« ポアンカレに関する1つの挿話 | トップページ | フォノン(1)(静止格子模型の破綻) »

2007年6月 7日 (木)

フックス関数の理論(2)(ポアンカレの理論)

 続きです。2つ目の初期論文です。

同じフックス群に対応し,正の整数mの値が同じである2つのテータフックス関数の比F(z)はzの1価関数であって,F(zKi)=F(z)が成り立つ。

 

故に,前に与えた定義からF(z)は1つのフックス関数である。

 

つまり,定数a,b,c,dの無数の値に対して,恒等的にF([(az+b)/(cz+d)]=F(z)が成り立つ。

 私(Poincare')は次の2つの定理を証明する。

 

1°同じ群に属しその定義の結果として生ずるもの以外には真性特異点を持たない2つのフックス関数の間には代数的関係が存在する。

 

※(注1)基本領域が基本円の上に集積する結果としてフックス関数は基本円上に真性特異点を持ちます。定義の結果として生ずる真性特異点とはこれを指しています。

 

 以下,このようなもの以外には真性特異点を持たないフックス関数を2つ取るとそれらは互いに他の代数関数になっているという意味です。(注1終わり)※

  

2°全てのフックス関数F(z)は次のようにして代数関数を係数とする線型方程式を積分することができる。

 

 すなわち,もしx=F(z),y1(dF/dz)1/2,y2=z(dF/dz)1/2と置くなら,y1,y2は微分方程式:d2/dx2=yφ(x)を満足し,φ(x)は代数関数である。

※(注2)y1,y2を解とする2階線形常微分方程式は,det(,',")=0 ,すなわち,y"-[(y12"-y1"y2)/(y12'-y1'y2)]y'+[(y1'y2"-y1"y2')/(y12'-y1'y2)]y=0 で与えられます。

 

 t(y,y1,y2),'≡d/dx,"≡d2/dx2です。

 今,x=F(z),y1(dF/dz)1/2,y2=z(dF/dz)1/2と置けば,具体的に,1'=(dF/dz)-3/22/dz2,y2'=(dF/dz)-1/2(z/2)(dF/dz)-3/22/dz2,

 

 そして,y1"=-(3/4)(dF/dz)-7/2(d2/dz2)2(1/2)(dF/dz)-5/23/dz3,y2"=-(3z/4)(dF/dz)-7/2(d2/dz2)2(z/2)(dF/dz)-5/23/dz3と計算されます。

 

 それ故,12'-y1'y2 1,y12"-y1"y2 =0,y1'y2"-y1"y2'=-[(1/2)(dF/dz)-33/dz3(3/4)(dF/dz)-4(d2/dz2)2]です。

 すなわち,方程式はy"-[(1/2)(dF/dz)-33/dz3(3/4)(dF/dz)-4(d2/dz2)2]y=0 となります。

 

  故に,φ(x)≡[(1/2)(dF/dz)-33/dz3(3/4)(dF/dz)-4(d2/dz2)2]={1/(2F’2)}{F,z} (z=F-1(x))と定義すれば,d2/dx2=yφ(x)が満足されます。

 そして,Fはフックス関数なので,それの属する任意の変換をz→z1(az+b)/(cz+d)とし,F(z)のzに関する1階,2階,3階導関数を,それぞれF',F",F(3)と書けば,F(z1)=F(z),F'(z1)dz1/dz=F'(z),F"(z1)(dz1/dz)2+F'(z1)d21/dz2=F"(z),F(3)(z1)(dz1/dz)33F"(z1)(dz1/dz)(d21/dz2)2+F'(z1)d31/dz3=F(3)(z)となります。

これらの式から,具体的計算を行なうことにより,xの関数φ(x)≡φ(F(z))≡[(1/2)(F'(z))-3(3)(z)-(3/4)(F'(z))-4(F"(z))2]について,φ(F(z1))=φ(F(z))が成立することを陽に導くことができます。

 

故に,φ(x)≡φ(F(z))はzのフックス関数です。

 

x=F(z)もフックス関数なので,φ(x)はxの代数関数です。

つまり,φ(x)≡φ(F(z))はx=F(z)の関数であって,F(z)はフックス関数ですから,F(z1)=F(z)が成立します。

 

それ故,φ(F(z))=φ(F(z1))となるのは自明なことであって,そもそも具体的計算で証明することなど不要ではないかと思われます。

 

しかし,x=F(z)は一般にzの1価関数であるかどうかもわかっていないので,φ(F(z))=φ(F(z1))が成り立つことは必ずしも自明であるとはいえないわけです。

 

実際,y1(dF/dz)1/2,y2=z(dF/dz)1/2もx=F(z)の関数ですが,こちらの方は明らかにzについて1価関数ではなく,(z)=0 なるz(F(z)の零点)に分岐点を持ちます。

 したがって,x=F(z)がたとえzの多価関数であっても,F(z)がフックス関数でありさえすれば,φ(x)≡φ(F(z))の方は必ずフックス関数になるというのが,上の具体的証明の内容であることを述べているのだろうと思います。

 

 まだ,複素関数の多価性を表わすモノドロミー群が登場していませんから,これとフックス群の準同型な関係についての議論などは示されていないので,上に述べたことは「フックス関数であることと1価関数であるということは同値である。」ことを示唆していると思われます。

「φ(x)≡φ(F(z))はzのフックス関数です。x=F(z)もフックス関数なのでφ(x)はxの代数関数になります。」と書きました。

 

これはポアンカレが証明したと称している「1°同じ群に属しその定義の結果として生ずるもの以外には真性特異点を持たない2つのフックス関数の間には代数的関係が存在する。」という命題を認めて,これを用いた結果です。(注2終わり)※

例えば,特に方程式を,(1)d2/dx2=y[(1/α21)/4x2(1/β21)/{4(x-1)2}+(1+1/γ21/α21/β2)/{4x(x-1)}]とする。

 

ここに,α,β,γは有限または無限の正の整数で,1/α+1/β+1/γ<1とする。zがこれの積分の比(つまりこれの解の比)なら,x=f(z)とするとf(z)は群(α,β,γ)に関するフックス関数である。

この関数は基本円の内部でしか存在しない。そして次の2つのテータフックス関数の比とみなされる。

 

(df/dz)/[{f(z)}{f(z)-1}],および(df/dz)(z)/[{f(z)}{f(z)-1}],m,p,qは次の不等式を満たす整数である。

 

1-p/m≧1/α,1-q/m≧1/β,(p+q-1)/m-1≧1/γ。この不等式は同時に成立可能である。

基本円の内部でしか存在しないこれら2つのテータフックス関数はこの円の内部で正則である。α=β=γ=∞ならば,(1)はsinamxの周期をそのモジュラーの平方の関数として定める方程式に帰着する。

 ※(注3)(1)は超幾何微分方程式と本質的には同じものです。

 

 一般に2階線形常微分方程式:u"+p(x)u'+q(x)u=0 に対して変換u=exp{-(1/2)∫p(x)dx}yを行なうと,y"=[p'(x)/2+p(x)2/4-q(x)]yと変換されます。

そこで,特に超幾何微分方程式x(x-1)u"+[(a+b+1)x-c]u'+abu= 0 ,すなわちu"+[c/x+(a+b-c)/(x-1)]u'+[ab/{x(x-1)}]u=0 を取ります。

 

上で与えた変換:u=x-c/2(x-1)-(a+b-c)/2yを行なって,さらに|1-c|=1/α,|c-a-b|=1/β,|a-b|=1/γと置けば,(1)d2/dx2=y[(1/α21)/4x2(1/β21)/{4(x-1)2}+(1+1/γ21/α21/β2)/{4x(x-1)}]が得られます。

変換u→yの形から見て,(1)の2つの解の比とそれに対応する超幾何微分方程式の解の比は全く同じなのでzは超幾何方程式の解の比と考えてよいと思われます。

 

また,α,β,γは各特異点における決定方程式の根の差の絶対値の逆数なので,シュワルツの研究において現われたm,n,pに相当します。

 

そこでは,既にシュワルツの研究を通じて,x=f(z)がフックス関数になるための条件はα,β,γが全て正の整数で1/α+1/β+1/γ<1であることを見たし,それに対応するフックス群が(α,β,γ)であることも見ました。

 すなわち,ポアンカレはここでもシュワルツが既に得ていた結果を彼の名に触れることなく述べています。 

 Kをフックス群の任意の元とすれば,f(z)がフックス関数ならf(zK)=f(z)ですが,両辺をzで微分するとf'(zK)d(zK)/dz=f'(z)より,[f'(zK)][f'(z)][d(zK)/dz]-mを得るので[f'(z)]は1つのテータフックス関数です。

 

 そして,(z)がフックス関数なのでf'(z)をdf/dzと書いて(df/dz)/[{f(z)}{f(z)-1}],(df/dz)(z)/[{f(z)}{f(z)-1}]もやはりテータフックス関数です。

 

 そして,f(z)はこれらの比として得られます。

 条件:1-p/m≧1/α,1-q/m≧1/β,(p+q-1)/m-1≧1/γは,これらのテータフックス関数が基本円の内部で正則になることを保証する条件です。

 

 実際zとf(z)の対応は,(1)の特異点であるx= 0,1,∞ を除けば,局所的に1対1正則なので,群の基本領域の頂点以外では正則です。

 

 zは微分方程式の2つの解の比なので,zの選び方はいろいろありますがどれを選んでも結論は同じです。

 

 そこで,特にf(0)=0 となるようにzを選べば,その近傍でz=x1/α(1+..);(ただし'..'は定数項を含まないxのベキ級数)と書けるため,x=f(z)=zα(1+..)となります。

 

 これから,(df/dz)=α(α-1)(1+..),よって(df/dz)/[{f(z)}{f(z)-1}]=(定数)×z(α-1)-pα(1+..),(df/dz)(z)/[{f(z)}{f(z)-1}]=(定数)×z(α-1)-pα+α(1+..)が得られます。

 m,α,pは正整数なので,これらがz=0 で正則であるための条件として,m(α-1)-pα≧ 0 ,すなわち,1-p/m≧1/αを得ます。

 

 同様に,x=f(z)=1,およびx=f(z)=∞ の近傍で,それぞれf(0)=1,f(0)=∞ となるようにzを選んで,z=1,およびz=∞でのx=f(z)の正則条件から,1-q/m≧1/β,および(p+q-1)/m-1≧1/γを得ることができます。

 最後に,sinamxと書いてあるのは,現在ではsnxという記号で示される関数のヤコービの記号です。

 

 既にガウスの項で示したように, snx=sinamxは,∫0xdx/{(1-x2)(1-k'22)}1/2の逆関数です。

 これにおけるモジュラスをkとすると,K=∫01dx/{(1-x2)(1-k22)}1/2(π/2)F(1/2,1/2,1;k2),K'=∫01dx/{(1-x2)(1-k'22)}1/2(π/2)F(1/2,1/2,1;k'2)となります。

 

 そこで,ξ≡k2と置けば,snxの2つの周期:4K,2iK'はa=b=1/2,c=1 に対応する超幾何微分方程式:ξ(ξ-1)u"+(2ξ-1)u'+u/4=0 の解となります。

 

 このとき,1/α=|1-c|=0, 1/β=|c-a-b|=0, 1/γ=|a-b|=0 となりますから,α=β=γ=∞です。

 

 最後の文章はこのことを述べています。(注3終わり)※

 私は,次に私が1879年11月にアカデミーに提出する栄を得たノートの中で定義した数論的な不変式をテータフックス関数に帰着させる。

(z)を任意のフックス関数とし,x=F(z)と置く。

 

zの1価関数の系:θ1(z),θ2(z),..,θn(z)で,これから行列式 det(dα1θ/dxα1,dα2θ/dxα2,..,dαnθ/dxαn) (θ(z)≡t1(z),θ2(z),..,θn(z)))を作ったときに,α12,..,αnがどんな整数であっても,これがフックス関数であるようなものをゼータフックス関数の系と呼ぶ。 

 θ12,..,θnが,それらをx=F(z)の関数と見たときに係数がxの代数関数であるような1つの線形微分方程式を満たすことは明らかである。

※(注4)θ12,..,θnの任意の線形結合を一般解に持つ線形常微分方程式は行列式の等式 det(,',",..,(n))=0 で与えられます。

 

 ここで,t(y,θ12,..n),'≡d/dx,"≡d2/dx2,..,(n)≡dn/dxnです。

 

 したがって,θ12,..,θnがゼータフックス関数の系としての性質を持つならば,この線形微分方程式の係数は全てzのフックス関数になります。一方,x=F(z)もフックス関数ですから,1°によって微分方程式の係数はxの代数関数であるということになります。(注4終わり)

 私は,無数のゼータフックス関数を作ることができることを証明し,それにいろいろな級数による表現を与える。

 

 そして,これらは無数の微分方程式,とりわけ有限の範囲に2つ,無限遠に1つの特異点を持つ有理関数の線形微分方程式の全てを積分することができる。 

 1つの特別な応用を与える。 

 K,K'が楕円関数の周期でωがそれのモジュラスであるとする。

 

 φは,ω=φ[(K+K'√-1)/(K-K'√-1)]で定まる関数とする。そして,x=0,x=1,x=∞ に特異点を持つ有理係数の線形微分方程式があるとする。x=φ(z)と置き,この微分方程式の積分をθ1(z),θ2(z),..,θn(z)とする。

 

 このとき,φ(z)はフックス関数でθ12,..nはゼータフックス関数である。これらは基本円の内部でしか存在しない。これらはこの円の内部で正則で,したがって常に整級数で表わされ.その係数は容易に計算できる。 

 要するに,楕円関数がその特別の場合であるような極めて広い関数のクラスが存在する。

 

 これらの関数は多数の微分方程式を積分することができる。

 

 いろいろな性質がこの関数と楕円関数の類似を,そしてテータフックス関数,およびゼータフックス関数と関数Θ,およびΖとの類似を顕著にしている。 

 ※(注5)(φは楕円モジュラー関数であって,これは超幾何微分方程式ω(ω-1)u"+(2ω-1)u'+u/4= 0 (ただしu'=du/dω,u"=d2/dω2)の解の比の逆関数として得られるフックス関数であり,それの属するフックス群は群(∞,∞,∞)です。

 

 このことから,上に述べられていること,すなわち,0,1,∞のみに特異点を持つ有理係数の全ての線形微分方程式が,フックス関数φ(z)とゼータフックス関数θ1(z),θ2(z),..,θn(z)を用いてx=φ(z),y=c1θ1(z)+c2θ2(z)+,..,+cnθn(z) (c1,c2,..,cnは任意定数)のような形に積分できることが証明できます。

 

 これについての詳しい説明は,いずれ後の主論文で与えられます。

 なお,Θ,およびΖはヤコービの記号で,現在の記法ではθ,およびζに相当します。(注5終わり)※

 ところで,本文の中で「これらの関数が微分方程式を積分する。」という表現がありますが,これは「これらの関数が微分方程式の解になる。」という意味であると考えられます。 

 これで,ポアンカレ(Poicare')の項の第1章が終わり,以下は本論の第2章へと続きます。

 

 ここまでを退院前日の4/21(土)PM4:04 に読了し,一応ノルマと課していたフックス関数の理論での序論の部分を全て読んで理解し終えたので,これで満足して病院での読書を全て終わりにし,翌日4/22(日)のAM9:30ごろに無事退院しました。

その後,自宅にてポアンカレの第2章フックス群の理論に入ったのは退院してから1週間以上を経た4/30(月)のことでした。

 

気紛れな私は,やはり退院してからは入院中のような情熱は失せてしまったようです。

 

 以後はこの本については数ページしか読み進んでいません。したがって,この続きがブログ記事になるのは,かなり先のことになるかもしれません。※

参考文献:斎藤利弥 著「線形微分方程式とフックス関数I(ポアンカレを読む)」(河合文化教育研究所)

 

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。

人気blogランキングへ ← クリックして投票してください。(1クリック=1投票です。1人1日1投票しかできません。)

http://homepage2.nifty.com/toshis-kaiga-auction/「健康商品の店 タクザイ」

にほんブログ村 科学ブログへクリックして投票してください。(ブログ村科学ブログランキング)

にほんブログ村 トラコミュ 物理学へ
    物理学

|

« ポアンカレに関する1つの挿話 | トップページ | フォノン(1)(静止格子模型の破綻) »

308. 微分方程式」カテゴリの記事

305. 複素数・複素関数論」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: フックス関数の理論(2)(ポアンカレの理論):

« ポアンカレに関する1つの挿話 | トップページ | フォノン(1)(静止格子模型の破綻) »