大気中の移流拡散方程式
大気中の気体物質の拡散方程式について,若干の考察をしてみたいと思います。
ある温度で大気の単位体積中に存在する同じ温度の気体物質の体積の値をその濃度と呼びCで表わすことにします。
"(大気+物質)の密度=大気全体の密度"をρ,濃度対象としている気体物質のみの密度をρ1とし,質量濃度をcとします。ρ1=ρcです。
そして,大気全体には"主流=平均流"として風速vがあるとし,大気全体は非圧縮,かつ空間的にもρは一定と仮定すると,その全体としての連続の方程式はdivv=∇v=0 となります。
一方,混合された気体物質に着目した連続の方程式には湧き出しがあるとして,∂ρ1/∂t+∇(ρ1v1)=q1と書くことができます。湧き出しq1は物質の排出強度と呼ばれます。
連続の方程式∂ρ1/∂t+∇(ρ1v1)=q1にρ1=ρcを代入すると,∂(ρc)/∂t+∇(ρcv)=-∇[ρc(v1-v)]となります。
結局,Dc/Dt=∂c/∂t+v∇c=-∇i+q1 /ρと書けます。ただし,D/Dt=∂c/∂t+v∇はLagrange微分です。i≡c(v1-v)は拡散流束密度と呼ばれる量です。
ここで,N0をAvogadro数,Mを大気全体の分子量,M1を濃度対象の気体物質の分子量とすると,大気全体と対象物質の単位体積当たりの分子数は,それぞれ,N0ρ/M,N0ρ1/M1です。
同一温度での気体の体積は分子の数に比例するので,C=ρ1M/(ρM1)=(M/M1)cとなります。
よって,質量濃度cと(体積)濃度Cは単に定数係数の違いしかないことがわかります。
したがって,質量濃度cの方程式Dc/Dt=-∇i+q1 /ρを体積濃度Cで表わすと,DC/Dt=-∇j+Qとなります。
j≡(M/M1)i=C(v1-v)は(体積濃度の)拡散流束密度,Q≡q1M/(ρ/M1)は物質の(体積)排出強度と解釈できます。
ここで,Fick型の拡散を想定し,拡散流束密度jが濃度の高い方から低い方向へ濃度の勾配に比例した大きさて流れるとします。
その拡散流束密度は拡散係数:Kをテンソル{Kij}として,
ji=-Kij(∂C/∂xj)となります。
Kは拡散係数ですから正値行列です。
ただし,同じ添字が2度出現するときは1から3まで加えるというEinsteinの規約を用います。
拡散係数テンソル:Kを主軸変換して対角化し,Kij=Kiδijの主軸をx,y,z方向に取れば,主軸成分はKx,Ky,Kz と表わすことができます。
このときには,拡散流束密度はj={Kx(∂C/∂x)}ex+{Ky(∂C/∂y)}ey+{Kz(∂C/∂z)}ezと書けます。
そこで,(移流)拡散方程式として,
∂C/∂t+v∇C=(∂/∂x){Kx(∂C/∂x)}+
(∂/∂y){Ky(∂C/∂y)}+(∂/∂z){Kz(∂C/∂z)}+Q
が得られます。
特に拡散係数Kがスカラーで近似的に定数と見なせるときには,
Kij=Kδijであり,通常の移流拡散方程式である
∂C/∂t+v∇C=K∇2C+Qに帰着します。
http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー) TOSHI
人気blogランキングへ ← クリックして投票してください。(1クリック=1投票です。1人1日1投票しかできません。)
← クリックして投票してください。(ブログ村科学ブログランキング)
![]() 物理学 |
| 固定リンク
「202. 気象・地学・環境」カテゴリの記事
- 記事リバイナル②(台風の進路(コリオリの力))(2018.10.27)
- 地震に関する過去の科学記事(バックナンバー)(2011.03.14)
- 水滴の成長と蒸発(2)(2010.12.20)
- 水滴の成長と蒸発(1)(2010.12.12)
- プルーム上昇のモデル式(3)(2010.12.05)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント