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2007年5月17日 (木)

超幾何微分方程式の解と接続公式

Gaussの超幾何微分方程式:

/(z-1)(d2/dz2)+[(α+β+1)z-γ](dy/dz)

+αβy=0

の解全体の作る関数族は,

 

RiemannのP関数(ペイ関数)を用いて,P{0,1,;z}と表わすこと

ができます。

  

ここで,0,1,のそれぞれは,

0=(0,0,1-γ),1=(1,0,γ-α-β),(∞,α,β)

で定義される3行の列ベクトルを意味します。

 

(※行表示の左上に転置(transport)を意味する添字tを付けて

列を表現しています。)

 

そこで,P{0,1,;z}の(0,1,)は表記の上では,3×3 行列と同じですが,P関数の記号というのは別にベクトル演算や行列演算を行なうというものではなく,単に関数族を表現する記号にすぎません。

 

解の中に対数項が現われる面倒な場合を避けるためにRiemannと同じ

く,1-γ,γ-α-β,α-βはどれも整数ではないとしておきます。

 

すると,この関数族の3つの特異点に対応するそれぞれ2つの独立解として,次の6通りの解が含まれることになります。

 

 すなわちy01(z):z=0 で正則な関数,

 y02(z):z1-γ× (z=0 で正則な関数),

 11(z):z=1で正則な関数,

 12(z):(1-z)γ-α-β× (z=1で正則な関数),

 1(z):(1/z)α× (z=∞ で正則な関数),

 y2(z):(1/z)β× (z=∞ で正則な関数)の6つです。

  

 以下では,これらの解を全て具体的に求めます。

 

 まず,y01(z)を求めます。

 

 そのためにy=y01(z)≡Σk=0kkとおいて,超幾何微分方程式

 に代入し,未定係数法でckを求めます。

 

 解は定数だけの任意性を持つので,01とおきます。

 

 簡単な計算によって,y=Σk=0kk

 1+Σk=1(α)k(β)kk/[k!(γ)k]

(ただし,(α)k≡α(α+1)(α+2)..(α+k-1))

 が得られます。

 

 それ故,y01(z)=F(α,β,γ;z)(超幾何関数)です。

 

 この解が求まると他の解を求めるのに,もはや未定係数法を用いる

 必要はなく,RiemannのP関数による変換公式を用いればいいだけ

 です。

 

 y02(z)を求めるためには変換w=zγ-1yを行います。

 

γ-1{0,1,;z}=P{0',1',';z},ただし,0=(0,0,1-γ),

1=(1,0,γ-α-β),(∞,α,β);0'(0, 0,γ-1),

1'=1,'=(∞,α-γ+1,β-γ+1) )です。

 

そこで,w=zγ-1y=F(α-γ+1,β-γ+1,2-γ;z)

となります。

 

故に,y02(z)=z1-γ(α-γ+1,β-γ+1,2-γ;z)です。

 

次に,y11(z),y12(z)ですが,これらはy01(z),y02(z)で

ξ=1-zという1次分数変換を行なったときのξに対する解

に変換すればいいということになります。

 

ところが,この変換は特異点 0と1を入れ換えるだけですから,

P{0,1,;z}:0=(0,0,1-γ),1=(1,0,γ-α-β),

(∞,α,β)に対応する表式から,

 

P{0,1,;z}=P{0',',;1-z};0'1,'=0

表記を変換すればいいだけです。

 

そして,これはy01(z)とy02(z)においてパラメータを

(α,β,γ) から(α,β,α+β-γ+1)に変更して,

0 の周りの超幾何関数を1の周りのそれに変える操作を

することに相当します。

 

したがって,

11(z)=F(α,β,α+β-γ+1;1-z)と,

12(z)

=(1-z)γ-α+β(γ-β,γ-α,γ-α-β+1:1-z)

を得ます。

 

次に,y1(z),y2(z)ですが,これらは上と同様にy01(z),

02(z)でξ=1/zという1次分数変換を行うことによって,

特異点 0 と∞ を入れ換えてその後にξαを掛ければいいわけ

です。

 

したがって,同様なP関数の変換によって,これを求めるのは

01(z)と02(z)でパラメータを(α,β,γ)から

(α,α-γ+1,α-β+1)に変更し, 0の周りの超幾何関数を

∞の周りのそれに変えて,さらに(1/z)αを掛ける操作を行う

ことに相当します。

 

それ故,y1(z)=(1/z)α(α,α-γ+1,α-β+1;1/z),

2(z)=(1/z)β(β,β-γ+1,β-α+1;1/z)

となります。

 

以上の結果をまとめると,超幾何微分方程式の基本的な解は

次のように列記されます。 

 

01(z)=F(α,β,γ;z),y02(z)

=z1-γ(α-γ+1,β-γ+1,2-γ;z);

 

11(z)=F(α,β,α+β-γ+1;1-z),

12(z)=(1-z)γ-α+β(γ-β,γ-α,γ-α-β+1;1-z);

 

1(z)=(1/z)α(α,α-γ+1,α-β+1;1/z),

2(z)=(1/z)β(β,β-γ+1,β-α+1;1/z)

 

です。

 

 しかし,これらは単に解の超幾何級数による表示を求めただけです。

 

 そして,超幾何級数は,それが多項式になる場合を除けば収束半径

が1無限級数なので,

 

 我々が解の性質を知り得るのは,y01(z),y02(z)については,

|z|<1においてだけ,y11(z),y12(z)については,|1-z|<1

においてだけ,y1(z),y2(z) については |z|>1において

だけということになります。

 

 したがって,それぞれの解の収束円の外への解析接続を行わない

限りは超幾何微分方程式が完全に解けたとはいえません。

 

 この解析接続を行なって方程式を完全に解くという問題は実は

 1908年のBarnes(バーンズ)の論文によって完全に解決されてい

 ます。

 

彼の解析接続の方法は,まことに巧妙で技巧的な計算が必要なので,

ここではその詳細を紹介することはやめて考え方のアウトライン

示すだけとします。

 

例えば,y02(z)を|z|>1の範囲に解析接続することを考えます。

 

02(z)は2つの多価関数z1-γと,

(α-γ+1,β-γ+1,2-γ;z)積です。

 

そこで,まずこれらが|z|<1においてどの分枝を取るのか,

を決める必要があります。

 

それ故,まず解析接続は複素z平面上から正の実軸を除いたところ

で行なうと決めます。

  

この範囲での経路はz1-γの分岐点z=0 や.

F(α-γ+1,β-γ+1,2-γ;z)の分岐点z=1の周りを

1周することができないので,解析接続の結果が1価に確定

します。

 

次に解の分枝を定めるのですが,zが上記の範囲にあれば,

(2n-1)π<argz<(2n+1)πなので,y02(z)として,

(-z)1-γ(α-γ+1,β-γ+1,2-γ;z)を採用し,

この表現において-π<arg(-z)<πと定めることにより

(-z)1-γが確定します。

 

すなわち,(-z )1-γexp[(1-γ){log|z|+arg(-z)}];

-π<arg(-z)<πです。

 

さらにF(α-γ+1,β-γ+1,2-γ;z)の分枝としては,もちろん

|z|<1でzの超幾何級数で与えられるものをとります。

 

こうして定めたy02(z)

=(-z)1-γ(α-γ+1,β-γ+1,2-γ;z)を,

-π<arg(-z)<πの範囲を通る経路に沿って|z|>1

の範囲に解析接続したときどのような関数になるかを見る

ためには,

 

それをy1(z)とy2(z)の1次結合で表わせばいいこと

になります。

 

ただし,この際もy1(z)とy2(z)の分枝を確定するために

 

1(z)=(-z)(α,α-γ+1,α-β+1;1/z),

2(z)=(-z)(β,β-γ+1,β-α+1;1/z)

;-π<arg(-z)<πとし,F(α,α-γ+1,α-β+1;1/z)etc.

 

の分枝としては|z|>1で1/zの超幾何級数で与えられるもの

を取ります。

 

ここで,関数f(s)を,

f(s)≡[Γ(α+s)Γ(β+s)/{Γ(1+s)Γ(γ+s)}]{π/sin(πs)}(-z)sと定義します。

 

ただし,-π<arg(-z)<πとします。

 

こうすればlog(-z)が1価に確定するので,f(s)はsの1価

関数になります。

 

(s)の極を調べるために,公式Γ(x)Γ(1-x)=π/sin(πx)

においてx=-sとおくと,Γ(-s)Γ(1+s)=-π/sin(πs)

ですから,これを代入して,

f(s)=-{Γ(α+s)Γ(β+s)Γ(-s)/Γ(γ+s)}(-z)

が得られます。

 

Γ関数は零点を持たず,0,-1,-2,..に1位の極を持ちますから,

(s)はs=ν,-α-ν,-β-ν (ν=0,1,2,..)に1位の極を

持ち,それ以外では正則です。

 

ここで,s=σにおける(s)の留数を Reσ(s)と書けば

Γ(-s)の極s=νに対する留数は(-1)ν+1/Γ(1+ν)なので,

 

Reν(s)

=[Γ(α+ν)Γ(β+ν)/{Γ(1+ν)Γ(γ+ν)}]zν,

 

Re-α-ν(s)

=-[Γ(β-α-ν)Γ(α+ν)/{Γ(1+ν)Γ(γ-α-ν)}]

(-z)-ν,

 

Re-β-ν(s)

=-[Γ(α-β-ν)Γ(β+ν)/{Γ(1+ν)Γ(γ-β-ν)}]

(-z)-ν

 

と書けます。

 

したがって,|z|<1 のときにはΣν=0[Reν(s)]は収束して,

Σν=0[Reν(s)]={Γ(α)Γ(β)/Γ(γ)}F(α,β,γ;z)

={Γ(α)Γ(β)/Γ(γ)}y01(z) となります。

 

同様に,|z|>1 のときには,

Σν=0[Re-α-ν(s)]とΣν=0[Re-β-ν(s)]が収束して,

Σν=0[Re-α-ν(s)]

=-{Γ(β-α)Γ(α)/Γ(γ-α)}(-z)

(α,α-γ+1,α-β+1;1/z)

=-{Γ(β-α)Γ(α)/Γ(γ-α)}y1(z),

 

および,Σν=0[Re-β-ν(s)]

=-{Γ(α-β)Γ(β)/Γ(γ-β)}(-z)β

(β,β-γ+1,β-α+1;1/z)

=-{Γ(α-β)Γ(β)/Γ(γ-β)}y2(z)

 

が得られます。

 

ここで複素s平面の原点より左側にあって実軸に垂直な直線:

Res=λ (λ<0)を,その上には(s)の極が全く載らないよう

に取り,この直線を下から上(Ims=-∞~∞)にたどる経路をC

とします。

 

Cの右側にある(s)の極をs=0,1,2,..,;s=-α,-α-1,

..,-α-qλ;s=-β,-β-1,..,-β-rλとすると,Cの

左側にある(s)の極はs=-α-qλ1,-α-qλ2,..,;

=-β-rλ1,-β-rλ2,..,と書くことができます。

 

そこで,Tを|Imα|,|Imβ| のいずれよりも大きい正の数として,

Cのうち|Ims|≦Tの部分を示す経路をCTと書くと,経路Cに沿

っての積分∫Cf(s)ds=limT→∞CTf(s)dsが存在するこ

とを証明することができます。

 

すなわち,まず|Ims|≦Tの線分を下から上にたどる経路CTを通

った後に,Ims=T(ただしλ≦Res≦(λ+n) )で与えられる線

分を左から右にたどります。

 

さらに,Res=(λ+n) (ただし(λ+n)>0;(λ+n)より小さ

い最大の整数がNn )なる直線のうち,|Ims|≦Tを満たす部分の

線分を上から下にたどります。

 

最後に,Ims=-T (ただしλ≦Res≦(λ+n) )で与えられる

線分を右から左にたどってCTの出発点に戻る計回りの閉じた

経路=負の向きにまわる長方形の閉経路を積分経路として積分を

行なったとして積分結果を(2πi)で割ったものは,

 

f(s)が閉経路内部に持つ極による留数の総和に-)符号をつけ

たものに等しいはずです。

 

つまり,{1/(2πi)}[∫CTf(s)ds

+{∫λ+iTλ+n+iT+∫λ+n+iTλ+n-iT

+∫λ+n-iTλ-iT}f(s)ds]

 

=-Σν=0n[Reν(s)]-Σν=0qλ[Re-α-ν(s)]

-Σν=0rλ[Re-β-ν(s)]

 

です。

 

T→ ∞,n→ ∞ の極限では,左辺の第2,3,4項の積分はゼロに

収束し,n→ ∞ですから,結局,

 

{1/(2πi)}∫Cf(s)ds=-Σν=0[Reν(s)]

-Σν=0qλ[Re-α-ν(s)]-Σν=0rλ[Re-β-ν(s)]

 

となります。

 

そこで,{1/(2πi)}∫Cf(s)ds+Σν=0qλ[Re-α-ν(s)]

+Σν=0rλ[Re-β-ν(s)]=-{Γ(α)Γ(β)/Γ(γ)}y01(z)

が成立することがわかります。

 

一方,Cの左側にRes=λ-nなる直線を取って,Res=λの線分の

経路CTからRes=λ-nの線分まで長方形閉路を反時計回りに回る

場合のf(s)の極の留数の総和を調べることにより,

 

{1/(2πi)}∫Cf(s)ds+Σν=0qλ[Re-α-ν(s)]

+Σν=0rλ[Re-β-ν(s)]

Σν=0[Re-α-ν(s)]+Σν=0[Re-β-ν(s)]

 

なる等式が得られます。

 

結局,{Γ(α)Γ(β)/Γ(γ)}y01(z)

={Γ(β-α)Γ(α)/Γ(γ-α)}y1(z)

+{Γ(α-β)Γ(β)/Γ(γ-β)}y2(z)

が得られるわけです。

 

より具体的には,y01(z)=F(α,β,γ;z)

=[Γ(β-α)Γ(γ)/{Γ(γ-α)Γ(β)}]y1(z)

+[Γ(α-β)Γ(γ)/{Γ(γ-β)Γ(α)}]y2(z)

と書けます。

  

この等式で,(α,β,γ) → (α-γ+1,β-γ+1,2-γ)とする

ことにより,y02(z)=z1-γ(α-γ+1,β-γ+1,2-γ;z)

=[Γ(β-α)Γ(2-γ)/{Γ(β-γ+1)Γ(1-α)}]y1(z)

+[Γ(α-β)Γ(2-γ)/{Γ(α-γ+1)Γ(1-β)}]y2(z)

が得られます。

 

そして,y01(z),y02(z)の|1-z|<1 の内部の領域への解析接続

は,たった今得られた上の公式やKummerの関数等式F(α,β,γ;x)

=(1-x)(α,γ-β,γ;x/(x-1))を使用し,さらに同様な

手続きを行なえば得られます。

   

これらも基本的な手法としては留数を用いるものであって,先に

記述した方法と同じなので,以下は割愛します。

  

そして,こうして得られる全ての1次関係式を接続公式と呼びます。

 

以上は,1-γ,γ-α-β,α-βはどれも整数ではない場合のみの

扱いですが,これらが整数になる場合,すなわち一般にzの対数を含

む場合も論じることは可能なのですが,一応解を具体的に求めて

複素z平面に解析接続する話はこれで終わります。

 

今日紹介した話は,順天堂大病院で4/10朝から夜までかかった心臓

手術の翌日4/11朝に集中治療室(ICU)から一般病棟(CCU)に戻った後,

 

それから3日目の4/13から読書できる余裕と体力が戻ったので読

書を再開して4/15午後までに勉強して把握した部分に関するもの

です。

 

参考文献:斎藤利弥 著「線形微分方程式とフックス関数I(ポアンカレを読む)」(河合文化教育研究所)

 

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。

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