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2007年3月13日 (火)

クレローの微分方程式1(解の存在定理の応用)

 y=xy'+φ(y')の形の微分方程式をクレロー(Clairaut)の微分方程式(Alexis Claude Clairaut's equation)といいます。

 

 今日は,これの解法を与えてみます。

 

 ただし,もちろん,y'はdy/dxを意味します。

 

 この方程式には代表的な2つの解法が知られていますが,これらを解法1,解法2と呼び,今日は解法1を紹介します。

 

(解法1):

 

 方程式:y=xy'+φ(y')にy'の代わりに,任意定数Cを

代入すると,"方程式の等傾曲線族,つまり傾きがすべて定数Cである

曲線族"として直線族:y=xC+φ(C)が得られます。

  

 この等傾曲線族は,その傾き:y'=dy/dxが各点で.

この"曲線族=直線"の傾きと一致するので,任意のCに対して

確かに元の微分方程式の解になっています。

 

 今,φ(y')がy'に関して微分可能であると仮定し,

Φ(x,y,y')≡xy'+φ(y')-yとおけば,

 

 ∂Φ/∂y'=x+dφ(y')/dy'≠0 ,

かつ,Φ(x,y,y')=xy'+φ(y')-y=0 を満足するような

点(x0,y0,y0')が存在するとき,

  

 y'は(x0,y0)に十分近い全ての点(x,y)に対して,

y'=f(x,y)なる陰関数という形で得られます。

  

 ここで,f(x,y)は,もちろんy0'=f(x0,y0)を満足し,

(x0,y0)の近傍で連続です。

 

 偏導関数;∂f/∂y=-(∂Φ/∂y)/(∂Φ/∂y')は∂Φ/∂y'≠0

である限り,(x0,y0)の近傍で存在します。

 

 もちろん,∂Φ/∂y,∂Φ/∂y'は,点(x,y,f(x,y))に

対するものです。

 

 ここで,∂Φ/∂y,∂Φ/∂y'もΦ(x,y,y')と同様,

それらの点で連続と仮定すると,∂f/∂yもまた,

それらの点で連続となります。

 

 したがって,∂Φ/∂y'≠0 であるような点(x0,y0)の近傍の

任意の閉領域では,|∂f/∂y|<kなるk>0 が存在し,

 

 その領域では「解の存在と一意性の定理」により,領域内の

任意の点を通る解の全てが一意的に存在して唯一の任意定数を

持つ一般解が得られることがわかります。

 

 Clairautの微分方程式:Φ(x,y,y')≡xy'+φ(y')-y=0

の場合には,∂Φ/∂y'=x+dφ(y')/dy',∂Φ/∂y=-1

です。

 

 そこで,xy'+φ(y')-y=0 を満足しx+dφ(y')/dy'≠0

であるような点(x0,y0,y0')が存在するとき,点(x0,y0)の近傍で,

一般解y=ψ(x,C)が存在して,しかも一意的であることがわか

ります。

 

一方,Φ(x,y,C)=xC+φ(C)-y=0 , 

つまり,y=xC+φ(C)を考えると,

 

これが全てのCに対してΦ(x,y,y')≡xy'+φ(y')-y=0

の解となることは既に述べましたが,

これが一般解であるかどうかは示していません。

 

しかし,ある(x0,y0)が存在して,

Φ(x0,y0,C0)=x00+φ(C0)-y00 が成立するような

0が存在し∂Φ/∂y'=∂Φ/∂C0=x0+dφ(C0)/dC00

が成立する限り,

 

前と同様,(x0,y0)の近傍の全ての点で

Φ(x,y,C)=xC+φ(C)-y=0 となるようなC

が存在することがわかります。

 

ただし,もちろん∂Φ/∂Cは(x,y,C)に対する

(x0,y0,C0)の近傍で連続なので,

 

∂f/∂y=1/(∂Φ/∂y')も連続であり,(x0,y0)の近傍での

Φ(x,y,y')=0 の一般解の存在領域と,

Φ(x,y,C)=0 なるCの存在領域

全く一致します。

 

しかも解は1つの点(x,y)に対しては1価ですから,

結局Φ(x,y,C)=0,またはy=xC+φ(C)が,

その存在領域に対応する一般解であることがわか

ります。

 

そして,実際にΦ(x0,y0,C0)=x00+φ(C0)-y00

を満足する点(x0,y0,C0)は必ず存在します。

 

何故なら,φ(C)の定義域の任意の値C=bを取れば点

(1,b+φ(b),b)は確かにΦ(x,y,C)=0 上の点で

あるからです。

 

したがって,[x+dφ(C)/dC]x=1,C=b

1+[dφ(C)/dC]C=b0 である限り,(1,b+φ(b))

の近傍で,y=C+φ(C)は一般解となります。

 

(Cはbに十分近い値でdφ/dCはC=bで連続であるとします。)

 

一般には,∂Φ/∂y'=0,かつΦ(x,y,y')=0 の近傍でも

y'=f(x,y),Φ(x,y,f(x,y))=0 ,|∂f/∂y|<kなる,

その点を通る関数f(x,y)が存在する場合も多々あります。

  

しかし,この場合は∂Φ/∂y'=x+dφ/dy'=0 なので,

Φ(x,y,f(x,y))=0 なる,その点を通るf(x,y)が存在しても,

両辺をyで偏微分したとき,

 

恒等的に∂Φ/∂y+(∂Φ/∂y')(∂f/∂y)=0 です。

 

これから,-1+0・(∂f/∂y)=0 となり,これを満たす

有界な(∂f/∂y)は存在しません。

 

よって,∂Φ/∂y≠0 .かつ∂Φ/∂y'=0 なる点を初期値とする

ようなΦ(x,y,y')=0 の解は存在と一意性の定理の仮定によって

保証された解ではない,と考えてよいでしょう。

 

しかし,もしそのような∂Φ/∂y'=0,∂Φ/∂y≠ 0 なる点

を通る解上のその近傍の点に対して∂Φ/∂y'≠0 で,

しかも∂Φ/∂y',∂Φ/∂yが連続であれば,

 

その解はやはりΦ(x,y,y')=0 の一般解であって

∂Φ/∂y'=0 なる点を通るものであると考えられます。

 

そこで,∂Φ/∂y'=0 が常に満足され,Φ(x,y,y')=0

も満足されるような解(ただし少なくとも,その上の1点では

∂Φ/∂y'≠0)を特異解として取るべきであると考えられます。

 

∂Φ/∂y'=0,∂Φ/∂y≠0,Φ(x,y,y')=0 なる

1点を(x0,y0,y0')とすると,∂2Φ/∂y'20 であり

さえすれば,

 

(∂Φ/∂y)(∂2Φ/∂y'2)-(∂Φ/∂y')[∂2Φ/(∂y'∂y)]

=(∂Φ/∂y)(∂2Φ/∂y'2)≠0 です。

 

そこで,Φ(x,y,y')と∂Φ/∂y',および,それらの全ての

偏導関数が点(x0,y0,y0')とその近傍で連続である限り,

 

0に十分近いxに対してΦ(x,y,y')=0,∂Φ/∂y'=0

を満足し,連続で1階導関数を持ち(x0,y0),および(x0,y0')

を通る関数y=ψ(x),およびy'=ω(x)が存在することが

わかります。

 

このとき,x=x0とその近傍でψ'(x)=ω(x)が恒等的に

成立すれば,確かにy=ψ(x)はΦ(x,ψ(x),ψ'(x))=0,

かつ [∂Φ(x,y,y')/∂y']y=ψ(x),y'=ψ'(x)0 を満足する

ので特異解となります。

 

今のClaieautの微分方程式の場合は,

Φ(x,y,y')=xy'+φ(y')-y,

∂Φ/∂y'=x+dφ(y')/dy'なので,

全ての点で∂Φ/∂y=-1≠0 です。

 

したがって,∂2Φ/∂y'2=∂2φ/∂y'2が存在して,

しかもゼロではないような点の近傍で,それが連続なら

y=ψ(x),y'=ω(x)なるΦ(x,y,y')= 0,∂Φ/∂y'=0

を同時に満たす陰関数が必ず存在します。

 

次に,このy=ψ(x)が確かに微分方程式Φ(x,y,y')=0

の解となることを示しましょう。

 

y,y'をxの連続な関数と考えると, 0=dΦ/dx

=∂Φ/∂x+(∂Φ/∂y)(dy/dx)+(∂Φ/∂y')(dy'/dx)

です。

 

ここでy'=ω(x)は∂Φ/∂y'=0 を満足し,y=ψ(x),

y'=ω(x)は確かに有界な導関数を持ちますから,

これらと∂Φ/∂x=y'=ω(x),∂Φ/∂y=-1を代入すると,

0=ω(x)-dψ(x)/dxとなります。

 

結局,dψ(x)/dx=ω(x)ですから,

y=ψ(x)は確かに微分方程式Φ(x,y,y')=0 の解です。

 

以上から,y=xy'+φ(y'),x+dφ(y')/dy'=0 から

y'を消去して得られる解y=ψ(x)が存在すれば,

それはClauraurの微分方程式:y=xy'+φ(y')の特異解

であることが示されました。

 

今日はここまでとし,解法2については次回に書きます。

  

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