« 有限な1次元空間に限定された運動量演算子 | トップページ | ジャズライブ(やねせん)に行ってきました。 »

2007年5月25日 (金)

超幾何微分方程式の代数関数解(シュワルツ)(1)

大分間が開いてしまいましたが,連載中の線形常微分方程式とフックス関数の続きを書きます。

 

Poincare'以前の最後の登場人物であるSchwarz(シュワルツ)の研究を紹介します。

 

彼の研究内容は,"有理関数を係数とするFuchs型微分方程式が代数関数を解に持つ条件は何か?”という問題に関するものです。

 

ここで代数関数というのは,次のように定義される関数のことです。

 

"A0,A1,..,Am-1,Amを変数zの任意の多項式(ただしmは任意の自然数でA0≠0)とするとき,

 

zの関数u(z)がA0,A1,..,Am-1,Amを係数とするある代数方程式:

0m+A1m-1..+Am-1u+Am0 の解と成り得る関数なら,

この関数u(z)は代数関数であるという。

 

一方,関数u(z)が如何なるzの多項式係数の代数方程式の解とも

成り得ない場合は,この関数u(z)は超越関数であるという。"

 

という定義で与えられます。

 

このSxhwarz研究は,保型関数をテーマとしたものではありませんが,

この研究の中で彼の用いた手法の副産物として保型関数が出現し,

 

彼の論文の中で超幾何微分方程式の2つの解の比の逆関数が如何なる

ときにFuchs関数になるか?という問題が解かれています。

 

Schwarzは超幾何微分方程式が代数関数を解に持つ場合を,次の2つに

分けて考察しました。

 

(ⅰ)1つの解(とその定数倍)が代数関数であって,それと1次独立な

もう1つの解は代数関数ではない場合

(ⅱ)全ての解が代数関数である場合

 

まず(ⅰ)のケースを考えます。

 

超幾何微分方程式の1つの解y1が代数関数であるとして,それの1つ

の分枝をy1(z)とし,それを分岐点のまわりを周回して解析接続した

ものをy1~(z)とします。

 

そして,y1(z)とは独立で同じ超幾何微分方程式の代数関数ではない

解をy2(z)とします。

 

2階線形微分方程式の一般論によって,y1~(z)はc1,c2を定数としてy1~(z)=c11(z)+c22(z)と表わすことができます。

 

しかし,仮定によって左辺のy1~(z)はy1(z)と同じく代数関数ですが,y2(z)は代数関数ではないのでc20 でなければなりません。

 

それ故,cを定数としてy1~(z)=cy1(z)と書けます。

 

この両辺の対数を取って,zで微分すると,

d[log{y1~(z)}]/dz=d[log{y1(z)}]/dzとなるので,

(dy1~/dz)/y1~=(dy1/dz)/y1 が成立します。

 

つまり,(dy1/dz)/y11'(z)/y1(z)はzの1価関数です。

 

1'(z)/y1(z)はzの代数関数でしかも1価関数ですから,これは有理関数であることを意味します。(例えば無理関数は多価関数です)

 

1'/y1 は有理関数となるので,それが特異点を持つとしたら,それは

真性特異点ではなく単なる極です。

 

ところで,y1(z)は"超幾何微分方程式=Fuchs型微分方程式"の解

ですから,その確定特異点の1つをz=αとすると,1(z)は代数

関数で対数関数などの超越関数を含まないので,Fuchs型微分方程

式の解の一般論から,

 

1(z)のz=αの近傍での級数展開式は,

1(z)=(z-α)ρν=0ν(z-α)ν]

と表わされます。

 

すると,

1'/y1=Σν=0(ρ+ν)cν(z-α)ρ+ν-1/Σν=0ν(z-α)ρ

となります。

 

この両辺に,(z-α)を乗ずると,

1'/y1ν=0(ρ+ν)cν(z-α)ν-1}/{Σν=0ν(z-α)ν}=ρ/(z-α)+Σν=0ν(z-α)ν

となります。

 

そこで,1'/y1の"特異点=極"は全て"超幾何微分方程式

=Fuchs型微分方程式"の確定特異点に一致し,しかも位数が1の

極です。

 

ここで,y1'/y1はzの有理関数であり,1(z)は特異点が 0,1,∞

の3つだけの超幾何微分方程式の解であることから,

 

1'/y1=a/z+b/(z-1)+R(z) (R(z)はzの多項式)

 

と書くことができます。

 

もちろん,係数aやbがゼロとなることも有り得ます。 

(1'/y1=ρ/(z-α)+Σν=0ν(z-α)νという表式に着目

すると,ρ=0 の場合がそれで,そのときはz=αはy1'/y1極で

はありません。)

 

これから,1(z)=za(z-1)bg(z)と表わせることがわかりま

した。

 

ここで1(z)は無限遠点を含まない全z平面Cで0,1を除いて正則

ですからg(z)は,"C全体で正則な関数=整関数"です。

 

ところで,y1(z)はFuchs型微分方程式の解ですから,z=∞ に真性特異点を持つことはないため,(z)は多項式です。

 

そこで,多項式g(z)の次数をnとしておきます。

 

超幾何微分方程式のz=0 における決定方程式の根は,0,1-γ,

z=1 における根は,0 ,1-γ-α-βなので,a=0 or 1-γ ;

b=0 or γ-α-βです。

 

まず,a=b=0 の場合,

 

1(z)=g(z)ですから1自身が多項式となりz=∞ の近傍では

1(z)=g(z)=zn×(z=∞で有限な関数)となりますが,z=∞

での決定方程式の解はα,βなのでα=-n,またはβ=-nです。

 

そして,αとβは超幾何微分方程式においては対等なパラメータなので,ここでは一般性を失うことなくα=-nとすることにします。

 

このときには,1(z)=g(z)=F(-n,β,γ;z)

=1+Σk=1(-n)(-n+1)..(-n+k-1)β(β+1)..(β+k-1)zk/{(k!)γ(γ+1)..(γ+k-1)}です。

 

この右辺の級数ではk≧(n+1)の項が全てゼロなので,左辺は実際に

zのn次多項式になります。

 

1(z)は多項式ですから,もちろん代数関数です。

 

次に,a=0,b=γ-α-βの場合は1(z)(1-z)γ-α-βg(z)

ですが,前と同様にz=∞ の近傍での挙動から,

 

α=-(n+γ-α-β),またはβ=-(n+γ-α-β),

すなわちβ=n+γ,またはα=n+γ

が得られます。

 

α=n+γの方を採用すれば,z=1の近傍でρ=γ-α-βに対応

する解:y12(z)

=(1-z)γ-α-βF(γ-β,γ-α,γ-α-β+1,;1-z)

です。

 

もしも,qを任意の有理数として,b=q=γ-α-βとおくなら

1(z)(1-z)qF(γ+n+q,-n,q+1,;1-z)

となります。

 

このときもF(γ+n+q,-n,q+1,;1-z)は確かに(1-z)の

n次多項式=zのn次多項式,ですが,qが有理数であると仮定した

ので,このように表現された解1は確かに代数関数になります。

 

われわれの本題は(ⅱ)のケースなので,残りの場合は省略して

(ⅱ)に移ります。

 

(ⅱ)全ての解が代数関数である。という命題が成り立つためには解の

分岐点は全て代数分岐点,すなわち分岐点をz=αとするとき,その

近傍での挙動は(z-α)の対数などではなく,その有理数乗で与えら

れなければなりません。

 

すなわち,1-γ,γ-α-β,α,βは全て有理数であること,

それ故,β,γは全て有理数であることが必要です。

 

以下ではα,β,γは有理数であることを前提として話を進めます。

 

次に,"(ⅱ)が成り立つためには,2つの1次独立な解の比が代数関数

であることが必要十分である。"ことを示すことにします。

 

必要条件であることは明らかなので,十分性のみを示せばいいです。

 

まず,n階線形斉次常微分方程式のn個の1次独立な解の全体を,

1,y2,..,ynとすると,Cをz平面内でのz=z0からz=z1まで

の経路として,

 

ロンスキー行列式(Wronskian)は,W(1(z1),y2(z1),..,yn(z1))

=W(1(z0),y2(z0),..,yn(z0))exp[-∫C1(z)dz]

となります。

  

2階方程式:y"+p(z)y'+q(z)y=0 の場合には,

12'-y1'y2=cexp[-∫Cp(z)dz](cは 0 でない定数)

と書けます。

 

超幾何方程式の場合には,p(z)=[(α+β+1)z-γ]/[z(z-1)]

=γ/z+(α+β-γ+1)/(z-1)なので,

exp[-∫Cp(z)dz]=(定数)×zγ(z-1)α+β-γ+1

となります。

 

α,β,γは全て有理数なので,これは1つの代数関数を示しています

から,12'-y1'y2は常に代数関数になります。

 

そこで,今,仮に解の比:y2 /y1が代数関数であるとすると,

 

d(y2/y1)/dz=(y12'-y1'y2)/y12も代数関数ですが,

たった今示したように,y12'-y1'y2は代数関数なのでy12

も代数関数となり,それ故,y1は代数関数となります。

 

以上から,"(ⅱ)が成り立つための必要十分条件は2つの1次独立な解

の比が代数関数であることである。"という命題が証明されました。

 

今日はここまでにします。

 

これで,やっと順天堂大病院で手術後に読書を再開した初めの部分に

入りました。

 

参考文献:斎藤利弥 著「線形微分方程式とフックス関数I(ポアンカレを読む)」(河合文化教育研究所)

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。

人気blogランキングへ ← クリックして投票してください。(1クリック=1投票です。1人1日1投票しかできません。)

http://homepage2.nifty.com/toshis-kaiga-auction/「健康商品の店 タクザイ」

にほんブログ村 科学ブログへクリックして投票してください。(ブログ村科学ブログランキング)

にほんブログ村 トラコミュ 物理学へ
    物理学

|

« 有限な1次元空間に限定された運動量演算子 | トップページ | ジャズライブ(やねせん)に行ってきました。 »

308. 微分方程式」カテゴリの記事

305. 複素数・複素関数論」カテゴリの記事

コメント

こんにちは、hirotaさん、TOSHIです。コメントありがとうございます。

> 後で気が付きましたが、ここの「関数」は単なる写像以上の意味を持ってるんですか?(無意味な不連続がない、とか)

 イヤ、そんな深い意味ではないので適切なアドバイスでした。

 要するに、ここは係数が有理数(整数)の代数方程式に対する代数的数と超越数の定義を係数が有理式(多項式)の話に変更しただけの定義だと思いました。

              TOSHI

投稿: TOSHI | 2007年8月30日 (木) 12時27分

後で気が付きましたが、ここの「関数」は単なる写像以上の意味を持ってるんですか?(無意味な不連続がない、とか)
もしそうなら、意味のないコメントでした。
もっとも、「無意味な不連続がない」を定義するのは難しそうですが。(代数多様体の定義になってしまうかな?)

投稿: hirota | 2007年8月30日 (木) 12時04分

 こんばんは、hirotaさん、TOSHIです。コメントありがとうございます。

>ここの話には関係ないんですが、代数関数の定義はあれで良いんですか?
複数の根の間を不連続に飛び回ったりするとマズイような気がする。

 表現がマズイという意味でしょうか?「解であるならば」ではなくて「1つの解と成り得る関数ならば」という表現に変えておきます。

               TOSHI

投稿: TOSHI | 2007年8月30日 (木) 00時18分

ここの話には関係ないんですが、代数関数の定義はあれで良いんですか?
複数の根の間を不連続に飛び回ったりするとマズイような気がする。

投稿: hirota | 2007年8月29日 (水) 15時32分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 超幾何微分方程式の代数関数解(シュワルツ)(1):

« 有限な1次元空間に限定された運動量演算子 | トップページ | ジャズライブ(やねせん)に行ってきました。 »