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2006年12月 9日 (土)

常微分方程式の解の存在定理③(一意性,一般解の存在(1))

解の存在定理において,f(x,y)の連続性の他にLipschitz条件:

 

"ある正の数kが存在して'(x,y1),(x,y2)∈D⇒|f(x,y1)-f(x,y2)|<k|y1-y2|'が成り立つ。"

 

という条件が満足されるなら,

 

したがって,例えば,"Dの中でf(x,y)が連続でyについて連続な偏微分係数を持つなら,

  

dψ(x)/dx=f(,ψ(x));ψ(0)=y0を満たす解ψ(x)は

一意的(unique)になります。

 

その理由としては,

 

上記の初期値問題の解:ψ()はψ()=y0+∫x0x{f(,ψ())}dxを満たしますが,もしもその他にψ1()=y0+∫x0x{f(1())}dxを満たすψ1()が存在するなら,Lipschitz条件から

  

|ψ()-ψ1()|≦|∫x0x|f(1())-f(1())|dx

<kα|ψ()-ψ1()| なる不等式が成立します。

 

そこで,kα<1 となるようにαを選ぶと,(1-kα)|ψ()-ψ1()|<0 ,かつ (1-kα)>0 となります。

 

しかし,これは矛盾を生じることになるので,ψ()と異なるψ1(x)の存在は不可能となるからです。

 

そこで,f(x,y)が領域Rにおいて連続で,かつLipschitz条件を満足するとき,y0のいろいろな値に対してdy/dx=f(x,y)を満たし(x0,y0)を通る一意的な解:ψ()が存在することになります。

 

しかし,解ψ()はパラメータy0のみに依存するのでしょうか?

  

すなわち,これらのy0に依存する解ψ()をφ(x,y0)と書くことができますが,それはDにおける別のx,例えばx=x1における別の初期条件y|x=x1=y1;(x1,y1)∈Dに対する一意解の全てを含むか否か?

 

という問題が残っています。

  

これは,「一般解の存在定理」という形で解決されます。

 

まず,1階常微分方程式について厳密な意味での一般解の定義を与えておきましょう。

 

"ただ1つの任意定数Cを含むdy/dx=f(x,y)の解:

y=φ(x,C)が存在して,

 

Cに適当な値を与えることにより,f(x,y)が1価連続でLipschitz条件を満足する領域Dに含まれる全ての"特殊解=初期値問題の一意解"を表現することができるとき,

 

このy=φ(x,C)をDにおける1階常微分方程式:dy/dx=f(x,y)の一般解という。"

 

と定義されます。

 

「一般解の存在定理」を証明するために,まず"補助定理1=解の延長定理"を与え,証明しましょう。

  

(補助定理1):方程式dy/dx=f(x,y)の右辺の関数f(x,y)が有界な閉領域Dで1価連続でLipschitz条件を満足すると仮定する。

  

そして,φ(x)をDの内部のある点(x0,y0)を通り,有限区間:a<x<bで定義されるdy/dx=f(x,y)の一意解とする。

  

もちろん,a<x<bを満たすxに対して(x,φ(x))∈Dである。

  

このときφ(a+0),φ(b-0)が存在して,これらをそれぞれφ(a),φ(b)と定義すればφ(x)はa≦x≦bで定義されるdy/dx=f(x,y)の解となる。

  

こうして解は閉区間:[a,b]へと"延長"される。

  

さらに,点(a,φ(a+0))(または(b,φ(b-0)))がDの内点であれば,解φ(x)は,さらにaの左(またはbの右)に延長される。

 

これを証明します。

 

(証明):φ()=y0+∫x0x{f(,φ())}dxですから,

a<x1<x2<bなら,φ(x2)-φ(x1)=∫x1x2{f(,φ())}dx

です。

 

ところが,f(x,y)は有界な閉領域Dの上で連続なので,この閉領域Dにおいて|f(x,y)|≦MなるM>0 が存在します。

 

したがって,|φ(x2)-φ(x1)|≦M(x2-x1)です。

 

そこで,x1,x2→a+0 に対して(x2-x1)→ 0 によって,|φ(x2)-φ(x1)|→ 0 ですから,Cauchyによりφ(a+0)が確かに存在します。

 

同様にφ(b-0)も存在します。

 

xの関数ψ(x)を,x∈(a,b)ならψ(x)≡φ(x),x=a,bならψ(a)≡φ(a+0),ψ(b)≡φ(b-0)と定義します。

 

こうすれば,x∈(a,b)のときにはψ()=y0+∫x0x{f(,ψ())}dxで,x=bではψ(b)=y0+lim∫x0b-ε{f(,ψ())}dxです。

 

そして,f(,ψ())はx=bで連続なので∫x0x{f(,ψ())}dxはx=bに対しても存在して連続です。

 

それ故,狭義の積分としてもψ(b)=y0+∫x0{f(,ψ())}dxと書くことができます。

 

そして,x=aに対しても同様にψ(a)=y0+∫x0a{f(,ψ())}dxと書けます。

 

(,ψ())は閉区間:[a,b]で連続ですから,∀x∈[a,b]に対して(d/dx)[∫x0x{f(,ψ())}dx]=f(,ψ())です。

 

結局,∀x∈[a,b]に対しdψ()/dx=f(,ψ()),かつψ(0)=y0となり,解はDに含まれる閉区間:[a,b]に延長されます。

 

次に,点(b,ψ(b))がDの内点なら,解の存在と一意性の定理により,点(b,ψ(b))を通りある区間[b-β,b+β](β>0)で定義されたdy/dx=f(x,y)の解:y=ψ1(x)が存在します。

 

ψ1(x)の[b-β,b]の部分は一意性の定理よりψ()と一致します。

 

そこでχ(x)をx∈[a,b]のときχ(x)≡ψ(),x∈[b,b+β]のときにχ(x)≡ψ1()と定義します。

 

こう定義すれば,y=χ(x)は∀x∈[a,b+β]についてdy/dx=f(x,y)を満足し,しかも全ての点で連続です。

 

それ故,y=χ(x)が点(x0,y0)を通るx∈[a,b+β]で定義された唯一の解であることが示されました。

 

同様にして,点(a,ψ(a))がDの内点ならあるα>0 が存在してy=ψ()は[a-α,b]まで延長されます。(証明終わり)

 

今日は少し疲れているのでここまでにします。

 

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