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2007年4月22日 (日)

再掲「エネルギーと時間の不確定性」

2006年9月5日の記事「エネルギーと時間の不確定性関係」について,

つい最近入院中にコメントを頂いたらしいのですが,退院後,ついうっ

かりジャク・コメントと一緒に削除してしまいました。

  

しかし,幸いログが残っていました。

 

少し気になったので記事を再掲して検証してみます。

  

コメントされたのは,「kafuka」様で,内容は次の通りです。

 

※コメントの内容:

 

blogs.yahoo.co.jpのentangled74様から教えて頂いたことですが,時間は 物理量ではないようです。

 

[E,t]=ihbarを仮定した場合,エネルギー固有状態<E_n|と|E_m>で

交換関係をはさむと, (E_n-E_m)=ihbarδ_nm になります。

 

これはおかしいですから,仮定した交換関係は正しくないです。

 

D. T. Pegg, "Complement of the Hamiltonian," Phys. Rev. A 58, 4307 (1998)

 

というものです。

 

それに対する!私=TOSHI"のコメントを以下に書きます。

 

「時間は物理量ではないようです。」というのは常識的な考えであり,私

もちゃんとした根拠があればそれに従いたいという気持ちが大いにある

ですが,"エネルギー固有状態:<E_n|と|E_m>で交換関係をはさむ",

というのは,いただけません。

 

エネルギー固有状態<E_n|と|E_m>というのは,既にある時刻における同時

的なエネルギー固有状態ベクトルを仮定していますが,

 

そもそも,[H,t]=ihbarであるという意味は,運動量と空間位置座標

と同じく,エネルギーと時刻も同時に決定することはできない。

 

つまり両方の共通の固有状態ベクトルは存在しない,という意味なので,

それを否定するのに,そうした時刻を単なるパラメータと考えた定式化で

対応するなら,矛盾を生じるのは当たり前ですね。

 

「これ=固有状態ではさむこと」を運動量と位置の場合に行っても,

矛盾が起きないだろうと思うのは,この定常固有状態が時間と運動量

との共通の固有状態であっても,位置座標と運動量の共通の固有状態

ではないからです。

 

これはつまり,1次元で考えると,

<p|[x ,p ]|p'>=(p'-p)<p|x|p'>

=iδ(p-p') となりますが,

 

<p|x|p'>においては,xをc-数(c-number)パラメータではなく,

例えば運動量表示のx =i(∂/∂p)とすれば,運動量表示では,

|p0>=δ(p-p0)なので,辻褄は合うでしょう。

 

これをふまえて,時間tについても t=-i(∂/∂H) とすれば,

位置と対等ではないでしょうか?

 

というものです。

 

これに関連して一応,下に,過去記事と同じ内容を再掲しておきます。

 

※以下,再掲記事です。

 

EMANお物理学」の「談話室での内容に触発されて,

「エネルギーと時間の不確定性」という内容で書いてみたい

と思います。

 

「Heisenberg(ハイゼンベルク)の不確定性原理」の解釈は"測定誤差に関する「小澤の不等式」の意味ではなくて標準偏差の積の不等式と考えるのが通常の意味で,不確定性原理は物理量の交換関係と密接につながっているという認識を持っています。

 

以下,Planck定数:h or h/(2π)と光速cを1とする自然単位系で考察します。

 

[P,X]=-iなる交換関係は運動量Pの標準偏差;Δpと,

Xの標準偏差:Δxの間にΔpΔx≧1/2なる不確定性関係を生ぜし

めます。

 

そして,運動量は座標表示では,P=-i∂/∂Xですね。

 

同じく時間座標tの表示では,E=H=i∂/∂tであり,

[E,t]=iですから,ΔEΔt≧1/2 のはずです。

 

しかし,これの意味を,

 

"時刻とエネルギーを同時に確定することができない。" 

と素朴に解釈することがむずかしいのは何故か?

 

について考察してみます。

 

一般に状態ベクトルを|ψ>とするとき,その波動関数を,

ψ(,t)≡<,t|ψ>で定義すると|ψ(,t)|23dtは,

ある時空点(,t)付近の瞬間的存在確率を示すものである,

と解釈できます。

 

つまり|ψ(,t)|23はある時刻tにおける単位時間当たりの

存在確率と解釈します。

 

ここでは,それぞれ位置座標と時間の線形演算子とTが存在し,

これは交換可能であって,とTの同時的固有状態ベクトル|,t>

が存在する,と仮定しています。

 

自由粒子ならエネルギーE=Hと運動量は交換可能:[H,]=0 で,

これはHeisenbergによるとの時間的保存を示しています。

 

そこで運動量とエネルギーE=Hの同時的固有状態を取ることができて,その同時的な固有ベクトルを|,E>とおくなら,

 

座標表示=-i∇,E=H=i∂/∂tに従って,

,t|,E>=Aexp(ipx-iEt)(Aは規格化定数)

と書けます。

 

しかし,謂わゆるFourier)変換による展開として,

ψ(,t)=<,t|ψ>=∫d3dE<,t|,E><,E|ψ>

となるわけではない,と考えるべきだと思います。

 

何故なら,自由粒子のとEの間には,粒子が質量殻の上にある,

つまりE22+m2であるという制約があるので,

1=∫d3dE|,E><,E|という単純な完全性は成立しない,

と思うからです。

 

そうでなくて,

1=∫d3dEθ(E)δ(E22-m2)|,E><,E|という式が

本当の完全性を示す式であると考えられます。 

(θ(x)はHeaviside関数です。)

 

dEによる積分を実行し,ωp(2+m2)1/2と置くと,後者の完全性は

1=∫(d3/2ωp)|p><p|となります。

 

したがって,<ψ|ψ>=∫(d3/2ωp)<ψ|p><p|ψ>

=∫(d3/2ωp)|<p|ψ>|2となるので,

 

固有状態を|>≡(2ωp)1/2|p>と定義し,運動量表示の波動関数

としてΦ()≡<|ψ>とおけば,1=∫d3|><|が

成立します。

 

そこで,状態|ψ>のノルムの2乗:|ψ|2(これは全確率で通常1

に規格化されている)は<ψ|ψ>=∫d3|Φ()|2となりますね。

 

これらのことから,運動量表示の波動関数:Φ()に対して,

|Φ()|23は,エネルギーが一定E=ωpの下で運動量が

を取る確率を示すものであると考えられます。

 

これのアナロジーで座標表示の波動関数ψ(,t)=<,t|ψ>にも

1=∫d3dt|,t><,t|が成立するわけではなく,

 

22+m2に相当してtとが独立ではなく,

"-∂2/∂t2=-∇2+m2という制限=波動方程式"を考慮する

必要があると考えます。

 

すなわち,|,t>の代わりに,ある|>を定義し直して,

1=∫d3|><|によって,改めて表示の波動関数として

ψ(,t)≡<|ψ>と定義することにより,

 

<ψ|ψ>=∫d3|ψ(,t)|2 が成立するようにできる

はずです。

 

この新しい|ψ(,t)|23は時刻tが一定の下で粒子が位置にある

存在確率を表わすことになりますから,通常の波動関数の確率解釈と一致

します。

 

ここで,波動関数ψ(,t)=<|ψ>の左辺にtを残したのは,

これは状態|ψ>に含まれる情報によって,時間演算子Tの固有値t

の関数でもあるということを強調したかったからです。

 

というわけで,

  

"時間tをパラメータに取る代わりに,空間座標x,y,z

のいずれか1つをパラメータに取ることも可能であり,

 

通常の偏差値の意味で不確定性関係ΔEΔt≧1/2を"時刻とエネルギー

を同時に確定することができない。"

  

と捉えることも可能だと思います。

  

(※あるいは非相対論的に考えて,自由粒子では,E=H=2/(2m)

より,=∫d3dEδ(E2/(2m))|,E><,E|であり,

 

右辺のEによる積分を実行すれば,ωp2/(2m)としたとき,

1=∫d3|p><p|が得られるので,|>≡|p

と定義してもよいと思います。

 

上記の議論では,座標,tに関する波動方程式も,相対論的な

Klein-GordonやDirac方程式ではなく,Schroedinger方程式であ

っても別にかまいません。

  

そこで,特に相対論を意識する理由はありませんが,座標と時間を対等に

扱う意識が生まれたのはMinkowski空間以降の感覚だと思ったので,

そうしたわけです。

 

特に相対論的扱いをしたことに他意はありません。※)

 

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コメント

数理科学のバックナンバーを読んでいて、
佐藤文隆博士の記事の副題に
「シュレーディンガー方程式の時間のうさんくささに焦点を当てる」
というのがあり、
題名からだけですが、TOSHIさんの視点に似ているように
思いました。
内容は、
ホイーラー‐ド・ウィット方程式との関係から

シュレーディンガ方程式は、時間の再パラメトリゼーション対称性の
要求を状態ベクトルに課した拘束条件
ではないかという提案
「パリティ」2005年2月

はずしているかも知れませんが、
ブログのネタには、なるかも です。

投稿: kafuka | 2009年3月16日 (月) 15時54分

 ども凡人さん。。TOSHIです。

 私なりの物理量の定義は必ずしも凡人さんご紹介のwikiの定義とは一致してないようです。

 まあ,時空間の座標というラベルというか単なるパラメータに過ぎないx,y,z,tも一応,位置や時刻を一意的に指定するという概念的な意味があり,数学での点とかに近い無定義用語のようなものだろうと思います。

 これを除けばある状況では時間的に保存することがある量を物理量と呼びますかね。

 まあ,他人とお話する際には定義されてないとかみ合わない場合には相手ごとにまず定義を共有することから始めるのでしょう。。

 しかし言葉の定義,概念規定は言語学者ではなくまず哲学者のような人がやるべき最初の重大事だと思います。

 まあ思想的なものとかの議論であれば,よくそれは単なる定義の違いに過ぎないだろうとか言われますが,彼がその言葉をどう定義するのかとか,いろいろな議論の履歴からどういう経緯でその言葉をその定義で表わされるものと同定する認識するに到ったかということ自体に思想や人格が凝縮されている場合もありますね。
              TOSHI

投稿: TOSHI | 2009年3月10日 (火) 10時26分

>「時間は物理量ではないようです。」
というのは、用語の定義(以下を参照)からすれば誤っているのではないでしょうか?
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%A9%E7%90%86%E9%87%8F
正しくは、
>「時間は可観測量ではない。」
ではないでしょうか?
時間は、直接的に観測する事は出来ず、可観測量から媒介的に認識する事しか出来ないのではないかと思います。

>不確定性原理は物理量(physical quantity=observable)の交換関係と密接につながっているという認識を持っています。
時間は、位置等の可観測量から媒介的に認識される物理量であるため、不確定性原理と関連を持ち得るという事が論理的にも推理されますが、私は、そもそも時間とは一体何なのかという事をもっと突き詰めて考察する必要があるのではないかと、この記事を読んで思いました。

投稿: 凡人 | 2009年3月 5日 (木) 23時46分

>シュワルツシルド半径のところでは特異点ではないです
ただ、戻れなくなるだけですね。
それが、地滑りの意味です。
(通常の時空では、過去にもどれないことを地滑りと表現していました)

>一般相対論を持ち出して、、、
TOSHI様のこの記事が、t,x,y,zとのいずれかは、パラメータにならないといけない。
とのことなので、一般相対論というか、この宇宙でも、t,x,y,zとのいずれかは、特別扱いになるのが共通してるなぁと思ったまでです。

投稿: kafuka | 2007年4月29日 (日) 01時16分

>rは、極座標のr軸のことで、シュワルツシルド半径の位置のことでは、ありません。

その通り理解していますよ。それを分かった上で書いています。
基本的に一般相対論は一般座標変換を要請しているので、座標や計量に積極的な物理的意味は無いと思います。
はっきりとした物理的意味があるのは「曲率」だけでしょう。
で、シュワルツシルド半径のところでは「曲率」は連続で特異点ではないです。

私見ですが、一般相対論では位置も時間もパラメータでしかないと思っています。
ですから、一般相対論を持ち出して時間はパラメータだ物理量だと言っても意味がないのではないでしょうか?
安易に、量子力学と一般相対論を同じ土俵の上で論じるのは危険だと思います。
まあ、これも素人考えなので、反論されても返す言葉はありませんが。。

投稿: T_NAKA | 2007年4月27日 (金) 17時13分

あっ、rは、極座標のr軸のことで、シュワルツシルド半径の位置の
ことでは、ありません。
通常の時空では、x,,y,z空間が、t軸上で、地滑りを起こしており、
シュワルツシルド半径の中では、この関係が逆になり、
r軸上で、他が地滑りするという意味です。
これは、佐藤・松田氏のブルーバックスにあった記事です。

投稿: kafuka | 2007年4月27日 (金) 12時40分

>ブラックホールの中では、tとxの関係が逆転

というのは、そう見える座標系を使っているということで、別の座標系では「事象の地平線」というのは特異点では無いと思います。お暇なときに次の記事をご覧下さい。
http://teenaka.at.webry.info/200702/article_10.html
「事象の地平線」内に入るともう出られないという事実はありますが、宇宙船で「事象の地平線」を通過したときに何か特別なことが起るわけでは無いでしょう。
(多少文脈が異なることを言っているとは思いますが。。)

投稿: T_NAKA | 2007年4月25日 (水) 14時19分

一般相対論によると、ブラックホールの中では、tとxの関係が逆転します。
だから、シュワルツシルド解では、rがパラメータになり、tが物理量になるのでは?

投稿: kafuka | 2007年4月25日 (水) 00時39分

コメント、ありがとうございます。
一般に、ΔE・Δt≧h ですが、
E・Δt≧h という関係もあるようです。

http://blogs.yahoo.co.jp/scifimaniacs/31611547.html

投稿: kafuka | 2007年4月24日 (火) 07時47分

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