運動量演算子のシュレーディンガー表現
最近,量子力学の出発点として,運動量演算子pの代表的な座標表示であるSchrödinger(シュレーディンガー)の表現:に関して,巷でいろいろと話題になっているようです。
そこでDirac(ディラック)が,その著書「量子力学」において,運動量演算子に関してのSchrödinger表現の妥当性について論じている内容を少し詳細に考察を加えて補足しながら紹介してみます。
Dirac自身のこの分野での業績に関して言及すると,彼は当時の本質的な題材であった古典力学を合理的に量子化するという目標について,次のような動機を持っていたと思われます。
古典力学を記述する解析力学での基本方程式である"質点系の
運動方程式=正準方程式"は,
Poisson括弧:[u,v]P.B.≡Σs[(∂u/∂qs)(∂v/∂ps)
-(∂u/∂ps)(∂v/∂qs)]を用いて,dpr/dt=[pr,H]P.B.,
dqr/dt=[qr,H]P.B. と表わされます。
そして,変数pr,qsが,正準変換の不変式として知られている,
[pr,qs]P.B.=-δrs,[pr,ps]P.B.=[qr,qs]P.B.=0 なる関係式
を全て満たすことが,上記の正準方程式が成り立つための必要十分
条件です。
これに対して,量子力学の基本方程式の1つの表現である
Heeisemberg(ハイゼンベルク)の運動方程式は,
演算子の交換子:[u,v]≡uv-vuにより,
ihc(dpr/dt)=[pr,H],ihc(dqr/dt)=[qr,H]
と書けます。
(hcはhをPlanck定数としてhc≡h/(2π)です。)
したがって,量子力学でも量子力学的Poisson括弧というものが定義
できると考えて,[u,v]P.B.≡[u,v]/(ihc)とおくと,見掛けの上
ではHeisenbergの運動方程式と古典力学の正準方程式が一致するよ
うにできます。
そして,古典力学では[pr,qs]P.B.=-δrs,[pr,ps]P.B.
=[qr,qs]P.B.=0 が正準変数の満たすべき基本的な関係式
でしたから,
これに量子力学の古典力学への対応原理;[u,v]P.B.
≡[u,v]/(ihc)を適用すれば,量子力学の基本的関係式
が得られるはずです。
こうして,量子力学での正準交換関係(CCR):
[pr,qs]=-ihcδrs,[pr,ps]=[qr,qs]=0
が得られます。
このような量子化の手法を初めて明確に示したのは,Diracで
あったと思います。
さて,本題に入ります。
まず,量子力学における一般的状態|ψ>の"座標表示=波動関数"を
<q1,q2,..|ψ>=ψ(q1,q2,..,t)とします。
省略形では<q|ψ>=ψ(q,t)と書くことにします。
(Schrödinger表示では,固有ベクトル:|q>自身が一般に時刻tに
陽に依存するため,|q>=|q,t>として,
<q|ψ>=<q,t|ψ>=ψ(q,t)のように波動関数を
tに陽に依存する形で書きます。)
そして,状態|ψ>の座標演算子qrによる偏微分(∂/∂qr)を,
(∂/∂qr)<q1,q2,..|ψ>≡∂ψ(q,t)/∂qr
≡<q1,q2,..|(∂/∂qr)|ψ>によって定義します。
このとき,実際の計算によって,[∂/∂qr, qs]ψ=δrsψ
となることがわかります。
それ故,[∂/∂qr, qs]=δrsですが,関数frをfr(p,q)
≡pr-(-ihc∂/∂qr)によって定義すれば,これは全ての座標
qsと交換します。
すなわち,[fr,qs]=0 です。
そこで,fr(p,q)は実はqだけの関数と考えられるので,
fr=fr(q)と書いてよいことになります。
そして実際の計算から,[∂/∂qr,fs]=∂fs/∂qrが成立する
ことがわかりますから,
この両辺に(-ihc)を掛けた後,-ihc∂/∂qr=pr-fr(q)
を代入すれば,[pr,fs]=-ihc∂fs/∂qrを得ます。
一方,∂2/(∂qr∂qs)=∂2/(∂qs∂qr)ですから,これの両辺に
(-ihc)2を掛けて,-ihc∂/∂qr=pr-fr(q),-ihc∂/∂qs
=ps-fs(q)を代入すると,
prps=pspr,frfs=fsfr によって[pr,fs]=[ps,fr]
が得られます。
そこで,[pr,fs]=-ihc∂fs/∂qrから∂fs/∂qr=∂fr/∂qs
となります。
これは,rに無関係なあるqの関数F(q)が存在してfr=∂F/∂qr
と書けることを意味します。
こうして,座標表示での運動量演算子prは,最も一般的な形では
pr=(-ihc∂/∂qr)+∂F(q)/∂qrとなることがわかりま
した。
これまでの表示は確かに座標について対角的ですが,勝手な位相因
子(phase factor)を含んでいてもいいので,新しい基底ブラが<q*|
=<q1,q2,..*|≡eiγ(q)<q1,q2,..|で与えられるとします。
すると,<q*|ψ>=eiγ(q)<q|ψ>ですから,この新しい基底に
よる同一の状態|ψ>の新しい波動関数をψ*(q,t)≡<q*|ψ>で
定義すると,ψ*(q,t)=eiγ(q)ψ(q,t)です。
そして,逆にψ(q,t)=e-iγ(q)ψ*(q,t)と書けます。
このとき,ψ*(q,t)=eiγ(q)ψ(q,t)の両辺を座標qrで
偏微分すれば,
(∂/∂qr)ψ*(q,t)
=eiγ(q){∂/∂qr+i(∂γ/∂qr)}ψ(q,t)
=eiγ(q){∂/∂qr+i(∂γ/∂qr)}e-iγ(q)ψ*(q,t)
となります。
ここで,先に得られた一般的な座標表示での運動量の表現:
pr=(-ihc∂/∂qr)+∂F(q)/∂qrを思い起こして,
F(q)≡hcγ(q)+(定数)とおけば,
pr=(-ihc∂/∂qr)+hc(∂γ/∂qr)
=(-ihc){∂/∂qr+i(∂γ/∂qr)} となります。
これを用いると,上式は-ihc∂ψ*/∂qr=eiγ(q)pre-iγ(q)ψ*
と変形されます。
したがって,通常の基底の変更に伴う演算子のユニタリ変換として,
変換pr*≡eiγ(q)pre-iγ(q)によって,新基底<q*|に対する新
しい運動量演算子pr*を定義すれば,上に示した式から座標表示で
pr*=-ihc∂/∂qrと表現したことに相当します。
,結局,ユニタリ変換で運動量に対するSchrödinger表現が得られる
ことがわかりました。
pr*とprはユニタリ同値であり,元の座標表示|q>での運動量
演算子prの期待値は,
<ψ|pr|ψ>=<ψ|e-iγ(q)pr*eiγ(q)|ψ> ですが,
基底ブラの変換は<q*|ψ>=eiγ(q)<q|ψ>=<q|ψ*>
となるように新しいケット|ψ*>を取って,
ψ*(q,t)=<q|ψ*>とすることと同値です。
それ故,この変換で確かに<ψ|pr|ψ>=<ψ*|pr*|ψ*>
となって運動量の期待値は保存されます。
そして,さらにこの変換で得られた新しい基本変数の組qr,pr*も
確かに正準交換関係:[pr*,qs]=-ihcδrs,
[pr*,ps*]=[qr,qs]=0 を満足することがわかります。
こうして,座標表示では,理論に無関係な状態ベクトルの位相を調節
すれば,運動量演算子prをいつでもpr=-ihc∂/∂qrなる
Schrödinger表現の形に書けるという結論が得られました。
参考文献:P.A.M.Dirac著(朝永振一郎,玉木英彦,木庭二郎,大塚益比古,伊藤大介 共訳)「量子力学」(みすず書房)
http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。
人気blogランキングへ ← クリックして投票してください。(1クリック=1投票です。1人1日1投票しかできません。)
http://homepage2.nifty.com/toshis-kaiga-auction/「健康商品の店 タクザイ」
← クリックして投票してください。(ブログ村科学ブログランキング)
物理学 |
| 固定リンク
「111. 量子論」カテゴリの記事
- クライン・ゴルドン方程式(8)(2016.09.01)
- クライン・ゴルドン方程式(7)(2016.08.23)
- Dirac方程式の非相対論極限近似(2)(2016.08.14)
- Dirac方程式の非相対論極限近似(1)(2016.08.10)
- クライン・ゴルドン方程式(6)(2016.07.27)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
>TOSHIさん、
だいぶ、間が空いてしまってすみません。前の書き込みの続きをお話したいと思います。
TOSHIさんの説明がDiracの教科書とは違う、と以前申し上げましたが、具体的にどこが違うのかを述べてみます。
一つ挙げると、2010年9月13日のTOSHIさんのコメントで、
>正しくは,(d/dq)<q*|ψ>=dψ*(q,t)/dq≡<q*|(d/dq)|ψ>が満たされてないのでこれが成り立つように,(d/dq)*<q*|ψ>=,(d/dq)*ψ*(q,t)≡<q*|(d/dq)|ψ>となるように新表示で微分(d/dq)*を定義し直します。
というところです。Diracの教科書には「微分を定義しなおす」とは書かれていません。Diracが定義しなおしているのは微分ではなく、一次演算子です(一次演算子の定義は2章のはじめに書かれていますが、単に量子力学の演算子、つまり状態ケットやブラに線形に作用するような演算子のことです)。
さて、教科書には、
(d/dq)~ψ> = dψ/dq>
といった式が書かれています。ここで左辺の(d/dq)~は微分ではなく、一次演算子です(「~」は教科書のほうには書かれていませんが、普通の微分演算子と区別するために表記しておきます)。微分演算子は状態ケットに作用しませんので、(この教科書の定義では)一次演算子とは呼びません。この式は一次演算子(d/dq)~の定義を与えるものです。
この式の説明をするために、まずは標準ケットについて話しておきます。ψ>やdψ/dq>といった表記がそうです。普通の教科書ではよく、状態ケット|ψ>に対して、波動関数ψ(q)をψ(q)=(<q|)|ψ>によって定めています。つまり、先に状態ケットを用意しておいて、それに対して波動関数を後から決めています。基本ケットはこれとは逆で、先に波動関数ありきで、対応するケットを定義します。例えば、<q|を作用させてψ(q)になるようなケットをψ(q)>(または(q)を省略してψ>)と書きます。つまり、ψ(q)=(<q|)ψ>です。これだけだと、普通の教科書でいう|ψ>をψ>と書き換えただけのようですが、他の例では(dψ/dq)(q)=(<q|)dψ/dq>を満たすものとしてdψ/dq>が定義されます。左辺は普通の波動関数ψの一階微分です。
そして、先ほどの式は、「ψ>に(d/dq)~を作用させるとdψ/dq>になる」ということを表し、これにより(d/dq)~の定義を与えています。
9月11日のTOSHIさんのコメントでは、
>本文では1変数解釈では状態|ψ>の座標演算子qによる微分(d/dq)を(d/dq)<q|ψ>≡dψ(q,t)/dq≡<q|(d/dq)|ψ>によって定義すると書いています。
という説明がありますが、これではちょっとわかりにくいと思います。最右辺の(d/dq)が微分ではなく、一次演算子という説明が要ると思います。微分演算子(d/dq)が状態ケットに作用するのはおかしいですよね。
それから、9月13日のTOSHIさんのコメント、
>正しくは,(d/dq)<q*|ψ>=dψ*(q,t)/dq≡<q*|(d/dq)|ψ>が満たされてないのでこれが成り立つように,(d/dq)*<q*|ψ>=,(d/dq)*ψ*(q,t)≡<q*|(d/dq)|ψ>となるように新表示で微分(d/dq)*を定義し直します。
についても一言述べておきます。繰り返しになりますが、Diracが定義しなおしているのは微分(d/dq)ではなく、一次演算子(d/dq)~です。Diracの教科書の一次演算子(d/dq)*~の定義を見てみましょう。演算子q~の固有ケットの集合{|q>}の代わりに{|q*>}={exp(-iγ(q))|q>}を考えることにします。そして、状態ケットψ>*を、
(<q*|)ψ>* = ψ(q)
と定義しています。ブラ<q*|は、|q*>のエルミート共役で、定義より<q*| = exp(iγ(q))<q|です。*がないときと同様に、dψ/dq>*は
(<q*|)dψ/dq>* = dψ/dq(q)
と定義されます。そして、(d/dq)*~の定義は、
(d/dq)*~ψ>* = dψ/dq>*
により与えられています。導出は省略しますが、以上の定義から(d/dq)~と(d/dq)*~の間に、
(d/dq)~* = exp(-iγ(q~))(d/dq)~exp(iγ(q~))
の関係が見て取れます。
以上のような説明がDiracの教科書には載っており、TOSHIさんの説明とは違ったことを言っていると思います。いかがでしょうか。
(もちろん説明の仕方を教科書どおりにやらないといけないと言うつもりはありません。説明にオリジナリティを出すかどうかは自由です。ただ、TOSHIさんの9月11日のコメントの最後に、『まあオリジナルではなくDiracのテキストにあるものを説明して書いたつもりなのでこれ以上は元本を読んでください。』とあったので、それは違いますよ、と単に言いたかっただけです。単に説明の順番が多少違うとかではなく、根本的に別のことをしていますよね。)
またもう少ししたら、この続きを書きたいと思います。しばらく間が空くかもしれませんが気長にお待ちください。
投稿: 冷蔵庫 | 2010年12月27日 (月) 23時17分
>凡人さん
一か月も待たせてしまってすみません。TOSHIさんの、
>そこで本当はこの表示での微分も新しく(d/dq)*として定義し直さないと通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立しません。
という主張についてコメントしておきます。
TOSHIさん9/11の、
>q表示でのpが(hc/i)dψ/dq+[dF(q)/dq]ψとなるような表示に対してq*表示のψ*に対しても同じpが(hc/i)dψ*/dq+dF(q)/dqψ*となるように定義されているとするだけです。
と、9/13の、
>形式的な話だけで結論は変わらないのですが,(d/dq)*≡e^(iγ(q)})(d/dq)e^(-iγ(q))なるユニタリ変換で結び付けられた微分を採用しないと表示を変えただけで座標表示の量子力学そのものが変わってしまうからです。
から判断すると、関数γ(q)を適当に選ぶことで、
pψ*=(hc/i)dψ*/dq+dF(q)/dqψ*
=(hc/i)(d/dq)*ψ*
と書けます。このことを"通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立"していると主張されているように読めます。
ところで、"通常の波動関数と微分演算子"の"通常の"は"波動関数"だけでなく、"微分演算子"にも係っていると読むのが自然だと思います。ですが、(d/dq)*って通常の微分演算子ではないので、仰っている意味が私にはわかりませんでした。結局、
"通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立"していないように見えてしまいます。
>TOSHIさん
私の誤りを指摘して頂けると助かります。
投稿: 冷蔵庫 | 2010年10月24日 (日) 23時36分
>凡人さん
返事が遅れてすみません。
>それと、これも推測ですが、TOSHIさんと冷蔵庫さんで参照している本の箇所や、本それ自体が相違しているという事は無いのでしょうか?
私が図書館で見たのはDiracの量子力学原書第4版です。
http://www.amazon.co.jp/%E9%87%8F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E5%AD%A6-%E5%8E%9F%E6%9B%B8%E7%AC%AC4%E7%89%88-%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF/dp/4000061232
おそらくTOSHIさんがご覧になっているのも同じ本だと思います。(ひょっとすると版が異なるかもしれませんが)参照しているのは、Schrodingerの表示とかいう節だったと記憶しています。
もうしわけないですけど、他の質問への答えはもう少し待って下さい。近いうちにお答えしたいとは思っているのですが。
投稿: 冷蔵庫 | 2010年10月 4日 (月) 00時12分
冷蔵庫さん
>前者はPとQが同値、後者はPの真偽に依らずQが真という意味ですか?
仰るとおりの意味です。
>私が正しいと、前者が正しくなくて後者が正しい、と思ったのは何故ですか?
冷蔵庫さんが正しいとすると、
><q*|p~|ψ>=<q|e^(iγ(q~))p~|ψ>
>=e^(iγ(q))<q|p~|ψ>
>=e^(iγ(q))((hc/i)(d/dq) + dF(q)/dq)e^(-iγ(q))ψ*(q,t)
は当然正しい事になりますが、TOSHIさんの
>そこで本当はこの表示での微分も新しく(d/dq)*として定義し直さないと通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立しません。
という主張も、多分100%誤りという事は無いと思い、TOSHIさんと冷蔵庫さんの主張内容をそれなりに両立する為に、私なりに推測した結果、
>新しく(d/dq)*として定義しても(、しなくとも)、通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立する。
というように考え、TOSHIさんと冷蔵庫さんにご意見をお伺いして見ました。
それと、これも推測ですが、TOSHIさんと冷蔵庫さんで参照している本の箇所や、本それ自体が相違しているという事は無いのでしょうか?
投稿: 凡人 | 2010年9月26日 (日) 22時22分
>TOSHIさん
PCクラッシュですか。(クラッシュ中に)このコメントをご覧になるかわかりませんが、早く復帰されるといいですね。返事もお待ちしています。
> ここは掲示板じゃなく私の個人的ブログなので,もはや十分説明済みのことについて,ご自身の考えが正しいかどうか?念を押すようなコメントを受けて延々と同じ説明をくりかえすことはじゃまくさいので敢えてしないだけです。
コメントをしないつもりでも、ただ無視するのではなく、その旨を伝えるべきではないでしょうか。疑問文でお聞きしているので、お返事を待っていることは明らかですよね。たしかにここはTOSHIさんのブログですが、無視するのはマナーに反すると思うのですが。
同じ説明を繰り返したくないのなら、前に説明しましたよ、と言えばいいだけなのでは?もしくは、以前に説明した箇所を挙げていただくとか。
また、念を押すというつもりは特にありませんでした。私はこう思っていますよ、という意思を伝える意味で言いました。
それに、TOSHIさんに説明を頼んでいるわけでもないですね。むしろ説明義務は自分のほうにあると思っていたし、後でその説明はするつもりでした。ここで説明まで書かなかったのは、ぶっちゃけるとTOSHIさんの反応を伺っておこうと思ったからです。それによって説明の仕方を考えるという意味でです。
TOSHIさんのPCが復帰したら、そのあたりの続きをお話したいと思っています。このブログのコメント欄を汚してしまうのが嫌ならば、EMANさんの掲示板などを使わせてもらってもいいですよ。何度も繰り返していますが、お返事を待っています。
それと、9/22の私のコメントの訂正です。
>TOSHIさんの説明に書かれているような、微分(d/dq)*を定義しなおすとかはDiracに書いてありましたっけ?
とありますが、「書かれているような」ではなく「書かれているように」が正しいです。細かいことですが。
>凡人さん
前者はPとQが同値、後者はPの真偽に依らずQが真という意味ですか?私が正しいと、前者が正しくなくて後者が正しい、と思ったのは何故ですか?
投稿: 冷蔵庫 | 2010年9月26日 (日) 20時12分
>どうしてそこで素直に「間違えました」と言えないんだよ…
私の理解の誤りをお教え頂けますと、助かります。
投稿: 凡人 | 2010年9月25日 (土) 16時56分
どうしてそこで素直に「間違えました」と言えないんだよ…
言い訳するなら「大変申し訳ありませんでした」なんて慇懃に謝るなよ 意味がわからん
投稿: ぷ | 2010年9月24日 (金) 20時35分
TOSHIさん
>・・・と。。。は,ほぼ同じ意味ですから文章としておかしいと思います。
大変申し訳御座いませんでした。
「新しく(d/dq)*として定義し直す」をP、「新しく(d/dq)*として定義し直さない」を¬P、「通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立する」をQ、「通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立しない」を¬Qとすると、
>そこで本当はこの表示での微分も新しく(d/dq)*として定義し直さないと通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立しません。
は(P⊃Q)∧(¬P⊃¬Q)≡(P⊃Q)∧(Q⊃P)、
>新しく(d/dq)*として定義しても、通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立する。
は(P⊃Q)∨(¬P⊃Q)≡(P∨¬P)⊃Qと理解しました。
投稿: 凡人 | 2010年9月22日 (水) 00時57分
>ここは掲示板じゃなく私の個人的ブログなので,もはや十分説明済みのことについて,ご自身の考えが正しいかどうか?念を押すようなコメントを受けて延々と同じ説明をくりかえすことはじゃまくさいので敢えてしないだけです。
そうだったんですか。それならそうと一言言ってくれればよかったのに。一応返事を待っていたんですよ?
さて、ほとんど説明不要かと思っていたのですが、予想以上に伝わっていないので、簡単ですがDiracの教科書の議論の説明をしておきます。
波動関数は、|ψ>の基底{|q>}による展開係数と定義する(q表示)代わりに、基底{|q*>}={exp(-iγ(q))|q>}による展開係数とする(q*表示)こともできます。q表示の波動関数に対し微分演算子(d/dq)として作用するような演算子は、q*表示のそれに対しexp(iγ(q))(d/dq)exp(-iγ(q))と作用します。この自由度を用いて、演算子p~の表示をしかるべき形に持っていけます。
というだけだと思うのですが。TOSHIさんの説明に書かれているような、微分(d/dq)*を定義しなおすとかはDiracに書いてありましたっけ?TOSHIさんの論理が間違っているとはいいませんが、Diracの教科書とは違った説明をされていると思います。一応お返事を待ちますが、特に何も言いたくない場合であっても、それなりに一言頂きたいと思います。もう少し詳しい説明が必要でしたら、その旨をお伝え頂ければ書き足します。
>で,凡人さんにも気分的にコメントしたくはないのですが,物理学というよりも少し単純な論理学(というよりも国語?)を勉強なさったらどうですか?
単に書き間違えただけじゃないでしょうか?何もそんな言い方しなくてもいいと思いますよ。
投稿: 冷蔵庫 | 2010年9月22日 (水) 00時28分
どもTOSHIです。
ここは掲示板じゃなく私の個人的ブログなので,もはや十分説明済みのことについて,ご自身の考えが正しいかどうか?念を押すようなコメントを受けて延々と同じ説明をくりかえすことはじゃまくさいので敢えてしないだけです。
で,凡人さんにも気分的にコメントしたくはないのですが,物理学というよりも少し単純な論理学(というよりも国語?)を勉強なさったらどうですか?
・・・ではなくて。。。が正解と書かれていますが,後者は前者の否定になってません。
・・・と。。。は,ほぼ同じ意味ですから文章としておかしいと思います。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2010年9月21日 (火) 05時40分
もし冷蔵庫さんが正しいとすると、
>そこで本当はこの表示での微分も新しく(d/dq)*として定義し直さないと通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立しません。
ではなくて、
>新しく(d/dq)*として定義しても、通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立する。
が正解という事になるのでしょうか?
投稿: 凡人 | 2010年9月21日 (火) 00時13分
>いや,根本的な間違いではないですがDiracの教科書の意図とは違うという意味です。
昨日Diracの教科書を見ましたが、私の言ったやり方と大体同じ議論をしていませんか?
投稿: 冷蔵庫 | 2010年9月16日 (木) 00時19分
冷蔵庫さん。TOSHIです。こちらこそ早速コメントありがとうございます。
>やっちゃいけないとはどういう意味ですか?単にDiracの教科書のとおりにならないということですか?それとも根本的に何か間違いを犯しているということなのでしょうか?
いや,根本的な間違いではないですがDiracの教科書の意図とは違うという意味です。
>よくわからないところは正直にわからないと言ったほうがいいと思いますよ。それと、コメントを期待するのであれば、EMANさんの掲示板等で質問されてはいかがでしょうか。
その通りなんですが当時は昔のノートを見て書いていて,うん?と思っても今のようにPendingと書いていて後で直すという技?を身に着けていませんでした。
私は物理や数学系統の数式のからむ問題では掲示板に限らず学生時代の自分の教官への質問でも他のほとんどの人が納得する回答でも,私自身はバカで認識能力の限界が低いせいか?納得できないことが多々ありました。
そこで,冷蔵庫さんの質問すれば?というアドバイスはありがたいのですが,私は他人の質問と回答を参考にはしますが自分自身は質問はせず何年たとうが自分の中で解決できるまで自分だけでやるという習慣がついています。
ところで前のコメントでもややぼかして書いたように,今はもちろん解決しています。
正しくは,(d/dq)<q*|ψ>=dψ*(q,t)/dq≡<q*|(d/dq)|ψ>が満たされてないのでこれが成り立つように,(d/dq)*<q*|ψ>=,(d/dq)*ψ*(q,t)≡<q*|(d/dq)|ψ>となるように新表示で微分(d/dq)*を定義し直します。
形式的な話だけで結論は変わらないのですが,(d/dq)*≡e^(iγ(q)})(d/dq)e^(-iγ(q))なるユニタリ変換で結び付けられた微分を採用しないと表示を変えただけで座標表示の量子力学そのものが変わってしまうからです。
気づいたときに本文を直せばよかったのでしょうが,怠惰からそのままにしていて補足的説明もつけていません。
そして,あまりにも忘れたころに言われたので,指摘されてから素直に過去のミスを認めてゴメンとは言いたくないというありがちな1人前の偏屈(負け惜しみ?)で前のコメントではわかりにくい表現でぼかしちゃいました。
まことに申し訳ありません。>冷蔵庫さん。そして他のまじめな読者の方々
TOSHI
投稿: TOSHI | 2010年9月13日 (月) 05時38分
早速のお返事ありがとうございます。Diracの教科書は今手元にないので、図書館にでも行って見てみたいと思います。ところで、
>まあ,早く言えば勝手にこういう計算をやっちゃいけないということです。
やっちゃいけないとはどういう意味ですか?単にDiracの教科書のとおりにならないということですか?それとも根本的に何か間違いを犯しているということなのでしょうか?計算を続けると、
e^(iγ(q))((hc/i)(d/dq) + dF(q)/dq)e^(-iγ(q))ψ*(q,t)
=((hc/i)(d/dq) - hc dγ(q)/dq + dF(q)/dq)ψ*(q,t)
となるので、hc γ(q) = F(q)とすれば(hc/i)(d/dq)ψ*(q,t)となって問題は解決すると思ったのですが。とりあえず、Diracを見て考えてみます。
>肝心のところを「面倒」くさいこうなるはずだ」むしろ煩雑で読みにくいと行間を飛ばしてはしょって書いたのです。
なるほど。よくわからないところは正直にわからないと言ったほうがいいと思いますよ。それと、コメントを期待するのであれば、EMANさんの掲示板等で質問されてはいかがでしょうか。
投稿: 冷蔵庫 | 2010年9月12日 (日) 22時13分
ども冷蔵庫さん,こんばんわ。TOSHIです。
><q*|p~|ψ>=<q|e^(iγ(q~))p~|ψ>
=e^(iγ(q))<q|p~|ψ>
=e^(iγ(q))((hc/i)(d/dq) + dF(q)/dq)e^(-iγ(q))ψ*(q,t)
となってしまいました。
まあ,早く言えば勝手にこういう計算をやっちゃいけないということです。
q表示でのpが(hc/i)dψ/dq+[dF(q)/dq]ψとなるような表示に対してq*表示のψ*に対しても同じpが(hc/i)dψ*/dq+dF(q)/dqψ*となるように定義されているとするだけです。
本文では1変数解釈では状態|ψ>の座標演算子qによる微分(d/dq)を(d/dq)<q|ψ>≡dψ(q,t)/dq≡<q|(d/dq)|ψ>によって定義すると書いています。
そこで,*の表示では既に微分(d/dq)が(d/dq)<q*|ψ>=dψ*(q,t)/dq≡<q*|(d/dq)|ψ>を満たすようになっていません。
そこで本当はこの表示での微分も新しく(d/dq)*として定義し直さないと通常の波動関数と微分演算子から成るシュレーディンガーの波動力学が成立しません。
波動関数ψ*を微分するのがq*を座標とするシュレーディンガー理論の波動力学であって上記のようにスマートなブラケットと抽象演算子を使って*-座標表示での微分を解釈しようとすると悩んでしまいます。
冷蔵庫さんが指摘されてることは以前の箱の中の粒子についてもそうですが,実は私も当然引っかかったところです。
ここも含めてひっかかると短くて数時間,長くて数日間はああでもないこうでもないと解釈に迷っていてこれも計算すべき式なのか?または微分を含めて定義式であって前からは導出不可能なのか?などと考えたあげく少しpendingにしようとか。
肝心のところを「面倒」くさいこうなるはずだ」むしろ煩雑で読みにくいと行間を飛ばしてはしょって書いたのです。
これを書いたころにはコメントを期待していたのに全く無かったので誰もまじめに読んでないなと感じていました。
おかしいとか矛盾だとかの催促なども無いので(d/dq)*の定義し直しは省略したままでした。
日記とはいえ読者いるのに結構無責任ですね。>自分
まあオリジナルではなくDiracのテキストにあるものを説明して書いたつもりなのでこれ以上は元本を読んでください。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2010年9月11日 (土) 20時16分
こんにちは。冷蔵庫です。
EMANさんの掲示板から来たのですが、ロジックを追えないところがあるので質問させてください。
まずψ(q,t)=<q|ψ(t)>へのp~の作用を、
<q|p~|ψ>=((hc/i)(d/dq) + dF(q)/dq)ψ(q,t)
と仮定しますよね(簡単のため、空間の次元を1とします)。ここまではいいのですが、
ψ*(q)=<q*|ψ>=<q|e^(iγ(q~))|ψ>=e^(iγ(q))<q|ψ>
へのp~の作用を、
((hc/i)(d/dq) + dF(q)/dq)ψ*(q,t)
としていますよね。これがどうしてかがわからないので詳しく教えてください。ちなみにナイーブに計算すると、
<q*|p~|ψ>=<q|e^(iγ(q~))p~|ψ>
=e^(iγ(q))<q|p~|ψ>
=e^(iγ(q))((hc/i)(d/dq) + dF(q)/dq)e^(-iγ(q))ψ*(q,t)
となってしまいました。
>このとき,ψ*(q,t)=eiγ(q)ψ(q,t)の両辺を座標qrで偏微分すれば,(∂/∂qr)ψ*(q,t)=eiγ(q){∂/∂qr+i(∂γ/∂qr)}ψ(q,t)=eiγ(q){∂/∂qr+i(∂γ/∂qr)}e-iγ(q)ψ*(q,t)となります。
以降でどのような意図でロジックを組み立てているのか教えてください(質問の仕方がやや曖昧ですみません)。
投稿: 冷蔵庫 | 2010年9月10日 (金) 23時55分
どもkafukaさん,コメントありがとうございます。TOSHIです。
そうですね。まあ,任意の演算子Aについて[A,f(A)]=0 ですから[A,B]=[A,B+f(A)]です。A=q,B=pなら [q,p]=[q,p+f(q)]なので交換関係だけからは運動量にはf(q)の任意性があるのは当然ですね。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2008年3月 1日 (土) 16時14分
僕は、pに対するqの一意性を問題にしていましたが、
そもそも、古典ハミルトニアンから、
量子力学のハミルトニアン を一意に、定める
ことは、一般には、できませんね。
例えば、物理量に 2q2p2 という項が逢った場合、
q^p^2q^+p^q^2p^ としてエルミートにしますが、
q^p^q^p^+p^q^p^q でも正しいですね。
でも両者の与える結果は、異なります。
(両者の差は、-(q^p^-p^q^)2=hbar2 です)
「新版 量子力学の基礎」4.5正準量子化の曖昧さ
より抜粋
投稿: kafuka | 2008年2月29日 (金) 15時45分
ご訪問、コメント、ありごとうございます。
拝見させて頂きました。
僕にとっては 「古典力学を合理的に量子化する」ことは
「古典力学に公理を追加して量子力学を導く」ことです。
この議論は、とっくの昔にすんでるのですね
投稿: kafuka | 2007年5月14日 (月) 23時53分