« バナッハ空間における陰関数定理 | トップページ | 常微分方程式の解の存在定理② »

2006年12月 6日 (水)

常微分方程式の解の存在定理①(アスコリの定理)

 前の2つの記事は,35年ほど前の大学3年の頃に凝っていた存在定理関連の論題について,当時,大学数学科で講義を受けた際に綴ったノートを参考にして書きました。

 

 今回も,そのころ最も夢中になっていた"初期値問題=常微分方程式の解の存在定理"について,何回かに分けて述べてみたいと思います。

 

 ただし解の存在定理のみであり,いわゆる通常の教科書に普通に載っている"Lipshitz(リプシッツ)条件"を仮定した"解の存在と一意性の定理"ではありません。

 

 Lipshitz条件は,解の一意性の十分条件ですが,かつて日本人,岡村博氏により,解の一意性の必要十分条件が発見されたことは有名です。

 

 これの内容については読んだことはありませんが,岡村博 著「微分方程式序説」に掲載されていると思います。

(※最近,復刻されたようで,この本の新装版が神保町の三省堂書店5階にもありました。)

 

 そこで,まずPeanoの存在定理でもいいのですが,その代わりにこれと同等なEuler-Cauchyの逐次近似法(折れ線法)による存在定理を証明しようと考えたものがあるので,それを述べたいと思います。

 

 まず,問題の定式化をします。

 

 "ある2次元の単連結領域(domain):Dがあるとします,

 

 特にDを矩形閉領域(I×J):I≡[x0-a,x0+a],

 J≡[y0-b,y0+b] としても一般性を失わないので,

  D≡I×Jとします。

 

 Dにおいて関数f(x,y)が連続なら正の数Mが存在して,

 この閉領域では|f(x,y)|≦Mとなりますが,

 

 このとき,α=min(a,b/M)とすれば,

 [x0-α,x0+α]の上で定義された点(x0,y0)を通る

 1階常微分方程式:dy/dx=f(x,y)の解が存在する。"

 

 というものです。

 

 結論は,解の存在のみであって一意性は考えていません。

 

 そして,今日は準備として"1つの補題=Ascoli-Arzela の定理"を証明します。この定理は次のようなものです。

 

 "Gを有界な区間:Iの上で定義された関数;g(x)のある無限個の集合とします。

 

 GがIの上で一様有界かつ同等(同程度)連続なら,GはIの上で一様収束するような関数列{gn(x)}n=1,2,..を含む。"

 

 という定理です。

 

 ただし,一様有界の定義は,

  

 "有界な区間Iの上で定義された関数g(x)の集合Gがあるとき,

 ∀g(x)Gに対して,Iの上で|g(x)|≦Mとなる共通のMが存在する

 なら,GをIの上で一様有界であるという。"

  

 というものです。

 

 また同等連続とは,

 

 "上と同じIとGで,ε>0を任意に与えたとき,

 ∀g(x)Gについてεだけに依存するGにおいて共通のδ>0

 が存在して,∀x1,x2∈I,|x1-x2|<δ⇒|(x1)-g(x2)|<ε

 が成立するなら,GをIの上で同等連続であるという。"

 

 と定義されます。

 

 以下,証明です。

 

 I に含まれる有理数の全体QIを考えると,これは可算無限集合ですから,

 それに添字をつけて順序付けすることができます。

  

 それを,r1,r2,..,rn,..∈QIとします。

  

 まず,H≡{g(r1)|(x)}とおきます。

  

 これはGに属する任意関数g(x)に対して,g(r1)で与えられる値の集合を意味するものです。

 

 H1は有界無限集合ですから,もちろん集積点を持ちます。

  

 そして,Hの中から集積点に収束する全てのg(r1)の集合のうちの,ある1つの集積点に収束する部分列としてg11(r1),g12(r1),..,g1m(r1),..={g1m(r1)}m=1,2,.を取り出すことができます。

  

 そこで,これに対応するg11(x),g12(x),..,g1m(x),..

 ={g1m(x)}m=1,2,..という関数列を取り出して,

   

 次にH2{g1m(r2)|m=1,2,..}を作ります。

   

 そして,これらに対しても収束する部分列g21(r2),g22(r2),..,g2m(r2),..={g2m(r2)}m=1,2,..を取り出します。

   

 さらに,g21(x),g22(x),..,g2m(x),..={g2m(x)}m=1,2,..を作っていきます。

   

 これらを繰り返すことによって,∀kに対してGの中の関数列であって,x=r1,r2,..,rkに対して収束する{gkm(x)}m=1,2,..をつくることができます。

  

 ここでg(x)≡gnn(x)と定義すると,{g(x)}n=1,2,..は全てのQIの要素に対して収束します。

  

 よって任意の正の数ε>0 を与えるとrk∈QIに対して,ある正の整数N(ε,rk)が定まり,

  

 ∀n,m>N(ε,rk)に対して|g(rk)-g(rk)|<ε/3

 となります。

  

 一方,GはIの上で同等連続ですから,ε>0 だけによって決まるδ>0 が存在して,∀k∈Nに対して|x1-x2|<δ⇒|(x1)-g(x2)|<ε/3が成立します。

  

 そして,区間Iをどの区間の長さもδより小さい小区間の集合として,

 I1,I2,.,Ipに分割します。

  

 そして,各区間kで1つの有理数を選び,それを改めてrkと表わすことにします。

  

 ∀x∈Iを取ると,これはどれかのkについてx∈kとなります。

 

 それ故,g(x)-g(rk)=g(x)-g(rk)+g(rk)-g(rk)+g(rk)-g(x)ですが,x,rkkですから,

 n,m>N(ε,rk)なら,|g(x)-g(rk)|<εです。

  

 したがって,N(ε)≡min{(ε,r1),N(ε,r2),..,N(ε,rp)}とおけば,∀n,m>N(ε)のとき∀x∈Iで|g(x)-g(rk)|<εが成立するので,Cauchyの一様収束の条件によって,{g(x)}n=1,2,..I の上である関数に一様収束します。

  

 以上でAscoli-Arzelaの定理の証明が終わりました。(つづく)

  

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                  TOSHI 

人気blogランキングへ ← クリックして投票してください。(1クリック=1投票です。1人1日1投票しかできません。)

にほんブログ村 科学ブログへクリックして投票してください。(ブログ村科学ブログランキング)

にほんブログ村 トラコミュ 物理学へ
    物理学

|

« バナッハ空間における陰関数定理 | トップページ | 常微分方程式の解の存在定理② »

304. 解析学」カテゴリの記事

308. 微分方程式」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/71281/4450500

この記事へのトラックバック一覧です: 常微分方程式の解の存在定理①(アスコリの定理):

« バナッハ空間における陰関数定理 | トップページ | 常微分方程式の解の存在定理② »