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2006年11月11日 (土)

折り返しノイズ

前記事の続きです。

 

前記事ではf(t)のFourier変換:F(ω)≡(f)において,|ω|>ω1のときはF(ω)=0 であるという理想的なケースを考えました。

 

この場合には,T<(π/ω1)の間隔でサンプリングすれば完全に元の信号:f(t)を復元できると書きました。

 

また,その式ではf(nT)のnは-∞から∞の範囲となっていますが,実際には有限個しかサンプリングできないので,Shannonの公式はあくまで近似式であり,その分の誤差も生じることを書き忘れていました。。

そして,また実際にサンプリングするソースデータも理想的ではないケース,つまり,T<(π/ω1)の間隔Tでサンプリングしているのにも関わらず,元の音のソースは|ω|>ω1の領域にもゼロではないF(ω)の成分をも含むのが普通ですね。

理想的なケースなら,(fT)=(2π/T){-∞(ω-2nπ/T)}の1つ1つのF(ω)の信号(ω-2nπ/T)でのゼロでない帯域,-ω1<ω-2nπ/T<ω1は決して重なることはないです。

 

しかし,今の場合は|ω|>ω1の領域にゼロでないF(ω)の成分があるので,ω1<ω-2nπ/T<ω1の部分に重なりができる結果,復元した信号の中で|ω|>ω1の高周波成分が,あたかもω1<ω-2nπ/T<ω1の成分であるかのように,ノイズとして入ってきます。

これをエイリアシング(Aliasing)とか,折り返しノイズと呼びます。

 

そして,こうしたノイズの発生を回避するためには,

 

1つには理想的ケースとするために,サンプリングの際に低周波のみをパス(スルー)し高周波をカットするフィルターであるローパスフィルター(Low-pass-filter)を通すという方法があります。

 

しかし,一般に完全なローパスフィルターというものはなく,これを実現するのは結構むずかしいことです。

 

そこで,別の手段として,サンプリング間隔Tをさらに小さくするという"オーバーサンプリング(Oversampling)"という手法を併用することが多いようです。

 

それでも,折り返しノイズを完全に除去するのは不可能で,ノイズを極限まで減らすことも技術的にはかなり困難なようです。

  

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                  TOSHI 

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コメント

同じ書き込みが二つ続いていてすみませんでした。送信を押したらエラーが出て押し直したら最初のもアップされてたみたいで。

サンプリング周期が短くても、低周波の折り返しノイズは発生するので、なるべく折り返しノイズが発生しない理想的なローパスフィルタはどんなのになるのか、という話なような気がしますが、詳細を理解してないのでこの程度のことしか書けません。
なお、この話はアナログ系とディジタル系が混在したシステムに汎用的に通じる話で、音に限らず画像処理にも適用可能なようです。

前掲のURLにリンクがあるサンプル値制御理論の資料をちゃんと読んで理解できたらまた書きます。

投稿: 耕士 | 2006年11月17日 (金) 23時41分

 ども耕治さん、お久しぶりです。TOSHIです。

 山本さんのYYフィルターの話は興味深く拝見させていただきましたが私としては内容の詳細のほうに興味があります。

 シャノンは実用的ではなく補間が必要だということですがサンプリング周期が小さいのに直線補間ではなく高次のスプラインなどが必要であるとしたら驚くべき世界ですね。

 私も実はオーディオマニアなのですがハードにこだわるのもほどほどにしないといくらお金があっても足りません。

 私は「音」ではなく「音楽」を聴きたいのでハードよりもソフトにこだわりたいと思います。もちろん、ハードの理論には興味がありますけどね。

             TOSHI

投稿: TOSHI | 2006年11月13日 (月) 04時15分

すみません。前掲のURLは山本先生のホームページです。非常に音質の良いフィルタの話は、以下を参照してください。
http://www-ics.acs.i.kyoto-u.ac.jp/~yy/sound-j.html

投稿: 耕士 | 2006年11月12日 (日) 23時24分

すみません。前掲のURLは山本先生のホームページです。非常に音質の良いフィルタの話は、以下を参照してください。
http://www-ics.acs.i.kyoto-u.ac.jp/~yy/sound-j.html

投稿: 耕士 | 2006年11月12日 (日) 23時23分

制御理論の分野で、最近理論的進展があって、アナログデータをサンプリングしてディジタル化して扱う際にサンプル点間の応答も考慮して扱う手法ができてきています(サンプル値制御理論と呼ばれています)。サンプル点を通る全ての関数を考えて処理するようです。
その方式を使って非常に質の良いフィルタを設計したりできるようです。
http://www-ics.acs.i.kyoto-u.ac.jp/~yy/index-j.html
(伝聞調なのは私が良く理解できてないためです(^^;。)

投稿: 耕士 | 2006年11月12日 (日) 23時18分

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