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2007年1月31日 (水)

常微分方程式の解の存在定理⑥(一般解の存在(3))

 引越しのドサクサで紛失してしまったと思っていたノートが見つかったので,常微分方程式の一般解の存在定理の記事を完成させましょう。

 再掲ですが,1階常微分方程式について厳密な意味での一般解の定義を与えましょう。

"ただ1つの任意定数Cを含んだdy/dx=f(x,y)の解:y=φ(x,C)があって,Cに適当な値を与えることにより,

 

f(x,y)が1価連続でLipsvhitz条件を満足する領域Dに含まれる全ての特殊解=初期値問題の一意解を表現できるとき,このy=φ(x,C)をDにおけるdy/dx=f(x,y)の一般解という。"

 

と定義します。

  

次に,以前に既に証明した,"補助定理1=解の延長定理"を再掲します。 

 

これは,

 

"方程式dy/dx=f(x,y)の右辺の関数f(x,y)が有界な閉領域Dで1価連続でLipschitz条件を満足すると仮定する。

 

そして,φ(x)をDの内部のある点(x0,y0)を通り有限区間a<x<bで定義されるdy/dx=f(x,y)の一意解とする。

 

もちろん,a<x<bを満たすxに対して(x,φ(x))∈Dである。

 

このとき,φ(a+0),φ(b-0)が存在して,これらをそれぞれφ(a),φ(b)と定義すれば,y=φ(x)はa≦x≦bで定義されるdy/dx=f(x,y)の解となる。つまり,解は[a,b]へと延長される。

 

さらに,点(a,φ(a+0)),または(b,φ(b-0)))がDの内点であれば解φ(x)はaの左,またはbの右へ)延長される。"

 

という定理です。

 

今日は,まず,次に与える補助定理22を証明します。 

 

(補助定理2):(x,y)は領域(or 閉領域)Dで連続,かつLipschitz条件を満足するとする。

 

y=φ0(x)をxの閉区間I:[a,b]で定義された方程式dy/dx=f(x,y)の1つの解であるとする。

 

ただし,∀x∈Iに対し(x,φ0(x))∈Dであり,しかもそれらの点は(a,φ0(a)),(b,φ0(b))の2点も含めてDの内点であるとする。

 

このとき,あるδ>0 が存在して,閉領域:U≡{(x,y)|x∈I,|y-φ0(x)|≦δ}に属する任意の点(x0,y0)を通り,閉区間Iで定義されたdy/dx=f(x,y)の唯一の解φ(x,x0,y0)が存在する。

 

さらに,φ(x,x0,y0)はx∈I,(x0,y0)∈U (x0∈I,|y0-φ0(x0)|≦δ) のとき,(x,x0,y0)に関して連続である。

 

以下,これを証明します。

  

(証明)x∈Iで点(x,φ0(x))はすべてDの内点ですから,あるδ1> 0 が存在して∀x∈Iに対して|y-φ0(x)|≦δ1なる点(x,y)が全てDに属することになります。

 

つまり,U1≡{(x,y)|x∈I,|y-φ0(x)|≦δ1}と定義すれば,U1⊂Dとなります。

 

(x,y)は,DにおいてLipscitz条件を満足するので,∃L> 0 :|f(x,y1)-f(x,y2)|≦L|y1-y2| for ∀(x, y1),(x, y2)∈U1 が成立します。

 

このLに対して,δexp{L(b-a)}<δ1,すなわちδ<δ1exp{-L(b-a)}を満たすようにδ> 0 を選び,U≡{(x,y)|x∈I,|y-φ0(x)|≦δ}で閉領域Uを定めます。

 

このとき,U⊂U1⊂Dより,(x0,y0)∈Uなら(x0,y0)∈U1であり,U1は閉領域であってf(x,y)はU1で一価連続,かつLipschitz条件を満足するので,

 

「解の存在と一意性の定理」により,(x0,y0)を通りIに含まれるあるxの閉区間J:[a1,b1]で定義されるdy/dx=f(x,y)の一意的な解y=φ(x,x0,y0)が存在します。

 

(もちろん,J:[a1,b1]もU1の点(x0,y0)に依存します。)

 

すなわち,まず「解の存在と一意性の定理」から,十分小さいα>0 に対してxの閉区間[x0-α,x0+α]で定義されるdy/dx=f(x,y)の(x0,y0)を通る一意的な解y=φ(x,x0,y0)が存在します。

 

そして,このとき[x0-α,x0+α]に対する点(x,φ(x,x0,y0))はすべて領域U1に属します。

 

その上,もし端点(x0-α,φ(x0-α,x0,y0)),または(x0+α,φ(x0+α,x0,y0))がU1の内点なら,さらにx0-αの左側またはx0+αの右側に解を延長することができて,これらは必ず閉区間として表わされます。

  

したがって,こうして得たφ(x,x0,y0)の定義域をJと定めるのです。

 

ここで,(x0,y0)∈Uである限り,閉区間JをJ⊂Iの条件下で如何に大きくしようとも,(a1, φ(a1,x0,y0)),(b1, φ(b1,x0,y0))はU1の内点に留まることを示しましょう。

 

x∈Jのとき(x,φ(x,x0,y0))∈U1ですが,もちろん(x,φ0(x))∈U1ですから,リプシッツ条件によって|f(x,φ(x,x0,y0))-f(x,φ0(x))|≦L|φ(x,x0,y0)-φ0(x)|であり,また|y0-φ0(x0)|≦δです。

 

ところが,φ(x,x0,y0)=y0+∫x0xf(x,φ(x,x0,y0))dx (x∈J),φ0(x)=y0+∫x0xf(x,φ0(x))dx (x∈I)ですから,

 

x∈Jに対して|φ(x,x0,y0)-φ0(x)|≦|y0-φ0(x0)|+|∫x0x|f(x,φ(x,x0,y0)-f(x,φ0(x))|dx|≦δ+L|∫x0x|φ(x,x0,y0)-φ0(x)|dx|です。

 

|φ(x,x0,y0)-φ0(x)|は閉区間Jでxについて連続ですから,正の定数Kが存在して|φ(x,x0,y0)-φ0(x)|≦K (x∈J)です。

 

よって,|φ(x,x0,y0)-φ0(x)| ≦δ+LK|x-x0|,

|φ(x,x0,y0)-φ0(x)| ≦δ+L|∫x0x(δ+LK|x-x0|)dx|

≦δ(1+L|x-x0|)+|∫x0x(L2K|x-x0|)dx|

≦δ(1+L|x-x0|)+L2K|x-x0|2/2  です。

 

これを繰り返して,一般にx∈Jに対して,

 

|φ(x,x0,y0)-φ0(x)|≦δ(1+L|x-x0|+L2|x-x0|2/2+L3|x-x0|3/3!+...+Ln|x-x0|n/n!|+Ln+1K|x-x0|n+1/(n+1)!

となりますから,

 

n→ ∞ において,|φ(x,x0,y0)-φ0(x)|≦δexp{L|x-x0|} ≦δexp{L(b-a)}<δ1

 

が成立します。

 

そこで,a<a1である限り(a1,φ(a1,x0,y0))はU1の内点であり,

1<bである限り(b1,φ(b1,x0,y0))はU1の内点です。

 

したがって,JがIに一致しない限り,φ(x,x0,y0)の定義域はいくらでも両側に延長されて,結局,閉区間Iまで延長されます。

 

何故なら,J⊂I,J≠Iなる任意のJに対してx∈Jならdy/dx=f(x,y)を満足する解φ(x,x0,y0)が存在するので,

 

a<x<bなる任意のxに対して解φ(x,x0,y0)が存在します。

 

結局,解の延長に関する補助定理1により,a≦x≦b,つまり閉区間Iの両端まで解φ(x,x0,y0)の定義域を拡張できるからです。

 

かくして,(x0,y0)∈Uなる任意の(x0,y0)に対して閉区間Iで定義され(x0,y0)を通るdy/dx=f(x,y)の一意的な解が存在すること,が示されました。

 

次にx∈I,(x0,y0)∈Uのとき,φ(x,x0,y0)が(x,x0,y0)に関して連続であることを示しましょう。

 

(x0,y0)∈U,(x0',y0')∈Uとすると,解φ(x,x0,y0),φ(x,x0',y0')は閉区間Iの上で定義されて,(x,φ(x,x0,y0))∈U1,(x,φ(x,x0',y0'))∈U1です。

 

また,∀x,x'∈Iに対し

|φ(x,x0,y0)-φ(x',x0',y0')|≦|φ(x,x0,y0)-φ(x,x0',y0')|+|φ(x,x0',y0')-φ(x',x0',y0')| です。

 

ところが,φ(x,x0,y0)=y0+∫x0xf(x,φ(x,x0,y0))dx,かつ

φ(x,x0',y0')=y0'+∫x0xf(x,φ(x,x0',y0'))dxですから,

 

|φ(x,x0,y0)-φ(x,x0',y0')|≦|y0-y0'|+|∫x0x0'|f(x,φ(x,x0,y0))|dx|+|∫x0'x|f(x,φ(x,x0,y0))-f(x,φ(x,x0',y0'))|dx| が成立します。

 

(x,y)∈U1なら,|f(x,y)|≦MなるM>0 が存在し,(x,y1),(x,y2)∈U1なら|f(x,y1)-f(x,y2)|≦L|y1-y2|が成立するので,

 

|φ(x,x0,y0)-φ(x,x0',y0')|≦|y0-y0'|+M|x0-x0'|+L|∫x0'x|φ(x,x0,y0)-φ(x,x0',y0')|dx|が成立します。

 

したがって,前と同様にして,

 

|φ(x,x0,y0)-φ(x,x0',y0')|≦(|y0-y0'|+M|x0-x0'|)exp{L|x-x0|}≦(|y0-y0'|+M|x0-x0'|)exp{L(b-a)}

 

です。

 

また,φ(x,x0',y0')がIで一様連続なのは自明ですが,

一応,|φ(x,x0',y0')-φ(x',x0',y0')|≦M|x-x'|です。

 

したがって,|φ(x,x0,y0)-φ(x',x0',y0')|

≦(|y0-y0'|+M|x0-x0'|)exp{L(b-a)}+M|x-x'|

となります。

 

よって,|x0-x0'|→ 0,|y0-y0'|→ 0,|x-x'|→0 なら,

|φ(x,x0,y0)-φ(x',x0',y0')|→ 0 が成立します。

 

結局,x∈I,(x0,y0)∈Uのとき,φ(x,x0,y0)は(x,x0,y0)に関して連続であることがわかりました。

 

以上で証明終わりです。

 

今日はここまでにします。

 

ところで,明日は私の誕生日の2月1日なので今日は56歳最後の日です。

 

還暦も近いなあ。。。

 

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