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2006年11月27日 (月)

高温状態での電子対発生

 前記事の続きです。

 高温の状態:T=6×109K程度では,電子と陽電子の対発生(対創生)が起こるようになります。

 

 これは丁度kBT~ me20.51MeVとなる温度になっています。

 この反応はγ+γ ⇔ e-+e+で与えられます。

 

 ただし,γ,e-,e+はそれぞれ光子,電子,陽電子を表わします。meは電子(陽電子)の質量,cは真空中の光速です。

 

 また,以下ではγ,e-,e+に対応する物理量に,それぞれ添字γ,-,+を与えることにします。

なぜ,光子(photon)が1個ではなく2個必要なのかというと,"慣性中心系=重心系"で見たとき,γ ⇔ e-+e+ なら運動量の保存則から両辺はそれぞれ総運動量がゼロの状態ですが光子の質量がゼロであるために光子1個だけではエネルギー保存の法則が成立しなくなるからです。

 

もっとも自由運動状態ではなく束縛状態などにあって束縛エネルギーなどがあればその限りではありません。ただし,以下の話では光子の個数は関係しない話となっています。

先の記事でも述べたように,平衡の条件は反応の前後で化学ポテンシャルが等しいというものです。ただし今の電子対発生においては質量もその"化学ポテンシャル=自由エネルギー"に入ってきます。

 

化学ポテンシャルは質量項を含まないように定義されているので,平衡条件は,γ+me2)+(μ+me2)となります。

 

そして熱平衡にある光子ではμγ0 ですから,μ+me2=-+me2)という式が得られます。

 

一方,光子は電気的に中性なので,元々存在していた電子の数密度をn0とすれば,n-n=n0=ρZ/(AmH)となります。

 

ρは物質密度,Z,Aはこの物質の原子核の原子番号と質量数,mH は水素原子の質量です。

BT>>me2のときには~n>>n0なので,簡単のために00 とすると,=nより,μ=μ=-me2となります。

 

この場合には,n ~ {1/(π2c3)}∫02dp/[exp{(ε-μ)/(kB)}+1]において積分に寄与するのは大きいpですから,(ε-μ)~cpとしてよいと考えられます。

 

そこで,n+=n-{(kB)3/(π2c3)}∫02du/(expu+1)={3ζ(3)/(2π2)}{kB/(hc)}3 となります。

これを,平衡状態にあってBose分布をしている光子の密度:

γ{(kB)3/(π2c33)}02du/(expu-1)

=(2ζ(3)/π2){kB/(hc)}3

 

と比較すると,=n(3/4)nγとなります。

同様に,電子,陽電子のエネルギー密度は,

 

+=E-

~ {1/(π2c3)}∫0cp3dp/[exp{cp/(kB)}+1]

={(kB)4/(π2c33)}∫03du/(expu+1)

=(7/8)(π4/15)(8π3/π2){kB44/(h33)}=(7/8)aT4

 

となります。

 

ここで,aは光子のエネルギー密度に対するStefan-Boltzmannの法則:

γaT4の係数aです。

 

したがって,(E++E-)/Eγ7/4 となります。

さらに高温になると,電子以外の他の粒子も対発生して輻射エネルギー密度が総エネルギー密度に占める割合はさらに小さくなります。

  

参考文献;佐藤文隆 原 哲也 著「宇宙物理学」(朝倉書店)

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コメント

 ども、耕治さん、コメントありがとうございます。

>光子1個では対発生が起こらないのは、エネルギー保存ではなく運動量保存が成立しないからではないでしょうか?
γ ⇔ e-+e+  とすると右辺の重心系で見たら運動量0ですが左辺の運動量は0ではないので

 どっちでもいいのですよ。とにかく光子1個ですべて自由粒子のときは「どのフレームでも4元運動量の保存が素粒子レベルで成立しない」ので、これは仮想プロセス以外でそうであっては困るのです。

           TOSHI

投稿: TOSHI | 2006年11月30日 (木) 09時02分

光子1個では対発生が起こらないのは、エネルギー保存ではなく運動量保存が成立しないからではないでしょうか?
γ ⇔ e-+e+  とすると右辺の重心系で見たら運動量0ですが左辺の運動量は0ではないので。

投稿: 耕士 | 2006年11月29日 (水) 23時14分

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