∂ip){(-1)s-1τk-1i1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)xs} 

 

となります。

こうして,θ≡∑∑'s=1k(-1)s-1∫dτk-1i1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)xs}と置けば,確かに陽にω=dθとなることが示されたわけです。

 

ここで可縮という条件をどこで使ったか?というと,

 

τ∈[0,1]としたときに,このあらゆるτに関してi1 i2..ik(τx1,τx2,..,τxn)が定義できて,しかもそれが対象領域内に留まることを前提として話をしている, 

 

というところです。

Poincareの補題とStokesの定理:∫Cdω=∫C ωは,一方から他方が導けるという表裏一体の関係にあるとも思われます。

 

これらは物理学では星印作用素=Hodge作用素を使って,ベクトルの法則の微分形を積分形と結びつけるのに役立つ重要な命題ですね。

参考文献;木村利栄,菅野礼司 著「微分形式による解析力学」(吉岡書店)

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                       TOSHI

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