フォノンと多体問題(超伝導の基礎)(1)
アシュクロフト・マーミン著「固体物理の基礎」については,
私は1995年6月に読み始めてすぐに飽きて半年後の1996年1月
初めに再開して,1998年の3月頃までに上Ⅱの途中まで読んで
中断しています。
しかし,例えば量子論の演算子として,大分配関数のトレース
(対角和):Z=tr[exp(-β(H-μN)]を解析したり,これや,
その他の一般の熱力学関数などを対象にしたクラスター展開,
リング近似などの手法,
あるいは"第二量子化=個数表示"を利用して正準的,または
経路積分的に考えて摂動級数展開をし,その計算法として松原
グリーン関数などを伝播関数=積分核とした中間状態積分を
行なうグリ-ン関数法など,多体問題の本格的な手法に関する
話題は,この本ではほとんど取り上げられていないようです。
これらの多体問題の手法については,例えば1995年8月中旬から
1997年8月末までにアシュクロフト・マーミンと平行して読んで,
結局,読了した阿部龍蔵氏著の「統計力学(第2版)」
(東京大学出版会)や,
あるいは所持しているだけで本格的には読んでいない培風館の
物理学シリーズである高野文彦著の「多体問題」,その他私の
所持本では量子電磁力学での"Ward-Takahashi identity"で有名
な高橋康氏 著の「物性研究者のための場の量子論Ⅰ,Ⅱ」,
そして永長直人氏著の「物性論における場の量子論」(岩波書店)
などにくわしく載っているはずです。
しかし,電子-フォノン相互作用に関する限り中嶋貞雄先生による
超伝導の入門書である,培風館の「超伝導入門」の第1章の,簡略
モデルである"平均場近似=ジェリウム・モデル"による独立電子
近似から始まって第二量子化からフォノンの扱いへと移る部分が,
かなりわかりやすい説明になっているような気がします。
そこで,まずはこれから紹介しようと思っています。
私の専門の素粒子論については,実際に象牙の塔で教師に師事
して色々と勉強したのですが,畠違いの物性論,固体物理につい
ては1995年前後に,急に超伝導や金属のバンド理論,半導体の理論
を中心に,それらを詳しく知りたい,という欲求が起こって集中的
に独学しただけです。
本を読んで考えるという勉強法は,素粒子でも物性でも理論物理
を勉強する方法としては変わらないと思うのですが,独学なので,
これらの分野では曲解した部分があるかも知れません。
実際,いささか自信があるのは基礎物理ばかりで,応用物理につい
ては現実の現象の本質やその実験結果についての理解が乏しく,
またそれに対応できる頭もないので結構苦労しています。
まあ,だからこそ,私は工学や実験物理でなく理論物理,それも
数理物理や相関理化学に近い方にのみ興味が片寄ってしまった。
というわけなんでしょうけどね。
とにかく私は,いわゆる機械いじりが好きだったり,星を見るの
が好きだったり,あるいは花や昆虫や動物が好きだったり,とい
うような通常世間で考えられていると想像される典型的な科学
少年とは全く非なるものだったわけです。
そうした興味とは異なる動機で自然科学を志すようになった人間
ですから,パソコンとかオーディオとかにしても,ソフトであれば
結構得意な分野ですが,ハードだと手先も不器用なのですが,機械
とか薬品とかを扱うのは,苦手なほうです。
私の場合,同じ美を追求するアーティスト(artist)であるとしても
自然現象そのものの美しさよりも,それに内在している数学的理論
体系の美しさの方にはるかに魅かれるので,むしろ,物理学より抽象
的な数学のようなものに魅かれる傾向があるのかもしれません。
というわけで脱線しましたが,中嶋貞雄氏著の「超伝導入門」
(培風館)も1996年2月の下旬から1997年10月頃まで熟読して
いました。
ところが,その10月には第6章不純物効果に入っていたのですが,
そこで磁性不純物についてのアプリコソフ・ゴリコフ理論
(Aprikosov Gor'kov)での計算式展開の中の一行が,私には単なる
ミスプリ以上の根本的間違いと思われ,その式が間違いなら以後
の理論展開は全く成立しないので,困ってしまいました。
そこで,大胆にも中嶋先生本人に質問しようと思って東海大学
に電話しましたが,その頃にはもう東海大学には居られなくて,
応対した人も現住所,電話等も教えられない,
ということでしたから,代わりに有名な御子柴先生に意見を
聞こうと思って彼の研究室に電話しました。
しかし,そのときは御子柴先生も不在で,研究室の助手の方
しか居られず,しかもその助手の方の専門は超伝導ではない
ので質問内容が理解できない,というご返事でした。
よく考えたら本の著者自身ならともかく,電話で本の一部分
の式だけについて質問してすぐに解答できるような話では
ないのは明らかですから,それも仕方がありません。
しかし,運よく彼から中嶋先生の現住所を教えて頂くことが
できたので,改めて中嶋先生宛に詳細を記した手紙を出しました。
期待はしていませんでしたが,案の定無視されたようです。
まあ,そうしたどこの馬の骨だかわからないような人間から
わけのわからない質問の手紙を受けるのは日常茶飯事だった
でしょうから,手紙が本人まで到着しない,到着しても封を開
ける気にもならないだろう,
とは私も手紙を出す前から予想できたので,すぐにあきら
めました。
したがって,仕方ないので自力で解決しようと思って他の日本語
の書物を調べましたが結局解決できませんでした。
そこで,超伝導のBCS理論の創始者の1人であるシュリーファー(J.R.Schrieffer)著の洋書「Theory of Superconductivity」を丸善
から取り寄せて,読み始めたのですが,英語は得意ではないので最初
の方で挫折してしまいました。
そして,そのうち興味が別の分野に移って現在に至っています。
まあ,誰でもそうだとは思いますが専門書を読んでいて1行でも
理解できないとか納得いかないことがあれば,5年でも10年でも
それが解決するまでは先に進めない,というのはよくあることで
しょうが,とにかく困ったものです。
今日は余談ばかりでしたが,次回から本題に入ろうと思います。
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