5次以上の代数方程式の解法
5次以上の任意の代数方程式の解について方程式の係数から,
ベキ根を取ることによって得られる解の公式を求めることは
19世紀にAbelとGaloisによって,不可能であることが
証明されました。
(これについては,2007年1/14から2007年1/29までの「ガロア理論(1)」,
「ガロア理論(2)」,「ガロア理論(3)」,「ガロア理論(4)」,
「ガロア理論(5)」,「ガロア理論(5)補遺」,
「ガロア理論(6)」や,
2007年2/24,2/25の関連記事,
「円分多項式のガロア群」もありますから,
よかったら参照してください。)
しかしながら,ベキ根による解法が存在しなくても,
「代数学の基本定理」によれば,
複素数体の中にその"代数方程式の解=零点"が必ず存在する,
ことはわかっています。
"解が存在する。"ことと,"解法が存在する。"ことは,
全く別のことなのですね。
ところで,5次以上の任意の代数方程式の解について,ベキ根による
解法は存在しなくても,それ以外の方法で解を求める一般的な解法
というものは存在しないのでしょうか?
例えば,1のn乗根,すなわちxn-1= 0 の解は,既に述べたように
その全てをベキ根で表現することが可能ですが,それを具体的に示す
ことはかなり面倒な課題です。
しかし,ルートを取るという操作と四則演算のみに頼るという狭い
方法にこだわることなく,指数関数や三角関数を用いてよいなら,
n個のxn-1= 0 の解であるn乗根をζk(k=0,1,2,...n-1)
とおくとき,ζk=e2πki/n=cos(2πki/n)+isin(2πki/n)
という形に書くことができて,かなり,すっきりした簡明な形
で表現できることは,もっと昔から知られていました。
実は,一般の5次の代数方程式の解も,ベキ根に頼るのではなくて,
楕円関数を用いる方法によって,その解の公式を与えることが可能
であることがわかっていて,テータ関数を用いてその公式を与える
実際の表式が得られています。
これを厳密に説明することは,私の現時点での容量の限界を超えて
いるので,その手順の概略のみを紹介してみます。
一般の5次の代数方程式を,
x5+a1x4+a2x3+a3x2+a4x+a5=0 と書くと,
y=x+a1/5 とおくことによって,a1= 0 の場合に
帰着させることができますが,
この変換を一般化して,Tschirnhausen(チルンハウゼン)変換
と呼ばれる変換:y=α0+α1x+α2x2+α3x3+α4x4
を考えます。
ここでαiはある複素数です。
このとき,複素数biが存在して,先のxに対する5次の代数方程式
がyに対する方程式y5+b1y4+b2y3+b3y2+b4y+b5=0
に変換されるとします。
もしも,1≦i≦4を満たす4つのiについて.
bi(α0,α1,α2,α3,α4)=0 を満たす複素数の組:
α0,α1,α2,α3,α4を見つけることができれば,
そうしたαiに対してはyの5次方程式はy5+b5 =0 となり,
この解は根号によって,y=(-b5)1/5と書けますから,
結局,元のxに対する5次方程式の解が求まることになります。
ところが,bi(α0,α1,α2,α3,α4)=0 (1≦i≦4)を満足する解
(α0,α1,α2,α3,α4)≠0 を求めるには,残念ながら,
24次の代数方程式を解かなければならず,
5次の代数方程式x5+a1x4+a2x3+a3x2+a4x+a5=0
に対して,この24次の方程式を解くことは不可能なこと
がわかっています。
しかし,4つ全部のiではなく,1≦i≦3を満たす3つだけについて,
bi(α0,α1,α2,α3,α4)=0 を満足する(α0,α1,α2,α3,α4)≠0
を求めるには高々4次の代数方程式を解けばいいので,
結局,,Tschirnhausen変換により,ベキ根のみの方法により
与えられた方程式をy5+y+b=0 という形にまで簡略化
できます。
この簡略形は,この方法を始めて行った人の名を取って,
Bring-Jerrardの標準形と呼ばれています。
そして,このy5+y+b=0 の一般解を求めることは,
べき根によるのでは不可能ですが,楕円関数の世界では,
この解の公式を具体的に表わすことができるらしいのです。
6次以上の代数方程式についても,楕円関数を
さらに超越積分∫[1/√f(x)]dxに置き換えることで,
解の公式を作ることができるらしいですね。
参考文献;梅村 浩 著「楕円関数論」(東京大学出版会)
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コメント
はじめまして。
Tschirnhausen で 漂着致しました。
http://b4.spline.tv/mynb/?message=184
を ご笑覧ください。
解いて、ご意見をいただけると 嬉 しい ♂喜
(へそから下の下半身には人格がない への 言及をも 拝聴しました)
投稿: Az | 2007年10月29日 (月) 11時20分