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2006年11月21日 (火)

地球の平均気温とステファン・ボルツマンの法則

今日は比較的軽い話題として黒体輻射におけるステファン・ボルツマンの法則(Stefan-Boltzmannの法則 or シュテファン・ボルツマンの法則)について述べてみたいと思います。

 

そして,その1つの例として地球の平均気温を考えてみます。

 

力学によれば,粒子の運動量をとし,それに働く外力をとすると,その粒子の従う運動方程式はd/dt=です。

 

そこで,例えば1辺がLの立方体の中にある1粒子がx軸に垂直な立方体の一方の面と衝突する際,その面に及ぼす力をとすれば,時間Δtの間に面が受ける力積Δtのx成分はfΔt=2pxです。

 

そして,衝突時の粒子の速度をとすると,粒子がx軸に垂直な面の一方と単位時間に衝突する回数はvx/(2L)回(=1/Δt:ここでのΔtは衝突周期)です。

  

故に,立方体内の全粒子数をNとすると,面が粒子衝突によって受ける合力:=Nの垂直成分はF=N・2<pxx/(2L)=N<pxx/Lとなります。

 

したがって,"面にかかる圧力P=面に垂直にかかる単位面積当たりの力F/S"の表現として,P=F/L2(N/V)<pxx>を得ます。S≡2で,これは立方体の面の面積です。

 

また,V≡L3であり,これは立方体容器の体積です。記号< >は容器内の粒子全体についての平均値を表わします。

もしも,立方体内の粒子群が通常の質量mの分子の集まりなら,

xx>=m<x2>=m<2>/3です。

  

また,粒子群が質量ゼロの光子の集まりなら,光速をcとすると,

xx>=<cp>/3です。

 

そこで,単位体積当たりの粒子群の全エネルギーのうち,重心運動のエネルギーをuとすると,

 

粒子が質量のある分子なら,u=(N/V)m<2>/2よりP=2u/3,光子なら,u=(N/V)<cp>よりP=u/3としてよいことになります。

 

ただし,Pが単原子分子気体の気圧や光子気体の輻射圧を表わす場合には,重心運動のエネルギーuは内部エネルギー全体と一致します。

そして熱力学によると,系の全内部エネルギーをU,エントロピーをS,絶対温度をTとすると,"エネルギー保存則=熱力学第一法則"から,等式dU=TdS-PdVが成立します。

 

そこで,(∂U/∂V)T=T(∂S/∂V)T-P=T(∂P/∂T)V-Pが成立しますから,Pが光子の輻射圧:P=u/3の場合にはu=T(du/dT)/3-u/3,すなわち,du/u=4dT/Tとなります。

 

これを積分すると,aをある比例係数(積分定数)として,u=aT4なる式を得ます。

  

これを,この式を発見した人の名を取ってStefan-Boltzmann(ステファン・ボルツマン)の法則といいます。

では,係数aは具体的にはどんな値になるのでしょうか?

光子はボーズ粒子(Boson)ですから,その分布はBose-Einstein(ボーズ・アインシュタイン)分布:n=N/V=1/[exp{(ε-μ)/(kBT)}-1]に従いますが,容器内に閉じ込められていようと光子の個数には制限がないので化学ポテンシャルμはゼロです。

 

ただしεは光子のエネルギーで,ε=cpです。

 

それ故,量子論によれば振動数がνの1光子のエネルギーはPlanck定数をhとしてε=cp=hνで与えられるので,容器内の平均光子数は,

n=N/V=1/[exp{hν/(kBT)}-1] と書けます。

 

黒体輻射ではνとν+dνの間の光子が占有可能な状態数は単位体積当たり8πν2dν/c3ですから,

  

u=∫0(8πhν3/c3)/[exp{hν/(kBT)}-1]dν

=(8πh/c3)(kBT/h)4ζ(4)Γ(4) となります。

 

そこで,u=aT4;a=(8π5/15){kB4/(h33)}≒7.56×10-16Jm-3deg-4なる公式を得ます。

 

こうして,Bose-Einstein統計に基づくPlanckの公式からも黒体輻射のStefan-Boltzmannの法則,つまりu=aT4が得られることがわかります。

 

したがって,逆に輻射圧Pに関する式:P=u/3が,量子統計力学の立場からも改めて確認されたことになります。

ところで,黒体輻射において単位時間に単位面積から射出されるエネルギーをJとするなら,

  

Stefan-Boltzmannの法則はJ=σT4,σ=ac/4≒5.67×10-6W・m-2・deg-4 という形になります。

 

そして,係数σ=ac/4をStefan-Boltzmann係数と呼びます。

なぜ,このように書けるか?というのは以下のように説明されます。

 

すなわち,黒体輻射の輻射エネルギーは等方的な分布をしているので,単位体積から射出される微小立体角dΩ=d(cosθ)dφ当たりのエネルギーは,u(θ,φ)dΩ={u/(4π)}dΩと書けます。

 

そして,今問題としている面積要素の法線と輻射光の流れのなす角をθとすると,光速cによってその方向に作られる単位面積当たりの円筒の体積はccosθです。

 

そこで,その面積要素の単位面積を通過する全方向の輻射光の総エネルギー流量は,J=∫ccosθ{u/(4π)}dΩ={cu/(4π)}∫0dφ∫0π/2cosθd(cosθ)=cu/4=(ac/4)T4となるからです。

 

この立体角積分でθの積分範囲を,0 ~ π/2として全体の半分にしているのは,対象とする面積要素を通過する光の向きとして1方向だけを取るべきだからです。

さて,例えば太陽から地球が受け取る総輻射エネルギー流量は太陽定数(solar constant)として知られています。

 

そして,大気層の頂上でのこれの具体的な値が,(太陽定数)=1.96cal/(cm2・min)≒1370W/m2であることがわかっています。

 

この太陽定数から太陽の総輻射量Lを逆算すると,L=4π(1AU)2×(太陽定数)=3.85×1026Wが得られます。

 

1AU(1天文単位)は太陽と地球の間の平均距離を表わす単位で,約1.496×1011mです。

一方,太陽の半径をRとすると,太陽表面の面積は4πR2なので,先のStefan-Boltzmannの法則からL=4πR2σT4となりますから,

 

これにL=3.85×1026W,R≒6.96×108 mを代入すると太陽表面の温度Tが逆算できてT≒5780Kと推定されます。

 

一方,地球の太陽公転軌道を半径1AUの円で近似して,その軌道上に1つの"黒体=地球"があるとすれば,同じ太陽定数とStefan-Boltzmannの法則によりσT4=1370W/m2を得ます。

 

これから"黒体=地球"の平均温度はT≒394Kと計算されます。

 しかし,地球をその公転軌道上の黒体と同一視して,地球半径をREとすると,実際に太陽からの輻射を受ける側の地球の表面の面積はπRE2なのに対し地球全体の表面積は4πRE2です。

 そこで,地球表面全体で平均した結果はσT4=(1370/4)W/m2≒342W/m2になると考えられるため,地球表面の平均気温はT≒394KではなくT≒279K=6℃と算定されます。

 ところが,これでもまだ過大評価であるらしく,観測によれば太陽からの輻射エネルギーは地球大気の頂上て平均でその30%は反射されます。

 地球が吸収して我々が実際に受ける輻射エネルギーの総流量は約1.37cal/(cm2・min)=約957W/m2であることが知られています。

 それ故,上記の等式σT4=(1370/4)W/m2≒342W/m2は,さらにσT4=(9 57/4)W/m2≒240W/m2と変更されます。

 結局,太陽からの輻射,あるいは放射と地球表面からの放射の平衡を表現するこの等式だけから温度を算定すると,地球の平均気温としてT≒255K=-18℃が得られます。

ところが,実際には現在の地球の平均気温は15℃=288K前後ですから,上の試算とは30度以上の差があります。

 

これは,実は主に水蒸気やそれによって生成される雲,そしてその他にも,二酸化炭素などのガスが地表から放射された赤外線などを吸収して再放出するという「温室効果」のためと考えられています。

 

そこで,水蒸気や二酸化炭素などを「温室効果ガス」と呼んでいます。

 

こうした温室効果ガスが異常に増えたりして現状のバランス(平衡)が崩れると,いわゆる「地球温暖化現象」が起こることが指摘されています。

 

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                  TOSHI

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