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2007年1月11日 (木)

結合エネルギーが最大の元素(鉄)

重い原子核の結合エネルギーは質量公式:E(Z,N)=-c1A+c22-1/3+c3(N-Z)2/A+c42/3,c116MeV,c20.72MeV,c324MeV,c418MeVで近似的に表現できることを既に述べました。

そこで安定な原子核のZはAのどのような関数であるかを調べ,次に1核子当たりの結合エネルギーが最大の原子核の質量数AをN~Z~A/2の近似のもとで求めてみます。 

安定な核は,条件式(∂E/∂Z)|A=0 から得られます。

 

N-Z=A-2Zなので,(∂E/∂Z)|A=22ZA-1/343(A-2Z)/A=0 であり,このZを境にして∂E/∂Zは正から負に変わりますから,このZでEは最小になります。

 

したがって,Z=2c3/(22/343)≒48A/(0.72A2/396)という式が安定な核の条件になります。そこでAがあまり大きくなければ,Z~A/2 で安定ですね。

また,N~Z~A/2という前提で1核子当たりの結合エネルギーが最大になるAを求めると,d{E(A/2,A/2)/A}/dA=d(-c1+c22/3/4+c4-1/3)/dA=A-4/3(c2/6-c4/3)なので,

 

A=2c4/c236/0.72~ 50 となります。

 

A~ 50 付近の元素で,組成がZ~A/2に近いものは,バナジウム(V:A=51,Z=23),クロム(Cr:A=52,Z=24,マンガン(Mn:A=55,Z=25),鉄(Fe:A=56,Z=26)etc.があります。

 

しかし,これらは,丁度Z=A/2を満たすわけではありません。

 

むしろ,E(Z,N)に,=2c3/(22/343)≒48A/(0.72A2/396),およびN=2A-Zを代入した後,dE/dAがゼロとなるAを求めた方がいいかもしれません。これは,結構大変ですね。

  

鉄(Fe:A=56,Z=26)は,Z=2c3/(22/343)≒48A/(0.72A2/396)に組成がかなり近いようです。

 

そして,実在の元素では鉄(Fe)のときに結合エネルギー:E(Z,N)が最大になるようです。

 

したがって,星の熱核融合で重元素が創られていっても,最終的に鉄(Fe)に到達すると,それ以上反応は進まないで,そこで核融合は終わることになるようです。

 

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