« 移流拡散方程式を解く | トップページ | 思い出し泣き »

2006年11月 8日 (水)

量子的ボルツマン方程式

古典的気体分子でなく金属内の自由電子という量子的Fermi気体に対し,

先に述べたBoltzmann(ボルツマン方程式):

∂f/∂t+∇f=(∂f/∂t)coll

を拡張することを考えてみます。

ch/(2π)(hはPlanck定数)とすると,波数がの"電子波束の速度=群速度"は,k=hc-1(∂εk/∂)です。

 

の時間変化は,外力として電場があるときには電子の電荷をe(<0)としてd/dt=e/hcで与えられます。

 

波数がの電子波束をFermi粒子として,その分布関数をfkとすると量子的Boltzmann方程式が,∂fk/∂t+k∇fk(∂fk/)(∂fk/∂t)collで与えられます。

 

左辺の第3項は,電場による波束の変化,つまり運動量=hcの時間的変化による分布の変化を示しています。

波数:'+dk'1'+d1'の間の電子波束対が衝突して単位時間に速度1との波束対となって,+d,11+d1領域に入ってくる散乱確率を,σ(,1|',1')1'd1'とします。

 

これとは全く逆に,+d,11+d1領域から出て行く散乱確率をσ(',1'|,1)1'd1'とします。

気体分子の運動論のときと同様な略記として,f≡fk,f1≡fk1,

f'≡k',f1'≡k1'とおきます。

 

衝突前の波数,1を持つ波束の減少は,ff1にも比例しますが,衝突後の状態'と1'が占有されていないことが必要なので,(1-f')(1-1')にも比例します。

したがって衝突項を与える式は(∂f/∂t)coll=∫σ(,1|',1')f'1'(1-f)(1-1)1'd1'-∫σ(',1'|,1)ff1(1-f')(1-1')1'd1'となると考えられます。

量子力学でも時間に関する可逆性,空間反転対称性は成り立ち,「衝突数算定の仮定」という統計的意味は量子力学自体が確率現象なので,さらなる重みを持ちます。 

そこで,(∂f/∂t)coll=-∫σ(,1|',1')[ff1(1-f')(1-1')-f'1'(1-f)(1-1)]1'd1'となるはずです。

量子論でのFermi粒子系のエントロピー(entropy)は,

S=-kB∫[flogf+(1-f)log(1-f)]です。

 

そこで,このときのH関数は,H≡[flogf+(1-f)log(1-f)]と定義すればいいと思われます。

 

古典論と同じように考察して,

dH/dt=∫[log{f/(1-f)}(∂f/∂t)coll]dk

=(1/4)∫σ[f'1'(1-f)(1-1)-ff1(1-f')(1-1')]log[ff1(1-f')(1-1')/{f'1'(1-f)(1-1)}]1'1'

と書けます。

そこで古典的気体分子運動論と同じく,金属内のFermi気体である自由電子の運動論でもH定理,

 

すなわち,dH/dt=∫[log{f/(1-f)}(∂f/∂t)coll]dk≦0が成立し,エントロピーの増大則:dS/dt≧0 を保証します。 

今度の場合では,熱平衡状態とは[(logf)(∂f/∂t)coll]d=0,

すなわち,ff1/[(1-f)(1-1)]=f'f1'/[(1-f')(1-1')]

に対応しています。

 

これはfがFermi-Dirac分布,f=1/[exp{(εk-μ)/kB}+1]に従うなら確かに満足されています。

 

参考文献;北原和夫 著「非平衡系の統計力学」(岩波書店)

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                  TOSHI 

人気blogランキングへ ← クリックして投票してください。(1クリック=1投票です。1人1日1投票しかできません。)

にほんブログ村 科学ブログへクリックして投票してください。(ブログ村科学ブログランキング)

にほんブログ村 トラコミュ 物理学へ
    物理学

|

« 移流拡散方程式を解く | トップページ | 思い出し泣き »

111. 量子論」カテゴリの記事

104. 熱力学・統計力学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 量子的ボルツマン方程式:

« 移流拡散方程式を解く | トップページ | 思い出し泣き »