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2007年7月18日 (水)

ブラウン運動と伊藤積分(10)

 確率積分の話題の続きです。前回はこれを定義しただけですが今回はこれの性質,特に伊藤の公式について説明します。 

次の不等式は,シュヴァルツ(Schwartz)の不等式の一般化です。

(補題9.1):(国田・渡辺の不等式)

  M,N∈2,cとする。

 

  φ(s,ω),ψ(s,ω)は発展的可測で∀t>0 に対して,∫0tφ(s,ω)2d<M>s<∞,∫0tψ(s,ω)2d<N>s<∞ とする。

 

このとき,∀t>0 に対して,|∫0tφ(s,ω)ψ(s,ω)d<M,N>s|≦(∫0tφ(s,ω)2d<M>s)1/2(∫0tψ(s,ω)2d<N>s)1/2 (a.s)である。 (a.s.はalmost surely="ほとんど確実に"です。)

(証明)<M,N>の定義:<M,N>≡(1/4)(<M+N>-<M-N>)と,その性質:<aM,N>=a<M,N>によって,<M>=<M,M>,<N>=<N,N>であり,∀r∈Rに対して<M+rN>=<M>+2r<M,N>+r2<N>となります。

したがって,0≦∫s1s2d<M+rN>s=∫s1s2d<M>s+2r∫s1s2d<M,N>s+r2s1s2d<N>s a.s が全ての実数rに対して成立するようにできます。

よって,実数rの2次式が常に非負でr2の係数が正なので,その判別式は(判別式)≦0 を満足しなければならないことから,不等式|∫s1s2d<M,N>s|2≦(∫s1s2d<M>s)(∫s1s2d<N>s)が得られます。

それ故,φ(s,ω)≡Σiφi(ω)1(ti,ti+1),ψ(s,ω)≡Σiψi(ω)1(ti,ti+1)0に対して,|∫∫0tφ(s,ω)ψ(s,ω)d<M,N>s|=|Σiφi(ωi(ω)∫titi+1d<M,N>s|≦Σii(ω)||ψi(ω)|(∫0td<M>s) 1/2(∫0td<N>s)1/2≦(Σii|2titi+1d<M>s)1/2ii|2titi+1d<N>s)1/2=(∫0tφ(s,ω)2d<M>s)1/2(∫0tψ(s,ω)2d<N>s)1/2 (a.s)となります。

有界なφ(s,ω),ψ(s,ω)については,再掲(補題:8.3):"02(<M>)内で稠密である"によって,上のような0の元で近似することができます。

 

一般のφ,ψについてはまず有界なもので近似して0の元で近似すると極限で命題が成立します。

 

(証明終わり)

(定理9.2) 

(ⅰ) M,N∈2,c,f(s,ω)∈2(<M>)のとき,Xt=∫0tf(s,ω)dMsとすると,<X,N>t=∫0tf(s,ω)d<M,N>sであり,かつ任意のN∈2,cに対して<X,N>t=∫0tf(s,ω)d<M,N>sを満たすX∈2,cでX0=0 なるものはXt=∫0tf(s,ω)dMsに限る。

 

(ⅱ)I(f)=XT=∫0f(s,ω)dMs2(0,T;<M>)→2,c(0,T)は∀Tに対して等距離写像(isometric mapping)である。:すなわちE[|XT|2]=E[∫0|f(s,ω)|2d<M>s]である。

(証明)(ⅰ)f∈2(<M>)に対してfn0でE[∫0t|fn(s,ω)-f(s,ω)|2d<M>s]→ 0  as n→ ∞なるものを取ります。

 

nt=∫0tn(s,ω)dMsとおくと,再掲(補題8.7):"E[X2]=E[<X>T]=E[∫0Tf(s,ω)2d<M>s]である。"によって,E[<Xn-X>t]=E[∫0t|fn(s,ω)-f(s,ω)|2d<M>s] → 0  as n→ ∞,∀tです。

一方,|∫d<M,N>s|≦|∫d<M>s|1/2|∫d<N>s|1/2ですが,E[|<M,N>t|]=E[|∫0td<M,N>s|],E[|<M>t|]=E[|∫0td<M>s|],E[|<N>t|]=E[|∫0td<N>s|]より,一般にE[|<M,N>t|]≦E[|<M>t|]1/2E[|<N>t|]1/2です。

したがって,E[|<Xn,N>t-<X,N>t|]=E[|<Xn-X,N>t|]≦E[|<Xn-X>t|]1/2E[|<N>t|]1/2 → 0  as n →∞ ,∀tが得られます。

また,<Xn,N>t=∫0tn(s,ω)d<M,N>sがfn(s,ω)∈0を具体的に書き下すことによって(補題8.5)の証明と同じようにして言えるので,結局<X,N>t=∫0tf(s,ω)d<M,N>s a.sであることがわかります。

 後半の,一意性については,<X~,N>t=∫0tf(s,ω)d<M,N>s a.s ∀N∈2,cとすると,<X-X~,N>t=0 a.sですから,特にN=X-X~とすると<X-X~>t=0 a.s,あるいはE[|Xt-X~t|2]=0 よりXt=X~t a.sとなることから示されます。

(ⅱ)(ⅰ)よりXt=∫0tf(s,ω)dMsとおけば,<X>T=<X,X>T=∫0Tf(s,ω)d<M,X>sであり,<M,X>s=∫0sf(u,ω)d<M>uですからd<M,X>s=f(s,ω)d<M>sなので,<X>T=∫0Tf(s,ω) 2d<M>s=∫0T|f(s,ω)|2d<M>sとなります。

 

 これとE[|XT|2]=E[<X>T]を合わせると,E[|XT|2]=E[∫0T|f(s,ω)|2d<M>s]が得られます。(証明終わり)

(系9.3)(ⅰ)M∈2,c,f,g∈2(<M>),a,b∈Rに対して∫0t{af(s,ω)+bg(s,ω)}dMs=a∫0tf(s,ω)dMs+b∫0tg(s,ω)dMs,∀tである。

 

(ⅱ)M,N∈2,c,f∈2(<M>)∩2(<N>),a,b∈Rに対してf∈2(<aM+bN>)で∫0tf(s,ω)d(aM+bN)s=a∫0tf(s,ω)dMs+b∫0tf(s,ω)dNs ,∀tである。

(証明) (ⅰ)N∈2,cのとき,(定理9.2)と二次変分の性質(命題7.8)より,<∫0t(af+bg)dMs,N>=∫0t(af+bg)d<M,N>s=a∫0tfd<M,N>s+b∫0tgd<M,N>s=<a∫0tfdMs,N>+<b∫0tgdMs,N>です。

 

 そしてNは任意なので,例えばN=∫0t(af+bg)dMs-a∫0tfdMs-b∫0tgdMsと取ることによって,∫0t{af(s,ω)+bg(s,ω)}dMs=a∫0tf(s,ω)dMs+b∫0tg(s,ω)dMs ,∀tが得られます。

(ⅱ)f∈2(<aM+bN>)なることについては,再掲(補題9.1):"M,N∈2,cとしφ(s,ω),ψ(s,ω)は発展的可測で,∀t>0 に対して∫0tφ(s,ω)2d<M>s<∞,∫0tψ(s,ω)2d<N>s<∞ とする。このとき∀t>0 に対し|∫0tφ(s,ω)ψ(s,ω)d<M,N>s|≦(∫0tφ(s,ω)2d<M>s)1/2(∫0tψ(s,ω)2d<N>s)1/2 a.sである。"と二次変分の性質からいえます。

 

すなわち,(補題9.1)でφ=ψ=fとおくと,不等式|∫0tf(s,ω)2d<M,N>s|≦(∫0tf(s,ω)2d<M>s)1/2(∫0tf(s,ω)2d<N>s)1/2 a.sが得られます。

 

 これと等式d<aM+bN>s=a2d<M>s+2abd<M,N>s+b2d<N>sから,f∈2(<aM+bN>)なることは自明です。

 そして(定理9.2)と(命題7.8)によれば,∀L∈2,cに対して<∫0tfd(aM+bN)s,L>=∫0tfd<(aM+bN),L>s=a∫0tfd<M,L>s+b∫0tfd<N,L>s=<a∫0tfdM+b∫0tfdN,L>が成立するので命題が成り立つことは明らかです。

 

 (証明終わり)

 次に,局所マルチンゲールに対して確率積分を定義します。 

(定義10.1):(局所マルチンゲールに対する確率積分)

M∈,locとし,Mに対しP(∫0Tf(s,ω)2d<M>s<∞)=1,∀Tを満たす発展的可測過程f(s,ω)について確率積分を定義する。

M∈,locよりσn↑∞ a.sとなる停止時刻の列{σn}が存在して,Mt∧σn2,cが成立する。そしてτn(ω)≡n∧inf{t≧0:∫0tf(s,ω)2d<M>s≧n}とおけばτn↑∞ a.sである。

 

 そこでρn≡τn∧σnとしMnt≡Mt∧ρn,fn(t,ω)≡f(t,ω)1{t≦ρn}とおけば,Mnt2,c,fn(t,ω)∈2(<Mn>)なので確率積分I(fn)がI(fn)(t,ω)=∫0tn(s,ω)dMnsと定義できる。

 

 これはI(fn)(t,ω)=I(fm)(t,ω),0≦t≦ρn,n≦mとなることがわかる。

 そして,n→ ∞ に対してσn → ∞ なので,I(f)(t,ω)≡I(fn)(t,ω), 0≦t≦ρnとすれば,n→ ∞ の極限で∀tについてI(f)が定義できる。

  

 このI(f)をfの確率積分という。

(定理9.2)を局所マルチンゲールに対して書き直したものはM∈c,loc ,f(s,ω)をP(∫0Tf(s,ω)2d<M>s<∞)=1,∀Tを満たす発展的可測過程とする。

 

 このときXt=∫0tf(s,ω)dMs,M∈c,locはX0=0 で<X,N>t=∫0tf(s,ω)d<M,N>s∀t a.sを満たす唯1の元である。

 

 となります。

 

 これの証明は,tをt∧ρnにおきかえると,(定理9.2)の証明と同じなので省略します。

次に,確率積分が普通の積分と同様な概念を表現するものであるということを示す重要な性質を証明します。

 "f(s,ω)がtに適合して左連続であるとする。このとき,分割Δ:0=s0<s1<..<snをとれば,∫0tf(s,ω)dMs=P-lim|Δ|→0Σif(si)(Msi+1-Msi)となる。ただし,P-lim は確率収束極限の意味である。という命題を証明します。

(証明)fが有界でf∈2,cのとき,分割Δ:0=t0<t1<..<tnに対してfΔ(s,ω)≡Σif(ti,ω)1(ti,ti+1)(s),fΔ(0,ω)≡f(0,ω)とおくと,左連続性によってfΔ(s,ω)→ f(s,ω) as Δ→ 0,∀s,ωです。

Δt=∫0tΔ(s,ω)dMs=Σif(ti,ω)(Mti+1-Mti)であり,E[∫0t|fΔ(s,ω)-f(s,ω)|2d<M>s]→ 0 よりE[|XΔt-Xt|2] → 0 as Δ→ 0,∀tです。

一般の局所マルチンゲールの場合は(定義10.1)のτnを使って局所化すればいいだけです。

 

(証明終わり)

ここで微積分学における合成関数の微分法則(連鎖公式)の確率解析版とされる伊藤の公式を示すことにします。

 

その応用は極めて広いものです。

(定義11.1)確率過程X={Xt}がXt=X0+Mt+At,M∈loc,A∈(増加過程:に属する元の差で表わされる過程)で,X00-可測関数,ただし,M0=0 a.s,A0=0 a.sと表わされるとき,{Xt}は半マルチンゲールであるという。

また,RN値確率過程が半マルチンゲールであるとは,各成分が半マルチンゲールのときをいう。

 

さらに,t,tが連続確率過程であれば{t}は連続な半マルチンゲールであるという。

(定理11.2)(伊藤の公式)

t(X1t,X2t,..,XNt)を連続な半マルチンゲールとする。すなわち,Xit=Xi0+Mit+Ait (i=1,2,..,N)とする。

 

f∈2(RN)のとき,f(t)は連続な半マルチンゲールであり,f(t)-f(0)=Σi=1N0tif(s)dMis+Σi=1N0tif(s)dAsi+(1/2)Σi,j=1N0tijf(s)d<Mi,Mjsと書くことができる。

 

ただし,Dif≡∂f/∂xi,Dijf≡∂2f/∂xi∂xj(i,j=1,2,..N)である。

(証明)τn=inf{t≧0:|0|>n,or|t|>n,|t|>n}({ }≠φのとき),τn=∞ ({ }=φのとき);とおきます。このとき,n→ ∞ に対してτn→ ∞ a.sなので,Xt∧τn について,この等式を証明すれば十分です。

したがって,0,t,tは全て有界,f,Dif,Dijfも全て有界,かつ一様連続であるとしてかまいません。それ故,ある定数Kがあって|f|+Σi|Dif|+Σi,j |Dijf|≦Kと書くことができます。

Δ:0=t0<t1<..<tn=tを [0,t]の分割とします。

このとき,テイラー展開の定理により,f(t)-f(0)=Σk=1n-1(f(tk+1)-f(tk))=Σk=1n-1Σi=1Nif(tk)(Xitk+1-Xitk)+(1/2)Σk=1n-1Σi,j=1Nijf(ξk)(Xitk+1-Xitk)(Xjtk+1-Xjtk),ξktk+θk(tk+1tk), 0≦θk≦1と表現できます。

右辺の第1項は|Δ|→0 のとき,確率積分の定義により,Σi=1N0tif(s)dMis s+Σi=1N0tif(s)dAsiに確率収束します。

一方,右辺の第2項は,(1/2)Σk=1n-1Σi,j=1Nijf(ξk)(Mitk+1-Mitk)(Mjtk+1-Mjtk)+Σk=1n-1Σi,j=1Nijf(ξk)(Mitk+1-Mitk)(Ajtk+1-Ajtk)+(1/2)Σk=1n-1Σi,j=1Nijf(ξk)(Aitk+1-Aitk)(Ajtk+1-Ajtk)≡I1+I2+I3となります。

 

より,,,+,cとすると,|Σk=1n-1(tk+1tk)|≦|t|+|t|で,sup|tk+1tk|→ 0,sup|tk+1tk|→ 0 なので,|I2|≦Ksup k|tk+1tk|(|t|+|t|)→ 0 as |Δ|→ 0 a.s,かつ|I3|≦Ksup|tk+1tk|(|t|+|t|→ 0 as |Δ|→ 0 a.sです。

よって,後はI1(1/2)Σi,j=1N0tijf(s)d<Mi,Mj> as |Δ|→ 0 a.sを示すことができればいいことになります。

 

通常の積分と微分との関係では2次の微小量を総和して積分しても1次の微小量になるだけで,|Δ|→ 0 では消えてしまうのでこうした2階導関数の項は出現しません。

実際,上に示したように有界変動の関数と有界な単調増加関数の差で表わせるので,その2次の量を積分するとき,その寄与はゼロになります。

 

しかし,がブラウン運動のような過程である場合には有界変動の関数ではなくて,その長さが確率1で無限大になることは,ずいぶん前の記事で述べましたが,その場合のの2次の量を積分するとき,その寄与はゼロではなくて有限です。

1'=(1/2)Σk=1n-1Σi,j=1Nijf(tk)(Mitk+1-Mitk)(Mjtk+1-Mjtk)とおくと,|I1-I1'|≦(1/2)Σk=1n-1Σi,j=1N|Dijf(ξk)-Dijf(tk)||Mitk+1-Mitk||Mjtk+1-Mjtk|≦(1/2)supk|Dijf(ξk)-Dijf(tk)|[Σn,mt(Mn,Δ)1/2t(Mm,Δ)1/2]です。

よって,E[|I1-I1'|]≦(1/2)Σn,m=1NE[supk|Dijf(ξk)-Dijf(tk)|Qt(Mn,Δ)1/2t(Mm,Δ)1/2]≦(1/2)Σn,m=1NE[supk|Dijf(ξk)-Dijf(tk)|2]1/2(E[Qt(Mn,Δ)Qt(Mm,Δ)])1/2≦(1/2)E[supk|Dijf(ξk)-Dijf(tk)|2]1/2n,m=1NE[Qt(Mn,Δ)2]1/4E[Qt(Mm,Δ)2]1/4)です。

 

再掲(補題7.3):"M={Mt}∈4,cとするとき分割Δに依らない定数cが存在してE[Qt(M;Δ)2]≦cが成り立つ。"とE[supk|Dijf(ξk)-Dijf(tk)|2]1/2→ 0 as |Δ|→ 0 によって,右辺→ 0 as |Δ|→ 0 が得られます。

また,I1"=(1/2)Σk=1n-1Σi,j=1Nijf(tk)(<Mi.Mjtk+1-<Mi.Mjtk)とおくとE[|I1'-I1"|2]=(1/4)Σk=1 n-1E[|Σi,j=1Nijf(tk){(Mitk+1-Mitk)(Mjtk+1-Mjtk)-∫tktk+1d<Mi.Mjs|2]≦Σk=1 n-1(K2/4)E[|tk+1tk|4+Σi,j=1N(<Mi.Mjtk+1-<Mi.Mjtk)2]≦(K2/4)E[supk|tk+1tk|2Σi=1Nt(Mi,Δ)]+(K2/4)Σi,j=1NE[supk|<Mi.Mjtk+1-<Mi.Mjtk|(<Mi.Mjtk+1-<Mi.Mjtk)] → 0 as |Δ|→ 0 です。

 

すなわち,E[|I1'-I1"|2]→ 0 as |Δ|→ 0 が得られます。

一方,1"=(1/2)Σk=1n-1Σi,j=1Ntktk+1ijf(tk)d<Mi.Mjs→(1/2)Σi,j=1N0tijf(s)d<Mi.Mjs as |Δ|→ 0 ですから,結局,I1→(1/2)Σi,j=1N0tijf(s)d<Mi.Mjs in L(Ω) as |Δ|→ 0 です。

以上から,∀tに対して,ほとんどいたるところで,f(t)-f(0)=Σi=1N0tif(s)dMis+Σi=1N0tif(s)dAsi+(1/2)Σi,j=1N0tijf(s)d<Mi,Mjsが成立し,両辺はtについて連続なので,この等式は確率1で∀tに対して成立します。

 

(証明終わり)

例として原点から出発する1次元ブラウン運動をXt=Btとし,f(x)=xnとすると,伊藤の公式から,Btn=n∫0tsn-1dBs+{n(n-1)/2}∫0tsn-2dsです。

 

特にn=2とすれば,Bt2=2∫0tsdBs+tです。

 

このことはBt2-tがマルチンゲールであることを示しています。これは,マルチンゲールの確率積分が,その定義によって常にマルチンゲールであるからです。

こうして,1次元ブラウン運動の確率積分が通常の関数についての積分公式t22∫0txdxとは食い違うことが明確にわかります。

 次の例として,At=-t/2としXt=Bt+At=,f(x)=exp(x)とするとき,伊藤の公式から,exp(Xt)-exp(X0)=exp(Bt-t/2)-exp(B0)=∫0t exp(Bs-s/2)dBs+∫0t exp(Bs-s/2)d(-s/2)+(1/2)∫0t exp(Bs-s/2)dsです。

 

したがって,exp(Bt-t/2)=1+∫0t exp(Bs-s/2)dBsです。

tはマルチンゲールなので,もちろんその確率積分exp(Bt-t/2)もマルチンゲールです。

 

また,E[exp{iξ(Bt-Bs)}]=exp{-(t-s)ξ2/2}より,s=0 ,ξ=-2iとおいて,E[exp(2Bt)]=exp(2t),すなわち,E[exp(2Bt-t)]=exp(t)です。

 

それ故,exp(Bt-t/2)は2乗可積分マルチンゲールです。

さらにt(B1t,B2t,..,BNt)をN次元ブラウン運動とし,f()={(x1)2(2)2+..+(xN)2}m/2とするとき,m≧2ならf(t)-f(0)=mΣi=1N0tis|s|m-2dBis+(1/2)∫0t{Nm+m(m-2)}|s|m-2dsです。

 

また,N≧3でm=2-N,σn=inf{t:|t|≦1/n}とするとき,f(t∧σn)-f(0)=(2-N)Σi=1N0t∧σnis|s|-NdBisですから,tの出発点が 0 でないとき:P(t0)=1,00 なるときも含めて,P(σn↑∞ as n→∞)=1 なので,f(t)-f(0)は局所マルチンゲールです。

今日はここまでにします。 

参考文献:長井英生 著「確率微分方程式」(共立出版)

 

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