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2007年2月24日 (土)

1のベキ乗根はベキ根で解けるか?(円分多項式の根)

 今日はガロア理論の解説の際には暗黙のうちに当然視していたところの

 

 ""一般の1のベキ乗根=円分(円周等分)多項式の根は,全てベキ根として

 表わすことができる,あるいは,1のベキ乗根を添加した拡大体は

 ベキ根拡大である。"

 

 という命題を再確認してみたい,と思います。

 

  一般の1のベキ乗根,例えば,

 

  131=(x-1)(x12+x11+...+x+1)=0 の根である

 1の13乗根:ζ=e2πki/13cos(2πki/13)+isin(2πki/13)

 (k=0,1,2,...,12)を単に131とか,11/13と書いただけでは,

 

 x131=0 をベキ根で解いた,あるいは,

 円分多項式:12+x11+...+x+1=0 の根を

 ベキ根で解いたことにはならない,

 

 と思われます。

 

 例えば,自明でない1の3乗根の1つ:ωを,31とか,11/3

 表わしても31=0,あるいはx2+x+1=0 の根をベキ根

 で解いた,とは思わないでしょう。

 

 ω=(-1±√-3)/2=(-1±i√3)/2と表わすことができて初めて,

 これらの方程式がベキ根で解けた,と考えるのが

 妥当だと思います。

 

 では,Abel(アーベル)やGalois(ガロア)のいうベキ根で解ける,

 あるいは同等な意味ですが体の拡大:L/Kがベキ根拡大である,

 とはどのように定義されるべきものなのでしょうか?

 

 こうした言葉の厳密な真の意味について,ここで振り返って

 確認しておくことは,決して無駄なことではなく,Galois理論

 などの理解において,重要な意味を持つと思われます。

 

ベキ根拡大:L/Kの厳密な数学的定義として,従来から提示されて

いるものは,いくつかあるようですが,ここでは次のような定義

を採用することにします。

 

"体の拡大:L/Kは,次の2つの条件を満たすときに,

(高さ1の)ベキ根拡大である。" と定義します。

 

条件とは,

 

"(1)u∈Lと素数pがあって,Lは体Kにuを添加して得られた

高さ1の拡大体:L=K(u)であり,up∈Kが成り立つ。

 

(2)up は,いかなるKの元のp乗にもならない。

すなわち,upはKpの元ではない,特にuはKの元ではない。"

 

という2つです。

 

この定義を採用すると,1の原始p乗根の1つをζとしてQを有理数体

とすれば,確かにζp1=1p ∈Qですが,1p1で1∈Qですから,

 

u≡ζと選ぶ限り,条件(2)によって,Q(u)/Qがベキ根拡大である

と直ちにはいえません。

 

つまり,有理数体Qにp1とか,11/pとか書いたものを添加して,

Qを(p1)と書いただけでは,p1=0 がベキ根で解けた,

 

とか,Q(p1)/Qがベキ根拡大である

 

と直接に明言することはできない,のですね。

 

したがって,p=3の1の3乗根の1つをωとして,Q(ω)/Qとしても,

これがベキ根拡大であるかどうかは,これだけでは不明で,

 

Q(ω)/QをQ(√-3)/Qと書くことができて初めて,

この拡大が,"ベキ根拡大"であるといえるわけです。

 

ここでベキ根拡大の定義において,何故ことさらに素数のベキ根

のみを取り上げるのかというと,それは次のような理由からです。

  

nが素数ではなくて,n=stと1より大きい2つの整数sとtの

積で表わされるなら,円分方程式xn1=0 は可約です。

 

すなわち,"1とその他の全ての根=1の全てのn乗根"は,

1のs乗根{ξ12,...ξs}と,1のt乗根{η12,...ηt}

によって,{ξiηj1/s |i=1,2,...,s;j=1,2,...,t}

と表わすことができます。

 

そこで,1のs乗根と1のt乗根が既にベキ根で解けることが

わかっているなら,1のn乗根もベキ根で解けることになる

からです。

 

実際,これらのx=ξiηj1/sのそれぞれについてxn1 が成り立つ

ことは明らかですし,ξiηj1/sξkηl1/s ((i,j)≠(k,l))と

仮定すれば,両辺をs乗してηjηlとなるので,

 

j≠lなら矛盾を生じ,j=lならばξiξkとなって, 

i≠kならやはり矛盾を生じますから,これらはすべて異なり,

1のn=st個のn乗根の全てを尽くしています。

 

それ故,nを素因数分解して素数の積にしたとき,それらの因子

であるそれぞれの素数pについてのp乗根が全てベキ根で解ける

なら,1のn乗根もベキ根で解けることになります。

 

さて,p=2,3のとき1のp乗根がベキ根で解けることは自明です。

 

またp=5のときは円分方程式は,x4+x3+x2+x+1=0,p=7

のときのそれは,x6+x5+x4+x3+x2+x+1=0 となります。

 

そこで,y≡x+1/xとおけば,これらはそれぞれyの2次方程式:

2+y-1= 0, 3次方程式y3+y2-2y-1=0 に帰着し,

 

また,y=x+1/xはxについての2次方程式:x2-yx+1=0

になります。

 

これらは,いずれもベキ根として解ける一般的な根の公式が存在しますから,結局,初めの4つの素数:p=2,3,5,7については1のp乗根は

ベキ根で解けることがわかります。

 

そして,Gauss(ガウス)によって,p=13のときは次のようにして

ベキ根で解けることが示されています。

 

すなわち,p-1=12=3・4であり,ζを1つの1の原始13乗根

として,m≡8,η1≡ζ+ζm+ζm2+ζm3とおけば,

4=84≡1(mod p)です。

 

ζ13=1なので,η1≡ζ+ζ8+ζ12+ζ5となりますが,

ここでζ→ζ2という写像で変換すれば,η1

η2≡ζ2+ζ3+ζ11+ζ10となり,

 

η1においてζ→ζ4という写像で変換すれば,η1

η3≡ζ4+ζ6+ζ9+ζ7となり,円分方程式によって

η1+η2+η3=-1 となります。

 

さらにη1η2+η2η3+η3η1=-4,η1η2η3=-1が導けるので

η123は3次方程式x3+x2-4x+1=0 の3つの根ですから,

もちろんベキ根で解けます。

 

そして,η1=ζ+ζ8+ζ12+ζ5は1の13乗根のうち自明な根1

を除く12個のうちの4つの根の和ですが,

 

ζ・ζ8+ζ・ζ12+ζ8・ζ12+ζ8・ζ5+ζ12・ζ5+ζ5・ζ

=η3+2,ζ・ζ8・ζ12+ζ・ζ8・ζ5+ζ8・ζ12・ζ5+ζ5・ζ・ζ12

=η1,ζ・ζ8・ζ12・ζ5=1なので,ζ,

 

ζ8125は4次方程式:x4-η13+(η3+2)x2-η1x+1=0

の4つの根です。

 

どれか,1つは原始根ζですから,この4次方程式からζを求めると,

1の全ての13乗根:{1,ζ, ζ2,...,ζ12}をベキ根解として求めるこ

とができるわけです。

 

また,ξ1≡ζ+ζ3+ζ9とおき,これから,ζ→ζ2,ζ→ζ4,ζ→ζ8

によりξ2≡ζ2+ζ6+ζ53≡ζ4+ζ12+ζ10,

ξ4≡ζ8+ζ11+ζ7を作ると,

 

ξ1+ξ2+ξ3+ξ4=-1,

 

ξ1ξ2+ξ1ξ3+ξ1ξ4+ξ2ξ3+ξ2ξ4+ξ3ξ4+ξ4ξ1

=2,ξ1ξ2ξ3++ξ1ξ2ξ4+ξ2ξ3ξ4+ξ3ξ4ξ1

=4,ξ1ξ2ξ3ξ4=3なので,

 

ξ1234は4次方程式:x4+x3+2x2-4x+3=0

の4つの根になりますから,もちろんベキ根で解けます。

 

ξ1≡ζ+ζ3+ζ9 に着目すると,ζ,ζ39は,

3-ξ12+ξ3x-1=0 の3つの根です。

 

そこで,この3次方程式から原始根ζを求めると,

1の全ての13乗根:{1,ζ, ζ2,...,ζ12}をベキ根解

として求めることができます。

 

今のp=13の場合は3次方程式の根も4次方程式の根も

一般的公式から代数的にベキ根として求めることが可能で

あったので,1のp乗根を求める方法が2通りもありました。

 

それでは,p=11ではどうでしょうか?

 

この場合はp-1=2・5です。

 

しかし,2次方程式はともかく5次以上の代数方程式は

一般にベキ根で解ける公式はないことがAbelとGalois

によって示されていますから,p=13のときの方法は

使えません。

 

そこで,結局はGaussの証明した泥臭い方法は,私にとっては

尻切れトンボになって不明だったので,Galois理論を用いた

数学的帰納法に頼ることにしました。

 

一般に1の原始n乗根の1つをζnで記述することにします。

 

そして帰納法の仮定として,問題としている素数pに対し,

m≦(p-1)の1の原始m乗根はすべてベキ根で解ける

と仮定します。

 

また,ζp は1の原始p乗根の1つですから,

(p-1)次の円分方程式を満足します。

 

この円分方程式は,pが素数なのでQを有理数体としてQで

既約ですから,Qにζpを添加した拡大体Q(ζp)については,

次数は[Q(ζp):Q]=p-1です。

 

そしてこの円分方程式のGalois群:Gal(Q(ζp)/Q)は(Z/pZ)×

に同型なので,Abel群であり,それ故,可解群です。

 

Q'≡Q(ζp-1)とおきQp)にζp-1を添加した拡大体Q'(ζp)

を考えると「ガロアの推進定理」によって

,Gal(Q'(ζp)/Q')~ Gal(Q(ζp)/Q)が成立するので,

 

Gal(Q'(ζp)/Q')も可解群であり,しかもQ'にはm≦(p-1)

の1の原始m乗根が全て含まれていることになります

 

それ故,「 ガロア理論(3)」で与えた「ガロアの偉大な定理」

によってQ'(ζp)/Q'もベキ根による拡大になります。

 

したがって,Q'(ζp)の元ζpはQ'の上でベキ根で解けるはずですが,

Q'=Q(ζp-1)におけるζp-1自身も帰納法の仮定によって

Qの上でベキ根で表わせるのですから,

 

結局のところζpはQの上でベキ根で解けることが示された

ことになります。

 

Galois理論を理解するために,1のベキ乗根をベキ根で表わせることを証明したいと思って,Gaussの証明を参照したかったのですが,

 

肝心のところに関する参考文献が,当面のところ不明だったので,

結局,Galois理論を用いてしまったわけで我ながらいささか

本末転倒の感があります。

  

(ひょっとすると同義語反復という意味のトートロジーかも?) 

  

参考文献:原田耕一郎 著「群の発見」(岩波書店),足立恒雄 著「ガロア理論講義」(日本評論社)

   

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)

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