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2007年2月27日 (火)

5次以上の代数方程式の解法

 5次以上の任意の代数方程式の解について方程式の係数から,

ベキ根を取ることによって得られる解の公式を求めることは

19世紀にAbelとGaloisによって,不可能であることが

証明されました。

 

(これについては,2007年1/14から2007年1/29までの「ガロア理論(1)」,

ガロア理論(2)」,「ガロア理論(3)」,ガロア理論(4)」,

ガロア理論(5)」,「ガロア理論(5)補遺」,

 

ガロア理論(6)や,

 

 2007年2/24,2/25の関連記事,

 

1のベキ乗根はベキ根で解けるか?(円分多項式の根)」,

円分多項式のガロア群」もありますから,

 

 よかったら参照してください。)

 

 しかしながら,ベキ根による解法が存在しなくても,

代数学の基本定理」によれば,

 

 複素数体の中にその"代数方程式の解=零点"が必ず存在する,

ことはわかっています。

 

 "解が存在する。"ことと,"解法が存在する。"ことは,

全く別のことなのですね。

 

 ところで,5次以上の任意の代数方程式の解について,ベキ根による

解法は存在しなくても,それ以外の方法で解を求める一般的な解法

というものは存在しないのでしょうか? 

 

 例えば,1のn乗根,すなわちxn1= 0 の解は,既に述べたように

その全てをベキ根で表現することが可能ですが,それを具体的に示す

ことはかなり面倒な課題です。

 

 しかし,ルートを取るという操作と四則演算のみに頼るという狭い

方法にこだわることなく,指数関数や三角関数を用いてよいなら,

 

 n個のxn1= 0 の解であるn乗根をζk(k=0,1,2,...n-1)

とおくとき,ζk=e2πki/ncos(2πki/n)+isin(2πki/n)

という形書くことができて,かなり,すっきりした簡明な形

で表現できることは,もっと昔から知られていました。

 

 実は,一般の5次の代数方程式の解も,ベキ根に頼るのではなくて,

楕円関数を用いる方法によって,その解の公式を与えることが可能

であることがわかっていて,テータ関数を用いてその公式を与える

実際の表式が得られています。

 

 これを厳密に説明することは,私の現時点での容量の限界を超えて

いるので,その手順の概略のみを紹介してみます。 

 

 一般の5次の代数方程式を,

 x5+a14+a23+a32+a4x+a50 と書くと,

 y=x+a1/5 とおくことによって,a1 0 の場合に

帰着させることができますが,

 

 この変換を一般化して,Tschirnhausen(チルンハウゼン)変換

呼ばれる変換:y=α0+α1x+α22+α33+α44

考えます。

 

 ここでαiはある複素数です。

 

 このとき,複素数biが存在して,先のxに対する5次の代数方程式

がyに対する方程式5+b14+b23+b32+b4y+b50

に変換されるとします。

 

 もしも,1≦i≦4を満たす4つのiについて.

i(α01234)=0 を満たす複素数の組:

α01234を見つけることができれば,

 

 そうしたαiに対してはyの5次方程式はy5+b5 0 となり,

この解は根号によって,y=(-b5)1/5と書けますから,

結局,元のxに対する5次方程式の解が求まることになります。

 

 ところが,i01234)=0 (1≦i≦4)を満足する解

01234)≠0 を求めるには,残念ながら,

24次の代数方程式を解かなければならず,

 

 5次の代数方程式x5+a14+a23+a32+a4x+a50

に対して,この24次の方程式を解くことは不可能なこと

がわかっています。

 

 しかし,4つ全部のiではなく,1≦i≦3を満たす3つだけについて,

i01234)=0 を満足する(α01234)≠0

を求めるには高々4次の代数方程式を解けばいいので,

 

 結局,,Tschirnhausen変換により,ベキ根のみの方法により

与えられた方程式をy5+y+b=0 という形にまで簡略化

できます。

 この簡略形は,この方法を始めて行った人の名を取って,

Bring-Jerrardの標準形と呼ばれています。

 

 そして,このy5+y+b=0 の一般解を求めることは,

べき根によるのでは不可能ですが,楕円関数の世界では,

この解の公式を具体的に表わすことができるらしいのです。

 

 6次以上の代数方程式についても,楕円関数を

さらに超越積分∫[1/√f(x)]dxに置き換えることで,

解の公式を作ることができるらしいですね。

 

参考文献;梅村 浩 著「楕円関数論」(東京大学出版会) 

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コメント

         はじめまして。
Tschirnhausen で 漂着致しました。

http://b4.spline.tv/mynb/?message=184
        を ご笑覧ください。

    解いて、ご意見をいただけると  嬉 しい  ♂喜

(へそから下の下半身には人格がない への 言及をも 拝聴しました)

投稿: Az | 2007年10月29日 (月) 11時20分

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