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2006年12月17日 (日)

高密度下でのφメソンの質量減少を確認(KEK)

 @nifty物理フォーラムの甘泉法師さんからの情報によって「ファイ中間子の質量が高密度下で減少することを世界で初めて確認」(KEK)↓ .

 lhttp://legacy.kek.jp/ja/news/press/2006/phi.html

 を知りました.。  

  ↓ 実験概略:KEKホームページから転載  

      図1 実験の原理の概略

     

(上段)加速器から取り出した陽子を,標的の原子核に照射すると、ある一定の確率でファイ中間子が原子核内に生成される。

(中段)生成されたファイ中間子は原子核内を飛行していく。

(下段)寿命がくると、ファイ中間子は崩壊する。ファイ中間子は様々な娘粒子に崩壊するが,本実験では電子・陽電子ペアに崩壊したファイ中間子を検出する。

 電子・陽電子ペアの運動量を測定することにより,親粒子であるファイ中間子の質量を測定することができる。

    図2 観測が期待される質量分布のシミュレーション結果

     

 関連記事として「質量の起源を解明する手掛かり」(理研,東大)

 http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2004/040309/index.html

 があります。

 宇宙初期にはクォークを含めて,あらゆる素粒子の質量は ゼロ でした。

 質量がゼロでなければ統一的な相互作用(強い,電磁,弱い相互作用,重力?)の厳密なゲージ対称性は成立しません。

 最も簡単なヒッグス模型(Higgs model)は,"ある1つの場=Higgs場"がU(1)という大域的対称性を持ち,さらに局所的にも対称性を持つと仮定した模型です。

 この模型では,付随する"ゲージ場=質量ゼロのベクトル場"が必要です。

 そして,真空が最低レベルにないために,U(1)対称性が"自発的に破れる"ことになります。

 このときに現われるゼロ質量の南部-Goldstoneボゾンを吸収して,ゲージ場が質量を獲得して,質量のあるベクトル場,すなわちProca場になるというのが Higgs-KibbleによるHiggsメカニズム(Higgs機構)です。

 Weinberg-Salamは,これをSU(2)×U(1)の対称性の破れに適用して電弱理論の統一に成功しました。

 彼らの理論では,"電磁場=光子(photon)"は質量ゼロのままですが,弱ボゾン(weak Boson)が質量を獲得するのを説明することができます。

 クォークとクォークの間に働く強い相互作用では,カラーSU(3)の力を媒介するゲージ粒子はグルオン(gluon:ニカワ粒子)です。

 Higgsメカニズムで質量を獲得するとしたら,それはクォークではなくgluonであると私は思います。

 私の知る限りでは,Higgsメカニズムで質量を獲得するのはゲージ粒子と呼ばれるBose粒子であって,Fermi粒子が質量を獲得するメカニズムについての話は,これまでは寡聞にして聞いたことがなく,よく知りません。

 しかしFermionもHiggsメカニズムで質量を獲得するとしても,クォークが核子質量(約1Gev)の1/3以上のレベルになるには程遠い値です。

 質量ゼロのクォークの模型にカイラル(Chiral)対称性があるのはよく知られていますが,記事によると,それの破れはクォーク凝縮と呼ばれると書かれています。

 これも寡聞にして,そう呼ばれることなどは知りませんでした。

 そして宇宙創生期の高温・高密下ではクォーク凝縮がまだ完全には達成されていないので,現在よりも質量が小さいと予想されます。

 今回は質量が既知のφメソン(meson:中間子)について,高密度下でその質量のわずかな減少が確認された,という実験結果が記事に示されています。

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コメント

ハドロンの質量が高密度で減少するのは、「漸近自由性」の表われじゃないですかね。

投稿: hirota | 2007年7月30日 (月) 15時18分

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