惑星と恒星
今日はコーヒー・ブレイクとして惑星(planet)と星(恒星;star)の違い,つまり星が惑星となるか恒星となるかの境界の条件について手短かに述べてみます。
星が惑星になって恒星にならないための条件は,簡単に言えばその星の構成物質である原子や分子がイオン結合や共有結合で固体になる効果が,重力平衡によるバランスで恒星になる効果と比べて大きいことであろうと考えられます。
つまり,1原子当たりの電子とイオンの相互作用に関わる"電気的エネルギー=Coulombエネルギー=εc"のオーダーが,"重力エネルギー=εG"のオーダーより大きいことが惑星の条件である,としてよいと考えます。
密度がρの星の質量をMρ,半径をRとし,構成原子の質量数をA,水素原子の質量をmHとすれば,その1原子当たりの重力エネルギーの大きさεGはεG=GMρAmH/Rです。
そこで,εc≧εGとなる条件はGMρAmH/R≦εcで,これはR3≧(GAmH/εc)3Mρ3です。
一方,4πR3ρ/3 =Mρですから代入すると,3Mρ/(4πρ)≧(GAmH/εc)3Mρ3となります。
結局,質量の条件としては,Mρ≦{3/(4π)}1/2/ρ1/2{εc/(GAmH)}3/2
です。
オーダーの比較なので,係数{3/(4π)}1/2を無視すると,
Mρ≦{εc/(GAmH)}3/2/ρ1/2が,星が惑星になって恒星にならないための条件になります。
Coulombエネルギーεcの方は,イオン結合や共有結合になって固体となるための条件として水素原子のイオン化エネルギー:13.6eV,
あるいはBohr半径~aB=10-10mでの静電エネルギー:
(1/4πε0)e2/aB~ 9×109×(1.6×10-19)2/10-10J程度と考えると,
いずれにしても,εc~ 10-18J程度と考えられます。
そこで,木星の場合を考えると,M木星~ 2×1027 kg,ρ~1.34です。
一方,質量数Aは構成元素が水素Hと仮定してA~1とすると,
εc =10-18Jのとき,{εc/(GAmH)}3/2/ρ1/2~ 7.4×1026 kg
です。
そこで,M木星>{εc/(GAmH)}3/2/ρ1/2でεc<εGですが,
この程度なら,オーダー的にはM木星~{εc/(GAmH)}3/2/ρ1/2
です。
そこで,木星は惑星としては最大質量になっていて,まさに太陽になりそこねた惑星であると言えます。
我々の地球の場合を考えると,M地球~ 6×1024 kg,ρ~ 5.2です。
もしA~ 56つまり地球全部が鉄のみでできていると仮定するなら,
{εc/(GAmH)}3/2/ρ1/2~ 9.0×1023kgとなりますから,地球も,
A~ 56(Fe;鉄)の場合なら惑星として最大質量になります。
しかし,地球の構成物質の質量数は,それよりも一桁くらい小さいですから,地球は確かに惑星の条件を満たしているようです。
参考文献:佐藤文隆,原 哲也 著「宇宙物理学」(朝倉書店)
http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー) TOSHI
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