遅い粘性流(5)(Stokes近似)
遅い粘性流の項目を終わりにするに当たって1982年5月の覚書きノートから「I.Imai(今井功)の方法(1972)によるストークス(Stokes)方程式の一般解」を紹介します。
まず,非圧縮性流体の定常流のストークス方程式と連続方程式はη△v=gradp (1),divv=0 (2)と表わされます。
そこで,今 △φ=0 を満足するあるベクトル場:φ (3)によってp=2ηdivφ (4)と表わされたとします。
このとき(1),(2)の1つの解v1は次式で与えられます。すなわち,v1=grad(rφ)-2φ (5) です。これが実際に解であることはv=v1を直接(1),(2)に代入することで確かめられます。
次に一般解をvとして,v'≡v-v1とおけば,△v'=0 ,divv'=0 となります。第2の式によって,v'=rotAなるAが存在します。
そして第1の式から,△v'=rot(△A)=0 なので,ある関数χが存在して△A=gradχと書けます。
ここで,△Ψ=-χなるΨによって,ゲージ変換:A'=A+gradΨを施せば △A'=0 とできることがわかります。
以上から,一般解vはv=v1+rotA(6),△A=0 (7)と表わすことができることがわかります。
そこで,χ≡-A/2, △Φ=0 (8)なるχ,Φを用いてφ'=φ+gradΦ+rotχ(9)とおけば,△φ'=△φ=0 ,divφ'=divφ(10)が成立し,grad(rφ')-2φ'=v1+grad{rgradΦ-2Φ+rrot(-A/2)}+rotA (11)と書けます。
したがって,rgradΦ-2Φ-(r/2)rotA=一定となるような調和関数Φが存在すれば,φ'をv1=grad(rφ)-2φ(15)のφの代わりに用いてv=grad(rφ')-2φ'とすることで,一般解vが与えらます。
今,Φ=ΣlΦl,A=ΣlAl (12)と,Φ,Aをl次の体球関数Φl,Al(調和関数であってx,y,zのl次の同次式):Φl=ΣmclmrlYlm(θ,φ),Al=ΣmdlmrlYlm(θ,φ))で展開すれば,(l-2)Φl=(r/2)rotAl+const.δl0(13)が得られます。
そこで,A2≠0 でもrrotA2=0 のケースには,l≠2なるlに対するΦlとしてΦl=rrotAl/{2(l-2)}と取れば,求めるΦ=ΣlΦlが存在することがわかります。
すなわち,Φ=(1/2)Σl≠2[rrotAl/(l-2)] (14) です。
さらにrrotA2≠0 のケースでも(9)とは別のφ'の選び方でv=grad(rφ')-2φ' (5)'の形に帰着できることが予想されます。
今井功 著「流体力学」(1973)(裳華房)
http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。
人気blogランキングへ ← クリックして投票してください。(1クリック=1投票です。1人1日1投票しかできません。)
http://homepage2.nifty.com/toshis-kaiga-auction/健康商品の店 「TRS健康ランド」
← クリックして投票してください。(ブログ村科学ブログランキング)
![]() 物理学 |
| 固定リンク
「108. 連続体・流体力学」カテゴリの記事
- 震源の探知(大森公式等)(2009.12.10)
- 定量的地震学6(2009.11.30)
- 定量的地震学5(2009.11.17)
- 空気分子の大きさ(アインシュタインとブラウン運動)(2009.10.11)
- 定量的地震学4(2009.09.29)
コメント