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2007年6月 6日 (水)

ポアンカレに関する1つの挿話

コーヒーブレイクとして,フックス関数の研究の際にポアンカレに生じた精神的変化に関する興味深い話題を述べてみようと思います。

既に記したように,ポアンカレは1880年5月にフックスの論文を入手し,それに刺激されてわずか1ヶ月足らずの間にコンクール論文を書き上げました。

しかしその内容はかなり未熟でした。

 

すなわち,2階線形微分方程式の2つの解f(x),φ(x)の比z=f(x)/φ(x)の逆関数x(z)がz平面全体で1価有理関数となるケースのみを考え,実は理論の中に有理関数と楕円関数は含まれていますが,肝心のフックス関数が含まれていませんでした。

ところが1881年になって投稿された彼の論文を見ると,この時には既にポアンカレはフックス関数の全貌をほぼつかんでいます。

このようなポアンカレの精神の中に起こった劇的な変化を説き明かす1つの興味深い挿話,つまり科学者,数学者としての発見のプロセスにおけるひらめきの瞬間がどのように訪れたのか?ということについての挿話を,彼自身がパリでの講演の中で語ったのですが,これは彼の著書「科学と方法(1908)」の中で読むことができます。

「2週間にわたって私は自分が後にフックス関数と名付けたものと類似の関数は存在しないということを証明しようと努力していた。

 

その頃私は全く無知だったのである。...(中略)....

 

ある晩,私は習慣に反してブラックコーヒーを飲み,眠ることができなかった。いろいろな考えが群をなして押し寄せてきた。

 

私はこれらが互いにぶつかり合い,遂にそのうちの二つが互いに引っ掛かり合って,いわば安定な組合わせを作るのを感じた。

 

朝になったとき,私は超幾何級数から導かれるフックス関数の1つのクラスの存在を証明できた。私はその結果を書き上げるだけでよく。。

次に私はその関数を2つの級数の比として表わそうと思った。

 

このアイディアは完全に意識的で熟考を経たものであった。楕円関数との類推が私を導いてくれた。私はそのような級数がもし存在すればそれはどんな性質のものでなければならないかを自問し,何の困難もなく,私がテータフックス級数と名付けた級数を作ることができた。

この頃私は....地質調査旅行に加わった。

 

旅行中の環境が私に数学の仕事を忘れさせた。..乗合馬車に乗った。その階段に足を掛けたとき,それまでそのことについて心の中に何の準備もしていなかったのに,一つの考えが浮かんできた。

 

それはフックス関数を定義するのに用いられた変換が非ユークリッド幾何の変換と同一のものだということであった....私はカアンに帰ってから良心をなだめるためにそれをゆっくりと検証した。

次に私はある数論の問題の研究を始めたが....うまくいかないのに嫌気がさして,私は海岸で数日を過ごし全く別のことを考えていた。

 

ある日,崖に沿って歩いていたとき,一つの考えがいつもと同じような独特の簡潔さ,唐突さ,そして間髪を容れない確実さをもって浮かんできた。それは三元不定値二次形式の数論的変換は非ユークリッド幾何の変換と同じものだということである。

....この二次形式の例は私に超幾何級数に対応するもの以外にもフックス群が存在することを教えてくれた。...」

初期の2つの論文に述べられている理論が,どのようにしてポアンカレの頭の中に形を成していったかを,この文章は生々しく伝えてくれています。

 

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