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2007年1月 9日 (火)

中性子星の物理

 重力収縮した星の中心部のように非常に高密度の物質では,陽子,電子,中性子の自由粒子の混合としての理想気体という描像とは程遠く,通常,核子は自 由粒子ではなく原子核という状態で存在しています。

 したがって,高密度状態では核力の影響を無視できません。 

 重い原子核の結合エネルギーは次のような半経験的質量公式で表わすことができます。

 

 すなわち,Z,Nをそれぞれ陽子数,中性子数,A=Z+Nを質量数とすると,結合エネルギーE(Z,N)はE(Z,N)=-c1A+c22-1/3+c3(N-Z)2/A+c42/3で与えられるという式です。

 

 ここに,c116MeV,c20.72MeV,c324MeV,c418MeVです。

 公式の右辺の項は,順に体積エネルギー,Coulombエネルギー,対称エネルギー,表面エネルギーです。

 

 このうち,Coulombエネルギー:c22-1/3と表面エネルギー:c42/3のA依存性は,原子核の半径が,r=1.3×10-151/3mのように与えられることから推察されます。

 原子核は,β崩壊による自由電子の放出と逆β過程による電子の吸収(捕獲)との平衡状態にあると考えられます。

 

 この平衡は原子核をA(Z,N)で表わすと,(Z,N)+e- ⇔ A(Z-1,N+1)と表現されます。

 

 この平衡式を原子核の静止質量を含んだエネルギーの保存と解釈すると,Zmp2+Nmn2+E(Z,N)+Ee(Z-1)mp2(N+1)mn2+E(Z-1,N+1)と書けます。

 すなわち,{E(Z,N)-E(Z-1,N)}+Ee{E(Z-1,N+1)-E(Z-1,N)}+(mn-mp)2 です。

 

 Z,N>>1であれば,(Z,N)-E(Z-1,N)~∂E(Z,N)/∂Z≡μp,E(Z-1,N+1)-E(Z-1,N)~∂E(Z,N)/∂N≡μnです。

 

 ここで化学ポテンシャルμpn は,それぞれ陽子,中性子を原子核に1個追加するのに必要なエネルギーを意味するので,原子核の内部エネルギーレベルのうちで占められる最も高い準位のエネルギーレベルと考えていいでしょう。

 そこで,e=μe+me2を考慮すると,平衡の式はμn-μp(mn-mp-me)2=μeですが,今はμe>>(mn-mp-me)2の場合を想定しているので,質量エネルギーを無視して平衡の条件をμn-μp=μeとします。

 一方,(Z,N)=-c1A+c22-1/3+c3(N-Z)2/A+c42/3,∂E(Z,N)/∂Z≡μp,∂E(Z,N)/∂Z≡μpより,μn-μp=-2c2ZA-1/34c3(N-Z)/Aです。

ここで,核子の平均個数密度をnNとすると,電子の平均個数密度neはx≡Z/Aとしてne=xnNです。

 

縮退Fermi気体としての電子は,Fermi運動量をpFとして,e(F /hc)3/(3π2),またはF(3π2)1/3ce1/3 (c≡h/(2π);hはPlanck定数)を満たします。

 

相対論的粒子なら,μe=pFc=2Kne1/32KnN1/31/3,K≡(3π2)1/3c/2です。さらに簡単のため,6c3k≡KnN1/3によってkを定義しておきます。

このとき,平衡条件:μn-μp=μeは,μn-μp=-2c2ZA-1/34c3(N-Z)/Aより,12c3kx1/3=-22xA2/34c3(1-2x),c2xA2/32c3(1-2x-3kx1/3)となります。

ここで,与えられた固定のA値に対し,エネルギーが最低になるx≡Z/Aを求めてみます。

 

Aは定数なので1核子当たりのエネルギーEtot/A=E/A+(3/4)xμeで考えることにします。

 

ただし,第2項(3/4)μeは1核子当たりの電子の平均Fermiエネルギーe/Nです。

 

なぜなら,相対論的には,e3Pe=(3/4)(3π2)1/3ccne4/3=(3/4)eμe(3/4)xμeNより,e/N(3/4)μeとなるからです。

結局,Etot/A=-c12c3(1-2x-3kx1/3)+c3(1-2x)2+c4{c2/(2c3)}1/21/2(1-2x-3kx1/3)-1/29c3kx4/3となるので,d(tot/A)/dx=0 を計算すると,x1/2(1-2x-3kx1/3)3/2=c421/2/{2(2c3)3/2}が得られます。

具体的な値はK≒4.9×10-26Jm,324MeV≒3.84×10-12Jですから,K/6c33.84×10-15m,nN~1028-3より,nN1/3~4.6×1010-1です。

 

k~10-4,2k1/310-4からd(tot/A)/dxを調べると,x1/2 (1-2x-3kx1/3)3/2=c421/2/{2(2c3)3/2}を満たすxでtot/Aは極小になることがわかります。

具体的なc2,c3,c4の値を代入すると,1/3(1-2x-3kx1/3)≒0.081,

すなわちk=(1/3)x-1/3(-0.081x-1/31-2x)となり,これから

A≒12.5(A/Z)2が得られます。

 

すなわち,A=Z2/12.5なる放物線が平衡曲線として得られたわけです。

一方,中性子の結合エネルギー:μn0 はμn≒-16+3.88x2/324(1-4x2)(MeV)なので,nNが増加してxが減少するにつれてμnは増加してx≒0.32でμn 0 となってしまいます。

 

これの意味はこれ以上の密度では中性子を追加するとかえって原子核の内部エネルギーが高くなってしまうということです。

 

そこで,この密度以上では一部の中性子は非束縛の核子として自由な中性子として挙動するわけです。

この臨界の自由中性子が発生する核子密度は,ρ=mNNとしてρ=ρ12.84×1014kgm-3です。

 

そして,x≒0.32でA=122,Z=39です。

ρ>ρ1では物質は原子核,電子,中性子の3成分から成っています。もちろん,このときの中性子を理想気体として扱うことはできません。

 

核力をも考慮した状態方程式が計算できるので,これを用いて全エネルギーが最小になる状態を定めると密度の増加と共に引き続きAとZは増加しますがxは減少します。

 

そして密度がρ25.6×1016kgm-3以上になると,μpも正になりこの密度からは原子核も溶けてしまうことになります。 

ρ2以上の密度では,中性子と,その数百分の1の陽子,電子で構成された状態になります。核子間では中性子の縮退圧よりも大きい核力が働くことになります。

参考文献;佐藤文隆 原 哲也 著「宇宙物理学」(朝倉書店)

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