円分多項式のガロア群
前記事で1のベキ乗根がベキ根で表わせることの証明をGalois理論
によって行った際に,その主要なエッセンスとして,
"円分多項式のGalois群::Gal(Q(ζp)/Q)は(Z/pZ)×に同型なので
Abel群であり,それゆえ可解群です。"とさらりと書いて,詳細な説明
や証明を与えませんでしたが,それは既に過去の記事
「ガロア理論(5)」において,かなり詳細に説明しており証明
しているからです。
そこでは,"pの倍数の集合:pZ=(p)によって作られる
剰余類の集合=商環:(Z/pZ)"をZpと表記していますが,
pが素数の場合には明らかに1つの体になります。
また,"Zp=(Z/pZ)から零元を除いた乗法群=位数が
(p-1)の巡回群"を上記では慣例にしたがって(Z/pZ)×
と表記していますが,
前述の記事「ガロア理論(5)」においては,Znの単元の乗法群
をU(Zn)≡{[i]∈Zn|(i,n)=1}と表記しています。
pが素数の場合,[0]と異なる[i] (i=1,2,...,p-1 )
は,すべて単元なのでU(Zp)と(Z/pZ)×=Zp×
は一致します。
また,「ガロア理論(5)」での結論は,
"Gal(E/F)は乗法群U(Zn)の部分群と同型になる。"
というものでした。
pが素数なら,U(Zp)=(Z/pZ)×の部分群は,
"自明なもの=1"と(Z/pZ)×自身",しか存在しません。
円分多項式のGalois群:Gal(E/F)=Gal(Q(ζp)/Q)は,
もちろん1と同型ではないので,Gal(Q(ζp)/Q)から
(Z/pZ)×への準同型写像は全射であり,
それ故,位数が(p-1)の巡回群(Z/pZ)×と同型です。
したがって,Gal(Q(ζp)/Q)も巡回群ということになるので,
もちろん,Abel群であり,それゆえ可解群です。
ブログ記事「ガロア理論(5)」での関連部分を再掲しておきます。
"Fが体であって,1の原始n乗根ωに対してE=F(ω)とすれば,
Gal(E/F)はZnの単元の乗法群U(Zn)≡{ [i]∈Zn|(i,n)=1}
の部分群と同型になり,それ故,Gal(E/F)はAbel群になる。"
ことを証明します。
すなわち,E=F(ω)なので,∀σ∈Gal(E/F)は,
ωにおけるσの値によって完全に決まります。
すなわちσ(ω)=ωiなるiが(mod n)で一意に決まります。
このσをσiとし,0≦i≦(n-1)と仮定します。
ωが1の原始n乗根になることと,(i,n)=1であること
が同値であることは巡回群のよく知られた性質です。
またσの巡回群:<ω>への制限は,巡回群<ω>の自己同型です。
したがってψ:σi→[i]は写像ψ:Gal(E/F)→U(Zn)を定めます。
そして,σjσi(ω)=σj(ωi)=(ωi)j=ωij=ωji
なので,ψ(σjσi)=[ji]=ψ(σj)ψ(σi)より,
ψは準同型になります。
したがって,Gal(E/F)はU(Zn)の部分群に同型であり,
それ故,Abel群になります。
http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー) TOSHI
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