次元控除法によるポアソン方程式の直接数値解法(補遺)
Poisson方程式:△φ=∇2φ=ρを,微分方程式のままで解析的に解くのであれば,Laplace演算子(Laplacian):△=∇2の逆演算子△-1を求めて解として,φ=△-1ρを求めることに帰着します。
△-1は微分演算子の逆演算子なので,これは一般に積分演算子です。
つまり,△xD(x-y)=δ(x-y)となるGreen関数;D(x)を求める
ことが,△D=1=δ^なる積分演算子:D^=△-1を求めることに相当
します。
D(x)はFourier変換を利用したり,Poisson方程式の斉次方程式であるLaplace方程式:△φ=0 の解を調べることから得ることができます。
特に,球対称なGreen関数は,D(x)=-1/(4πr)(ただしr=|x|)で
与えられます。
これを,x,y,zで有限回偏微分したものは,一般にはGreen関数ではないですが,原点r=0 を除けば,-1/(4πr)と同じく調和関数,つまりLaplace方程式の解です。
それらは,物理学的には,双極子,四重極子,...etc.という風に,多重極子と呼ばれ,数学的には球関数,あるいは球面調和関数と呼ばれます。
そうして得られたD(x)を用いて,φ(x)=∫D(x-y)ρ(y)dyとおけば,φは確かに△φ=∇2φ=ρの解になります。
つまり,△D=1=δ^ですから,D^はD^=△-1という積分演算子で
あり,φ=△-1ρ=D^ρによって解φを求めるのが通常の解法です。
ここで,D^というのは関数D(x)を"演算子=積分演算子"とみなすことを意味しています。
Poisson方程式:△φ=∇2φ=ρを差分方程式化すると,差分化によって左辺のLaplace演算子:△=∇2は広義の行列:Aとなり,微分方程式△φ=∇2φ=ρは,結局,連立1次方程式:Aφ=ρに帰着します。
この連立1次方程式の解;φ=A-1ρを,ガウズザイデル法のような
"緩和法=繰り返し計算法"で解くのではなく,
複雑で丸め誤差などが累積しやすいという数値計算に特有の欠点はあるのですが,直接法である消去法など,QR分解などを利用して色々と工夫してできるだけ精度良く,簡単に直接的に求めようと試みたのが,
本題の「次元控除法によるポアソン方程式の直接数値解法」の目指す
ところです。
そもそも,どこかに1つの大きな源があるようなPoisson方程式の解
である,太陽系の重力場やCoulomb場のようなものを求めるのが目的
であれば,それを求めるのに数値計算に頼る必要はないです。
しかし,室内気流に対する速度ポテンシャルに相当するような圧力場や,あるいは地球温暖化の源の1つとなる温排水などの影響による海流の変化のソースポテンシャルのような,中途段階で現われる量は,
通常はかなり複雑な条件下での2次元,3次元のPoisson方程式の解なので,それを解く場合は数値計算に頼らざるを得ません。
しかし,本題の方法は対象とする領域の形が矩形や直方体に限られているので,建物の室内のような形状についての計算には適していても,一般の種々の形状の境界を持つ領域に対しては普通に考えれば,適用できないと思われるので,汎用性が少ないと感じられるかもしれません。
しかし,領域が矩形や直方体ではなくても例えば2次元の円板や3次元球体のように,少なくとも単連結な領域であれば,それらは適当な変数変換によって互いに矩形や直方体に変換可能です。
あるいは,逆変換を行うことによって矩形や直方体を球面や球体に変換することもできます。
実際,私のアルゴリズムによって作成したプログラムが,Poisson方程式の解を求めるものとなっているかを検証するための1手段として,
3次元メッシュの空間領域を十分大きく取り,直方体での計算結果を,直方体から球に座標変換することによって,解φが確かに球対称なCoulomb場:φ(x)=-ρ/(4πr)に一致することを確かめました。
というわけで,少なくとも単連結な領域における3次元以下のPoisson方程式であれば,私の示したこの方法は数値解を求めるのに有効なものであろうと考えられます。
つまり,トポロジー的に同相であるなら,一方で可能な操作は他方でも可能であるという例になっています。
(球面は境界がないので矩形と同相ではありませんが,球面を2つに分けると半球面は矩形と同相です。)
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