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2006年11月10日 (金)

シャノンのサンプリング定理

 昨今はアナログ機器のデジタル化が進んでいますが,いくら細かくデジタル化しても結局はアナログを完全に再現することはできないのではないかと思います。

 

 集合の濃度という意味では,いくら稠密な集合であっても高々可算個のデータで連続無限を表現することは不可能ではないかと感じることはよくあります。

 この感覚とは別に"周波数の大きさに上限があるなら,時間的に連続な信号も上限の2倍以上の個数のサンプルがあれば再現(復元)可能である。"というShannon(シャノン)のサンプリング定理があります。

 

 以下では,それを説明してみようと思います。

 まず,準備として一般に関数f(x)のFourier変換:(f)を,

(f)≡F(ω)≡∫-∞f(x)exp(-iωx)dxで定義します。

 

 このとき,逆変換は,f(x)=[1/(2π)]-∞(ω) exp(iωx)dωで与えられます。

また,周期がTの周期的デルタ関数:δT(x)を,

δT(x)≡∑-∞δ(x-nT)で定義します。

このとき,δT(x)のFourier変換:(δT)がやはり周期的デルタ関数になることがわかります。

 

すなわち,δT(x)は周期Tの周期関数なので,これをFourier級数に展開すると,δT(x)=(1/T)∑-∞exp[i(2nπx/T)]となります。

 

そこで,(δT)=(1/T)-∞-∞[exp{-ix(ω-2nπ/T)}]dx(2π/T)-∞δ(ω-2nπ/T)と書けるからですね。

(t)を帯域を制限された信号であるとします。

すなわち,(ω)≡(f)において,|ω|>ω1のときはF(ω)=0

であるとします。

 

例えば,音楽などでは人間の耳には,"周波数f=ω/(2π)が20kHz前後より大きい音=非常に高い音(超音波と呼ばれ犬など他の動物には聞こえる音もあります)"は聞こえません7。

 

そこで,実質的にそれより大きい周波数部分は必要ないと見なされて,CDでは22.05kHzより大きい周波数の信号はカットされています。

ここで,ある時間的周期Tごとにこの信号(t)をサンプリングしたと考えると,サンプリングした信号をf(nT)として,全てのサンプル信号はfT(t)≡-∞(nT)δ(t-nT)=f(t)δT(t)と表現できます。

これをFourier変換すると,(fT(t))=[fδT]

[f(t)]*[δT(t)]となります。

 

最右辺の'*'は"たたみこみ(convolution)"を示しています。

 

そこで,(fT)=(2π/T)F(ω)*{-∞δ(ω-2nπ/T)}

(2π/T){-∞(ω-2nπ/T)}となります。

もしも,T(t)のFourier変換(fT)の周期(2π/T)が,周波数の幅である2ω1よりも大きい:(2π/T)>2ω1 or T<(π/ω1)なら,

 

1つ1つの帯域幅を持つ信号:(ω-2nπ/T)のゼロでない帯域:-ω1<(ω-2nπ/T)<ω1は決して重なることがないわけです。

  

そこで,元の信号の全体であるF(ω)が周期的に現われます。

 

f(t)は1周期分のFourier変換から逆変換により完全に決定できます。

具体的には,(fT)は周期(2π/T)の周期関数なのでFourier級数に展開できて,(fT)=(2π/T){-∞(ω-2nπ/T)}=-∞n exp(inTω);cn =∫-π/Tπ/TF(ω)exp(-inTω)dω=Tf(-nT)です。

 

なぜなら,F(ω)は積分区間の外ではゼロなので積分区間を(-∞,∞)に拡張しても同じだからです。

そこで,(fT)=-∞(nT)exp(-inTω)であり,左辺は -π/T≦ω≦π/TではF(ω)に等しいので,

 

結局のところ,帯域内ではF(ω)=∑-∞(nT)exp(-inTω)と展開されます。

 

これの逆変換により,元の連続信号f(t)が具体的に,

f(t)=∑-∞[f(nT)sin{π(t/T-n)}/{π(t/T-n)}]

という形で完全に得られます。

 

かくして,全信号は原理的にはサンプル信号(nT)だけで復元できることになります。

 

これを,"Shannonのサンプリング定理"と言います。

 

したがって,例えばCDの帯域が22.05 kHzだとすると,サンプリングには44.1kHzのデータがあれば十分ということになりますね。

つまり,帯域制限があるときには何らかの補間法に頼ることなく各時刻の各周波数ごとの振幅(大きさ)が計算によって復元できます。

 

つまり,どんな楽器のどんな音色やそれらの合奏であろうと,音の帯域周波数の2倍のデータをある場所でサンプルしておけば,その場所での全楽器からの音を原理的には完全に再現できるというわけです。

ただし,これらを本当に忠実に行なうのは結構むずかしい問題があると思われます。

 

これらの精度は,実際に復元演算を行なうデジタルコンピュータのチップを含むであろうDAコンバータ,録音機器,再生機器の性能にかかっており,

 

そうしたことを行なうプロセスでは,必然的にノイズやエラーを伴なうからです。

 

また,実はカットした帯域外の人間の耳には聞こえないはずの音が弾性振動の波として違った作用を人体に及ぼす結果として,人間の快,不快の感覚に関与しているかも知れません。

 

参考文献;松下泰雄 著「フーリエ解析」(培風館)

 

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                  TOSHI 

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