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2006年12月

2006年12月29日 (金)

鳳・テブナンの定理(電気回路)

 今日は電気回路において有名な「鳳・テブナンの定理(Ho-Thevenin's theorem)」について述べてみます。

 

 そのために,まず「重ね合わせの理(重ねの理)」を証明します。

 

 「重ね合わせ(superposition)の理」というのは,

 

 "線形素子のみから成る電気回路に幾つかの電圧源と電流源がある場合,

 

 この回路の任意の枝の電流,および任意の節点間の電圧は, 

 個々の電圧源や電流源が各々単独で働き,他の電源が全て殺されている

 場合の回路の電流や電圧の代数和(重ね合わせ)に等しい。"

 

 という定理です。

 

 ここで,"電源を殺す"とは,起電力や電流源電流をゼロにすることです。

 

 つまり,"電圧源を殺す"というのは端子間のその電圧源を取り除き,そこに代わりに電気抵抗ゼロの導線をつなぐことに等価であり,

 

 "電流源を殺す"というのは端子間の電流源を取り除き,その端子間を引き離して開放することに等価です。

 

 この定理を証明するために,まず電圧源のみがある回路を考えて,線形素子に対するKirchhoffの法則に基づき,回路系における連立1次方程式である回路方程式系を書き表わします。

 

 すなわち,を電圧源列ベクトル,を電流列ベクトルとし,をインピーダンス(impedance)行列とすれば,

 

 この回路方程式系はZiと書けます。

   

 

このとき,電気回路の特性からは必ず,逆行列であるアドミッタンス(admittance)行列:-1を持つことがわかります。

 

したがって,を単独源の和として=Σkと書くなら,

-1=Σ-1kとなるので,k-1kとおけば

=Σkと書けます。

 行列の図で表現すると,

 

  

  

 

   

     

です。

  

同様に,を電流源列ベクトル,を電圧列ベクトルとすると,YVなので,k-1kとおけば=Σkとなります。

 

ところで,起電力がE,内部抵抗がrの電圧源と内部コンダクタンス(conductance)がgの電流源Jの両方を考えると,

 

電圧源の端子間電圧はV=E-riであり,電流源の端子間電流は

i=J-gVです。

 

これらの電源が等価であるとすると,

開放端子での端子間電圧はi=0 でV=Eより,

0=J-gEとなり ,

 

短絡端子での端子間電流はV=0 でi=Jより,

0=E-rJとなります。

 

これらが同時に成立するためには,r=1/gが必要十分条件です。

 

というわけで,電流源は等価な電圧源で,電圧源は等価な電流源で互いに置き換えることが可能です。

 

それ故,上で既に示された電流や電圧の重ね合わせの原理は,電流源と電圧源が混在している場合にも成立することがわかります。

 

これで,「重ね合わせの理(重ねの理)」は証明されました。

 

次に「鳳・テブナンの定理」ですが,これは,

 

"内部に電源を持つ電気回路の任意の2点間に"インピーダンスZL(=電源のない回路)"をつないだとき,

 

Lに流れる電流ILは,ZLをつなぐ前の2点間の開放電圧をE0,

内部の電源を全部殺して測った端子間のインピーダンスをZ0とすると,

 

L=E0/(Z0+ZL)で与えられる。"

 

という定理です。

 

これを証明するために,まず起電力が2点間の開放電圧と同じE0の2つの電圧源をZL直列に互いに逆向きに挿入した回路を想定します。

 

これは,挿入した2つの電圧源の起電力の総和がゼロなので,実質的には何も挿入しないのと同じですから,元の回路と変わりないので普通に同じ電流ILが流れるはずです。

  

 

そして,この2個の追加電圧源挿入回路は,結局,

 

"1個の追加逆起電力-E0から結果的に回路の端子間電圧がゼロで電流がゼロの回路"と,

 

"1個の追加起電力E0以外の電源を全て殺した同じ回路"との「重ね合わせ」に分解できます。

 

したがって,「重ね合わせの理」によって合計電流Lは,後者の回路の電流0/(Z0+ZL)に一致することがわかります。

 

この「鳳・テブナンの定理」は「等価電圧源の定理」とも呼ばれます。

 

電圧源を電流源に置き換え,直列インピーダンスを並列アドミッタンスに置き換えたものについての同様な定理も同様に証明できますが,これは「ノートンの定理(Norton)」=「等価電流源の定理」といわれます。

      (ノートンの定理↓)

 

 

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2006年12月25日 (月)

引越し(巣鴨から滝野川へ)

 体調が悪いながらも昨日24日の朝から夕方に掛けて引越しをしました。豊島区巣鴨から北区滝野川に移動です。

 急遽引越しを敢行したのでまだ70%しか完了しませんでした。

 もう1回引越しをする必要があります。

 今は旧居で残してあるノートパソコンでアクセスしています。

 当分,まともなブログを書くにもアクセス環境もできてないし,資料もないので年内はあまり書けないと思います。

 

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2006年12月22日 (金)

肺気腫にかかってしまいました。

 今日も昼ごろ呼吸困難になって七転八倒し,廊下に出て窓を開けて20分ほど深呼吸してやっと小康状態になりました。

 何も出る物がないのに嘔吐して苦しんでいる状況に似ていて何度もこのまま死ぬかと思いましたが,まだ,あと最低10年は生きたいと思う気持ちと葛藤しながら持ちこたえました。

 その後,睡眠薬で無理矢理6時間ほど寝たら現在やや落ち着いてきたのでこれを書いています。

 ネットで調べたら,どうも肺気腫という病気らしいです。かかるのは100%喫煙者らしいので,まず,仕方ないから禁煙することにしました。

 肺胞の壁が破れたり,肺壁の筋力が衰えたりして肺が風船のようにゴムが伸びきって空気の腫として肺胞の収縮伸張が衰えるため呼吸がし辛く,少しの労働作業や精神の興奮で呼吸困難の発作がしばしば起こるということです。

 治療法はなく,不可逆,つまり進行を押さえることはできても治ることはないということです。薬としては副作用のある気管支拡張剤があるらしいです。

 あと,リハビリとしては吸うとき腹式呼吸で吐くとき口をすぼめて全部吐き出すという深呼吸を繰り返して,何とかして呼吸可能な肺筋を養成することぐらいだそうです。

 薬を吸入するのはいやなのでリハビリに頼ろうかなと思い,わずかな希望を持ちました。

 安静が一番なので,とにかく何とかして早く引越しを終わらせたいですね。

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2006年12月21日 (木)

電子の自己エネルギーとDiracの海

 "古典的には発散する電子の自己エネルギーが相対論的量子論のDirac(ディラック)の負エネルギー電子の海,いわゆるDirac seaの陽電子の影響を受けて,量子論ではどのように変わるか?"

 

 という問題に関する話題として,1939年のWeisskopf(ワイスコフ)の論文を紹介してみたいと思います。

 

 電子の質量をm,電荷をe<0,古典的な電子半径をaとすると,静止している電子の自己エネルギーはW ~ mc2+e2/aと表わされます。

 

 電子を点と考えると,これはa→ 0 を意味するので,Wは無限大に発散します。

 

 Coulomb場によるエネルギーをWstとおき,電子の位置の付近で距離ξだけ離れた2点に同時に電荷が見つかる確率を表現する量:G(ξ)を,

 G(ξ)≡∫ρ(ξ/2)ρ(ξ/2)dで定義します。

    

 すると,Wstは,st=(1/2)∫[<G(ξ)>/|ξ|]dξで与えられます。

 <G(ξ)>は量子論で計算されたG(ξ)の期待値です。

  

 Diracの理論(空孔理論:holetheory)によれば,電荷密度ρは

 ρ()=e{ψ*()ψ()}-σ で与えられます。

    

 {ψ1*(2()}は2つの4成分スピノルのスカラー積を表わします。

 σは陽電子の海の効果により差し引かれるべき電荷密度です。

  

 波動関数ψは運動量がqの自由電子の波動関数φqで展開できますから,

 ψ=Σqqφqと表わすことができます。

   

 ここで,系の全体積をVとすると,{φq*(q()}=1/V

 が成立しています。

  

 ψ=Σqqφqという表現が成立するならば,ψを"第2量子化=個数表示した場",すなわち個数Nqによる個数表示の波動関数にかかる演算子

とするとき,aqおよびaq*は,それぞれFermi粒子の消滅演算子,および生成演算子と考えることができます。

   

 状態qの電子の個数Nqは,Nq=aq*qで与えられ,aqq*=1-Nq

 が成立します。

  

 ψ=Σqqφqをρ()=e{ψ*()ψ()}-σに代入し,それをさらに

 G(ξ)≡∫ρ(ξ/2)ρ(ξ/2)dに代入します。

   

 G(ξ)の期待値に寄与するのは,4つのaqの結合のうちで,

 aq*qq'*q'=Nqq'とaq*q'q'*q=Nq(1-Nq')

 のみです。

  

 他の結合は非対角成分を持たないので寄与しません。

 

 こうして,<G(ξ)>=e2ΣqΣq'qq'/V+e2ΣqΣq'q(1-Nq')∫{φq*(1q'(1)}{φq'*(2q(2)}d-2σeΣqq+σ2

を得ます。

 

 ここで,1ξ/2,2ξ/2と置きました。

 

 その頃の従来の理論である陽電子の雲を伴わない単一電子であればσ=0 です。

 

 あるq=q0に対してはNq=1で,q≠q0に対してはNq=0 ですから,第1項はe2/Vとなります。Vが十分大きいのでこれは寄与しません。

 

 そこで,結局第2項のみが<G(ξ)>に寄与します。

 

 それ故,<G(ξ)>=e2Σq∫{φq0*(1q(1)}{φq*(2q0(2)}dr=2∫d3p[exp(iξp/h)/(8π33)]=e2δ3(ξ)を得ます。

 

 一方,陽電子論での真空では,全てのq≧0 なるqに対して,

 N+q=0 ,N-q=1で,σ=e(Σ-qq)/Vとおくことができます。

  

 このとき,<G(ξ)>の表式の第1,3,4項は互いに相殺して第2項のみが残ります。

 

 これを<G(ξ)>vacと書けば,G(ξ)>vac=e2Σ+qΣ-q'∫{φ-q'*(1+q(1)}{φ+q*(2-q'(2)}dとなります。

 

 <G(ξ)>vacがゼロではなく無限大になるという計算結果を与えるという事実は,真空における電荷のゆらぎが観測されるという現象の1つの反映といえます。

 

 我々の関心は1電子の電荷密度に対応する<G(ξ)>にあります。

 

 q=q0≧0 に対してNq=1,q≧0 ,かつq≠q0 に対してN+q=0 ,

 そしてN-q=1なる状態での<G(ξ)>である<G(ξ)>vac+1を求め,

  

 それから<G(ξ)>vacを差し引くことによって,1電子の電荷密度のそれ を計算することができると考えられます。

 

 結局,<G(ξ)>=<G(ξ)>vac+1-<G(ξ)>vac

 =e2+q-Σ-q )∫{φq0*(1q(1)}{φq*(2q0(2)}d

 が得られます。

  

 これに自由電子のDirac方程式の実際の解を代入すれば,この表現を数式で評価することができます。

  

 そして"Σ=総和"を"∫=積分"で表現すれば,

 <G(ξ)>=e2mc2∫d3p[exp(iξp/h)/{8π33E()}]

 となります。ここでE()≡c(p2+m22)1/2です。

  

 そして,この積分を厳密に計算すると,

 <G(ξ)>={ie2mc2/(2πhξ)}(∂/∂ξ)H0(1)(ξ)

 が得られます。

  

 ここで,ξ=|ξ|であり,H0(1)(x)は第1種のHankel関数です。

  

※(注):ここで,自由粒子波動関数の規格化は∫Vp*(p()}d=1 ({φp*(p()}=1/V )としているようですが,

 

空間体積のローレンツ収縮を考慮するなら∫Vp*(p()}d=E()/(mc2)とするのが正しいはずです。

 

しかし,この式と,<G(ξ)>=e2ΣqΣq'qq'/V+e2ΣqΣq'q(1-Nq')∫{φq*(1q'(1)}{φq'*(2q(2)}d-2σeΣqq+σ2との比が,[mc2/E()]となっているようなので,結果的には正しいようです。※

 

0(1)(x)はx= 0 に特異性を持ち,x>>1に対しては指数関数的に減衰します。

    

結局,ξ<<[h/(mc)]に対しては,

<G(ξ)>={e2/(4π2)}(mc/h)ξ-2,

   

ξ>>[h/(mc)]に対しては,

<G(ξ)>={e2(mc/h)2{h/(2π3mcξ2)}1/2exp(-mcξ/h)

   

という近似式が得られます。

  

電子の自己エネルギーのCoulomb部分Wst は,

st(1/2)∫[<G(ξ)>/|ξ|]dξ で与えられます。

 

結局 Wst{e2/(4π2)}∫d3p[mc2/{h3E()p2}]

=limP→∞{mc22/(πhc)}log[{P+(P2+m22)1/2}/(mc)],

  

あるいは,P=h/aとおくことにより,

st ~ lima→0{m222/(πhc)}log{h/(mca)}

と書き表わせることがわかります。

  

古典電子半径aがゼロに近づくとき,電子の自己エネルギーは古典的には1次の発散をするのに対して,

  

量子論では対数的に発散するという意味で,電子がCompton波長:{h/(mc)}程度の広がりを持つという効果が現われて発散は緩和されています。

  

これは後のくりこみ理論(Renormalization theory)との関連性を示唆していると思えます。

  

参考文献:V.S.Weisscopf「On The Self-Energy and The Electromagnetic Field of The Electron」Physical Review, Vol.56 pp72-85(1939) 

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2006年12月20日 (水)

算数の問題(再掲)

2006年3月30日の記事を修正して再掲します。

 頭の体操です。簡単な?算数の問題です。

  

 一般的な不等辺四角形が1つあるとします。その4つの辺のそれぞれを3等分して,その向かい合う辺の分点同士を直線で結ぶと,でたらめな形の9つの小さい四角形に分割されます。

 

このとき真ん中にできる小四角形の面積は元の四角形の面積の丁度1/9になることを証明せよ。という問題です。小学生程度の知識だけで解けるはずです。

 

という記事を以前書きました。

 

これに対して,今回はヒント(hint)として対辺の分点同士を結んでできる3つの四角形のうちの真ん中のそれは全体の1/3になることを示すことができるという指摘を追加しておきます。

 

ちょっと疲れているのでブログを手抜きしました。

 

 追伸:今2007年1月9日~10日の深夜ですが,kaさんから補助線を明示した図を見たいとの希望がありました。

 

 □ABCDとそのADの3等分点M,NおよびBCの3等分点P,Qを書いた図を書いてみました

 要するに⊿MPQ=(1/2)⊿MBQ,⊿MQN=(1/2)⊿MQDなので,□MPQN=(1/2)□MBQDとなります。

 

別の補助線を引いて⊿MBD=(2/3)⊿ABD,⊿DBQ=(2/3)⊿DBCなので□MBQD=(2/3)□ABCDが成立しますから,□MPQN=(1/3)□ABCDになります。

もちろん,台形ではないですから1/3になるのは真ん中の四角形だけで両側の四角形は1/3にはなりません。

 

これがヒントです。

 

 

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2006年12月19日 (火)

赤外発散の問題(エネルギーゼロの光子)

 先の12/16の記事「電流によって発生する光子の個数分布」では, 

古典電流密度の横波成分:

T(x)=∫0dk0(2π)-1∫d3(2π)-3/2λ=12ε(k,λ)

{j(k,λ)exp(-ikx)+j*(k,λ))exp(ikx)}]

により,輻射される"電磁波=光子(photon)"の個数分布について

考察しました。

 

そして,n個の光子が放出(輻射)される確率nは,

平均個数:<n>=3λ=1,2|j(k,λ)|2}/(2||)

Poisson分布(ポアソン分布):

n[e-<n><n>]/(n! )で与えられることを見ました。

 
例えば,t<0 に速度β/cで運動していた電荷がt=0

にキックされ,それ以降はβ'≡'/cの速度で運動する場合,

 

その運動電荷による電流密度の横波成分は,

Σλ=1,2ε(k,λ)j(k,λ)

~ ec{β/(k0kβ)-β'/(k0kβ')}

となります。

何故なら,この電荷による電流はt<0 では,

T(x)=ecβδ3((t))θ(-t)

で与えられるからです。

 

ここで,(t)=t=cβtであり,θ(t)はHeaviside関数:

θ(t)≡1 (t>0 ),θ(t)≡0 (t<0 )です。

 

Heaviside関数はFourier変換で表わすと,

θ(t)={-1/(2πi)}∫-∞dω[exp(-iωt)/(ω+iε)]

となります。

 

そこで,T(x)={iecβ/(2π)4}∫d3[exp{i((t))}]

dω[exp(iωt)/(ω+iε)]

={iecβ/(2π)4}∫3kdω[exp{ikx-i(ckβ-ω)t}]

={ecβ/(2π)4}∫00∫d3kq(k)exp(-ik00+ikx)

です。(0=ct)

 
ただし,エネルギーk0が正のj(k,λ)成分のみを考慮し,k00

に対応するj*(k,λ)成分は落としました。

 

1={c/(2π)}∫d0dtexp(-ik00)を挿入しています。

 

(k)≡{ic/(2π)}∫dωdt[exp{i(ck0-ckβ+ω)t}

/(ω+iε)]=(-i)/(k0kβ)ですから,目的の式:

Σλ=1,2 ε(k,λ)j(k,λ)~ -ecβ/(k0kβ)

が得られます。

 
このとき,k≡||=k0 ~ 0 では,この運動電荷から放出

される光子の平均個数は, 

<n>=3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||) 

3/k34πlogk ~ ∞ となります。

 

この長波長極限での発散という困難を赤外破局

(infrared catastrophe),

または赤外発散(infrared divergence)といいます。

 

すなわち,こうした電流密度に対しては放出される光子の

平均個数<n>が無限大ですから,

n[e-<n><n>]/n! 0 です。

 

これは,エネルギーがゼロの光子を有限個(n個)放出する確率

は全てゼロで,無限個放出される確率のみゼロでないことを

意味します。

 

それでも,もちろん全確率はΣn=1であって,確率の総和

は確かに有限です。

たとえば,を領域 0≦||≦Δ に選べば,先の記事に述べた

n()=P0[∫R 3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||)]n/n!,

0≡exp[-∫3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||)]により,

 

Σn(||≦Δ)

=exp[-3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||)]

exp[||≦Δ3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||)]

です。

 

そこで,Σn(||≦Δ)

=exp[-||>Δ3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||)]

となります。

 
また,(n+1)個の光子を放出する確率のn個放出に対する比

を求めると,{1/(n+1)}3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||)

です。

 

これは,~α∫dk/k→ ∞ as k→0 であり,k~0 では

発散します。

 

ただし,α≡e2/(4π)は微細構造定数 ~1/137です。

 

それ故,αのべき展開に基づく摂動論の計算は加速電荷の

長波長の輻射(λ~ 1/k~ ∞)に対しては

正しくありません。

 
この赤外発散の最初の解析と解決は1937年にBlochとNordsieck

によって与えられ,その後1961年のYennie-Frauchi-Suura に

よって完全に解決されました。

私自身は,数年前に後者(Yennie-Frauchi-Suura)の70数ページ

にわたる論文を精読しましたが。。。

 

赤外発散は,||≦Δを満たす全光子の放出確率の計算値

Σn(||≦Δ)

=exp[-||>Δ3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||)]

で与えられるという事実から判明します。

 

そこで,無限大の発散は全ての摂動級数を総和して得られる

指数関数exp[]の肩:[ ]のマイナス符号の付いた量で起こる

ものです。

 

無限個のエネルギーゼロの実光子の放出確率は,exp(-∞)

に比例するという意味で検出される確率への寄与は無いに

等しいものです。

 
しかし,一方,同じようにエネルギーがほぼゼロの無限個

の仮想光子は,exp(+∞)に比例する寄与をします。

 

そこで,摂動の中間状態という仮想プロセスの存在を認める

立場からは,こちらの方がはるかに深刻です。

 

ところが,厳密な計算で摂動級数を総和すると,実は実光子

と仮想光子の寄与は積として相殺され,結局ゼロでも無限大

でもない有限な正しい寄与を与えることになります。

 

そこで,結局,この問題は解決されることになります。 

 

参考文献;J.D.Bjorken S.D.Drell

"Relativistic Quantum Fields"(McGraw-Hill Books Company)

 

F.Bloch A.Nordsieck 

"Note on the Radiation Field of the Electron"

Phys.Rev.Vol.52 pp54 (1937)

 

D.Yennie S.Frauchi H.suura

"The Infrared Divergence Phenomena and High-Energy

Processes" Ann.Phys.Vol.13 pp379-452 (1961) 

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2006年12月17日 (日)

高密度下でのφメソンの質量減少を確認(KEK)

 @nifty物理フォーラムの甘泉法師さんからの情報によって「ファイ中間子の質量が高密度下で減少することを世界で初めて確認」(KEK)↓ .

 lhttp://legacy.kek.jp/ja/news/press/2006/phi.html

 を知りました.。  

  ↓ 実験概略:KEKホームページから転載  

      図1 実験の原理の概略

     

(上段)加速器から取り出した陽子を,標的の原子核に照射すると、ある一定の確率でファイ中間子が原子核内に生成される。

(中段)生成されたファイ中間子は原子核内を飛行していく。

(下段)寿命がくると、ファイ中間子は崩壊する。ファイ中間子は様々な娘粒子に崩壊するが,本実験では電子・陽電子ペアに崩壊したファイ中間子を検出する。

 電子・陽電子ペアの運動量を測定することにより,親粒子であるファイ中間子の質量を測定することができる。

    図2 観測が期待される質量分布のシミュレーション結果

     

 関連記事として「質量の起源を解明する手掛かり」(理研,東大)

 http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2004/040309/index.html

 があります。

 宇宙初期にはクォークを含めて,あらゆる素粒子の質量は ゼロ でした。

 質量がゼロでなければ統一的な相互作用(強い,電磁,弱い相互作用,重力?)の厳密なゲージ対称性は成立しません。

 最も簡単なヒッグス模型(Higgs model)は,"ある1つの場=Higgs場"がU(1)という大域的対称性を持ち,さらに局所的にも対称性を持つと仮定した模型です。

 この模型では,付随する"ゲージ場=質量ゼロのベクトル場"が必要です。

 そして,真空が最低レベルにないために,U(1)対称性が"自発的に破れる"ことになります。

 このときに現われるゼロ質量の南部-Goldstoneボゾンを吸収して,ゲージ場が質量を獲得して,質量のあるベクトル場,すなわちProca場になるというのが Higgs-KibbleによるHiggsメカニズム(Higgs機構)です。

 Weinberg-Salamは,これをSU(2)×U(1)の対称性の破れに適用して電弱理論の統一に成功しました。

 彼らの理論では,"電磁場=光子(photon)"は質量ゼロのままですが,弱ボゾン(weak Boson)が質量を獲得するのを説明することができます。

 クォークとクォークの間に働く強い相互作用では,カラーSU(3)の力を媒介するゲージ粒子はグルオン(gluon:ニカワ粒子)です。

 Higgsメカニズムで質量を獲得するとしたら,それはクォークではなくgluonであると私は思います。

 私の知る限りでは,Higgsメカニズムで質量を獲得するのはゲージ粒子と呼ばれるBose粒子であって,Fermi粒子が質量を獲得するメカニズムについての話は,これまでは寡聞にして聞いたことがなく,よく知りません。

 しかしFermionもHiggsメカニズムで質量を獲得するとしても,クォークが核子質量(約1Gev)の1/3以上のレベルになるには程遠い値です。

 質量ゼロのクォークの模型にカイラル(Chiral)対称性があるのはよく知られていますが,記事によると,それの破れはクォーク凝縮と呼ばれると書かれています。

 これも寡聞にして,そう呼ばれることなどは知りませんでした。

 そして宇宙創生期の高温・高密下ではクォーク凝縮がまだ完全には達成されていないので,現在よりも質量が小さいと予想されます。

 今回は質量が既知のφメソン(meson:中間子)について,高密度下でその質量のわずかな減少が確認された,という実験結果が記事に示されています。

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2006年12月16日 (土)

電流によって発生する光子の個数分布

 今日は量子電磁力学(QED)に基づいて,電流密度が存在するときに発生する輻射場における光子の個数分布を考察することにより,量子電磁力学の一端を垣間見てみましょう。 

 ゲージ(dauge)としては,"輻射ゲージ(radiation gauge)=Coulombゲージ":∇=0 を採用します。

 

 解くべき場の方程式は,□Tとなります。

 

 ただし,□≡∂2/∂t2-∇2はD'Alembertian)であり,T は電流密度の横成分,つまり∇T0 を満足する成分です。

 

 場の方程式を解けば,形式解として,

 (x)=in(x)+∫-∞t4yDret(x-y)T(y)

 =out(x)+∫t4yDadv(x-y)T(y)なる表式を得ます。

 

ただし,Dret(x-y),Dadv(x-y)はそれぞれ遅延Green関数,先進Green関数です。

 

ここでのGreen関数は□の逆演算子:□-1を意味します。(□-1微分演算子□の逆なので積分演算子です。) 

 

in(x),out(x)は,それぞれ,In-field(入射場)とOut-field(射出場)であり,それぞれ無限の過去と無限の未来での漸近場を示します。

 

ただし,くりこみ定数を考慮しない表現をしています。

 

ここで,D関数と呼ばれるGreen関数:D(z)を.

 

D(z)≡Dret(z)-Dadv(z)

={i/(2π)3}∫d4kθ(k0)δ(k2)(e-ikz-eikz)

 

によって定義します。

 

すると,in(x)+∫-∞t4yDret(x-y)T(y)

out(x)+∫t4yDadv(x-y)T(y)から,

 

out(x)=in(x)+∫4yD(x-y)T(y)

と書けます。

そして"散乱行列=S行列"の演算子:S^をS^-1in(x)S^≡out(x)で定義します。

 

すると,S^-1in(x)S^=in(x)+∫d4yD(x-y)T(y)

なる等式が成立します。

k空間(運動量空間)で考察した方が容易なのでT をFourier展開形で表わしておきます。

 

横電流はT(y)≡∫0dk0/(2π)∫d3λ=12ε(k,λ){j(k,λ)e-iky+j*(k,λ)eiky}]/(2π)3/2と表現されます。

 

in(x)=∫d4(2k0)1/2θ(k0)δ(k2)[Σλ=12ε(k,λ){a^in(k,λ)e-ikx+a^in+(k,λ)eikx}]/(2π)3/2と展開します。

 

同様に,out(x)=∫d4(2k0)1/2θ(k0)δ(k2)[Σλ=12ε(k,λ){a^out(k,λ)e-ikx+a^out+(k,λ)eikx}]/(2π)3/2です。 

そこで,a^out(k,λ)=a^in(k,λ)+ij(k,λ)/(2||)1/2,また

S^-1a^in(k,λ)S^=a^in(k,λ)-ij(k,λ)/(2||)1/2 です。

 

それ故,S^-1a^in+(k,λ)S^=a^in+(k,λ)-ij*(k,λ)/(2||)1/2

も成立します。

 

ただし,k2=0 です。 

a^in(k,λ)はS^-1a^in(k,λ)S^なる変換により,c-数である電流密度の値だけシフトされるという形になっています。

 

そこでS^を陽に解くことができます。

そのために,線形演算子A^,B^に対して,[A^,B^]がc-数のときは,

B^A^e-B^=A^+[B^,A^]なる公式が成立するのを利用します。

 

A^=a^in(k,λ),S^=-B^,[A^,B^]=ij(k,λ)/(2||)1/2なら,

S^-1a^in(k,λ)S^=a^in(k,λ)-ij(k,λ)/(2||)1/2

が成立します。

 

また,[a^in(k,λ),a^in+(k',λ')]=δ3('λλ'です。

 

そこで,B^がa^inとa^in+の線形結合であると仮定して,

S^=exp [i∫d3λ=12(k,λ)a^in+(k,λ)

+j*(k,λ)a^in(k,λ)}/(2||)1/2]とおけば,

散乱行列の演算子S^として整合的であることがわかります。

In-stateで挟まれたS行列要素を評価するためには,S^を正規順序(normal-ordering)にしておくのが便利です。

 

こんどは,[A^,B^]がc-数のとき,A^+B^=eA^B^-[A^,B^]/2なる公式を用います。

 

S^は3つの指数関数の積として,

 

S^=exp[i∫d3λ=12(k,λ)a^in+(k,λ)}/(2||)1/2]

exp [i∫d3λ=12*(k,λ)a^in(k,λ)}/(2||)1/2]

exp[-∫3λ=12|j(k,λ)|2}/(4||)]

 

と表わされます。

こうしてS^の陽な形がわかったので,特殊な偏極λ12,..λnを持つn個の光子が電流密度 J によって,ある3n次元のk空間の領域に輻射として生成される確率Pnを計算することができます。

 

まず,Pn(,λ12,..,λn)

≡Σk∈R |<k1λ1,k2λ2,..,knλn;out|0;in>|2

=Σk∈R |<k1λ1,k2λ2,..,knλn;in|S^|0;in>|2

と書きます。

先のS^の表現を代入して,上の式に寄与するS^のn個の生成演算子とゼロ個の消滅演算子の項で展開すると,

 

n(,λ12,..,λn)

=exp[-∫3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||)]

Σk∈R |<k1λ1,k2λ2,..,knλn;in|(1/n!)

[i∫3λ=12(k,λ)a^in+(k,λ)}/(2||)1/2]n|0;in>|2

 

と書くことができます。

もし与えられた波数空間の領域で任意の偏極を持つ光子の輻射確率を求めたいのであればさらに簡単化できます。 

まず,ゼロ個の生成は真空で挟んだ値として,

0exp [-∫3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||)]

とします。

 

そして,n個生成は

n()≡P0Σλi=12Σk∈R |<k1λ1,k2λ2,..,knλn;in|(1/n!)

[i∫3λ=12(k,λ)a^in+(k,λ)}/(2||)1/2]n|0;in>|2

です。

 

n()=0Σα|<α;in|(1/n!)[i∫R 3λ=12(k,λ)a^in+(k,λ)}/(2||)1/2]n|0;in>|2

{P0/(n!)2}<0;in|{[∫R 3λ=12*(k,λ)a^in(k,λ)}/(2||)1/2]n[∫R 3λ=12(k,λ)a^in+(k,λ)}/(2||)1/2]n|0;in>

 

となります。

 

結局,n()=P0[∫R 3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||)]n/n!が得られます。

を全空間に取ったときのPn()を単にnで表わせばこれはPoisson分布になることがわかります。

 

それ故,輻射される光子の個数の平均値を<n>と書けば,この平均個数は電流密度の強さによって定まります。

 

<n>=3λ=12|j(k,λ)|2}/(2||)=Σn=0nPn

なる式です。

 

n確かにn[e-<n><n>]/n!というPoisson分布となり,確率の条件であるΣn=0n1を満たします。

また,輻射の全エネルギーEは,

E=Σn=0Σλi=12Σk|<k1λ1,k2λ2,..,knλn;in|S|0;in>|2(k10+k20+..+kn0)=<0;in|S^-1H^0(in)S^|0;in>

で与えられます。

 

ここで,H^0(in)≡∫d3k{k0in+(k,λ)a^in(k,λ)}は自由輻射場のHamiltonianです。 

S^-1a^in(k,λ)S^=a^in(k,λ)+ij(k,λ)/(2||)1/2,かつ

S^-1a^in+(k,λ)S^=a^in+(k,λ)-ij*(k,λ)/(2||)1/2

(ただしk2=0 )を代入すれば,

 

エネルギーはE=(1/2)∫3λ=12|j(k,λ)|2}となります。

 

これは,電流密度から放出されるエネルギーEについての古典的結果と一致します。

 

(※古典論では,電流から放出されるエネルギーEは,

E=(1/2)∫d3(T22)(1/2)∫3λ=12|j(k,λ)|2}

です。※)

  

参考文献;J.D.Bjorken S.D.Drell「Relativistic Quantum Fields」(McGraw-Hill Books Company)

 

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2006年12月14日 (木)

演算子のスペクトル展開の例(空洞光子の量子場)

 2006年8/19 に「スペクトル展開と超関数(量子力学)」という量子力学の演算子のスペクトル展開に関する記事を書きました。

 これを再掲し,その応用として空洞輻射の光子(photon)を量子化した調和振動子の場としたときの密度演算子ρのスペクトル展開の例をあげてみます。

(※再掲記事開始)

 まず,ある自己共役な線形演算子Aの固有値は離散的として,それをλn(n=1,2,..)とし,その固有状態のケットベクトルを|λn>とします。

 

 簡単のため,縮退がないとすると,m≠nのとき<λm|A|λn>=λm<λmn>=λn<λmn>でλm≠λnより,|λm>と|λn>は直交していて<λmn>= 0 です。

 

 一般に離散的固有値のみのときは<λmn>=δmnとHilbert空間のベクトルとして直交規格化することができます。

 そして固有状態のベクトル系が完全系であれば,任意の状態のベクトル|ψ>は|ψ>=∑nn><λn|ψ>と展開できます。

 

 特にA|ψ>=∑nn><λn|ψ>=∑nn>λn<λn|ψ>と書くこともできるので,Pn≡|λn><λn|により射影演算子を定義すれば,形式的にA=∑nλnnと表すことができます。

 

 これを演算子のスペクトル展開と言います。

 一方,Aが位置Xや運動量Pのような連続固有値を持つ場合はどうでしょうか?

 

 運動量Pは閉じ込められたり束縛状態の場合には離散固有値も取りますが,自由粒子では連続固有値しか取りませんね。

 このときのAの連続固有値をλ,固有ベクトルを|λ>とするとλ≠λ'なら,やはり<λ|λ'>=0 ですが,この場合は一般に固有ベクトルはノルムが有限でないため,Hilbert空間のベクトルではないので直交規格化することはできません。

 

 例えば,X表示では<X|X'>=δ(X-X')というDiracのデルタ関数という,"関数とはいえないもの=超関数"という形でしか,直交規格化をうまく表現できません。

 展開の方も,形式的には,|ψ>=∫|λ><λ|ψ>dλ,また,A|ψ>=∫|λ>λ<λ|ψ>dλと書き,

 

 P(λ)≡|λ><λ|と定義して,A=∫λP(λ)dλと書いて,これを演算子のスペクトル展開である,としてもいいように思えます。

 

 しかし,P(λ)=|λ><λ|なるものを記号的に射影演算子と定義してもこれ自身が"長さ=ノルム"が有限ではない超関数的な実体でHilbert空間の上の有限な演算子,または物理量という資格がありません。

 

 A=∫λP(λ)dλという形式的展開を表わす右辺の積分もLebesgueやRiemannの意味での積分という通常の定義からはみだしています。

 そこで,Aの固有値がλとλ+dλの間のP(λ)dλ=|λ>dλ<λ|に相当するものとして,dE(λ)なるものをスペクトル射影演算子として定義します。

 

 そして,Stieltjes積分を使って|ψ>=∫|ψ>dE(λ)と展開し,またA=∫λdE(λ)と書けば,やっと演算子のスペクトル展開になるわけです。

 超関数を気持ち悪いと考えないなら,DiracのオリジナルのA=∫λP(λ)dλ=∫|λ>λ<λ|dλを演算子のスペクトル展開としても別にかまわないと思います。

 

 いずれの扱いでも積分の定義を拡大解釈することにより,離散的な場合をも含めて機能的に扱うことができます。

 

(再掲記事終了※)

 さて,ここで量子論の演算子のスペクトル展開の例として単一モード(単一運動量)の空洞輻射の光子の熱励起を個数状態で展開した密度演算子(密度行列)ρ≡Σnn|n><n|を考えてみます。

 統計力学によれば,光子がn個励起される確率は,

 Pnexp{-En/(kBT)}/[Σn=0exp{-En/(kBT)}]

 で与えられます。

 

 そして,量子化された場の調和振動子としての単一モードの光子のエネルギーは,Planck定数をh,hc≡h/(2π)とすれば,

  

 n=(n+1/2)hcω (n=0,1,2..)で与えられます。

  

 そこで,U≡exp{-hcω/(kBT)}とおけば,

 n個の光子が励起される確率は,Pn=Un0n=(1-U)Un

 =[1-exp{-hcω/(kBT)}]exp{-nhcω/(kBT)} です。

 したがって,密度演算子は,ρ≡ΣPn|n><n|

=[1-exp{-hcω/(kBT)}]exp{-nhcω/(kBT)}|n><n|

と書けます。

 

 これが量子論の密度演算子ρのスペクトル展開ですが,完全系をなす"エネルギー固有状態=個数状態"によって,ρのあらゆる行列要素を求めると,

<m|ρ|n>=Pnδmnとなり,行列ρは対角要素しか持ち得ません。

<m|ρ|n>は演算子ρのあらゆる情報を網羅しているので,実は密度演算子ρはPnのnを演算子のn^=a^+a^に変えた式で,

 

ρ=Pa^+a^=[1-exp{-hcω/(kBT)}]exp{-hcω(a^+a^)/(kBT)}

と書くことができます。

 

これは,個数演算子:n^=a^+a^(=Σn=0n|n><n|)の固有状態によるスペクトル展開の形で表現された演算子としての,

 

密度演算子:ρ≡Σnn|n><n|が,

  

スペクトル展開の逆演算としてn^=a^+a^の関数として直接,陽に書けるようにできる例になっています。

  

参考文献;Loudon 著(小島忠宣・小島和子 共訳)「光の量子論」(内田老鶴圃)

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2006年12月13日 (水)

常微分方程式の解の存在定理⑤(一般解の存在(2))

解の延長を利用して領域内での一般解の存在定理の証明を完成させ,その後,dy/dx=f(x,y)の右辺が2重ベキ級数に展開できる際には,

  

この微分方程式がy=Σaν(x-x0)νという形のベキ級数解(実解析解)を持つことをコワレフスカヤ(Sonya.Kowalewskaja)の優級数の方法によって証明すること,などを予定していました。

 

もっとも,複素関数であれば正規形の方程式右辺が解析的であれば,微分方程式の解も解析的であることは,ほぼ自明なのですが。。。。

 

しかし,引越し準備のどさくさで,1973年2月当時にそうした論題について詳述していたノートを紛失してしまいました。

 

命の次に大切なノートの1つだったので,これはとても悲しいです。

 

いつの日か,内容の詳細を自力でもう一度思い出してみたいです。

 

というわけで,この常微分方程式の存在定理の関連は終了して,以後は物理関係に話題の中心を戻す予定です。 

 

昨日はショックが大きいのと睡眠不足が嵩じて,狭心症の発作のような症状になって酸欠のようになり,一人で七転八倒して,

 

このまま死ぬのか?とも思いましたが,睡眠薬を飲んで長時間の睡眠後目が覚めてみると,何とか生きているようです。

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2006年12月12日 (火)

1988年のオードリー

 今年も暮れになったので,例年通りユニセフから募金の申し込み書が送られてきました。

 数年前に,ほんの気まぐれで募金したのですが,つい習慣になって大体毎年2万円くらいの偽善活動をしています。

 去年などは,借金まみれで年が越せるかどうかわからなかったのに,見栄を張って借金までして募金しましたが,今年は年が越せそうなので,どうせ飲み代に消える分を募金しました。

 こういうことは,人知れずする行為で,自慢たらしく自分から述べることではないのでしょうが,まあ慈善活動ではなく,色々な罪ほろぼしの意味の偽善活動ですから「,許されるかなぁ?」と思います。

 それにしても,今回,送られてきた封書の中の,1988年の58歳か59歳でユニセフ親善大使になって子供を抱いているオ-ドリー・ヘプバーンの写真は,

 「ローマの休日」の彼女に勝るとも劣らないくらい美しいと感じるのは私だけでしょうか。

 これから4年くらい後の1993年1月に彼女は亡くなっています。

 ここに,こういう写真を掲載するとユニセフから著作権か肖像権でクレームが来るかもしれませんね。

         

       http://www.unicef.or.jp/top1.html

  彼女とか,プリンセス・ダイアナとかの活動は,所詮は「蟻の街のマリア(北原怜子さん)」などと同じく,お嬢様のお遊びかもしれませんが,だからこそ心打たれるものもあります。

 例えば,著名人のはした金であるだろう1千万円の災害援助の寄付金と,私の借金までした身銭を切る2万円の募金,綺麗事を言ってみても,結局は額が大きいほうが喜ばれ,より役に立つのです。

 ですから,偽善活動でも,大いにお勧めしたいものです。

 世界は博愛では救えないのか!!

 過激なフランスの天才数学者エヴァリスト・ガロアの親友:オーギュスト・シュヴァリエは空想的社会主義のサン・シモン主義者で,過激な反政府活動をするガロアの身を案じていました。

 彼は,本当に博愛で世界を救えると思っていましたが,

 ガロアは,愛というものは憎悪の後に来るもので,友に"憎悪が世界を変えた後に愛が来るのだ。”と主張しましたが,この友には理解できませんでした。

(※↓レオポルド・インフェルト著市井三郎訳「ガロアの生涯~神々の愛でし人」)

 ガロアの生涯―神々の愛でし人

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2006年12月11日 (月)

常微分方程式の解の存在定理④(連立方程式,高階の方程式)

連立常微分方程式系:dyi/dx=fi(x,y1,y2,..yn)(i=1,2,..,n)についての解の存在定理を考えます。

 

これは,(y1,y2,..yn),(f1,f2,..fn)と列ベクトル表示をすれば,d/dx=(x,)と書けます。

 

の定義域である閉領域DをD=I×,I≡[x0-a,x0+a],≡[0,0]とし,Dの上でのの連続性を仮定すれば,容易にDが2次元の領域の場合に還元できます。

 

そこで,この"拡張された解の存在定理"の成立自体は,ほぼ自明ですから証明は省略します。

 

この場合,"ノルム=n次元の絶対値"について,

|f(,1)-(x,)|<k|y1|なるLipschitz条件

を仮定すれば解の一意性も成立します。

 

そして,高階(n階)の常微分方程式:

n/dxn=f(x,y.dy/dx,d2y/dx2,..,dn-1y/dxn-1)は,

 

1=y,y2=dy1/dx,y3=dy2/dx,..,yn=dyn-1/dxとおき,最後にdyn/dx=f(x,y1,y2,..yn)とすれば,

  

上述の連立方程式:d/dx=(x,)に帰着します。

 

そこで,高階の常微分方程式の解の存在と一意性の問題は,連立方程式のそれに帰着します。

 

結局,1階の常微分方程式の「解の存在と一意性」の問題に還元されることがわかりました。(以上)

  

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2006年12月 9日 (土)

常微分方程式の解の存在定理③(一意性,一般解の存在(1))

解の存在定理において,f(x,y)の連続性の他にLipschitz条件:

 

"ある正の数kが存在して'(x,y1),(x,y2)∈D⇒|f(x,y1)-f(x,y2)|<k|y1-y2|'が成り立つ。"

 

という条件が満足されるなら,

 

したがって,例えば,"Dの中でf(x,y)が連続でyについて連続な偏微分係数を持つなら,

  

dψ(x)/dx=f(,ψ(x));ψ(0)=y0を満たす解ψ(x)は

一意的(unique)になります。

 

その理由としては,

 

上記の初期値問題の解:ψ()はψ()=y0+∫x0x{f(,ψ())}dxを満たしますが,もしもその他にψ1()=y0+∫x0x{f(1())}dxを満たすψ1()が存在するなら,Lipschitz条件から

  

|ψ()-ψ1()|≦|∫x0x|f(1())-f(1())|dx

<kα|ψ()-ψ1()| なる不等式が成立します。

 

そこで,kα<1 となるようにαを選ぶと,(1-kα)|ψ()-ψ1()|<0 ,かつ (1-kα)>0 となります。

 

しかし,これは矛盾を生じることになるので,ψ()と異なるψ1(x)の存在は不可能となるからです。

 

そこで,f(x,y)が領域Rにおいて連続で,かつLipschitz条件を満足するとき,y0のいろいろな値に対してdy/dx=f(x,y)を満たし(x0,y0)を通る一意的な解:ψ()が存在することになります。

 

しかし,解ψ()はパラメータy0のみに依存するのでしょうか?

  

すなわち,これらのy0に依存する解ψ()をφ(x,y0)と書くことができますが,それはDにおける別のx,例えばx=x1における別の初期条件y|x=x1=y1;(x1,y1)∈Dに対する一意解の全てを含むか否か?

 

という問題が残っています。

  

これは,「一般解の存在定理」という形で解決されます。

 

まず,1階常微分方程式について厳密な意味での一般解の定義を与えておきましょう。

 

"ただ1つの任意定数Cを含むdy/dx=f(x,y)の解:

y=φ(x,C)が存在して,

 

Cに適当な値を与えることにより,f(x,y)が1価連続でLipschitz条件を満足する領域Dに含まれる全ての"特殊解=初期値問題の一意解"を表現することができるとき,

 

このy=φ(x,C)をDにおける1階常微分方程式:dy/dx=f(x,y)の一般解という。"

 

と定義されます。

 

「一般解の存在定理」を証明するために,まず"補助定理1=解の延長定理"を与え,証明しましょう。

  

(補助定理1):方程式dy/dx=f(x,y)の右辺の関数f(x,y)が有界な閉領域Dで1価連続でLipschitz条件を満足すると仮定する。

  

そして,φ(x)をDの内部のある点(x0,y0)を通り,有限区間:a<x<bで定義されるdy/dx=f(x,y)の一意解とする。

  

もちろん,a<x<bを満たすxに対して(x,φ(x))∈Dである。

  

このときφ(a+0),φ(b-0)が存在して,これらをそれぞれφ(a),φ(b)と定義すればφ(x)はa≦x≦bで定義されるdy/dx=f(x,y)の解となる。

  

こうして解は閉区間:[a,b]へと"延長"される。

  

さらに,点(a,φ(a+0))(または(b,φ(b-0)))がDの内点であれば,解φ(x)は,さらにaの左(またはbの右)に延長される。

 

これを証明します。

 

(証明):φ()=y0+∫x0x{f(,φ())}dxですから,

a<x1<x2<bなら,φ(x2)-φ(x1)=∫x1x2{f(,φ())}dx

です。

 

ところが,f(x,y)は有界な閉領域Dの上で連続なので,この閉領域Dにおいて|f(x,y)|≦MなるM>0 が存在します。

 

したがって,|φ(x2)-φ(x1)|≦M(x2-x1)です。

 

そこで,x1,x2→a+0 に対して(x2-x1)→ 0 によって,|φ(x2)-φ(x1)|→ 0 ですから,Cauchyによりφ(a+0)が確かに存在します。

 

同様にφ(b-0)も存在します。

 

xの関数ψ(x)を,x∈(a,b)ならψ(x)≡φ(x),x=a,bならψ(a)≡φ(a+0),ψ(b)≡φ(b-0)と定義します。

 

こうすれば,x∈(a,b)のときにはψ()=y0+∫x0x{f(,ψ())}dxで,x=bではψ(b)=y0+lim∫x0b-ε{f(,ψ())}dxです。

 

そして,f(,ψ())はx=bで連続なので∫x0x{f(,ψ())}dxはx=bに対しても存在して連続です。

 

それ故,狭義の積分としてもψ(b)=y0+∫x0{f(,ψ())}dxと書くことができます。

 

そして,x=aに対しても同様にψ(a)=y0+∫x0a{f(,ψ())}dxと書けます。

 

(,ψ())は閉区間:[a,b]で連続ですから,∀x∈[a,b]に対して(d/dx)[∫x0x{f(,ψ())}dx]=f(,ψ())です。

 

結局,∀x∈[a,b]に対しdψ()/dx=f(,ψ()),かつψ(0)=y0となり,解はDに含まれる閉区間:[a,b]に延長されます。

 

次に,点(b,ψ(b))がDの内点なら,解の存在と一意性の定理により,点(b,ψ(b))を通りある区間[b-β,b+β](β>0)で定義されたdy/dx=f(x,y)の解:y=ψ1(x)が存在します。

 

ψ1(x)の[b-β,b]の部分は一意性の定理よりψ()と一致します。

 

そこでχ(x)をx∈[a,b]のときχ(x)≡ψ(),x∈[b,b+β]のときにχ(x)≡ψ1()と定義します。

 

こう定義すれば,y=χ(x)は∀x∈[a,b+β]についてdy/dx=f(x,y)を満足し,しかも全ての点で連続です。

 

それ故,y=χ(x)が点(x0,y0)を通るx∈[a,b+β]で定義された唯一の解であることが示されました。

 

同様にして,点(a,ψ(a))がDの内点ならあるα>0 が存在してy=ψ()は[a-α,b]まで延長されます。(証明終わり)

 

今日は少し疲れているのでここまでにします。

 

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2006年12月 7日 (木)

常微分方程式の解の存在定理②

 それでは「解の存在定理(初期値(Cauchy)問題)」を証明します。

 

 まず,存在定理を明確に述べるところから始めます。

 

 [解の存在定理]:ある2次元の単連結な閉領域Dがあるとする。

 

 特にDを矩形閉領域:(I×J):I≡[x0-a,x0+a],

 J≡[y0-b,y0+b]としても,一般性を失わないので

 そう設定する。

 

 このときDにおいて関数f(x,y)が連続なら,正の数Mが存在して,

この閉領域で|f(x,y)|≦Mとなるが,α=min(a,b/M)とおけば,

[x0-α,x0+α]の上で定義された点(x0,y0)を通る1階常微分方程式:

dy/dx=f(x,y)の解が存在する。

 

 以下,証明です。

  

  

(証明)閉区間:[x0,x0+α]をn個の小区間に分割して,その分点を,

012<...<n とします。

 

 そして,点P0(x0,y0)から勾配がf(x0,y0)の直線を引き,

x=x1との交点をP1(x1,y1)とします。

 

 このとき,|f(x,y)|≦Mなので,|y-y0|≦M|x-x0|によって,

0-M(x-x0)≦y≦y0+M(x-x0);x0x≦x1です。

 

 そこで,線分P01y-y0=-M(x-x0),y-y0=M(x-x0),

x=x0+αで囲まれた三角形Tの内部にあります。

 

次に1(x1,y1)から勾配がf(x1,y1)の直線を引き,x=x2との

交点をP2(x2,y2)とします。

 

前と同様12も三角形Tの内部にあることがわかります。

 

以下,同様にk(xk,yk)から勾配がf(xk,yk)の直線を引き,

x=xk+1との交点をPk+1(xk+1,y k+1)とすれば,得られた折れ線:

012...Pnは確かにTの内部にあります。 

 

この得られた折れ線をy=φ(x)とすると,φ(0)=0,φ(k)=k

(k=1,2,...,n)であり,k-1≦x≦kでは,

y=φ(x)=φ(k-1)+f(k-1,φ(k-1))(x-k-1)です。

 

そこで,k-1≦x≦kではdy/dx=φ'(x)

=f(k-1,φ(k-1))です。

 

なお,x=0では右微分係数のみ:

lim h→+0 [{φ(x0)+h)-φ(x0)}/h]=f(0,y0),

 

x=n=x0+αでは左微分係数のみ:

lim h→+0 [{φ(x0+α-h)-φ(x0+α)}/(-h)]

f(n-1,yn-1) です。

 

その他の分点では,一般に左微分係数と右微分係数が異なるので,

一般には微分可能ではありません。

 

ここで,(x,y)は閉領域Dで一様連続故,任意の正の数εを与える

と,あるδ>0 が存在して,Dの任意の2点(x1,y1),(x2,y2)に対し,

 

"|x1-x2|≦δかつ|y1-y2|≦δ⇒|(x1,y1)-f(x2,y2)|≦ε"

 

が成立します。

 

そこで,max(kk-1)≦min(δ,δ/M)となるように幅を取って

nを調節すれば,xk-1≦x≦kを満たすxに対して,

 

(x-k-1)≦δ/Mであり,|φ()-φ(k-1)|≦M(x-k-1)

ですから,|x-k-1|≦δ,かつ|φ()-φ(k-1)|≦δです。

 

したがって,k-1≦x≦kなるxに対して,

|(xk-1,φ(k-1))-f(x,φ())|≦ε

です。

 

分点以外では,φ'(x)=f(xk-1,φ(k-1))ですから,

|φ'(x)-f(x,φ())|≦εとなります。

 

このことから,φ(x)を1階常微分方程式dy/dx=f(x,y)の"

ε-近似解"と呼びます。

 

ε>0 は任意であり,εに対してδ0min(δ,δ/M)>0 は常に存在する

ので,max(kk-1)→ 0 に対しφ'(x)→f(x,φ())です。

 

閉区間:[x0-α,x0]に対しても同様にε-近似解を構成できます。

 

次にε1ε2>...>εν>...なる正の数の数列{εν}をν→ ∞ に対してεν 0 となるように作ります。(例えばεν1/ν)

 

このとき,[0-α,x0+α]で各ενに対してεν-近似解が存在するので,それをφν(x)とすると,|φν(x)-φν(0)|≦M|x-0|≦bですから|φν(x)|≦|y0|+bが成立します。

 

また,任意のνについて[0-α,x0+α]に属する任意の2点x1,x2

対して,|φν(1)-φν(2)|≦M|x12|です。

 

そこで,2n個の区間0-α=x'nx'n-1<...<x'2x'1012<...<xn-1n=x0+αに対し,φν(0)=0ν(k)=k

(k=1,2,..,n)です。

 

特に,xk-1≦x≦kでは,

φν(x)=φν(k-1)+f(k-1ν(k-1))(x-k-1) です。

 

また,φν(x'k)=k (k=1,2,...,n)であり,x'k≦x≦x'k-1

ではφν(x)=φν(x'k-1)+f(x'k-1ν(x'k-1))(x-x'k-1)

です。

 

そして,折れ線(x,φν(x))は全てDの中にあります。

 

今,[0-α,x0+α]の任意の2点x,x'を取れば,2n個の小区間の

うちにそれが属するどれか2つの小区間がありますから,

ν(x)-φν(x')|≦M|x-x'|が成立します。

 

したがって,ε>0 が任意に与えられたとき,

|x-x'|<ε/Mならば|φν(x)-φν(x')|<εです。

 

関数列{φν(x)}は無限関数列です。

 

そして,以上から,これは一様有界かつ同等連続ですから,

Ascoli-Arzalaの定理」によって,[0-α,x0+α]の上で一様収束

するν(x)}の部分列が存在するはずです。

  

その極限関数をψ(x)とすると,φν(x)が[0-α,x0+α]の上で連続ですからψ(x)もまたその閉区間において連続です。

 

ここで,各々のεν-近似解:φν(x)に対し,2n個の分点を除く

微分係数:φν'(x)が存在するxに対して,

ν(x)≡φν'(x)-f(ν()) とおきます。

 

分点は有限個で,φν()は分点においても連続ですから分点での

φν'(x)をどんな有限値に設定しても結果は同じです。

 

それを便宜上何らかの有限値におくと,  

xk-1+εxk-ε'φν'(x)dx=φν(k-ε')-φν(k-1+ε)

と書けます。

 

ε→0,かつε'→0 に対し,φν(k-ε')→ φν(k),かつ

φν(k-1+ε)→ φν(k)が成り立ちますから,

xk-1xk'φν'(x)dx=φν(k)-φν(k-1) が成立します。

 

そこで,φν'(xk)をどんな有限値に取っても,

x0φν'(x)dx=φν(x)-φν(0)ですから,結局

φν(x)=φν(0)+∫x0x{f(ν())+hν(x)}dx

と書けます。

 

ここで便宜上分点ではh(k)=0 としておきます。

 

|hν(x)|=|φν'(x)-f(ν())|≦ενですから,

ψ(x)に収束する{φν(x)}の部分列を{φνi(x)}とすると,

φνi(x)=φνi(0)+∫x0x{f(νi())+hνi(x)}dxであり,

かつ|hνi(x)|≦ενiです。

 

このとき,|∫x0x{f(,ψ())}dx-∫x0x{f(νi())+hνi(x)}dx|≦|∫x0x{f(,ψ())}dx-∫x0x{f(νi())}dx|+|∫x0x |hνi(x)|dx|です。

 

i→ ∞ の極限を取ると,φνi()はψ(x)に一様収束しますから,

[0-α,x0+α]の上で任意のδ>0 に対し,N1(δ)が存在して"

i>N1(δ)⇒|φνi()-ψ()|<δ"が成立します。

 

予め,与えられたε>0 に対し,"|φνi()-ψ()|<δ(ε)⇒|f(νi())-f(,ψ())|<ε/(2α)"が成立しますから,

 

"i>N1(ε))⇒|∫x0x{f(,ψ())}dx-∫x0x{f(νi())}dx|<ε/2 "

 

となります。

 

同じεに対して,2(ε)が存在して"i>N2(ε)⇒|∫x0x |hνi(x)}dx|<ε/2"も成立するので,N(ε)≡max{1(ε)),N2(ε)}とおけば

 

"i>N(ε)⇒|∫x0x{f(,ψ())}dx-∫x0x{f(νi())+hνi(x)}dx|<ε"です。

 

これは"i>N(ε)⇒νi()-[y0+∫x0x{f(,ψ())}dx]|<ε"が成立することを意味しています。

 

一方,i→ ∞ に対してφνi()→ ψ()ですから,

あるN'(ε)が存在して,

 

"i>N'(ε)⇒|ψ()-[y0+∫x0x{f(,ψ())}dx]|<2ε"

です。

 

それ故,ψ()=y0+∫x0x{f(,ψ())}dxが成立します。

 

ψ()は[0-α,x0+α]で連続であり,(x,ψ())はDの内部にあるので(,ψ())も[0-α,x0+α]の上で連続です。

 

したがって,[0-α,x0+α]の上でψ'(x)=(,ψ())が成立し,しかも明らかにψ(0)=y0 です。

 

かくして,[0-α,x0+α]の上で,点(x0,y0)を通る

dy/dx=f(,y)の解の存在が証明されました。(証明終わり)

 

 

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2006年12月 6日 (水)

常微分方程式の解の存在定理①(アスコリの定理)

 前の2つの記事は,35年ほど前の大学3年の頃に凝っていた存在定理関連の論題について,当時,大学数学科で講義を受けた際に綴ったノートを参考にして書きました。

 

 今回も,そのころ最も夢中になっていた"初期値問題=常微分方程式の解の存在定理"について,何回かに分けて述べてみたいと思います。

 

 ただし解の存在定理のみであり,いわゆる通常の教科書に普通に載っている"Lipshitz(リプシッツ)条件"を仮定した"解の存在と一意性の定理"ではありません。

 

 Lipshitz条件は,解の一意性の十分条件ですが,かつて日本人,岡村博氏により,解の一意性の必要十分条件が発見されたことは有名です。

 

 これの内容については読んだことはありませんが,岡村博 著「微分方程式序説」に掲載されていると思います。

(※最近,復刻されたようで,この本の新装版が神保町の三省堂書店5階にもありました。)

 

 そこで,まずPeanoの存在定理でもいいのですが,その代わりにこれと同等なEuler-Cauchyの逐次近似法(折れ線法)による存在定理を証明しようと考えたものがあるので,それを述べたいと思います。

 

 まず,問題の定式化をします。

 

 "ある2次元の単連結領域(domain):Dがあるとします,

 

 特にDを矩形閉領域(I×J):I≡[x0-a,x0+a],

 J≡[y0-b,y0+b] としても一般性を失わないので,

  D≡I×Jとします。

 

 Dにおいて関数f(x,y)が連続なら正の数Mが存在して,

 この閉領域では|f(x,y)|≦Mとなりますが,

 

 このとき,α=min(a,b/M)とすれば,

 [x0-α,x0+α]の上で定義された点(x0,y0)を通る

 1階常微分方程式:dy/dx=f(x,y)の解が存在する。"

 

 というものです。

 

 結論は,解の存在のみであって一意性は考えていません。

 

 そして,今日は準備として"1つの補題=Ascoli-Arzela の定理"を証明します。この定理は次のようなものです。

 

 "Gを有界な区間:Iの上で定義された関数;g(x)のある無限個の集合とします。

 

 GがIの上で一様有界かつ同等(同程度)連続なら,GはIの上で一様収束するような関数列{gn(x)}n=1,2,..を含む。"

 

 という定理です。

 

 ただし,一様有界の定義は,

  

 "有界な区間Iの上で定義された関数g(x)の集合Gがあるとき,

 ∀g(x)Gに対して,Iの上で|g(x)|≦Mとなる共通のMが存在する

 なら,GをIの上で一様有界であるという。"

  

 というものです。

 

 また同等連続とは,

 

 "上と同じIとGで,ε>0を任意に与えたとき,

 ∀g(x)Gについてεだけに依存するGにおいて共通のδ>0

 が存在して,∀x1,x2∈I,|x1-x2|<δ⇒|(x1)-g(x2)|<ε

 が成立するなら,GをIの上で同等連続であるという。"

 

 と定義されます。

 

 以下,証明です。

 

 I に含まれる有理数の全体QIを考えると,これは可算無限集合ですから,

 それに添字をつけて順序付けすることができます。

  

 それを,r1,r2,..,rn,..∈QIとします。

  

 まず,H≡{g(r1)|(x)}とおきます。

  

 これはGに属する任意関数g(x)に対して,g(r1)で与えられる値の集合を意味するものです。

 

 H1は有界無限集合ですから,もちろん集積点を持ちます。

  

 そして,Hの中から集積点に収束する全てのg(r1)の集合のうちの,ある1つの集積点に収束する部分列としてg11(r1),g12(r1),..,g1m(r1),..={g1m(r1)}m=1,2,.を取り出すことができます。

  

 そこで,これに対応するg11(x),g12(x),..,g1m(x),..

 ={g1m(x)}m=1,2,..という関数列を取り出して,

   

 次にH2{g1m(r2)|m=1,2,..}を作ります。

   

 そして,これらに対しても収束する部分列g21(r2),g22(r2),..,g2m(r2),..={g2m(r2)}m=1,2,..を取り出します。

   

 さらに,g21(x),g22(x),..,g2m(x),..={g2m(x)}m=1,2,..を作っていきます。

   

 これらを繰り返すことによって,∀kに対してGの中の関数列であって,x=r1,r2,..,rkに対して収束する{gkm(x)}m=1,2,..をつくることができます。

  

 ここでg(x)≡gnn(x)と定義すると,{g(x)}n=1,2,..は全てのQIの要素に対して収束します。

  

 よって任意の正の数ε>0 を与えるとrk∈QIに対して,ある正の整数N(ε,rk)が定まり,

  

 ∀n,m>N(ε,rk)に対して|g(rk)-g(rk)|<ε/3

 となります。

  

 一方,GはIの上で同等連続ですから,ε>0 だけによって決まるδ>0 が存在して,∀k∈Nに対して|x1-x2|<δ⇒|(x1)-g(x2)|<ε/3が成立します。

  

 そして,区間Iをどの区間の長さもδより小さい小区間の集合として,

 I1,I2,.,Ipに分割します。

  

 そして,各区間kで1つの有理数を選び,それを改めてrkと表わすことにします。

  

 ∀x∈Iを取ると,これはどれかのkについてx∈kとなります。

 

 それ故,g(x)-g(rk)=g(x)-g(rk)+g(rk)-g(rk)+g(rk)-g(x)ですが,x,rkkですから,

 n,m>N(ε,rk)なら,|g(x)-g(rk)|<εです。

  

 したがって,N(ε)≡min{(ε,r1),N(ε,r2),..,N(ε,rp)}とおけば,∀n,m>N(ε)のとき∀x∈Iで|g(x)-g(rk)|<εが成立するので,Cauchyの一様収束の条件によって,{g(x)}n=1,2,..I の上である関数に一様収束します。

  

 以上でAscoli-Arzelaの定理の証明が終わりました。(つづく)

  

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2006年12月 5日 (火)

バナッハ空間における陰関数定理

前記事の逆写像定理(逆関数の存在定理)の系として,陰関数定理(Implicit-function Theorem)も証明しておきましょう。

 

これは次のような内容です。

 

"X,YをBanach空間とし,E⊂(X×Y)(=X,Yの直積空間)を,(X×Y)の開集合とする。

 

ただし,(,)∈⊂(X×Y)のノルム|(,)|は,

|(,)||x||y| で定義する。

 

をE→XのC1級の写像とする。

 

(,)=0 を満たすある(,)∈(X×Y)において,

の線形かつ連続な微分係数をA≡'(,)∈L(X×Y,X)

とおく。

 

そして,JxをJx()≡(,0)なるX→(X×Y)の線形写像

と定義するとき,合成線形写像:AJxが可逆なら

 

∈WなるあるYの開集合W⊂Yが存在して,()=,

かつ∀∈Wに対して((),)=0 が成立するような写像

:W→Xが存在して,1級であり一意的である。"

 

というものです。

 

(これをなぜ陰関数定理と呼ぶのかというと,これは(,)=0 なる式から,それと同等な意味を持つ,

 

()が存在して((),)=0 が成立する,という

"陰関数の存在と一意性"を保証するものだからです。) 

 

まず,準備として次の補題が必要なので証明しておきます。

 

"A∈L(X×Y,X)でAJx:X→Xが可逆なら,

(,)≡(A(,),)で定義されるB:(X×Y)→(X×Y)

は線形連続写像,

 

つまりB∈L(X×Y)であって,これも可逆である。"

 

というものです。

 

これの証明をやってみます。

 

Bの線形性はAの線形性から直線的に得られるので,

これの証明は省略します。

 

Bの"連続性=有界性"の方の証明ですが,

 

これは,|(,)||(A(,),)||||(,)||y|

||(|x||y|)+|y|≦(||+1)|(,)|より,

確かに成立することがわかります。

 

よって,B∈L(X×Y)です。

 

次に,B(,)(0,0)ならば,(,)=0 かつ0 です。

 

よって,Ax0 かつ0 ですが,仮定によりAJx:X→Xは可逆なので,これから(,)=(0,0)が得られます。

 

故に,Bは1対1(単射)です。

  

有限次元なら線形写像では1対1写像(単射)と上への写像(全射)は同義なのですが,無限次元空間なのでそうはいきません。

  

そこで,Bが上への写像であることも証明する必要があります。

 

(,)∈(X×Y)が任意に与えられたとします。

 

≡(x)-1(-A(0,)),かつとすると,

B(,)≡(A(,),y)=(A(,0)+A(0,),)

=(Ax+A(0,),)=(,)が確かに成立します。

 

かくして,Bは全単射であることがわかりましたから,

逆写像B-1が存在します。

 

次に,B-1(,)=((x)-1(-A(0,)),)ですから,

|-1(,)||(x)-1|(|z||||w|)+|w|

≦{|(x)-1|(||+1)+1}|(,)|により,

 

-1も"有界=連続"です。

 

以上で,B∈L(X×Y)で,Bは可逆であることが証明されました。

 

では,本題の陰関数定理の証明に取り掛かります。

 

まず,写像:E→(X×Y)を(,)≡((,),)

で定義します。

 

このとき,(,)∈(X×Y)におけるの微分係数を求めます。

 

(,)-(,)=((,)-(,),)

=('(,)(,)+(,),)=(A(,),)+(,),

 

ただし,|s(,)|/|(,)| 0 as (,)→ (0,0) です。

 

それ故,B:(X×Y)→(X×Y)をB(,)≡(A(,),)であるように定めると,B='(,)で上の補題によりBは可逆です。

 

結局,:E→(X×Y)でB='(,)は可逆であり,

(,)=((,),)=(0,)です。

 

そこで,逆写像(逆関数)定理により,開集合U,V⊂(X×Y)が存在して

(,)∈U⊂E,(0,)∈Vで,:U→Vが全単射となります。

  

それ故,逆写像Φ-1:V→Uが存在してVの上でC1級です。

 

Φ(,)=(,)なら(,)≡((,),)=(,)より,

です。

 

そこでΦ(,)≡(φ(,),)でφ:V→Xを定義すれば,

φVの上でC1級です。

 

そして,(,)=(0,)により,Φ(0,)=(,b),

すなわちφ(0,)=です。

 

また,(φ(,),)=(,) for ∀(,)∈V ⇒ (f(φ(,),),)=(,) for ∀(,)∈Vです。

 

Vは開集合で,(0,)∈Vですから,ヨε>0:{(,)||z|||<ε}⊂Vが成立します。

 

このとき,W≡|∈Y|||<ε}と定義すると,WはYの開集合で

∈Wに対して(0,)∈Vです。

 

そして(f(φ(0,),),)=(0,) for ∀∈W,

すなわちf(φ(0,),)=0 for ∀∈W ,

 

つまり()≡φ(0,)とおけば((),)=0 for ∀∈W

です。

 

はWの上でC1級であることが示されました。

 

次に,の他にf(*(),)=0 for ∀∈Wなる*が存在すれば,

 

((),)=(((),),)=(0,)=((*(),),)

(*(),)であり:U→Vは全単射ですから,

Wの上で()=*()となります。

 

以上で証明終わりです。

 

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バナッハ空間における逆写像定理

 今日は解析学の課題として完備なノルム空間であるバナッハ空間(Banach)における"逆写像定理(=逆関数定理:Inverse-function Theorem)"を証明してみたいと思います。

 まず,逆写像定理という定理の意味ですが,これは次の命題のことです。

 

"XをBanach空間としE⊂XをXにおける開集合とする。そして,をE→XのC1級写像とし,∈E,()とする。

 

 さらに,線形写像:A≡'()は可逆(invertible),つまり,点におけるの微分係数A='()は全単射で逆写像;A-1を持つ,とする。"

(定理の仮定)

  

(※もしも,Banach空間XがRnであれば,可逆とは'()のJacobi行列式(Jacobian)がゼロでないことを意味します。※)

  

 このとき,"∈U⊂E,∈Vを満たすXの開集合:U,Vが存在して,

(1):U→Vは全単射 (2)-11級写像となる。"(定理の結論)

 

 というものです。

  

 これを証明するためには2つの補題:「縮小写像定理(contraction lemma)or 不動点定理」と「平均値の定理」が必要です。

 

 縮小写像定理(不動点定理)とは,

 

 "(E,d)を完備な距離空間(complete metric space)とする。

 

 がE→Eの縮小写像である(0<K<1:d((),())≦Kd(,) for ∀,∈E)なら,()=を満たす∈Eが存在して一意的である。"

 

 という定理です。

 

 この定理の結論での一意的(unique)なのことを不動点と言います。

 

 これの証明は簡単です。

 

 任意の0∈Eを取り,これを基に,1(0),2(1),..,n(n-1),..と点列{n}を逐次的に定義すると,

 

 d(2,1)=d((1),(0))≦Kd(1,0)...より,

 帰納的にd(n+1,n)≦Kn(1,0)が成り立うことがわかります。

 

 そこで,m>nのときにはd(m,n)≦{Kn/(1-K)}d(1,0)→ 0 as m,n→ ∞ です。

 

 つまり{n}はCauchy列になります。

 

したがって,(E,d)の完備性から,∃∈E:d(,n)→ 0 です。

 

ところで,0<K<1:d((),())≦Kd(,) for ∀,∈E であり,はEの上で一様連続なので,

 

n→ ∞に対して(n)→ ()となります。

 

他方,d((n),n)≦Kn(1,0)が成立しますから,

n→ ∞の極限では,d((),)=0,つまり()=です。

 

もしも,これ以外に不動点'があれば,d(,')=d((),('))≦Kd(,')<d(,'),つまりd(,')<d(,')となって明らかに矛盾です。

 

よって不動点は一意的です。(証明終わり)

 

次に平均値の定理ですが,これは,

 

"XをBanach空間,U⊂XをXにおける開集合,さらに凸集合とする。

そして,をUにおいてC1級の写像とする。 

 

(※Banach空間というのは完備な線形ノルム空間です。

ノルム空間の距離空間としての距離dは,ノルム(norm)で与えられ,ノルムを||で表わすと,の距離はd(,)=|xy|です。※)

  

このとき,,∈Uに対し+t()(0<t<1)が存在して,

|f()-()||yx|sup|f'()|が成立する。"

 

というのが平均値の定理です。

 

これの証明は,(t)≡(+t())とおけば,'(t)=()'(+t())ですが,単純な実数関数の平均値の定理により

 

|F(1)-F(0)||F'(c)|なる 0<c<1 が存在するので完了です。

 

(つまり実数値関数h(t)≡|F(t)-F(0)|に平均値の定理を適用すればいいのですね。)

 

さて,いよいよ,逆写像定理の証明をします。

 

(証明) A≡'()が可逆なのでA-1が存在しますから,1/λ≡|-1|とおきます。

 

'はEの上で連続でEは開集合なので,r>0 が存在して,

|xa|≦rなら,∈E,かつ|A-'()|≦λ/2,

つまり|I-A-1'()|≦1/2を満たすようにできます。

 

(ここで線形写像のノルムも同じノルム記号を使っています。)

 

次に,|yb|≦λr/2なる∈Xを取り固定します。

 

y()≡+A-1(()とおけば,y'()=I-A-1'(),

よって|gy'()|≦1/2 for ∀:|xa|≦rです。

 

平均値の定理により,∀1,2:|xia|≦r(i=1,2)に対して,

|gy(1)-gy(2)|≦(1/2)|x12|が成立します。

 

特に,|xa|≦rなら,|gy()-y()|≦r/2,

また|gy()-a||-1()|≦r/2,

つまり|gy()-a|≦rです。

 

しかも |y(1)-y(2)|≦(1/2)|x12|より,y()はUr()の閉包の上では縮小写像ですから,

 

縮小写像定理によって,Ur()の閉包の中に*y(*), or

(*)を満たす*が一意的に存在します。

 

上のは固定していましたが,これは任意なので,

 

λr()の閉包における任意のに対して,Ur()の閉包の中に一意的なが存在して()が成立することが示されました。

 

そして,+A-1(()-A-1(())より,

|xa||gy()-y()||-1(()-)|

|-1||()-b|+(1/2)|xa|です。

 

よって,|f()-b|≧(λ/2)|xa|であり,|xa|≧rなら

|f()-b|≧λr/2です。

 

そこで,()で∈Uλr()なら∈Ur()ですから,

"∈Uλr()⇒∈Ur()"の関係は,の一意性により1対1対応であることがわかります。

 

ここで,U≡{∈Ur()|f()∈Uλr()}とおけば,

の連続性からUは開集合であり,V≡(U)とおくと,

明らかにはU→Vの上への写像になります。

 

結局,φ:V→Uなるの逆写像φ-1が存在することがわかります。

 

そこで,Vも開集合であることを証明するために,0∈Vを取ります。

 

既に示したことから,0(0)を満たす0∈Uが存在しますが,

Uは開集合なので|x0|<η⇒∈Uなるη>0 が存在します。

 

ところが,先に導いた|f()-b|≧(λ/2)|xa|と同じく,

|x0|(2/λ)|f()-0|=(2/λ)|y0|ですから,

 

|y0|<λη/2なら|x0|<ηより,

∈U,すなわちf()∈V,つまり∈Vが成立します。

 

よってVも開集合です。

 

最後に,φ-1がVの上で1級写像であることを示しましょう。

 

∈Ur()⇒|A-'()|≦λ/2<λ=1/|-1|から

'()も可逆であることがわかります。

 

実際,微分係数'()というのは線形写像を意味するのですが,

 

Tを,XからXへの|A-T|<λ=1/|-1|を満たす任意の線形写像とすると,|(A-T)A-1||A-T||-1|1なので,

 

δ≡|A-T||-1|とおけば 0<δ<1であり,

|Σk=nm{(A-T)A-1}k|≦δn/(1-δ)→ 0 となります。

 

そして,Xの完備性により,Xの上の線形写像全体から成る線形空間:L(X)も完備ですから,極限:W≡Σn=0{(A-T)A-1}nが存在してW(X)となります。

 

それ故,∀∈Xに対し≡A-1とすると,

 

{A-(A-T)}={I-(A-T)A-1}W

Σn=0{(A-T)A-1}nΣn=1{(A-T)A-1}n

となることがわかります。

 

さらに,Tは1対1であることも示せるので,結局Aが可逆で,かつ

|A-T|<λ=1/|-1|なら,Tも可逆ということになるからです。 

 

そこで,B≡'()-1とするとBは有界です。

 

y,∈V,φ(),φ()-φ()とおけば,

()-()='()()です。

 

ただし,|r()|/|h|→ 0 as |h|→ 0です。

 

それ故,B+B():φ()-φ()=B-B()

ですが,λ|h|/2≦|k|なので ,||0 なら|h|→ 0 です

 

したがって,φ'(y)が存在してφ'(y)=B='(φ())-1です。

 

そして,'()が"連続=有界"でありφも連続故,合成写像φ'も"連続=有界"ですから,結局φ-1はVの上で1級写像です。(証明終わり)

 

※これは大学の物理学科3年のときに数学科の2年の解析学の講義にもぐりこんで取ったノ-トに基づいているので特に種本はありません。

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2006年12月 4日 (月)

藤沢周平と宮部みゆき

 今朝は,平日ですが仕事が休みなので,朝8時頃から10時過ぎまで,友人から録画したDVDを借りていたのを思い出して,映画「たそがれ清兵衛」を見ました。

      たそがれ清兵衛

 DVDで映画を見るのは,先月暇なときに,,フランス映画でアリダ・ヴァリ主演の

 「かくも長き不在」 を見て以来です。

 藤沢周平の小説作品は,丁度今,キムタク主演の「武士の一分」という映画が先日から上映されているらしいですね。↓

           

 今朝,見た「たそがれ清兵衛」も,「寅さんシリーズ」の暗さがイヤ味で,私がかなり嫌いな監督の一人である山田洋次監督の作品です。

 確かに,暗いことは暗いのですが,それを喜劇で笑いとばすような作品ではなかったので,それなりに見られるものでした。

 まあ,監督は違うけれど,以前やはり借りてDVDで見た「蝉しぐれ」と同じく,藤沢周平の作品は主人公に出世欲などがなく,そのまわりの人々も含めて人情味があって朴訥なところに特徴があります。

 その上ヤットーにも真実味があって,本当の殺し合いの怖さなどが伝わってくる思いがしました。

 主人公については貧乏ですがヤットーが得意なところが,私も貧乏ですが道楽として物理や数学を得意としているところとなんとなく通じるところがある,という気持ちがしました。

 しかし,主人公と違って私には子供はいないので,かなり違うのも事実です。

 私は,しゃれた感想文や批評など書ける能力もないですし,こういうものは絵や音楽と同じく,能書きを言わずに味わうだけでいいものだと思っています。

 そして,感動するものであればなおさらいいと思うので,まあ感動的であったとだけは述べておきます。

 その後も精神的に余裕があったので,友人から借りていた宮部みゆきの「名もなき毒」という小説を昼過ぎまでに,一気に読み終えました。

      

 宮部みゆきの作品は「火車」,「模倣犯」,「弧宿の人」など本屋で見かけたくらいで,今回初めて読んだのですが,これも藤沢周平の映画と同じく怖さに真実味があるという感じを受けました。

 著者が女性であるためでしょうか,心理の機微の記述の詳細さが読み疲れを誘うほどでした。

 いずれにしても「毒」というのは,人間の存在そのもののことであるというような内容だったと思います。

 改めて,権力とは生殺与奪の力を持つものであり,暴力装置に裏打ちされてない権力などには何の力もないことを,思い知らされた小説でした。

 脇役の北見一郎という老人が,道楽で探偵という人助けをしているところが私と通じると感じたのは,私が自分を贔屓目に見過ぎているためでしょうう。

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群の単位元と逆元

 しぶりに数学の話題を取り上げます。ごく軽い話題として群(代数群)の基本性質を証明してみましょう。

 

集合Gの任意の2つの元に,ある演算'・'が定義されていて,

 

(1)a,b∈Gならばa・b∈Gが成立し,

(2)a,b,c∈Gに対して結合則:(a・b)・c=a・(b・c)

が成立するとします。

 

このとき,"(1)左単位元e∈Gが存在して,∀a∈Gに対してe・a=a

が成り立ち,また,(2)各a∈Gに対して左逆元a-1∈Gが存在して

-1・a=eが成立するなら,

 

eは右単位元でもありa-1右逆元でもある。"こと

 

すなわち,"∀a∈Gに対してa・e=aが成立し,かつ,a・a-1=e

が成立する。"ことを証明してみます。 

・e=a・(a-1・a)=(a・a-1)・aですから,

a・a-1=eを証明すれば,a・e=e・a=aが成り立つ,

ことは自明です。

そこで,a・a-1=eを証明します。

 

・a-1(e・a)・a-1 [{(a-1)-1-1}・a]・a-1

{(a-1)-1}・a-1(a-1)-1-1=e ですね。

 

証明は以上です。

 

このことと,逆元の一意性も簡単に示せるので上の議論から

(a-1)-1=aとなることもわかりました。 

 今日は引越しなどを控えて少し疲れていたので,手抜きをしてしまいました。(^^;)

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2006年12月 2日 (土)

惑星と恒星

 今日はコーヒー・ブレイクとして惑星(planet)と星(恒星;star)の違い,つまり星が惑星となるか恒星となるかの境界の条件について手短かに述べてみます。

 星が惑星になって恒星にならないための条件は,簡単に言えばその星の構成物質である原子や分子がイオン結合や共有結合で固体になる効果が,重力平衡によるバランスで恒星になる効果と比べて大きいことであろうと考えられます。

 

 つまり,1原子当たりの電子とイオンの相互作用に関わる"電気的エネルギー=Coulombエネルギー=εc"のオーダーが,"重力エネルギー=εG"のオーダーより大きいことが惑星の条件である,としてよいと考えます。 

 密度がρの星の質量をMρ,半径をRとし,構成原子の質量数をA,水素原子の質量をmHとすれば,その1原子当たりの重力エネルギーの大きさεGεG=GρAmH/Rです。

 

 そこで,εcεGとなる条件はGρAmH/R≦εcで,これは3(GAmH/εc)3ρ3です。

 

 一方,4πR3ρ/3 =ρですから代入すると,3ρ/(4πρ)≧(GAmH/εc)3ρ3となります。

 

 結局,質量の条件としては,ρ{3/(4π)}1/21/2{εc/(GAmH)}3/2

です。

 

 オーダーの比較なので,係数{3/(4π)}1/2を無視すると,

 ρ{εc/(GAmH)}3/21/2が,星が惑星になって恒星にならないための条件になります。

 Coulombエネルギーεcの方は,イオン結合や共有結合になって固体となるための条件として水素原子のイオン化エネルギー:13.6eV, 

  

 あるいはBohr半径~aB=10-10mでの静電エネルギー:

(1/4πε0)e2/aB~ 9×109×(1.6×10-19)2/10-10J程度と考えると,

 

 いずれにしても,εc~ 10-18J程度と考えられます。 

 そこで,木星の場合を考えると,M木星2×1027 kg,ρ~1.34です。

 

 一方,質量数Aは構成元素が水素Hと仮定してA~1とすると,

 εc =10-18Jのとき,{εc/(AmH)}3/21/2~ 7.4×1026 kg

 です。

 

 そこで,M木星>{εc/(AmH)}3/21/2でεcεGですが,

 この程度なら,オーダー的にはM木星~{εc/(AmH)}3/21/2

 です。

 

 そこで,木星は惑星としては最大質量になっていて,まさに太陽になりそこねた惑星であると言えます。

 我々の地球の場合を考えると,地球6×1024 kg,ρ~ 5.2です。

 

 もしA~ 56つまり地球全部が鉄のみでできていると仮定するなら,

 {εc/(AmH)}3/21/2~ 9.0×1023kgとなりますから,地球も,

 A~ 56(Fe;鉄)の場合なら惑星として最大質量になります。

  

 しかし,地球の構成物質の質量数は,それよりも一桁くらい小さいですから,地球は確かに惑星の条件を満たしているようです。

 

参考文献:佐藤文隆,原 哲也 著「宇宙物理学」(朝倉書店)

 

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2006年12月 1日 (金)

星の進化とチャンドラセカール質量

星を構成する気体物質の圧力をP,密度をρ,万有引力定数をGとし,それぞれcを星の中心,gを気体,rを輻射,eを電子,Iを正イオンの添字を表わすものとします。

 

すると,Emden解における質量Mは,M=[Pc3/(4πG3ρc4)]1/2φN

φN≡-(N+1)1/22dθN(ξ)/dξ]ξ=ξNで与えられます。

 

ここで,Pc=Pgc+Prc,Pgc=PIc+Pecですが,βc=Pgc/PcとおけばPrc/Pc=1-βcです。

ρcは電子とイオンによるもので,平均分子量μと水素原子の質量mHを用いてPgc=ρcBc/(μmH)と書けます。

  

c は,もちろん星の中心の温度です。

 

このとき,Pc3c4=(Pc/Pgc)4{Bc/(μmH)}4/Pc=(1-βc){B/(μmH)}4c4/(βc4c)となります。

 

ところが,Stefan-Boltzmannの法則:E=aT4とP=E/3(Eはエネルギー密度)により,Pc=aTc4/3ですから,星の全質量はM=[3{B/(μmH)}4/(4πG3a)]1/2{(1-βc)1/2c2Nとなります。

 

これは,輻射優勢のとき:βc<<1のときにはMが大きくなることを示唆しています。

dP/dr=-GM(r)ρ(r)/r2の両辺に4πr3を掛けて,0 ~ Rまでrで積分すると∫0R4πr3(dP/dr)dr=-0M(GM(r)/r)dM(r)です。

 

右辺は星自身の重力エネルギーΩを表わしています。

 

一方,左辺=[4πr3]r=0=R3∫PdVですから,Ω=-3∫PdVなる等式が得られます。

 

ところで星の内部で比熱比:γが一定であるとすると,P=E/n=(γ-1)Eであり内部エネルギーはU=∫EdVですから,3(γ-1)U+Ω=0 を得ます。この等式は星のvirial定理と呼ばれています。

一方,Ω=-0M(GM(r)/r)dM(r)=-GM2/(2R)-∫{GM(r)2/(2r2)}dr=-GM2/(2R)-∫{M(r)/ρ(r)}dPです。

ここで,ポリトロープガス球の関係:NdlogP=(N+1)dlogρより,

dP/ρ=(N+1)d(P/ρ)を用いると,

 

Ω=-GM2/(2R)-∫{M(r)/ρ(r)}dP

=-GM2/(2R)-{(N+1)/2}∫PdVです。

 

そして,∫PdV=(γ-1)U=-Ω/3ですから,-GM2/R(5-N)Ω/3,あるいは,Ω=3GM2/{(N-5)R}です。

 

よって,U=-Ω/{3(γ-1)}=GM2/{(γ-1)(5-N)R}を得ますから,内部エネルギーと重力エネルギーを加えた全エネルギーをEtとすると,

t=U+Ω=-(3γ-4)GM2/{(γ-1)(5-N)R}

=(3γ-4)Ω/{3(γ-1)}=-(3γ-4)U

となります。

もっとも,Et=U+Ω=-(3γ-4)Uの関係を導くだけなら,こんな面倒な計算をしなくても,3(γ-1)U+Ω=0 からすぐ得られます。

星が重力的に束縛されているためにはt0 が必要ですから,γ>4/3でなければなりません。

 

そして,γ>4/3の場合,星の表面からエネルギーが放出されるとdEt/dt<0 であり,Et(3γ-4)Ω/{3(γ-1)}によってdΩ/dt<0 であって,dU/dt>0 であることがわかります。

 

つまり,収縮によって解放された重力エネルギーΔΩのうちΔΩ/{3(γ-1)}が内部エネルギーに加わり,残りは外部に放出されることになります。

通常,物体から熱エネルギーが流出すれば,その物体の温度は低下するのですが,重力平衡にある星では逆に,エネルギーが流出するほど内部エネルギーUが増加するので温度が上がることになります。

以下では,星間ガスから原始星になり主系列星になっていくという星の進化の議論に入っていきますが,星の質量によってその進化過程が異なるという話になっていきます。

 

ただし,その詳細については,私自身がまだ十分に把握していないので,概略しか述べることはできませんが。。。。

星の内部の圧力を無視すると,物質はd2/dt2=-GM/r2によって自由落下するので,星の平均密度をρとするとその落下時間tffは,

ff{3/(4πGρ)}1/2 で与えられます。

 

一方,圧力が大きくて重力が無視できるときは,

ρ2/dt2=-d/dr> 0 なので,膨張時間 exは,ρR/ex2~ P/Rと近似して,tex~ R/(P/ρ)1/2となります。

 

そして,重力と圧力が釣り合った平衡の状態では,

オーダー的にff~ tex になると考えられます。

 

/ρ=kB/(μmH)により,tex~ R/(P/ρ)1/2

={μmH/(kB)}1/2{3M/(4πρ)}1/3ですから,ff~ texの条件は

温度TについてT~ (GH/kB)ρ1/32/3を意味します。

  

これをT-ρの両対数曲線で表わしたとき,この条件を満たす曲線を力学的平衡線といいます。

ρに対して,温度Tがこの力学的平衡線より低いときにはff<texなので収縮が起きます。

 

また,質量が小さいときは力学的平衡線は温度Tの低い方に下がるので,収縮は,より低温にならないと始まりません。

 

一方,収縮して密度ρが高くなるとガス雲は冷却の原因となる赤外線などの輻射に対して不透明になります。(輻射に対して不透明とは輻射が見えないこと,つまり輻射が小さいことを意味します。)

 

不透明になった原始星は輻射冷却が不透明性によって阻害されるため,断熱的に収縮して結果として温度は上昇します。

 

そして収縮の途中では水素分子の解離と電離にそのエネルギーを費やすため,やがて温度上昇は横ばいになり,電離が終わると再び温度が上昇してゆきます。

 

その後は,まず中心部で収縮が止み,次に外層の落下収縮も止まります。

 

こうして原始星は収縮して平衡に向かい,いわゆる主系列星になります。

 

(※つまり,星が力学的平衡線上にある状態が主系列星です。)

 

この段階を"林フェイズ"といいます。

主系列星でHが燃焼され尽くされると,星はHeコア(ヘリウム核)と初期の元素組成を保つ外層部との層状な構造となり,Heコアの表面でのHの殻燃焼段階に入ります。

 

殻燃焼が進むと,Heコアの質量が大きくなるためにコアは収縮し星は半径が増大して巨星化します。(図はホームページから借用)

 

   

 

それ以後の進化はその質量によって異なることが知られています。

 

M<3M太陽の星はその進化とともに小さい星になります。

 

そして内部の核エネルギーを使い果たすと共に収縮し,中心密度が高くなって電子が縮退を始めます。

 

それでも表面からのエネルギー放出は続くので,冷却してやがて電子の縮退圧で支えられる星になります。

 

このような星を白色矮星といいます。

 

こうした白色矮星の限界質量を考えてみます。

簡単のため,化学組成は一様とし,完全冷却して完全縮退したT=0 の場合を考えます。

 

この場合の状態方程式は, 

P=Kf(x),K={1/(3π2)}(me/h)3e26.0×1014J/m3,

f(x)=x(2x-3)(x2+1)1/2+3sinh-1(x),x≡F/(me)

で与えられます。

 

ここで,原子核による圧力は小さいので無視し,電子の縮退圧のみを考えています。また,cは光速,hはPlanck定数,eは電子質量です。

 

電子数密度neは,ne(8π/3)(me/h)33(1/3π2)(me/hc)33 (c≡h/(2π))であり,ρ=μeepです。

 

μeは原子1個当たりの電子数,mpは陽子質量です。

 

また,物質密度ρは,ρ=ρcrit3,ただしρcrit={mNμe/(3π2)}(me/h)39.7×108μe kg/m3(mNは核子の質量)で与えられます。

相対論的な場合を考えてρ>>ρc,x>>1とすると,

f(x)~ 2x4-3x2より,P={c/(12π2)}{3π2ρ/(Nμe)}4/3

となります。

 

これはポリトロープ指数N=3に相当しますから,質量はM=[Pc3/(4πG3ρc4)]1/2φN(N=3)で与えられます。

 

(Pc3c4)1/2={c/(12π2)}3/2{3π2/(Nμe)}2であり,Emdenの数値解によると,φ3=6.957ですから,

 

M={(2)1/2/16}φ3{(c/G)3/2/(Nμe)2}

=1.16×1031μe-2 kg=5.84μe-2太陽 が得られます。

 

これが電子の縮退圧で支えることのできる白色矮星の限界質量です。

 

これは,チャンドラセカール限界質量(Chandrasekhar limit)と呼ばれています。

 

このChandrasekhar質量:Mchは,μe2の場合が多いため,

ch=1.46(2/μe)2太陽と書かれることが多いです。

実際には,電子のFermiエネルギーが大きくなると,電子は陽子と反応して中性子をつくるようになるので電子の縮退圧で支えられる白色矮星という描像は意味を失って,さらに高密度の中性子星となり中性子の縮退圧で支えられるようになります。

 

ところで,Chandrasekharの名著"星の構造(Stellar structure)"の訳本の復刊を数年前から復刊ドットコムにリクエストしていますが,投票が100票に達しないと復刊交渉をしてもらえません。

 

洋書のリプリント版は持っていますが,ぜひ日本語で読みたいので,できましたら投票にご協力くださるようお願いします。

 

参考文献;佐藤文隆 原 哲也 著「宇宙物理学」(朝倉書店)

 

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