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2007年1月15日 (月)

ガロア理論(2)

 前回の続きです。

 

 まず,環RのイデアルIが素イデアル(prime ideal)であるとは,IがRの真のイデアルであり,しかもab∈Iならa∈Iまたはb∈Iが成立することをいいます。

 

 さて,

 

 "Fが体であるとき,ゼロでない多項式p(x)∈F[x]がF上で既約であるための必要十分条件は(p(x))が素イデアルであることである。"

 

 という命題を証明します。

 

(証明)まず,p(x)が既約であるとします。

 

 そして,ab∈(p)とすると,p|ab(abはpで割り切れる)ですが,pは既約なので,これはp|a,またはp|bを意味します。

 

 すなわち,a∈(p),またはb∈(p)が成立します。

 

 そして,もし(p)=Rなら1∈R=(p)より,1=p(x)f(x)なるfが存在することになりますが,これは矛盾ですから,(p)≠Rであり(p)はRの真のイデアルです。

 

 以上から(p(x))が素イデアルであることがわかります。

 

 逆に,p(x)が既約でない(可約である)とします。

 

 このとき,p(x)=a(x)b(x)となるa,bが存在してa,bは1次以上の多項式なので,∂(a)<∂(p),かつ∂(b)<∂(p)です。もちろんab∈(p)です。

 

(∂(a)は多項式aの次数,ただしaが定数なら∂(a)はゼロです。)

  

 a∈(p)またはb∈(p)なら,∂(a)≧∂(p),または∂(b)≧∂(p)でなければなりませんから,このa,b,p=abについてはab∈(p)ですが,a∈(p)またはb∈(p)は不可能です。

 

 そこで,結局,p(x)が既約でないなら(p(x))は素イデアルにはなりません。

 

 これで,上述の命題:「p(x)が既約⇔(p(x))が素イデアル」の証明が終わりました。(証明終わり)

 

 そして,環Rの1つの真のイデアルをIとするとき,商環R/IはR/I≡{a+I|a∈R}で定義されます。

 

 Iを素イデアルとするとき,0=(a+I)(b+I)=ab+Iなら 0=0+I=Iなので,ab∈Iであり,Iは素イデアルなのでa∈Iまたはb∈Iが成立します。

 

 これは,a+I=0 ,またはb+I=0 を意味します。

 

 それ故,Iが素イデアルなら商環R/Iが整域となることがわかります。

 

 逆にR/Iが整域ならばIが素イデアルであることを示すことも容易にできます。

  

 さらに極大イデアル(maximal ideal)という概念を定義します。

 

 環Rの真のイデアルIは,IともRとも異なるI⊂J⊂RなるRのイデアルJが全く存在しないとき極大イデアルであるといわれます。

 

 そして仮にI⊂J⊂Rなら,こうしたJ全体の集合からR/I全体にJ→π(J)=J/I≡{a+I|a∈J}という自然な全単射が存在することから,Iが極大イデアルならばR/Iは{0}とR/I以外に部分イデアルを持たないことがわかります。

 

そこで,a+I≠0 なる∀a∈R,つまりa∈Iでない全てのaに対して,任意の単項イデアルは(a+I)=R/Iより,R/I=(1+I)はa+Iによっても生成されますから,1+I=(a+I)(b+I)=ab+Iとなるb+I≠0 なるb∈Rが存在します。

 

b+I≠0 はもちろん一意的ですから,これをa+Iの逆元と定義することでR/Iは体になることが示されました。

 

すなわち,"IがRの極大イデアルであれば商環R/Iは体となる。したがって,R/Iは体で,もちろん整域なのでIは素イデアルである。"ということになります。

 

次に,

 

"RがPID(単項イデアル整域)なら,任意のゼロでない素イデアルIは極大イデアルである。"

 

という命題を証明しましょう。

  

(証明)RがPIDであるとしIをRのゼロでない素イデアルとします。

 

そして,I⊂J⊂RなるRのイデアルJ≠Iが存在すると仮定します。

 

RはPIDなので,I=(a),J=(b)となるゼロでないa,b∈Rが存在します。

 

I⊂Jより,a∈Jなのでa=rbとなるr∈Rが存在します。

 

そこでrb∈Iですが,IはRの素イデアルなのでr∈Iまたはb∈Iが成り立ちます。

 

しかし,b∈IならI⊂J,J≠Iであるにも関わらず,J⊂Iとなり矛盾します。

 

そこで,r∈Iですが,それなら,∃s∈R:r=sa,つまりa=rb=sabにより,1=sbですから,J=(b)=Rとなることがわかります。

 

これで,IはRの極大イデアルであることが証明されました。(証明終わり)

 

以上の一連の命題から,F[x]/(p(x))は1つの体であることがわかりました。

 

そして,I≡(p(x)),F1≡F[x]/Iとおくと,写像:a∈F →a+I∈F'は,FからF'⊂F1への同型写像になります。

 

そこで,このF'をFと同一視します。

 

ここで,θ≡(x+I)∈F1とおけばθが既約多項式p(x)の根になることを示すことができます。

 

何故なら,p(x)=a0+a1x+...+ann と書くと,(θ)=(a0I)+(a1I)(x+I)+...+(anI)(x+I)n =a0+a1x+...+ann +I=p(x)+I=Iが成立します。

 

そして,Iは1≡F[x]/Iの零元ですから,θ=(x+I)はF1において,既約多項式p(x)の根となることがわかるからです。

 

つまり,"F[x]/(p(x))はp(x)の根を含む体である。"ことが示されました。

 

次に,E/Fが体の拡大でα∈EがF上で代数的であるとします。

 

このとき,写像φ:F[x]→Eを,f(x)∈F[x]→f(α)∈Eによって定義します。

 

φは,いわゆる代入写像:E[x]→EのF[x]への制限なので,φは環準同型になります。

 

αはF上で代数的なので,Kerφ≡{f(x)∈F[x]|f(α)=0}はF[x]の零でないイデアルになります。

 

Kerφ(φの核)がイデアルであるのはほぼ自明なので,証明を略します。

 

そして,αがF上で代数的なので,Kerφがゼロでない元を持つことも定義そのままです。

 

既に示したように,多項式環:F[x]は P.I.D.なので,あるモニック:p(x)∈F[x]に対して,Kerφ=(p(x))と書けます。

 

一方,Fの拡大であるEも体なので,その部分環であるimφ≡{f(α)∈E|f(x)∈F[x]}は整域です。

 

 環同型定理により,F/Kerφ~imφですが,imφが整域なのでF/kerφも整域です。

  

 そこで,Kerφ=(p(x))は素イデアルですから,p(x)はF上でαを根とする既約多項式(既約なモニック)であることがわかりました。

 

 次に,写像Φ:f(x)+(p)∈F[x]/(p(x))→f(α)∈F(α)において,KerΦ=(p(x))=(F[x]/(p(x))の零元)ですから,

 Φ;F[x]/(p(x))→F(α)は同型写像です。

 

つまり,F[x]/(p(x))~F(α)ということになります。

 

また,定義によりΦ:x+(p)→α,および任意のc∈Fに対してc+(p)→cですから,F'≡{c+(p)|c∈F}をFと同一視すれば,ΦがFを点ごとに固定するという式:Φ(x+(p))=αも成立します。

 

 さらに,p(x)が既約なのでimφ=imΦ={f(α)|f(x)∈F(x)}はEの部分体ですが,明らかにimΦはFとαを含む任意の部分体に含まれるのでimΦ=F(α)です。

 

 そして,I≡KerφならIはイデアルですが,f(x)∈Iならd≡(f,p)∈Iです。(dはfとpの最大公約多項式)

  

 pは既約なのでモニックの因子としてはd=1,またはd=pです。

   

 しかし,1はKerφに含まれないのでd=pにより,p|fとなります。

 

 したがって,∂(p)≦∂(f)です。

 仮にpと異なるq(x)∈Iがモニックで∂(q)=∂(p)なら,(q-p)∈Iで∂(q-p)<∂(p)ですから,∂(p)≦∂(f)に矛盾します。

 

 それ故,

  

 p(x)はαを根に持つF[x]の最低次数のモニックであり,しかもαを根に持つこの最低次数のモニックはp(x)以外にはない。

  

ことが証明されました。

 また,F1≡F[x]/(p(x))を考え,p(x)∈F[x]をn次の多項式とします。

 

 I=(p(x)),α≡x+I∈F1とすると,先に述べたようにαはF1におけるp(x)の根になっています。

 

 そこで,このとき,{1,α,α2,...αn-1}がF上のF1の基底になることを証明します。ただし任意のc∈Fはc+I∈F[x]/Iと同一視します。

 

 0≦i≦n-1に対して,Σiiαi0 となるような全てがゼロではない係数ci∈Fが存在すれば,Σiiiは高々(n-1)次の多項式ですから,

 

これはn次多項式p(x)がαを根に持つ最低次数の多項式であることに矛盾します。

 

それ故,Σiiαi0 なら係数ci∈Fは全てゼロで,結局{1,α,α2,...αn-1}はF上1次独立であるということがわかります。

 

そこで,r(x)∈F1,∂(r)<nに対してr(x)=Σiiiならr(α)はr(α)=Σiiαiと一意的に表現されます。

 

 この係数ai∈Fが一意的であることは{1,α,α2,...αn-1}がF上で1次独立であることによって保証されます。 

 

 そして,F1の任意の元はf(x)+Iと表わすことができますが,f(x)=q(x)p(x)+r(x),ただし∂(r)<∂(p)=nと書けますから,

f(x)+I=r(x)+Iであって∂(r)<∂(p)=nです。

 

それ故,F1=F[x]/(p(x)) ~F(α)なる同型でF1の任意の元(x)+Iはf(α)=r(α)と同一視されます。

 

 しかも,r(α)は上述のように{1,α,α2,...αn-1}によってr(α)=Σiiαiと一意的に展開表現されることがわかります。

 

 結局,f(x)+I~ f(α)=Σiiαiと一意的に書けます

 

 以上から,{1,α,α2,...αn-1}はF1~ F(α)の基底になり,したがって[F(α):F]=∂(p)であることも示されました。

 

参考文献:J.ロットマン 著(関口次郎 訳)「ガロア理論」(シュプリンガーフェアラーク東京)

 

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