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2007年3月23日 (金)

タミフルと異常行動の因果性(仮説検定)

 今日は,今話題となっているインフルエンザの特効薬タミフルと,飛び降りや飛び込みなどの異常行動の間に,有意な因果関係があるかどうか?を判断する1つの統計的手法:仮説検定について述べてみます。

 最近のタミフル服用者の異常行動は,一見では自殺行動と判別できないように感じています。そこで因果関係の有無を調べる手段として,次のような仮説検定が有効ではないかと考えます。

 

 "タミフル服用者全員という総母数n人に対し,これが原因で自殺行動をしたのではないかと予想される人の人数がr人である場合の比率p=r/nが,日本人全員の平均自殺率:p0と比較して有意な差であると認められるかどうか"という仮説検定です。

 

 そのため,まず,未知の出現確率pを持つある確率事象がn回の独立試行中にr回起こったものとして,この未知確率pが確率が既知のp=p0の事象と比較して差がないという仮説「0:p=p0」(帰無仮説)を検定する一般的問題を設定します。

 

 これの対立仮説としては「H1:p≠p0」を取ります。

 

(※この事象は有意な差があるだろう,とかこの薬は他と違って有効だろうとかいう意味のある予想(作業仮説=対立仮説:H1)を否定する(無に帰する)仮説が帰無仮説:H0です。※)

 

 nが小さいときには,こうした分布は二項分布で与えられますが,これはnが大きいときには,中心極限定理により正規分布で近似できます。

 すなわち,母数nが大きい場合には,注目している事象が起これば1,起こらなければ 0 とする確率変数をXi(i=1,2,...,n)として,その平均を<X>≡ΣXi/nとすると,仮説「H0:p=p0」の下で,確率変数:T≡(<X>-p0)/[p0(1-p0)/n]1/2は,ほぼ正規分布N[0,1]に従うはずです。(大数の法則)

 そして,仮説H0を真とみなしたとき,T∈Rが成り立つ確率:Pr(T∈R|H0)がαに等しい,すなわち,Pr(T∈R|H0)=αとなるTの変域Rを定めます。

 

 変域Rは,仮説H0が真の場合の分布ならRに入らない確率が(1-α)(α=0.05なら95%の範囲)を除く領域に取ります。

 

 このRを有意水準α,または危険率αの棄却域と呼びます。

 

 そして,実際に検定するデータでのTがT*のとき,*∈Rの場合は,仮説H0を棄却し,そうでない場合にはH0を採択するというわけです。

 

 今の場合では,例えばT*∈Rのときは,通常の自殺率の範囲内からずれている,ということで「タミフルと異常行動の間に因果関係がない」という仮説は棄却されるわけです。

 具体的な例として,1つのサイコロを500回振ったとき1の目が66回出たとき,この結果から「このサイコロには異常がない」という仮説を有意水準α=0.05で検定してみましょう。

 

 「H0:p=1/6」,「H1:p≠1/6」とすると,T≡[<X>-(1/6)]/[{(1/6)×(5/6)}/500]1/2ですが,この変数Tはほぼ正規分布N[0,1]に従います。

 

 そして,有意水準α=0.05に対応して,[1/(2π)1/2]∫0xexp(-t2/2)dt=(1-α)/2=0.475となるxの値は,x=1.96で与えられます。そこで,棄却域:RはR=(-∞,-1.96)∪(1.96,∞)で与えられます。

  

そして,「500回投げたとき1の目が66回出た」という事象は,T*[(66/500)-(1/6)]/[{(1/6)×(5/6)}/500]1/2=-2.10となります。

 

そこで,T*-2.10∈Rが満足されるので,この場合,このサイコロについては仮説"H0:p=1/6"は棄却されます。

 

すなわち,この検定によれば,「このサイコロは異常なし,とは言えない」という結論となります。

本題に戻ると,日本人の平均自殺率は,2003年のデータによると,10万人当たりで27人です。すなわち,p027/100000ですね。

 

一方,タミフルの服用者の総数nについては,私はよく知らないし,そのうちの自殺行動者の数rについても現在流動的でデータを入手してはいません。

 

もしも,正確な異常行動者の比率p=r/nのデータが入手できれば,こうした検定は容易に可能です。

 

すなわち,仮説棄却の有意水準を0.05とした場合,p=r/nを変数Tに代入したときのTの値:T*(p-p0)/[p0(1-p0)/n]1/2が,棄却域R=(-∞,-1.96)∪(1.96,∞)に入る場合には,「タミフルと異常行動の間に因果関係がない」という仮説は棄却される,つまり微妙な言い方ですが「因果関係がないとは言えない」ということになります。

 

一方,そうでないならば仮説は採択される,つまり,「タミフルと異常行動の間に因果関係はない」ということになります。

  

もっとも,平均値p0としては日本人全体の自殺者数だけではなく,自殺失敗者数も含める必要があるとも考えられ,そうするとp0は倍以上になると予想されます。

 

また,タミフルを使用するのは,インフルエンザにかかった人だけですから,日本人全体を対象とするのでなく,インフルエンザの罹患者のみを対象とした自殺的異常行動者の比率と,タミフル関係の異常行動者の比率との差異を問題にすべきではないか?とも考えられます。

 

実際,インフルエンザ脳症などにより,薬の副作用ではなくインフルエンザ自体が原因で精神に異常をきたす例もあるらしいです。

明日,心筋梗塞(心不全)で板橋区加賀の帝京大学病院に入院なので,もしかしたらこれが最後の記事になるかもしれません。キーボードを叩くという作業も心臓(ハート)がおかしいと結構苦しいものですね。

参考文献;藤沢武久 著「確率と統計」(日本理工出版会)

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