ガロア理論(3)
病院生活は退屈なのでガロア理論をおさらいするのにはもってこいの時間でした。
さて本題ですが,「ガロアの偉大な定理」と称されるものは,
"Fを標数がゼロの体,E/Fをガロア拡大とする。このときガロア群G=Gal(E/F)が可解群になるための必要十分条件は,EがFのベキ根による拡大の中に埋め込めることである。
つまり,Fを標数がゼロの体であるとき,多項式f(x)∈F[x]のガロア群が可解群になるための必要十分条件は,f(x)がベキ根によって可解になることである。"
という定理です。
今日はこれを証明します。
(証明)まず,標数という用語については通常の有理数体,実数体,複素数体は全て標数がゼロなので,ここでは特に断らない限り出現する体は全て普通の標数がゼロの体としてこれを意識しないことにします。
また,体のベキ根による拡大というのは次のように定義されます。
まず,Fの元ではないαに対し適当な正の整数mが存在してαm∈Fであるとき,B=F(α)とおけばB/FをFのm型の純拡大と呼びます。
また,体の拡大列:F≡B0⊂B1⊂...⊂Btがあるとき,各々のBi+1/Biがある型の純拡大なら,これをベキ根塔と呼びます。この場合に,拡大Bt/Fをベキ根拡大と呼ぶわけです。
そして,f(x)∈F[x]とするとき,F上のf(x)の分解体Eを含む,べき根拡大:B/Fが存在する(F⊂E⊂Bなるベキ根塔が存在する)とき,"f(x)はF上でベキ根によって可解である。"といいます。
さて,Fを体としE/Fをその拡大とします。
このとき,Eの自己同型写像σで,そのFへの制限σ|Fが恒等写像,つまり,∀c∈Fに対してσ(c)=cなるもの(これを"σはFを点ごとに固定する。"という)の集合は群を作ります。
この群をE/Fのガロア群と呼び,Gal(E/F)と書きます。
特にf(x)∈F[x]が分解体Eを持つ場合にば,f(x)のガロア群とは,このGal(E/F)のことです。
そして,体E上のある自己同型の群Gによって点ごとに固定されるEの点全体の集合をEGと書き,これをGによる不変体(固定体)と呼びます。
一般には,G=Gal(E/F)のとき,F⊂EG⊂Eですが,特にF=EGのとき,E/Fをガロア拡大と呼びます。
また,f(x)∈F[x]でE/FがFの拡大体であるとき,σ∈Gal(E/F)であって,α∈Eがf(x)の根であれば,明らかにσ(α)もf(x)の根です。
何故なら,F[x]の多項式f(x)がf(x)=c0+c1x+..+cnxn と
表わされるなら,c0+c1α+..+cnαn=0 ですが,
これの両辺にσを作用させると,c0+c1σ(α)+..+cnσ(α)n=0
となるからです。
そして,上に示したことからf(x)∈F[x]が分解体Eにおいて異なるn個の根:X={α1,α2,..,αn}を持つなら,σ∈Gal(E/F)のときσ(X)=Xとなり,このσについてσ→σ|Xなる写像はGal(E/F)→SX(対称群)であり,しかもこれは準同型写像です。
そして,SXはSnに同型:SX ~Snです。
したがって,例えば5次の代数方程式のガロア群はS5の部分群と同型になります。
まだ,退院直後で疲れ気味なのでこのぐらいにして,続きはまた後にしたいと思います。
参考文献:J.ロットマン 著(関口次郎 訳)「ガロア理論」(シュプリンガーフェアラーク東京)
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